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条件世界{終章、神の記憶}

俺は、龍一とニーレイさんと共に、ピストアさんから海外で体験した不思議なことについて話を聞いていた・・・。


俺たちはお互いの能力について話をしていた。

「・・・未だに信じられないんだよね。俺がその“全知の力”を使えるっていうことが。」

「でもよ、銃弾受けても無傷だったんだろ?それじゃ、確定じゃねーか。」

「でも、直接銃弾が消えたところとかを見たわけじゃないんだよ?」

「それでも、新野の言う通り、能力者であることは間違いないと思います。」

「でもなあー・・・どうやって使うかも分からないし・・・。」

「天使が言うには“全てを無に出来る能力”らしいです。」

「・・・とりあえず、俺自身に何らかの能力があるってことは信じるよ。君たちが嘘を言っているようにも見えないしね。それに、俺にも思い当たる節は幾つかあるし。」

「幾つか?ちょっと待て。ってことは銃弾の他にも似たような経験があるってことか?」

「まあね。これは、俺が日本に来るきっかけになった出来事なんだけど、ちょっと前に、海外の大都市が廃墟になった事件が世界でニュースになっただろ?実はあれ、グリードがやった事件なんだ。」

「それは知っている。痛ましい事件だ。」

「実は俺、あそこでもグリードに襲われてるんだ。」

「・・・マジっすか?」

「・・・マジっす汗。それで、俺はその時ホテルに泊まってたんだけど、町の中心部で爆発があったのを見て、いち早くその場から離れたんだ。でも、逃げても逃げても、被害が広まっていくスピードの方が早くてね。運悪く、グリードに見つかってしまったんだ。」

「・・・ピストアさん、良く生きていましたね。」

「俺も奴に見つかった時は、もう駄目だと思ったさ。君たちの印紋術だっけ?その爆印とかいうのを食らったしね。」

「・・・爆印を?そしたらあなたは何で・・・。」

「俺もそこが不思議なんだ。食らったと思ったんだけど、何とも無かったんだ。」

「・・・確かに、不思議っすね・・・。」

「やはり、聞けば聞くほど、神の子神話に出てくる神の子の特徴に似ている・・・。」

「・・・そうなのか?それより、君たちのことを聞いてもいいかな?一緒にいて天使とか、印紋術だとか言ってたけど、それが何なのかよく分からないからさ。」

「まあ、そうだよな・・・。」

俺たちはピストアさんに、印紋術や御霊降ろしの技。そして、その他の能力者について今までの事を話した。

「・・・驚いたな。本当にいたのか。天使が。」

「はい。信じられないとは思いますが・・・。」

「で、その天使の力を使う術を印紋術って言って、ちゃんと先代たちの書いた継承書みたいのが残ってる。」

「‼。・・・継承書、あったの?」

「・・・まあな。なかったら、お前の話に対する反応も、もうちょっと拒絶的だったと思うぜ?」

「だからか・・・。」

「まあそういうことだ。それより、お前の能力も名前があったんだな。」

「まあ・・・ね。」

「にしても、中二臭いネーミングセンスだよな笑。“御霊降ろしの技”って。」

「それは・・・そうか?」

「・・・もしかして、貴様のネーミングか?新野。」

「ど、どうでしょうね~~~・・・。」

「・・・マジで?」

「・・・いいじゃん‼別に‼使い手は俺なんだし‼」

「・・・まあ、お前が良いなら・・・な。」

「・・・フッ、黒歴史というやつだな笑。」

「その反応、ニーレイさん酷い‼」

「・・・ま、まあ君たちの能力の事はよく分かった。けど、その力を神に返すっていうのがよく分からない。」

「・・・天使が言うには、今の神は下界で自由に力の行使が出来ないみたいなんです。正確に言うと、力を行使する時の主導権を返して欲しいらしいんです。」

「・・・主導権?」

「はい。力を扱う際、力を生み出すエネルギーとそれを主導する権利が必要になるみたいです。現状としてはエネルギー自体は、神や天使から人間に流れていて、使い方も使う量も人間が決められる状態だそうです。でもその状態だと、人間が良くない使い方をした時や、神自身が力を使いたい時も主導権が人間にあるため止められないし、使えないそうです。」

