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超条件世界{二章、世界を導きし者}

これは、世界を知り過ぎてしまった者たちの物語・・・。


「・・・自然神の方々が来られませんね。」

「まったく、何をしているんだか。」

「おい、天使の使役者たち。天使たちは何か言っていないのか?」

「力を揃って返せとしか・・・。」

「それが出来ないから今こんなことになっているんじゃないのか?」

「そういうお前はどうなんだよ!こういう時の為にお前の力があるんじゃないのか⁉」

「全能の力で自然神付与者を従わせろと言いたいのか?」

「そういうことになるのかな。」

「それは出来ないな。」

「何故ですか?」

「俺に彼らを従わせる力はない。俺に出来ることは彼らを圧倒することだけだ。」

「どういうことよ?」

「俺の全能の力は何者にも脅かされないというだけで、彼らの力を押さえつけることは出来ないんだ。」

「何じゃそりゃヨー。」

「そしたら、結局、円満で返してもらうのを待つしかないですねー。」

「そういうことだ。」

「そしたら、俺たち如月はもう帰らせてもらうぜ。」

「あんたらも返さない気?」

「そんなことはない。だが今返せないのであればここに留まっている理由もないだろう。」

「・・・確かに、間知郎さんの言う通りかもしれませんね。全ての力を返せないこの現状。ここに留まっていても状況は変わりません。」

「確かにそうだけど・・・。」

「じゃ、俺達は帰らせてもらう。」


~~~~~


「やっぱり返されなかったな。」

「そうね。」

「にしても、その原因が自然神の奴らだったとわね。」

「まあ、一人ぶっ飛んだ奴いましたし、そいつが原因で不和でも起こしたんじゃないっすか?」

「かもね。あ、そうだ。過智。過去知で七日前の祠の件、確認してくれないか?」

「・・・力を返納するって話が本当にあったのか、改めて確認するってことっすね?」

「そうだ。もし、今後日数が経って“返すなんて言われてない!”とか言われたら“いえ、全知の力であったことを確認していますから。”って自信満々に言えるだろ?」

「・・・まあ、あんたの過去知じゃないけどね。」

「でも、あったという事実を確認しておくというのは大切だ。」

「そうね。私たちは世界を導いてもらいたいって言われてるわけだし。」

「ああ。力を返していないってことはそのお願いもまだ有効ってことだ。」

「・・・やっぱ言ってますね。“期限は七日。この期限内に世界を創り、力を返納してもらう。”って言われてます。」

「じゃ、やっぱ返さないとね。」

「でも何が出来る?」

「ん~~どうしようもないかな・・・。」

「・・・あのさ、話は180度変わるんだけど、過智が過去知を使ってるのを見て思い出したんだけど、岩石が一点に集まってるのを見たって言ってたけど、何の過去を見たの?」

「この地球の過去です。」

「じゃあ、この地球って幾つもの大きな岩が集まって出来たってこと?」

「見た通りならそうっすね。」

「そうか、だから星は丸いのか。」

「どういうこと?」

「恐らく、この地球という星は幾つもの岩石がぶつかり砂となりながら一点に集まることで、出来たのだろう。だからここまで大きい。」

「でもその一点に集める力って何だろうね?」

「それは分からん。」

「ってかさ、私も聞きたいんだけど、星って一つじゃないんだよね?」

「ああ。空間知で確認したから間違いない。」

「そういえば、火の塊の周りを漂ってるって言ってたな。」

「ああ。」

「それって、この地球も?」

「ああ。そうだ。」

「その火の塊ってどれくらい大きいの?」

「・・・そうだな、仮に地球がその火の塊だとしたら、地球はこれだろうな。」

「・・・は?こんなに大きさに違いがあるってこと?」

「そうだ。それとその火の塊はさっきからお前たちにも見えているぞ?」

「もしかして・・・太陽だったりして笑。」

「お、よく分かったな。その通りだ。」

「・・・影響力デカ過ぎでしょ・・・汗。」

「それより、私たちは自然神を説得しに行った方が良くない?」

「・・・そうだな。返してもらうにもまず話さないとな。」

「じゃあ智心。感情知を使ってくれ。」

「了解。・・・・・・えっ、何で⁉」

「何でって、自然神に会いに行くからよ。」

「いや、違う。間知郎のお願いに何でって言ったんじゃない。」

「じゃあ、何で何でって言ったのよ?」

「・・・自然神が感知出来ないからだな。」

「嘘⁉」

「本当だ。洽。お前も分かるだろ?」

「・・・本当だ。空間知に引っかからない。どういうこと?」

「私たちの感知は神様の力でしょ?それで感知出来ないってことは星から消えたとでもいうの?」

「・・・それか、俺たちの感知を搔い潜る術があるかですよね。」

「かもな・・・いや、待て!いたぞ!自然神の奴ら!」

「何か急に感知出来るようになったわね。」

「これではっきりしたな。奴ら全知の力を掻い潜る術があるんだ。それが何かは分からんが・・・。」

「どうします?この問題、このままにしとくのはちょっとやばい気がするんですけど・・・。」

「そうね・・・でも、それを感じ取れるのはあなたたち三人だから私や過智は役に立てそうにないし・・・。」

「だからと言って、三人総出で行くという選択肢もないと思うぞ。俺たちが出ている間に未知子と過智が襲われないという保証はない。」

「まあね。」

「でも分けるにしたって、どう分けるかよ。何も狙われるのは居座る側だけじゃないわ。」

「そうっすね。寧ろ向かう方が危険だ。」

「まあ、危険に自ら飛び込むようなものなんだからね。」

「・・・そしたら、洽が残り、俺と智心で行くというのはどうだ?今回の件、不確定なことが多過ぎる。だから、調べる側の人員は複数のほうがいいと思うんだ。何故なら、二人とはいえ、複数いればなるべく正確に今回のことが分かるかもしれない。逆に居残る方にもバランスよく空間知と感情知を使える者がいた方が状況把握の漏れがなるべく少なく済む。」

「そうだな。移動側は出来れば複数がいい。一人が気づけなくてももう一人いれば敵に奇襲を仕掛けられる確率もグンと下がる。」

「どうだ?みんなは。」

「俺はいいと思います。」

「私もいいけど・・・洽の負担が心配かな。」

「洽・・・どうだ?いけそうか?」

「まあ、基本空間知で地球内なら大丈夫だから、隕石とか来ても直撃は避けられると思う。」

「分かった。その辺は俺が逐一感知しながら智心に伝える。」

「隕石が降ってきたら強く念じるから。」

「りょーかい。・・・是非そうならないよう願いたいけど。」

「そうだな。じゃ、行ってくる。」

「どの自然神に会いに行くの?」

「一番近い土の自然神付与者だ。」

「了解。じゃ、気を付けてね。」

「ああ。」


