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天使たちの日常戦線(三章、三人の中天使)

アルジェント「あー・・・ダリぃ。」

クオーレ「そりゃ一日中ぐーたらしてればだるいでしょ。」

アルジェント「だって働きたくねーんだもん。疲れるんだもん。動くの。」

クオーレ「うわ・・・天使にあるまじき発言・・・〝これであたしより階級が上なんだから世の中って不公平よね・・・。〟」

アルジェント「そういえばジョナルタは?」

クオーレ「何時ものように堕天使を説得に行ってる。」

アルジェント「真面目だねェ~~~~~ほっとけばいいものを。」

クオーレ「そういうわけにはいかないでしょ。あたしたちは天使なんだから。」

アルジェント「まぁ好きにすりゃーいいんじゃねーの?」


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ジョナルタ「今度こそ貴様には罪を認め天界にてビランチの裁きを受けてもらうぞ!」

ロッサ「罪?そんなものは知らないな。」

ジョナルタ「責任逃れの言い訳を・・・まぁいい。どうせ今回も私が勝つんだ。大人しく捕まってもらおう。」

ロッサ「その前に俺がお前を支配する。」

ジョナルタ「・・・出来るものならやってみろ。」

ロッサ「もうやった。」

そう言うとロッサは神糸をジョナルタの体にくっつけた。

ジョナルタ「・・・!」

ロッサ「じゃあな。」

ジョナルタ「甘い。」

しかしジョナルタは神糸が自身の体を動かす前に全て切り伏せた。

ロッサ「〝・・・糸で操る前に切ったのか。〟ならこれはどうだ?」

そう言うとロッサは体を貫通するほどの強度の神糸を上から雨のように降り注がせた。

ジョナルタ「〝糸が無数の雨のように降り注いでくる。それに雨と違ってその場に残るから避けているだけでは行動範囲がどんどん減っていくな。〟」

ジョナルタは降り注ぐ神糸を避けながら全て切り伏せていった。

ロッサ「・・・追加だ。」

ロッサは上からだけでなく四方八方からも神糸を繰り出した。

ジョナルタ「〝全方位から出せるようだな。しかし・・・〟効かんな。」

ジョナルタは神糸を全て避けまたしても切り伏せた。

ロッサ「〝・・・俺の神糸を避けながら神速で切りつけ無効化。更に死角からの攻撃にも対応可能ということか。〟いやはや。流石だな。」

ジョナルタ「そんなことはないさ。攻撃があまりに単調過ぎてあくびが出そうだ。」

ロッサ「言ってくれるな。ならこれはどうかな?」

ロッサは全方位からの神糸攻撃を継続した。

ジョナルタ「何度やっても同じだ。それよりお前はあの時どうしてラスポを殺さなかった?」

ロッサ「・・・何のことだ?俺は殺すつもりでやった。そうか。ラスポは生きていたのか。幸運だったな。」

ジョナルタ「・・・まぁ殺すつもりでやっても生き残ることがあるからな。」

ロッサ「・・・そろそろ失礼する。」

ジョナルタ「出来るのならな。」

ジョナルタは逃げようとするロッサの前に立ちふさがった。

ロッサ「〝・・・普通には逃げられないか。なら・・・。〟」

ロッサは自身の体に神糸をくっつけその神糸で自身を操った。

ジョナルタ「・・・!あいつ自分の糸で自分を操るとは・・・〝確かに意識して動くより数倍速く動ける。考えたな〟・・・まったく。往生際の悪い奴だ。」


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クオーレ「・・・にしてもあなたでもやる気になる時なんてあるんだね。」