「・・・その主導権が神に戻ったら、俺たち能力者はどうなるんだ?」

「自分の意思で力を行使出来なくなるって、天使は言ってました。」

「つまり、神が力の主体であった昔の状態に戻してくれってことか?」

「・・・グラントがその通り‼って言ってます汗。」

「・・・別に俺は構わないが、能力者の中には、その能力で生活が成り立っている者がいるんじゃないのか?」

「・・・自然神の一族がいるって言ってます。」

「・・・どうするんだ?」

「とりあえず、結論は待ってくれって言ってます。」

「・・・そうか。」

「ってか、いつの間に仕切ってる感じだよな。ピストアさん。」

「確かに笑。とりあえず、神への力返しは、天使の結論待ちかな?」

「そうですね。」


~~~~~


「・・・新野が力を返すため、本格的に動き出したね。」

「でも、それにあたって一つ。大きな問題があるわ。」

「・・・自然神の一族の事だろ?」

「そう。彼らは今や、その力なしでは生活が成り立たなくなるほど、能力を使っているわ。」

「・・・そうはいっても、返してもらわないとだろ?」

「・・・それはそうなんだけど・・・あ!今思いついたんだけどさ、自然神の一族だけ、最低限の力を残す方向に話を進められないかな?」

「・・・どういうことだ?」

「つまり、自然神の一族だけ主導権を残して新たに、自然神に神から主導権を与えてもらうの。」

「でもそしたら、主導権の二分が起きて、神と人間の争いに発展しかねませんよ?」

「そっかあ~~~・・・いい案だと思ったんだけどなあ・・・。」

「・・・とりあえず、新野には当初の予定通り、如月と自然神に接触してもらいましょう。それで、多分如月の方は簡単にOKがもらえるでしょうから、そちらはそれで進めて、自然神の方は・・・本人たちから意見を聞きましょう。力を返せるのかどうか。返せない場合は、神様に報告ね。」

「・・・了解。」

「じゃ、グラント。新野に伝えてきてくれる?」

「え~~?ビランチが行けばいいじゃん。」

「そんなこと言わないで、あんたが一番あの子と話してるじゃない。行ってきなさいな。」

「はいはい。分かったわ。」

「それじゃ、よろしくね。」


~~~~~


三日後俺たちは、生命さんの家でトランプをしていた。

「・・・‼、グラントから指示が来たよ。」

「で、何だって?」

「とりあえずは、自然神の一族と如月の一族に接触しろだってさ。」

「自然神の方はどうだって?」

「本人たちに直接聞いてみてくれって・・・。」

「・・・自分たちの力がなくなっても大丈夫かってことを?」

「・・・はい汗。」

「なら、当初の予定通り、会えばいいということだな?」

「そうですね。」

「じゃ、早速明日、俺たち三人で隣のクラスに行くべ。」

「・・・どっちに会いに行く?」

「・・・如月の方にしよう。知の一族でもあるから、話の呑み込みも早いはずだ。」

「確かに。あ、ピストアさんは学校来なくていいっすから。」

「言われなくても、行かないよ笑。それより、結果報告を楽しみにしてるよ。」

「任せてください‼」


~~~~~


俺たちは、如月早苗と接触を図る為、昼休みに彼女のいる教室へと足を運んだ。

「隣のクラスか・・・なんか行きづらいな。」

「そうだ、ニーレイ。お前が呼んで来いよ。」

「は?何故私なんだ。新野が行けばよかろう。」

「いや、ここは、同じ女性であるニーレイさんが行った方が良いっすよ!」

「な‼頼むって‼この通り‼」

「・・・分かった。」

「サンキュー‼」

「行くぞ?・・・頼もーーー‼」

ニーレイがそういうと、クラスの半数がこちらを向いた。

「(うわっ、チョー見られてるんですけど・・・汗。)」

「(こんな事なら、普通に行けば良かったぜ・・・。)」

「このクラスに如月早苗はいるか⁉」

教室が騒めく中、窓側の席の方から一人近づいてくる女子が見えた。

「あ、あたしだけど・・・ってか、道場破りじゃないんだから、頼もう‼ってのやめてよね!恥ずかしい‼」

「貴様に少し話がある。少し顔を貸してもらおうか。」

「(貴様って・・・武士じゃん。)・・・分かった。どこに行けばいいの?」

「・・・新野。」

「え⁉ここでっすか⁉」

「で、どこにいけばいいのよ怒?」

「・・・お、屋上に来てください・・・。」

こうして、俺たちは屋上へと場所を移動した。


~~~~~


屋上へと移動した俺たちは、まず、早苗に対して能力の事を聞いた。

「ってかさー、さっきのあれ、チョー恥ずかしかったんだけど。もうちょっと他に呼び方なかったの⁉」

「それに関しては、本当に済まねえ。完全に人選ミスだ。」

「なっ、人に頼んでおいて、人選ミスとはなんだ‼」

「いや、だってよ・・・まさか扉開けていきなり“頼もー‼”なんて言うとは思わなくてよ汗。女子を呼びだすから、同じ女子のニーレイに頼んだんだが・・・あーなっちまうとはな・・・。」