~~~~~


「・・・さて、俺たちがこれからやらなければいけないことは二つだ。一つ全知を掻い潜る術の調査。」

「え?説得じゃないの?」

「それは、二つ目にあるが主目的じゃない。そもそも、説得に素直に応じるなら今こんな事態になっていないだろう。」

「・・・まあ、確かに笑。」

「それに、自然神付与者の説得はこれから先、他の付与者も試みるだろう。」

「・・・他の付与者って、天使とか?」

「そうだ。確か天使とは神の代行者というのを聞いたことがある。それに返す日の祠の時、彼らはしっかりと神の意見が“力を返せ。”ということを確認していた。」

「あぁ、力を返せとしか言われていないってやつか。」

「それだ。天使からそういうことを言われているということはつまり、あの時にはもう自然神付与者が返す意思がないということを神は知っていたということになる。それに、揃って返せと言われているということは、返せない状態と分かっていながらも、神は揃って返すまで待つ気なのだろう。」

「寛大なのか、怠惰なのか、よく分かんないな。」

「・・・寛大ととっておこう。この力のお陰で俺たちは普通の人間と違った景色が見られるのだからな。」


~~~~~


「まったく、風の昇旋という方は礼儀知らずなのですかね?」

「・・・少なくとも気に入らないという理由で誘い出そうとする時点で少し普通ではないだろうな。」

「しかも、来なければ家を壊しに行くといっているんですから、困ったものです。」

「ここまで言われては、行くしかない。」

「・・・こっちがぶっつぶしてやるよ。家。」

「そう殺気立つな。封砕。俺たちが行く目的はあくまで説得だ。力の返納も含めたな。」

「まあ、そのお陰か自然神以外の付与者たちも動いているようですからね。迦流美の恐ろしさ、見せて差し上げます。」

「見せなくていい。(・・・やれやれ。)」