アルジェント「何の話だ?」

クオーレ「大逆の時よ。あの時私はイプノたちがビランチを敵に回すことは天界に漂う空気で分かってた。それに人間を狙うことも。」

アルジェント「ああ。ネニアが“人間にも注意を向けたほうがいいかもね。”って言ってたしな。」

クオーレ「ええ。だから私は暫く地上でイプノの潜伏先を探してた。まぁ先にジョナルタがいるとは思わなかったけど。」

アルジェント「あいつもあいつで独自に気づいてたからなァ。堕天使が人間を襲う可能性があることを。」

クオーレ「ええ。でもあんたはそんな風に見えなかったけど?」

アルジェント「・・・何が言いてぇ。」

クオーレ「あんたは、ネニアの言葉にも反応しなかった。なのに何であの時地上に来たの?」

アルジェント「そりゃあ・・・アホアホ野郎の思い通りになるのが癪だっただけだよ。」

クオーレ「・・・どういうこと?」

ジョナルタ「ふぅ。今日もダメだった。」

クオーレ「ジョナルタ!」

アルジェント「お、ご苦労さ~~ん。」

ジョナルタ「ご苦労さんじゃないだろう。お前も少しは働いたらどうなんだ。」

アルジェント「もう大丈夫だろう。じゃ俺は少し気晴らしに行ってくるぜ。」

クオーレ「あっ、ちょっ・・・まったくあいついつもはぐらかすんだから。」

ジョナルタ「何か話をしていたのか?」

クオーレ「ええ。大逆の時の話をしてたの。あの時ジョナルタは私たちより先に地上にいたでしょ?何で先にいたのかな?って思って。」

ジョナルタ「ああそれか。それなら答えは単純だ。イプノが本気の顔をしていたのを見たからだ。ビランチと密かに対立していたころ遠目からあいつを見たがその時のイプノは真剣な目をしていた。それでこれは冗談にならないことが起こると踏んで地上に待機していた。人間を守る為にな。そしたら案の定イプノたちは地上から天界に攻めていったのが見えたからとりあえずその起点となる場所に向かった。そしたら天使たちが人間を襲っていた。だから倒していった。その途中倒れているラスポを見つけたが気絶しているのが分かってな。とりあえずそのままにして堕天使を倒そうと向かおうとした時にお前たちと合流したわけだ。」

クオーレ「・・・そうだったんだ。ラスポは誰にやられたの?」

ジョナルタ「ロッサだ。神力の糸で刺した形跡があった。」

クオーレ「そうなんだ・・・それとね、アルジェントなんだけどあいつあの時地上に来た理由を全然話そうとしないんだけどジョナルタ何か知ってる?」

ジョナルタ「・・・地上に来た理由は私は知らんが確かあいつはリスパリオと旧知の仲だ。だから大逆の可能性はリスパリオから聞いたんだろう。」

クオーレ「・・・確かあの時参謀務めてたもんね。彼。」

ジョナルタ「ああ。それとディストルとも確か旧知の仲だ。」

クオーレ「・・・!じゃあアホアホ野郎って・・・。」

ジョナルタ「ディストルのことなんじゃないか?イプノに乗せられたアホアホ野郎とでも言いたいんだろう。それとヌーラだが彼は三人の剣の師匠だ。」

クオーレ「・・・!」

ジョナルタ「これはあくまで私の想像だが勘違いとはいえイプノに乗せられたディストルの愚行を少しでも抑える為に大逆に参加したんじゃないか?」

クオーレ「・・・だとしたらあまりにもディストルが可哀そうよ。」

ジョナルタ「・・・私はそうは思わない。」

クオーレ「何で?」

ジョナルタ「クオーレ。お前はディストルが“ヌーラは天使長によって苦しめられている”と本気で思い込んで大逆に参加したと思っているのだろう?」

クオーレ「・・・そうでしょ?じゃなきゃあそこまで本気で敵対しようと思えないでしょ!」

ジョナルタ「まぁそれも一理あると思うが私は違うと思っている。」

クオーレ「じゃあどうして・・・?」

ジョナルタ「あいつは確かに感情に任せて動く激情家だ。」

クオーレ「・・・あなたやラーマのようにね。」

ジョナルタ「余計お世話だ!・・・そう確かに激情家だ。だがバカではない。あいつは気づいている。ビランチが意図的にヌーラを傷つけたわけではないことを。誰か特定の存在が悪いのではないと。ただそれでも許せなかったのだろう。ヌーラが同じ天使。ましてや天使長に傷つけられたという事実が。ヌーラが傷ついているという事実があることが許せなかったんだ。」

クオーレ「・・・だから大逆に参加したってこと?」

ジョナルタ「・・・あくまで想像だがな。」

クオーレ「でもさっきよりずっとしっくりくる。」

ジョナルタ「・・・だろう?」


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アルジェント「・・・ったく久々に嫌なこと思い出しちまったぜ。」

ネラ「〝・・・。〟」

アルジェント「・・・てめぇ!なんのつもりだ!」

ネラはアルジェントの背後から突如切りかかった。

しかしアルジェントは切りかかられる直前でその気配に気づきその剣を弾いた。

ネラ「ちょっとぉ~~。しっかりしてくださいよ~。堕天使ですよ?俺。」

アルジェント「・・・それは表向きだろ?」

ネラ「表向きだろうと何だろうと堕天使として怪しい行動はとるなってビランチから言われてるんで。」

アルジェント「だから俺に奇襲を仕掛けたのか。」

ネラ「ええ。天使を見つけて素通りなんて堕天使のすることじゃねぇんで。」

アルジェント「〝・・・こいついっつもそれを建前に使うんだよなぁ・・・。〟」

ネラ「ってことで付き合ってくださいよ。」

アルジェント「お前こちとらセンチメンタルになってんのによ~~。」

ネラ「そんなんこっちには関係ないっすよ。それにおセンチ中にやられたなんてなったら天使の名が泣きますよ?」

アルジェント「あーー久々にストレス発散したくなってきた!」

ネラ「そうそうその調子っすよ笑。」

アルジェント「これだけ焚きつけておいて後で後悔すんなよ?」

ネラ「・・・勿論!」

アルジェント「じゃ行くぜ!」


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フェア「ネニア!お久しぶりです!元気にしていましたか?」