「だから、私は渋ったのだ。」

「・・・まあ、それはもういいんだけどさ・・・結局、何であたしを呼び出したわけ?」

「それは、俺から話すよ。突然なんだけどさ、君って、超能力みたいな力が使えるよね?」

「・・・本当に唐突ね。」

「で、使えんのか?力。」

「・・・もし使えたとしたら、どうだっていうの?」

「・・・どうってわけじゃないんだけど・・・実はね、俺たちも使えるんだよ。力。」

「(・・・こいつ、なんなの?)・・・へえ、どういう力なの?」

「どういう力って言われると、難しいけど、天使の力が使える。」

「(天使って・・・自然神を作った奴かな・・・。)天使ねえ・・・。」

「因みにだけど、君の力が全知全能の神に由来していることを知っている。」

「‼、・・・何で、それを・・・⁉」

「新野曰く、天使に聞いたんだと。」

「・・・あんたたちの能力をもっと詳しく教えなさいよ。」

「俺は、印紋術って言って、印を出現させることで、天使の力を扱う能力者だ。まあ、その印は術者以外には見えねーんだけどな。」

「俺は、神の側近である六大側近天使を自分の体に憑依させて使役する能力者だ。君の探知法は天使から聞いたんだ。」

「最後に私だな。私は龍一と同じく印紋術を使う。」

「・・・あんたたちの能力の事は分かったけど、あたしに何で接触したの?」

「神に力を返す為だ。」

「・・・それって、全知全能の神様?」

「そう。その神様に力を返してほしいって、天使たちに言われてるんだ。」

「・・・とりあえず、話の内容は分かった。一旦家に持ち帰って考える。」

「そうしてくれると助かる。あと出来れば、自然神の一族たちには早苗の方から話してもらうことは出来るか?」

「・・・正直それは分からない。今は色々混乱してるから、厳しいと思う。」

「・・・分かった。とりあえず、今日はこのあたりで失礼するよ。」

「うん。分かった。」

「それにしても、早苗よ、話の呑み込みはえーな。」

「もちろん、最初は頭おかしいやつかと思ったけど、六大側近天使の話が出て来たからね・・・。」

「学校にある神話の本だな。読んだことがあるのか?」

「弟がね。図書室で見つけて、それで知ったの。」

「・・・その弟って、大人しめの奴か?」

「・・・あったことあるの?」

「いや、見かけただけだ。お前の言ってる本を広げてた中坊をな。」

「成程ね。」

こうして俺たちは、早苗に今日の話を持ち帰ってもらった。


~~~~~


私は昼休みに隣のクラスにいる龍一たちから聞いた話を、お母さんたちにすることにした。

「ただいまー・・・。」

「あら、おかえり。」

「・・・三葉たちは?」

「千は部屋でゲームしてるし、三葉は勉強してるわよ?」

「・・・そっか。」

「学校でなんかあった?」

「うん。実はね、あたしたちや風太たち以外にも居たんだよ・・・。」

「居たって・・・能力者のこと?」

「そう。それで、みんなに話しておきたいことがあってさ・・・。」

「・・・そしたら、これからご飯だから、その時にでも話したら?あたしもその話興味あるから。」

「・・・そうだよね。分かった!ご飯の時に詳しく話すよ。」

「お願いね。」


~~~~~


「千ー!三葉ー!ご飯出来たわよー‼」

「はーーい‼」

「分かったーー‼」

こうして、三葉と千が食卓に揃ったところで、私はいよいよ、天使の能力者についてや神様について詳しく話すことにした。

「じゃ、食べましょうか。」

「そうだね。」

「あ、そうだ。食べながらでいいんだけど・・・早苗から何か話があるみたいだから聞いてくれる?」

「・・・いいけど、何の話?」

「なんでも、あたしたち以外にも能力者がいたんですって。」

「‼」

「・・・もしかして、天使系の能力者?」

「うん。」

「・・・やっぱり居たんだ。」

「やっぱりって・・三葉あんた、知ってたの?」

「いや、知ってたわけじゃないよ。ただ、予想はしてたの。ほら、あたしたち少し前に起源探しをしてたでしょ?その時に、学校で“全知全能の神と六大側近天使”って本を見つけたの。その時に、あたしたちの使う探知法の神様の他に天使の存在があることを知ったの。前に、神社で水神が六人の天使に囲まれている光景を探知法で見たこともあるから、もしかしたら天使の力を使う能力者もいるかもって思って。」