~~~~~


「そろそろ、迦流美一族の家に着くな。」

「そうだ——智心、止まれ。」

「どうしたんだよ?間知郎。」

「感情知を使って見ろ。」

「えっ?分かった・・・何で⁉使えねーんだけど!」

「やっぱりそうか・・・。」

「やっぱりって、間知郎。お前の空間知も?」

「ああ。大体あそこを境目にして感知が使えない。」

「・・・とりあえず、どこから感知出来てどこから感知出来ないか調べようぜ?」

「そうだな。」

こうして俺と間知郎は迦流美一族の家の周辺を空間知と感情知を使って調べることにした。

その結果、迦流美一族の家を中心に半径百メートルほどきっちりと円形状に感知出来ない部分かあることが分かった。

「・・・これだったのか、俺たちが感知出来なくなった原因は。」

「どうやっているかは分からんが、これは間違いなく付与者の仕業だな。」

「そうだな。しかもこれは自然神じゃない。」

「ああ。おそらく全能か天使系の付与者だ。」

「さっき探知出来たのはここから出てきたからなんだろうな。」

「ああ。・・・にしても、なんて規模だ。」

「中にはいないし・・・帰るか。」

「そうだな。」

こうして俺たちは自分たちの土地へと戻ることにした。


~~~~~


「にしても、自然神の家ってみんなああなのか?」

「そうなんじゃないのか?」

「・・・だとしたら色々めんどくせえなぁ。」

「確かに——智心!隕石だ!」

「は⁉」

間知郎がそういうと目の前に巨大な岩が落ちてきた。

「こんにちは~~如月のお二方。」

「・・・何の用ですか?」

「それはこっちのセリフだ。」

「さっき、私たちの家に行きましたよね?」

「(・・・何で分かったんだ?)」

「行きましたよね?」

「・・・確かに行ったが、何故分かったんだ?」

「足跡ですよ~。私たちの家の周りを随分と丁寧に歩き回ったみたいですね?何をしに来ていたんですか?」

「いや、ちょっと説得に・・・。」

「それは、力の返納の件でということか?」

「そうだ。」

「でも、それなら何で家の周囲を歩き回る必要があるんだ。」

「いや、家に行ったんだが留守だったのでどうしようか考えていたら・・・。」

「それできっかり半径百メートル歩きます?」

「・・・何故そこまで正確に知っているんだ?」

「土の神の一族ですから。地面の痕跡は正確に調べられるんですよ。」

「(土の一族にも特有の感知があるのか?)」

「もういい。やっちゃおうよ。これ以上待っていても時間の無駄だ。」

「いや、ちょっ・・・。」

「そうですね。疑わしきは罰しましょう。比売之庭の怒り。」

震子という人がそういうと、マグニチュード10はあるような大地震が俺たちを襲った。

「じゃあ、終わりだ。砕隕豪岩。」

封砕という人がそういうと、大地震で身動きが取れない中、隕石が雨のように降ってきた。

「(・・・くそっ、ここで最後なのかよ・・・!)」

「(まったく・・・)大地抑振!」

そう言うと抑地は震子の技を止めた。

「宇宙へお戻リー!」

そして、誰かがそう言うと落ちてきた隕石が全て空中に空いた穴に入り、消えていった。

「(・・・!)」

「大丈夫か!二人とも!」

「あんたたちは・・・!」

「ルーキル・フェルトだ!そしてあっちが・・・。」

「無子陰間だナー。」

「・・・助かった。」

「ギリ間に合ったな。」

「抑地。何故私の力を止めたんです?」

「まだ話をしていただろう。それに彼らは悪い人たちじゃない。」

「・・・何を根拠に?」

「俺の勘だ。・・・間知郎、智心。先程は済まない。謝っても許されないがせめて形だけでも謝らせてほしい。」

「え、ええ・・・。」

「それで、先程の話の続きなんだが、君たちに正直に話してほしい。それをしてもらえれば今回は大人しく引き下がろう。」

「・・・分かりました。ちょっと長くなるんで、心して聞いてください。まず、俺たちは全知の力が使えます。」

「それは知っています。」

「その力で俺たちはあなたたちが地球上で何処にいても分かるんです。」

「・・・それが、家の周りを歩き回った理由とどう繋がるの?」

「それはここからだ。地球上何処にいても分かっていたのがつい先程何故か分からなくなったんだ。」

「成程。そこでその原因を探るべく、俺たちの家まで趣き、周辺を調べていたわけか。」

「その通りです。」

「・・・不躾なのは分かっているんだが、何故感知出来なかったのか知っているなら教えてはくれないか?」

「・・・どうします?」

「(・・・流石に虫が良過ぎたか。)」

「お教えしましょう。」

そう言うと、空からセフィラが現れた。

「セフィラ!何でいるの?」

「先程とても大きく大地が揺れたので何があったのか気になり、駆け付けたのです。そしたら、あなた方迦流美が如月を襲っているのを目撃しまして。」

「・・・来てたなら助けてくださいよ汗。」

「その必要はないと思いまして。如月のお二方はフェルトが抱え、岩石を避けながら回避していたので問題ありませんでしたし、隕石のほうも陰間が殆ど宇宙に戻してくれたので地球の半壊は防げました。」

「(地球が半壊する程の威力だったのか・・・。)」

「でも、彼らに本当に教えるんですか?」

「はい。彼らはあなた方の家の秘密が知りたいようです。なので、素直に教えれば納得して帰ってくれると思うのです。」

「・・・セフィラの言う通り、あなた方の家の秘密を教えて頂ければこちらは大人しく帰らせて頂く。」

「そうか・・・分かった。セフィラ。話してあげてくれ。彼らが納得するまで洗い浚い全て。」

「いいのカ?」

「ああ。それにこれは本来隠すことではない。」

「・・・分かりました。ではお話ししましょう。彼らの家には私が天使の力で特別な結界を施しました。」

「特別な結界?」

「ええ。私たち天使の付与者は印紋という力で様々な効果のある印や紋章を出現させることが出来ます。今回私はその力で、彼らの家に守紋(探知不可)という印紋を施しました。効果は家の守護と所在の隠匿。」

「けど何でそんな結界?を張る必要があったんですか?」

「それは、今自然神の力を持つ者たちの中で対立があるからだ。」

「自然神の付与者たちは自然の力を介すれば、様々な痕跡や現象を探ることが出来ます。なので、家を守る効果のある守紋の他に、その所在を掴ませない為の(探知不可)を施す必要があったのです。」

「・・・成程。よく分かりました。」

「では、双方退いて頂けますか?」

「俺たちは退きます。」

「俺達も退きます。」

「良かった。では、フェルトと陰間はどうします?」

「俺たちは如月と一緒に行きます。」

「分かりました。では、皆さん解散です。」