ネニア「・・・程々だよ。で、何の用?」

フェア「あなたに建前の理由は通用しないことは分かっているので素直に言います。私は大逆後災厄がネニアによって弱められたことを知りました。」

ネニア「〝・・・ドラーク。何かやらかしたな。〟で?」

フェア「その話を聞いた時疑問に思ったことがありまして。それはネニア。あなたの神力の強さについてです。災厄はとてつもない力の塊。それを弱めるのはビランチ程の神力を有していなければ困難。グラントはそうおっしゃっていました。ドラークは“ネニアは破壊の神力で壊したのではないか?”と言っていました。」

ネニア「じゃあそうなんじゃない?」

フェア「あら。自分のことなのに随分と他人行儀ですね。でもおかしいんですよねぇ。」

ネニア「何が?」

フェア「ビランチでも骨の折れる災厄の処理をあなたが行えたことがですよ。さっきビランチに聞いたんです。“災厄を弱めて存在させることは出来ますか?”と。そうしたら“出来ないことはないわ。”と仰っていました。」

ネニア「じゃあ何もおかしくないじゃん。」

フェア「この話には続きがあります。次に“その災厄を弱めることは熾天使なら誰もが出来ますか?”と聞いたんです。そうしたら“それは無理ね。私以外には。”と仰っていました。そしてその他にも違う質問をぶつけてみました。“それは神力量の関係からですか?それとも神力の種類の問題でですか?”と。そうしたら神力量の問題からだとはっきり仰っていました。“確かに神力の種類は多少関係あるわ。けどそれはただ単に相性の問題で消し去ることなら方法に差はあれど熾天使なら誰でも出来る。でも弱めるとなると話は別。何故なら細かい力加減が必要になるから。”と。つまりこの話をまとめるとあなたはビランチに並ぶいやそれ以上の神力を有しているということになります。」

ネニア「・・・そうだね。そうなるね。」

フェア「何故それ程に神力を有していることを隠しているのですか?」

ネニア「・・・天使長になりたくないから。」

フェア「・・・え⁉何故?」

ネニア「だって天使長になったら色々やらなくちゃいけないじゃん。私そういうの苦手なんだよ。」

フェア「でも力を一番持つ者が長になるのが天界にとってはいいのでは?」

ネニア「・・・本当にそうだと思う?」

フェア「本当かどうかは分かりませんがそれがある意味見えている世界でとれる最善手ではないのですか?もしあなたが天使長になっていたのならばイプノとセイを止められたかもしれない!」

ネニア「・・・かもしれないね。」

フェア「ほぼ確実に止めることが出来ていたと思います!現にイプノはビランチに手も足も出なかったと聞いています。あなたが参加していればセイを確実に捕らえ罪を償わせることだって出来たかもしれない!」

ネニア「・・・まぁ私が最初からビランチと二人で天使長の任をやっていたらビランチが伝え忘れてヌーラやイプノそれにセイの心に深い傷を負わせることはなかったんじゃないかとは偶に思うよ。けど時間は戻せない。ビランチは戻せるけど戻さなかった。ってことはビランチも時間を戻すべきではないと思っている・・・人間の存在はね。天使全体の罪を表しているんだ。人間の存在は天使の試練みたいなものだ。何でもかんでもやり直せる私たちがやり直さずに見守る覚悟があるか。永遠の時と知恵を得た私たちが得たと思い込んでいることを自覚する為の試練だ。」

フェア「・・・どういうことですか?」

ネニア「昔シェンスが言ってたよ。“天界の奴らがことあるごとに自分のことを完璧というけれどだったらどんな不利な状況でもどんな不条理でも自分の内に入れ力に変えてみてから言いなさい!”ってね。本当に完璧なら何者にもどんな事象にも左右されることはない。って。そのことを話した少し後に人間を作って欲しいって言いだすなんて流石智天使だ。結果はどうだった?天使たちの心の弱さが如実に表れた。同時に知ったんだ。自分たちは完璧じゃないことを。自分たちはただ恵まれていただけなんだって。不死と知恵というとても便利なオプションがついているに過ぎない存在だということに。そして間もなく天界は荒れた。自分の心の弱さを受け入れきれず天界から離れる者。自分の弱さの痛みを感じながら時を進める者・・・わたしも最初は認められなかった。今も完全には認められない。だからどの部門にも所属はしていない。」

フェア「・・・確かに自分より劣っている存在に自分より優れたところがあるなんてそう簡単には認められませんものね。」

ネニア「うん。変なプライドが働く。“私たちは天使なんだ”という何の役にも立たない変なプライドが。」

フェア「ええ。そうですね・・・今回は色々と失礼いたしました。」

ネニア「別にいいよ。最初はイラっとしたけど思ったよりも有意義な時間になった。流石は言葉を司る智天使だ。」

フェア「そう言って頂けるだけで嬉しいです。こちらとしても何故あなた程の熾天使が何処にも属さずいるのか。それが分かったので良かったです。では失礼いたします。」

ネニア「うん。またね。」

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