「神様の力を使う俺たち。それに、姉ちゃんたちが探知法で見た水神や雷神の力を扱う人たち。この二種類がいれば、当然天使の力を扱う人たちもいるだろうと思ったんだ。」

「成程ねぇ・・・。そしたら全知全能の神様の“全能”の力を扱える人たちも、いてもおかしくはないわね。」

「・・・確かに。」

「で、その子たちはあんたになんて言ってたの?」

「あ、それは・・・能力を神様に返してほしいって。」

「・・・どういうこと?」

「詳しくは聞いてない。なんせ昼休みの合間だったから。」

「・・・そしたらさ、明日ちゃんと聞いたほうがよくない?今度はあたしたちも一緒に行くからさ。」

「・・・そうだね。お願い出来る?」

「勿論‼」

「そしたらこのことを天雨ちゃんに話すのは少し待ったほうがよさそうね。かえって混乱させてしまうから。」

「ごめんね、お母さん・・・。」

「いいのよ。いきなりこんなに能力者が出てきたら普通混乱するわ。それに、明日聞けば分かるんだから、焦ることはないわよ。」

「そう言ってもらえると助かるよ・・・。」

こうしてあたしたちは、明日、改めて天使のことを聞くことにした。


~~~~~


そして私は昼休みに、龍一たちに、昨日の話をゆっくりしたいことを伝えた。

「・・・そしたら、放課後妹弟連れて、正門で待ち合わせしようぜ。そのあと、ゆっくり話せる場所まで案内するぜ。」

「分かった。」