~~~~~


「何で、俺達のところに来んの?」

「お前たちに話しておかなきゃいけないことが山程あるんだよ。」

「その前にお前たち二人は天使の使役者か?」

「そうだ。俺はルーキル・フェルト。天使オルゴを使役する者だ。」

「私ハ、無子陰間。天使ビランチを使役する者だナー。」

「さっきは助かったけど、どうやって助けてくれたんだ?」

「俺が大地震の中、隕石の隙間を縫ってお前らを抱えて脱出。陰間は隕石を全て宇宙に飛ばしたんだ。」

「隕石の隙間を縫ってって・・・超人的な身体能力だな。」

「それが天使オルゴを使役する者に与えられた力だ。意識さえしっかり保っていればどんな無茶でも出来る。まあ反動は半端ないけどな笑。」

「陰間の使役する天使ビランチの力はどんなものなんだ?」

「ビランチはネー、空間を支配する力なんだナー。」

「空間を支配?」

「こいつの力は空間に関することなら何でも出来る。例えばさっきの封砕が降らせてきた隕石だけど、あれは地球の外から引っ張ってきたものなんだ。」

「マジかよ・・・。」

「けど、それを陰間は引っ張ってきた地球外に全て戻すことが出来る。他にも地球上の何処にでも陰間は一瞬でいける。」

「どうダ!すごいだロ!」

「あ、ああ・・・。」

「それで、話しておかなければならないこととは何だ?」

「まずは自然神の付与者たちのことだ。後はその他の付与者たちの現在のスタンス。」

「・・・積もる話になりそうだな。」

「ああ。だからしっかりと落ち着いた場所で話をさせてもらいたい。」

「・・・その話、今どこまで通ってるの?」

「自然神の話はもう自然神以外に通してある。」

「あんたたちが最後だナ。」

「それと、自然神説得はそれぞれ他の使役者たちが今向かっている。」

「一人で?」

「心配ない。みんな使役者だ。やられることはない。」

「何故俺たちが最後だったんだ?」

「・・・言いにくいんだが天使たちが知を司る一族だから、多少後回しでも問題ないって・・・。」

「・・・。」

「済まん・・・。」

「ホントだぜ!あと一歩遅かったら俺達あの世行きだったぜ!」

「ま、助かったんだからいいじゃないカー。」

「「良くない!」」

こうして話をしている間に俺たちは洽たちの居る土地へと無事到着した。


~~~~~


「二人とも、大丈夫⁉」

「ど、どうしたんだ?そんな血相変えて・・・。」

「だって洽さんが間知郎さんと智心さんがつぶれちゃったって言うんで居ても立っても居られなくて・・・!」

「つぶれちゃったって・・・。」

「だって、めっちゃ隕石落ちてきてたでしょ⁉もう終わったかと思ったんだもん!」

「ま、まあ・・・それは事実なんだが・・・。」

「その人たちは?」

「俺達を助けてくれたフェルトさんと陰間さんだ。」

「よろしく。」

「よろしくナ。」

「あなたたちが間知郎と智心を助けてくれたのね・・・!」

「まあ、そうっすね・・・。」

「で、その二人が私たちの所に来たのは何で?」

「それハ、フェルトが説明するヨ。」

「(お前じゃねーのかよ。)・・・まあ、今回俺たちがここに来たのは色々と説明しなければならないことがあるからなんだ。」

「説明しなければならないこと?」

「自然神の状況と各付与者の力返納についてのスタンスだ。」

「それ、チョー聞きたい!」

「そうっすね。実際何が起きてるのか全然分かんないっすから。」

「だと思って、こうして足を運んだんだ。まずは現在の自然神の状況から話す。聞いてくれ。今現在、迦流美を含む五つの自然神付与者たちは対立している。」

「・・・具体的な構図はどんな感じなの?」

「まず、風の昇旋が土の封砕と水の流川を敵対視している。それに水の流川のほうも昇旋を敵対視している。土の震子は敵対視という程ではないが祓火に対して良い印象を抱いていない。火の祓火も敵対視程ではないが震子に良い印象を抱いていない感じだ。」

「・・・つまり、どういうこと?」

「つまり、風は土と水と敵対関係にあり、土は風と火と敵対。火は土と水と敵対し風と協力関係にある。」

「なんか複雑ね。」

「ああ。そうだな。」

「あれ?雷は?」

「そこは唯一、中立だ。」

「そうなんだ。」

「じゃ、次、各付与者の力返納についてのスタンスだ。まず、自然神から。あそこは今確認が取れているのが迦流美一族だけだ。あそこの長が迦流美抑地。彼は他の一族が返せる状況になったら返したいといっていた。」

「でも封砕と震子は?」

「彼女たちは・・・“返せる時になったら考えます。”といって取り合ってもらえなかった。今現在自然神で確認が取れているのは彼らだけだ。他は確認中。次がセフィラ率いる印紋師集団。彼女たちは“返すべき時が来れば潔くお返しいたします。”と返納に肯定的だ。」

「返納の日にも祠に来てたしね。」

「ああ。次が、全能の世全視。彼も返す方向で考えている。最後が俺達使役者集団。実は俺達も自然神程ではないが意見が対立している。」

「具体的にはどんな感じで?」

「例えばここに居る陰間は“状況的に返すの無理じゃネ?”なんて言って返納に対して消極的。ビュージュは“一人でも返さないやつがいるのに返すなんて無理。”とまあ、言っていることは至極当然なんだが、現時点では返納に対して断固拒否。ルチークに至っては“僕たちの次の代で返せばよくないですかー?”という始末。協調性皆無という状況だ。」

「だって、あんな化け者じみた力を使う奴らを全員説得するなんテ、無理だよナ笑。」

「笑い事じゃないんだが・・・まあ、そんな感じだ。」

「・・・フェルトの話を聞いてよく分かったよ。今の世界の状況が。」

「それなら良かった。」

「わざわざ足を運んだかいがあったヨ。」

「(・・・ただいるだけなのに良く言えるわね、この子。)」

「それで、最後に確認しておかなければならないことがあるんだが・・・。」

「何?」

「お前たち如月は力の返納についてどう考えている?」

「・・・そりゃあ。」

「返す方向で考えている。」

「他のみんなもそうなのか?」

「ええ。」

「まあ、最初は未練だったけど今はもう無くせるならいらないわ。」

「私も、もう出来るなら普通に生きたいからいらない。」

「・・・智心は?」

「俺もずっと神経張り詰めっぱなしで正直返したい。」

「了解だ。オルゴ!今の聞いていたな!」

「(ああ。今からアプリオリ様と他の天使に伝えさせてもらう。)」

「頼む。じゃ、俺たちはこれで帰る。」

「・・・まあ、あなたたちなら万が一にでも死ぬことはないでしょうけど、気を付けてね。」

「あア。」

「気遣い感謝するよ。」


~~~~~


「・・・にしても、そんなことになっていたとはね。」

「ああ。思っていたより深刻な事態になっていたな。」

「ちょっと仲が悪いくらいかと思ってたんだけどな。」

「 まあそれは自然神付与者の問題だから今は放っておきましょうよ。それよりも、俺は何で彼らが急に探知出来なくなったのか知りたいですよ。」

「あ、そういえばその為に間知郎と智心で行ったのよね。」

「どうだったの?」

「それが、どこから話していいのやら・・・。」

「そんな複雑な話なの?」

「複雑というか、さっきの自然神の件とも関連する話だ。」

「どういうこと?」

「まず、俺たちが何故探知出来なくなったのか。その理由は天使の力の付与者が扱う印紋という技術のせいだ。」

「その印紋って何すか?」

「印や紋章にして天使の力を発動することにより様々なことが出来る力だそうだ。」

「天使の力の付与者代表格であるセフィラはその力で迦流美一族の家を中心に半径百メートルの結界を施したといっていた。」

「・・・それがさっき言ってた自然神の件と少し関連するってやつね?」

「ああ。さっきフェルトが自然神の付与者同士には対立があるって言ってただろ?その対策として迦流美一族は家を守らなきゃいけないから、セフィラに家の守護とその家の所在を隠匿する効果の結界をかけてもらったらしい。」