~~~~~


放課後になり、あたしたちは、正門で龍一たちを待った。

「まだかな・・・。」

「・・・来たわよ。」

「悪い。待たせたな。」

「いや、そんなに待ってないから大丈夫。それより・・・。」

「昨日の天使の話だろ?それはこれから生命ってやつの家に行って話をする。」

「何でそこなんですか?」

「ゆっくり話をするのに丁度いいのだ。」

「とりあえず、移動しよう。」

私たちは生命という人に家の広間へと移動した。


~~~~~


「生命ー‼部屋借りるぜー‼」

「分かったーー‼」

「で、まずあなたたちの天使の力だけど、三葉たちに説明してくれる?」

「分かった。新野。」

「はいはい。まず、俺の天使の力だけど、俺の力は天使を俺自身の体に憑依させて使うんだ。」

「・・・その天使って、六大側近天使ですか?」

「そうだよ。よく知ってるね。千君。」

「・・・学校の本で読んだことがあるので。」

「成程な。で、その天使の力を印紋術という憑依とは別の形で使うのが私と龍一だ。」

「・・・つまり龍一さんとニーレイさんは同じ力を使うってことですね?」

「・・・まあ同じというか、違うというか。」

「厳密にいうと少し違うのだ。まず、一口に印紋術と言っても幾つか種類がある。大きく分けて二つだ。まずは私の扱う西印。これは攻印と強硬印を扱う印紋術の系統だ。次に龍一の扱う守印と柔軟印からなる東印。同じ印紋術でも私は西の印紋術を扱い、龍一は東の印紋術を扱うのだ。」

「・・・整理すると、新野は天使を憑依させて力を使い、龍一は東の印紋術を使い、ニーレイは西の印紋術を使う能力者ってこと?」

「そういうこと。」

「で、そのあなたたちが神に力を返してくれっていうのは、具体的にはどういうことなんですか?」

「それは、新野から聞いたほうが分かり易い。」

「・・・新野。お願い。」

「分かった。まず、最初に俺は能力の源である天使からある話を聞かされたんだ。」

「ある話?」

「今の神様の話さ。神様は今、力を使えないんだ。理由は・・・俺たち能力者の存在。遥か昔、俺たちの先祖は神様から7日間という期間限定付きで力を借りたんだ。世界が人間の手で形作られる間だけ扱えるように力の主導権を譲渡した。しかし、そこからが悪夢の始まりだった。人間は7日という期限を過ぎても神に力を返そうとしなかった。その時天使たちは人間に罰を与えようとしたけど、神様は人間が自発的に力を返すまで待つように天使に命じたんだ。しかし、神の思惑とは裏腹に能力を使って人間は争いを繰り返し、その間にその力が神から借りたことすら忘れ去られてしまい、今に至るらしい。でも、今なら、かつてない程に能力者が集結しているし、戦争とかもしてないから、神に力を返すチャンスは今しかないってことで、俺は最初に力の源が同じ天使で、働きかけ易いという理由で龍一とニーレイさんに声をかけ、次に全知の力を使う君たちに声をかけたわけ。」

「・・・そうだったんだ。」

「お前が私たちに声をかけた理由が、そんな大ごとだったとは・・・。」

「そういえば、ニーレイさんたちにもちゃんと話したのは初めてでしたね。」

「まあ、あの時はグリードでそれどころじゃなかったしな・・・。」

「話は大凡分かりました。で、私たちはどうすればいいんですか?」

「・・・全知の一族で力がなくなってもいいか決めてきてほしい。」

「俺たち印紋術はなくす方向で異存ないから、あとは、全知の一族と自然神だ。」

「・・・分かりました。そのことを家族で話し合えばいいんですね?」

「そういうこと。三葉ちゃんはしっかりしてるね。」

「いえいえ。」

「あ、あと、自然神の一族にもこの話を通してもらいたい。多分複雑な話になるだろうから、詳しく話が必要ならば、その時は時間と場所もちゃんと設ける。」

「ありがとう、ニーレイ。多分自然神のほうはあたしと母さん両方から話が行くから心配ないと思う。」

「・・・親も知ってんのか?」

「親もっていうか・・・親が先に知り合いだったというか・・・。」

「成程、同級生だったのか。」

「そうそう。話が早いね、ニーレイ。」

「あの~~そろそろ、出てきてもいいかな?」

「あれ?あなたは・・・。」

「あ、やべ、すっかり忘れてた‼」

「ひっどいなぁ~~。一応年長者なんだから頼むよ~~。」

「で、この人誰なんですか?」

「この人はエルティピストアさん。全知全能の全能の力を扱う人だ。」

「え‼全能のほうもいたの⁉」

「・・・まあね。」

「やっぱり居たんだ・・・。」

「やっぱりとはどういうことだ?」

「いえ、実は私たち少し前に自分たちの能力を使って、起源を知ろうとしたんです。その時に、自然の神や天使の存在を知ってあなたたちのような能力者の存在もある程度予想はしてたんです。だから・・・。」

「成程。天使の能力者もいるなら、自分たちの神様の全能の部分を持つ能力者がいてもおかしくないと。」

「そういうことです。」

「そういえば、肝心なことを聞いてないんだけどいいかな?」

「・・・肝心なこと?何ですか?」

「君たちのその“全知”って具体的にはどういうことが出来るの?」

「私から説明します。まず私たちが使う力には探知法という名前があり、その探知法にはいくつかの種類があります。能力を発動するタイプみたいなものです。そしてこの探知法は“知ること”なら何でも出来るという特徴もあります。」

「・・・なんか壮大な力だな。」

「発動タイプで説明すると、私は触れるものなら何でも知ることが出来る。例えば、歴史書に触れば過去を知ることだって出来る。」

「・・・なんか、超能力のサイコメトリーみたいな力だな。」

「その例え、間違ってないよ。まさにそんな感じ。他にも、タイプがあるんだけど、それは、三葉たちから聞いて。」

「分かった。次、頼めるか?」

「はい。私の場合は少し特殊でして、お姉ちゃんのサイコメトリーのような接触知とうちの母が使う空間知というものが使えます。」

「その空間知とはどういったものなのかな?」

「一言で表すなら、超高性能なGPSです。誰がどこにいるのか、例えば、お姉ちゃんがどこにいても、その空間知を使えば必ず分かります。」

「それは凄いな・・・。じゃ、最後に千君お願い出来るかな?」

「はい。俺は、探知法の中でも感情知というものを使います。たとえるならテレパシーのようなものです。」

「ってことは、心が読めるということか?」

「いえ、感情の起伏や状態がかなり正確に分かるだけです。心って言える程はっきりしたものは、分かりません。」

「・・・そっか。」

「それよりさ・・・ピストアさんの力についても教えてよ。」

「あ、そうだったね。悪い悪い。君たちのことだけ聞いて、俺のことを話さないのは不公平だからね。そうだな・・・俺の能力はね、全てのものを無効化するんだ。」

「全てのものを無効化?」

「そう。例えば、俺が銃弾を受けたとしよう。本来銃弾を受ければけがをする。下手をすれば命を落とすこともある。しかし俺の場合はその銃弾を塵のように消してしまうんだ。」

「・・・マジですか?」

「・・・マジなんです。けど、どうやってやってるかは、自分でも分からないんだけどね笑。それにモノだけじゃなくて、能力も無効化出来るみたいなんだ。」

「・・・能力も?」

「そう。以前、龍一君たちが使う印紋術で悪さをしていたグリードというやつに絶印という、触れたら消え去ってしまう効果のある印紋術を使われたことがあるんだが、不思議なことに、消え去ったのは俺の周りの建物だけで、俺の影になっていた部分は残っていたんだ。」

「・・・成程。何者にも脅かすことの出来ないという意味での全能なんですね。」

「・・・かもしれないね。」

「とりあえず、俺たちの話はこれで終わりだ。何か質問とかある?」

「特にはない。とりま、今日の話を持ち帰ってみるよ。」

「・・・頼むよ。」

こうして私たちは、龍一たちの話を改めてお母さんに話す為、生命さんという人の家を後にした。