「成程。その結界の効果で私たちは彼らを探知出来なくなったわけだ。」

「その通りだ。」

「時系列で説明すると、まず俺たちがあいつらの家の付近で探知の境があることを知る。」

「その後、帰路の最中、迦流美一族の奇襲を受ける。」

「その時は分からなかったんだが彼らは、土に残る痕跡なら探知することが出来るらしくて、俺たちが家の周りで何をしていたのか問い質してきた。」

「・・・勿論黙っていたのよね?」

「最初はな。だが最終的には答えた。」

「何で⁉」

「状況が状況だったんだ。答えないでいたら力を使われ、さっき洽が言っていたペシャンコ状態になる寸前でフェルトと陰間に助けてもらったんだ。」

「そうなんだ・・・。」

「で、その後セフィラが出てきて仲を取り持ってくれたんだ。お互い洗い浚い話すという条件で。」

「だから、生きて帰ってこれたんだよ。」

「まあ・・・その状況なら仕方ないか。」

「にしても、他の付与者たちも中々の化け者ぞろいですね。」

「そうね。話を聞く限りでもフェルトという青年も隕石が降る中二人を救出するなんて並の人間じゃないことが出来るし、陰間って子も隕石を全て消しちゃったみたいだし。」

「消した・・・ね。」

「違うの?」

「まあ、空間知ならそう感じるか。陰間は隕石を消したんじゃない。戻したんだ。」

「戻したってどういうことっすか?」

「そのまんまの意味だよ。地球外から持ってきた隕石をそのまま地球外に出したんだ。」

「・・・彼らの力っていったいどういうものなの?」

「フェルトは意識さえはっきりしていればどんな無茶でも出来る超人的な意思力を扱うらしい。」

「だから、あの大地震の中でも難なく動き回れたんだ・・・。」

「陰間は空間を支配出来るんだと。」

「空間を支配って?」

「俺らもよく分かんねえんだけど、例えば空から降らせた隕石をそのまま空に返せるんだと。」

「それって、降ってきた隕石をそのまま地面につけないで、上まで打ち上げるってこと?」

「でも私が探知してた時はいきなり消えたけど?上に上がるなんて動きはなかった。」

「・・・俺が探知した時はその消えた隕石が突如また地球外に現れるのを感じた。」

「もうわけ分かんない!」

「だよな・・・俺も正直考え過ぎて頭が痛くなってきた。」

「じゃ、今はもう休みません?」

「そうだな。これ以上は眠くなってきたぜ。」

こうして、俺たちは深い眠りについてしまった。


~~~~~


そして、深い眠りから目を覚ました時、驚きの光景が俺たちの目の前に広がっていた。

「・・・ん・・・何だ?」

「起きたか。今は俺のそばを離れるなよ。」

「・・・え、何これ。」

俺たちが目を覚ますと、あたり一帯が焦土と化していた。

「済まんな。まさかあいつらがここまでの暴挙に出るとは予想出来なんだ。」

「おい、世全視!そろそろどきやがれェ!」

「そうはいかない。」

「彼らには罪を償ってもらわないとねぇ。」

「彼らは何か罪を犯したのですか?」

「犯してるぜェ!こいつらは世界を導くという役目をずっと放棄してるじゃねぇかぁ!」

「元々世界を導くのは七日間限定だったはずだが?」

「でも、まだ力が残ってるんだから引き続き、導くべきなんじゃないのかしらねぇ?」

「それは、あなた方があの日、祠に来ていれば起こりえなかったこと。彼らのせいではありません。」

「・・・これどういう状況⁉」

「分からん・・・。」

「なんか、セフィラと世全視が私たちを守っているのは分かるけど・・・。」

「済まないな。夜中に昇旋と祓火がまっすぐ如月の家に向かっていると陰間から伝えがあってな。こうしてセフィラと来た次第だ。」

「そろそろどけぇ!祓い風!」

「守紋。あなた方こそ、そろそろ退きなさい。」

「嫌よぉ。」

「自然神の付与者では絶対に勝てないよ。」

「でも、確実に削られてるはずだぜェ。」

「際限などないんだよ。力の源に。」

「(・・・!)チッ!」

「これ以上、自分たちの作った世界を荒らさないでください。」

「・・・次私たちの顔を見た時が、あなたたちの最後よぉ。」

そういうと昇旋と祓火は姿をくらました。

「ふう。まったく。どこが知恵の高い奴らだ。とんだ食わせものじゃないか。」

「大丈夫でしたか?如月の皆さん。」

「え、ええ・・・。」

「それより、これは一体・・・⁉」

「それはこれから説明させてもらう。」

「焦土と化した場所はあなたたちの家も含めてこれから私が戻しますね。・・・創紋。」

「起きて早々申し訳ないが、少し外で話を聞いてもらいたい。」

世全視さんがそういうので俺たちは近くの倒れた丸太に腰掛け、話を聞くことにした。


~~~~~


「うわぁ・・・本当に戻っていく!」

「にしても、とんだ災難だったね。如月の付与者諸君。」

「・・・災難ってレベルじゃないんだけど。」

「まあ・・・そうだな。」

「如月の皆様。無事戻りましたよ。」

「あ、ありがとうございます・・・。」

「いえいえ。」

「セフィラ。結界は施したか?」

「はい。守紋(瓦解感知)を施しました。」

「ならいい。」

「・・・もしかして、俺たちの家にも迦流美の家のような結界を張ったんですか?」

「ええ。ですが効果は迦流美一族の家に張ったものとは少し違います。」

「セフィラは君たちの家に迦流美の家と同じ守る効果のある印紋を施した。」

「ですがあなたたちの家にはその他に、その守紋が破壊された時、施した術者に伝わるような印紋を施しました。」

「・・・何故、迦流美一族のように所在を隠す結界を施してくれなかったんだ?」

「それはもうばれているからだ。」

「・・・探知を阻害する効果の結界じゃなくてさ、普通に見えなくする結界とかはないの?」

「ありますけど・・・それをかけると、あなたたちも家を見つけられなくなるんですよ。」

「何で?」

「術者を基準にした力だからだ。例えば(探知不可)は元々見つかっていないものを極限まで見つけにくくするもの。」

「しかし、迦流美一族に限ってはもう結界を施す前にその家を一度認識しているので、彼らは結界の指定から外れるのです。」

「成程。(探知不可)は事前に分かっていないことを基準に指定して結界を施すから、分かっている迦流美には効果がなくて、分かっていないそれ以外の一族には効果があるのか。」

「そうです。なので、如月の知の力で事前にその所在を探知していたあなたたちもその指定から外れているのです。」

「直接だろうが間接だろうがその指定物を一度でも事前に確認している者には(探知不可)は使えない。加えて事前でなくとも直接見つけた場合も指定からは外れる。あくまで(探知不可)だからな。(認識阻害)じゃない。」

「ええ。そして、それが出来ない場合に行うのが、(認識不可)なのですがそれは施した術者以外、その存在を認識出来なくなるというもの。つまり、私があなたたちの家にこの(認識不可)を施してしまうと、私以外あなたたちの家を認識出来なくなるという、とても厄介な事態になるのです。」