~~~~~


そして、うちに帰った私たちは天使の話をお母さんにした。

「・・・つまり、如月の能力をなくしてもいいかってこと?」

「そういうこと。」

「成程ねぇ・・・。」

「で、あたしたちはどうすればいいのかな?」

「とりあえず、この話をあんたから風太君に通しておいてくれる?雷姫さんたちにはあたしから天雨ちゃんを通して伝えておくから。あと、お父さんにも伝えておくから。」

「・・・そしたら、俺たちは風太さんたちに話すだけでいいの?」

「そういうこと。」

「・・・分かった。」

「・・・あんたたちは、どう思う?」

「・・・どう思うって?」

「能力がなくなることについてよ。何か思うところはあるんじゃなくて?」

「まあ、ないと言ったら嘘になるよ。いろいろ不思議な体験もしたし。」

「・・・俺は、なくなってもいいと思う時はあるよ。」

「え、何で?」

「俺たちの能力ってっさ、確かに、色んなことが知れるけど、それと引き換えに何か大切なものを失ってるんじゃないかって思う時があるんだよね。」

「・・・まあ、それはそうだね。あたしたちの能力って相手からの信用というか信頼を壊すというか・・・。」

「・・・どういうこと⁉」

「・・・例えばさ、お姉ちゃんが能力も何もない普通の人で、友達があたしたちのような知の力を持ってたら、どう思う?」

「どう思うって・・・ちょっと怖いかな。」

「だよね。何でも知ることが出来る人が近くにいるってだけで、プレッシャーだし色んなしがらみが出てくるんだよ。」

「まあそれは・・・私も思うよ。」

「じゃあ、あなたたちは能力がなくなってもいいのね?」

「・・・まあ、そうなるかな。そういうお母さんはどうなの?」

「まああたしも、昔だったら思うところもあったと思うけど、今はもうないかね。」

「・・・そっか。」

「じゃ、風太君への話頼むわね?」

「分かった。」

私たちは神様への力を返す為に動き出した。


~~~~~


「“もしもし。お父さん。あたしです。京子です。”」

「“おう京子か。どうしたのじゃ?”」

「“能力のことについて大切な話があるんです。”」


~~~~~


「“もしもし、天雨ちゃん。今少し時間ある?”」

「“あら~~京ちゃん。どうしたの?”」

「“能力について大切な話があるの。子供たちのほうにも早苗のほうから話がいくと思うんだけど、能力がなくなるかどうかの話よ。”」

「“能力がなくなるって・・・どういうことなの?京ちゃん。”」


~~~~~


「“・・・京子よ。能力の件じゃが・・・早苗たちの思うようにさせてやりなさい。これがわしの気持ちじゃ。”」

「“・・・ありがとう。お父さん。あたしもそのつもりです。”」

「“済まんの。色々と気苦労をかける。”」

「“いえいえ。”」


~~~~~


「“京ちゃ~ん。姉さんに話したら、直接話したいっていうから、電話したわ。今代わるわね?”」

「“はい~。”」

「“京子ちゃん、久しぶり~~‼早速なんだけど、能力が消えるっていうのはどういうこと?”」

「“その話なんですけど、電話口だと長くなりそうなんで、しっかりと話し合いの場を設けてもらうことは出来そうですか?”」

「“ん~~~そしたら、2.3日待ってもらえる?その間に各一族の長の日程を合わせるから。日程があったら、またこっちから連絡するわ。”」

「“ありがとう。雷姫さん。恩に着るわ。”」


~~~~~


あたしたちは、学校の放課後、風太に天使の話をした。

「・・・天使の能力者?」

「うん。となりのクラスの新野と龍一とニーレイっていうんだけど・・・。」

「あいつら・・・能力者だったのか⁉」

「らしい。それで、ここからが重要な話なんだけど・・・、そいつらが、あたしたちの能力がなくなってもいいか・・・っていってるんだけど。」

「能力がなくなるって・・・、使えなくなるってことか⁉」

「はい。そうです。」

「そんなの、無くなって良いわけないじゃん‼」

「ってか、お前らそいつらに脅されているのか?」

「いや、脅されてるわけじゃないよ。あと、あんたたちのお母さんにも、この話がいってると思う。」

「・・・そしたら、少し俺たちに時間をくれ。」

「分かった。」


~~~~~


「ただいま。」

「お帰り、風太。早速なんだけど、早苗ちゃんから能力の話聞いた?」

「聞いたよ。何か天使の能力者が、俺たちの力がなくなるかもしれないって言ってる話だろ?」

「まあ、大筋は間違ってないけど・・・正確には、私たちの力を神様に返さなきゃいけないって話よ。あたしたちや京子ちゃんたち以外にも能力者がいて、その全員が能力を返さなきゃいけないらしいわ。」

「・・・そうなんだ。」

「で、現状としては、天使の力を持つ子たちはもう返す方向で動いてて、あと、京子ちゃんと力の源が同じの子も同じく返す方向を向いてる。」

「・・・早苗たちは?」

「・・・京子ちゃんが言うには返してもいいって言ってるらしいわよ?で、今問題になってるのがあたしたちよ。私たちは自然の力で生活が成り立ってるといっても過言じゃないから、一族同士で話し合って、力をなくせるのかどうか考えてほしいんですって。」

「・・・当然無理だよな?」

「まあね。それで、一応一族の長同士で話し合いの場を設けようと思ってるの。なんせ、あたしたちだけの問題じゃないからね。慎重に結論を出さないと。それに、この話をよく知ってるのは、京子ちゃんとあたし。それに天雨くらいだから。ちゃんと周知しておかないと。」

「・・・そうだよな。」

「あと、天使の子たちは話がよく分からない場合は改めて、話し合う場を設けるって言ってるらしいから、もし分からないことがあるなら早苗ちゃんにでも言って、取り次いでもらいな。」

「分かった。」


~~~~~


翌日、俺たちは早苗に天使系の能力者に話を取り次いでもらうよう頼んだ。

「持ち帰って考えたんだけどさ・・・やっぱり、力を返せって言ってる本人から話を聞かないと分からないよ。」

「・・・だよね。じゃ、龍一に言って新野に取り次いでもらうね。」

「頼む。」


~~~~~


「・・・お前が、新野か?」

「うん。」

「とりあえず、落ち着いて話が出来るところまで移動しねーか?十中八九話は長くなるんだからよ。」

「確かに、それはそうだな。で、どこに移動するんだ?」

「生命って人の家だよ。そこには広い客間があるんだ。それにそこには、俺たち以外の能力者もいる。きっと有意義な話が出来ると思う。」

「そうなることを願うよ。」

ということで俺たちは生命という人の家に行くこととなった。


~~~~~


「で、まず何から聞きたいんだ?」

「何で、俺たちの力がなくならないといけないんだ?」

「それについては、新野から説明してくれ。」

「はいよ。その理由に答える為にはまず、ここまでに至った経緯を話さないとな。」

ということで、俺たちは新野から今に至るまでの経緯を聞いた。

「・・・成程。神様が力を再び行使出来るようにする為には、俺たち人間が神様に力を返さなくてはいけないと。」

「そう。」

「ってか、その神様ってのは具体的に誰なのよ?」

「本物の神様だ。その神のことは誰も知らないらしい。」

「神話に出てくるビランチやオルゴは神じゃないのか?」

「神じゃない。天使だ。六大側近天使の一人だ。」

「ビランチって六大側近天使の一人なんだ・・・。」

「そう。憑依できる天使の中にいるから間違いない。それに本人たちも神じゃないって直接否定してるし。」

「・・・じゃあ、俺たちの力の源である自然神も天使だったりするのか・・・?」

「いや、そっちは本当に神だ。でも階級があるらしい。」

「・・・あたし、その階級詳しく聞きたいです‼」

「私も聞きたい‼私たち、自分たちの起源を知るために今まで能力使ってきたし。」

「・・・分かった。とりあえず、序列から話すぞ?まず最初が、君たち如月一族やピストアさんが力の源としている全知全能の神。天使はこの神を絶対にして唯一の神と崇めている。」

「そりゃ、天使を従えてるし・・・。」

「次が、君たちが扱う自然神なんだけど、ここでも力関係があるんだ。」

「つまり、自然神は全員が全員、対等の立場にはないってことか?」

「そういうこと。真の神が、仮に第一階級とすると、次に偉い自然神が第二階級になるらしい。で、その自然神が、水神、火神、土神。」

「・・・その三神が神の次に偉いのか?」

「そう。で、次が第三階級になるわけだけど、その第三階級の自然神が風神と雷神だ。」

「えー・・・なんかテンション下がるなぁ。」

「お疲れ笑、風太。」

「う、うるせー‼」

「でも、天使が言うには、階級が下になるほど下界に貢献してるから、神としては名誉なことだって言ってたよ?」

「・・・それって、ちゃんと神の役割を果たしてるから・・・って意味で?」

「そうだと思う・・・。」

「おい、新野。私たちの力の源である天使はどこに属するのだ⁉」

「・・・もしかして、第四階級とかいうわけじゃねーだろうな?」

「いや、違うよ。天使は、神の側近ってことで、第一階級側近に属する。」

「・・・それって、どういう区分けなの?」

「力は一番低いけど、権限は真の神と同じだって。ほら、真の神は下界に姿を見せないだろ?天使は真の神様の代わりに、神の仕事を分担してるらしいよ。」

「・・・そうなのか。」

「・・・ちょっと聞きたいんですけど、その六大側近天使ってそれぞれ何て名前なんですか?」

「軍神オルゴ、最高神ビランチ、破壊の女神グラント、言葉の女神フェア、最強神フォール、邪視の始祖イプノだよ。」

「・・・錚々たる顔ぶれですね。」

「・・・知ってるの?」

「いや、三葉は歴女でね、他にも自然神の名前も知ってるから・・・気にしないで汗。」

「あ、ああ・・・。」

「それより、一通り話したところで、新野。自然神の答えを・・・。」

「そうだな。で、どう?」

「その答えは・・・無理だ。」