「だから、今回(瓦解感知)という、守紋が破壊された場合、術者にそのことが伝わる印紋を施したんだ。」

「この(瓦解感知)は守紋が破壊され始めた時から分かるので、あなたたちの家が攻撃を受けた瞬間に分かります。」

「守紋は守ることを目的とした印紋だから、自然神の攻撃を受けたとしてもそう簡単には壊れない。」

「つまり、守紋であなたたちの家に駆け付けるまでの間の時間稼ぎを行うことが出来るのです。」

「加えて、今回は範囲を少し狭めているから通常の守紋よりも頑丈のはずだ。」

「・・・ちなみにどれくらいの範囲ですか?」

「半径70メートルですね。それで、本日のように昇旋と祓火が際限なく攻めてきたとしても30分はもつ仕様です♪」

「30分もあれば、陰間を捕まえて飛んでくるには十分だ。」

「・・・その陰間って空間支配の力を使うんですよね?」

「ああ。そうだが?」

「その空間の支配って具体的には何なんですか?」

「・・・少し表現が難しいですが、彼女は地球のどこにいても一瞬でここに来ることが出来るんですよ。」

「つまり、彼女は移動するのに日数を心配しなくてもいいんだ。」

「彼女の空間支配とは遠くの空間とこちらの空間を一時的に繋げて移動したり、地球内の空間と地球外の空間を一時的に繋げ、隕石を回避することが出来るのです。」

「そうか!だからあの時隕石が消えたように感じたのか・・・!」

「まあ、そんなところだ。さっきの話の続きをするが、もしまた襲われたとしても家の周辺から離れるなよ?」

「それは今の話を聞いて十分に分かったわ。」

「下手に逃げるより家の中にいる方が安全だからだろ?」

「そうです。」

「それより、俺たちが寝ている間に何があったのか話してくれよ。」

「そうだな。こればっかりは聞きたいよな。」

「一番の当事者ですからね。」

「まず、事前情報として、俺は印紋術師たちや六人の使役者たちと協力関係にある。」

「それって・・・力の返納についてってことでですよね?」

「そうだ。俺たちは力の返納について各一族に聞いて回っていた。」

「自然神の方にも話が比較的出来そうな一族には使役者が向かっているんですよ。」

「その返納について動いていた時、陰間から“風の昇旋と火の祓火が真っすぐ何処かに向かっているヨー。”と伝えがあった。」

「目的は分かりませんでしたが、その情報を得た私たちは陰間に彼らの向かう方角の少し先まで飛ばしてもらい、隠紋で姿を隠しながら後をつけたのです。」

「そしたら君たち如月の家に着いたのだ。」

「そして、数十分後あなたたちの目覚めたあの場面に繋がるというわけです。」

「君たちが目覚める数十分間“如月が本当に全知の一族なら俺たちが来ることも知っているはずだ。”とか“もし知らないならここで死ぬのも当然。”とかさんざんなことを言っていた。」

「でも気にしなくていいです。彼女たちの考えは極論なので。」

「大丈夫!それに関しては全然気にしてないわ。」

「そもそも寝込みに襲うのがおかしいだろ。」

「もっともだな笑。」

「けど、彼らの言ってた世界を導いていないって部分はちょっと気になっちゃうよね・・・。」

「(流石、全知の一族。ちゃんと気にするんだな・・・。)それについてなんだが、少し話しておきたいことがある。俺の力を含めて。」

「・・・何ですか?」

「まず、君たちが世界を導いていないという件について。これは気にしなくていいよ笑。」

「・・・何でですか?」

「アプリオリが言っていたんだよ。“そもそも世界を創る為に使う力は自然神のものだけ。自分の力はついでで付与しただけじゃ。”と。つまり、俺の全能と君たちの全知。それに、セフィラ達と天使の使役者の力は必須じゃないんだ。」

「まあ、天使の使役者は各付与者同士にとって橋渡しになりますけど、私の力や彼の全能は有事の時以外には使うことがありませんからね。」

「“自然神だけに付与させるのは不平等を感じさせるから、体裁を保つ為に全員で付与したのじゃよ。”と。“必要がないのなら無理に使わんでもええよ。”と言っていた笑。」

「まあ結果、神でなく人間に不平等を感じさせてしまいましたけどね汗。」

「な~~んだ。変に気張って損しちゃった。」

「それに、君たちは十分に頑張ってくれたといっていた。」

「・・・どういうこと?」

「未知子君が予知で返す未来を見たり、過智君が過去知で本当に七日後に返すといっていたか確認したりと色々奔走したようだね。」

「まて、何故それをあんたが知っている?」

「アプリオリから聞いた。俺は全能の力を扱う人間であると同時にアプリオリの使役者なんだ。」

「・・・マジっすか。」

「これが俺の力だ。本来全能の力というのはエネルギー効率がとても悪く、力を使えるのが5分前後らしいのだが、俺はアプリオリの使役者ということでそのエネルギーが無尽蔵にあるらしい。」

「だから、あなたたちをずっと守ることが出来たのです。」

「そうなんですね・・・。」

「ところで、君たちに確認しておきたいことがあるんだけどいいかな?」

「何ですか?」

「私たちと協力関係になっては頂けませんか?」

「君たちがなってくれれば、力の返納もしやすい。」

「それについてなんですけど・・・俺達予知で見てしまったんですよね。」

「・・・何をですか?」

「俺たちの代で力が返納されないことを。」

「・・・もしかして、力を返すのは俺達ではないのか?」

「・・・はい。予知で見た内容だと、途轍もなく先の時間に私たち以外の人間で祠に触っているところを見ました。」

「(・・・確かアプリオリもそんなことを言っていたな・・・。)そうか。しかし、それは“現時点での”未来という可能性はないか?」

「・・・現時点での未来?」

「ああ。今現在返せる可能性が一番近い未来がその予知というだけで、これから先、行動を変えればその未来が変わる可能性はあるんじゃないのか?」

「そうなんですかね?」

「・・・まあでも、そう思わないとやっていられないかもな。」

「(・・・どうなんでしょうか。)」

「まあ、とりあえずそれ程先の未来を知ったところで俺たちが出来ることなどたかが知れている。」

「そうね。私たちは今生き残ることを考えなきゃ!」

「今生き残れなかったらその未来も来ないですもんね汗。」

「そうだな。」

こうして俺たちは未来を知りながらも生きていくという、とても複雑な状況に置かれることとなったのだ。

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