~~~~~


「じゃ、始めましょうか。天雨。」

「はい。ではこれから、建侯家、檜河家、毘之家、城堂家、須羽家による合同会議を行います。進行は、あたし天雨と、姉である雷姫が務めさせて頂きます。」

「そして、今回の話し合いを円滑に進める為、事情を知っている京子ちゃんに来てもらっています。」

「皆様、この度の話し合いに参加させて頂く、如月京子といいます。」

「京一と天雨は知ってるわよね?彼女は私たちの昔馴染みで、探知法という力を使う能力者でもあります。今回この場を設けたのは彼女が娘の早苗ちゃんから持ち掛けられたある話から始まります。」

「・・・で、その話とは?」

「はい。私は数日前に、娘たちより、あたしたち以外の・・・つまり、私や雷姫さんとは違うタイプの能力者がいることを聞かされました。」

「その能力ってのは・・・具体的になんなんだ?」

「天使です。早苗によると、天使を己の体に入れることで力を使う人間と特殊な印を出現させることによって、力を使う人間がいるようです。」

「それって、イタコ・・・だよな?」

「まあ、そうですね。」

「それに、印って聞くと、俺は陰陽師のようなものを思い浮かべるな・・・。」

「・・・圧二。話進めていい?」

「あ、悪い悪い汗。続けてくれ。」

「更に、全知全能の神の全能の力を扱う人間もいるようです。」

「その天使の子たちと全能の子には風太たちが今会いに行ってるわ。」

「・・・で、ここからが本題なんですが、私たちの能力が使えなくなるという問題について考えていきたいのですが。」

「そのことで、一つ質問なんだが、何故、そういった話になったのか、そちらにいる京子さんから話を聞きたい。」

「そうね。京子ちゃん、お願い出来る?」

「分かりました。娘から聞いた範囲でしか話せないので、どれだけ正確に話せるか分かりませんが、聞いたところによると、私たちの力は遥か昔、神様から借り受けた力だそうです。」

「それは・・・全知全能の神からってことですか?」

「はい。その神様から、7日間という期間限定で借り受けたそうです。人間が人間自身の手で自分たちの世界を作れるように。その7日という期限が過ぎれば、人間は最初に借り受けた場所である祠に能力者全員が集まり、手を合わせなければなならないと。そういった約束を交わしたそうです。」

「しかし、返されることはなかったと・・・。」

「はい。そして、天使は人間たちに罰を与えようと考えたのですが、神様は人間が自発的に力を返すまで待つように天使たちに命じたそうです。しかし神様の思いとは裏腹に人間たちはその力を使って、争いを繰り返し、無駄に時が流れていく。次第に、何故能力が使えるのか、どこから能力が来ているのか。知る者はいなくなり、現在に至るとのことです。」

「成程ねぇ。神様たちの背景は分かったけど、何で能力を返さなきゃいけないのが今なの?」

「それは、今が神様に力を返せる最後のチャンスらしいわよ。」

「最後のチャンス?」

「はい。今がこれまでの歴史の中で一番、能力者が一か所に集中しているみたいなんです。」

「自然の力を扱うあたしたち。全知の力を扱う京子ちゃん。天使の力を扱う子たち。全能の力を扱う子。確かに、一か所に集中してるけど・・・。」

「で、前置きが長くなったけど、力をなくせるか。力をなくして生活していけるかだけど・・・。」

「俺のところは・・・無理だ。この日本の天気予測と電力はうちと姉さんの家で持ってるといっても過言じゃない。」

「・・・正直俺のところも厳しい。うちの場合はダムが決壊したときに止める手立てがなくなる。力がなくなれば、多くの人の命が守れなくなる。」

「それを言ったらあたしのところこそ、力がなくなった時の被害は甚大よ。なんせ、噴火を放っておくしかなくなるんだから。それに京一君のところや雷姫ちゃんのところと連携して事に当たっているから完璧に抑え込めているようなものだし・・・。」

「俺のところも華季や雪正と同じだ。地震を抑えられなくなれば、人々の生活に甚大な被害が出かねない。」

「・・・分かってはいましたけど、やっぱりどの一族も力がなくなるのは厳しいですよね・・・。」

「そうねぇ・・・うちも、力がなくなれば、多くの人たちが生活に困るからねえ・・・。」

「・・・どうします?」

「とりあえず、今日はここでお開きにしましょう。一応風太には、能力をなくすのは無理そうって伝えてあるから、そのことは天使の子たちにも伝わってるでしょうし、それに今現状を聞いたばかりで答えがすぐに出るわけでもないから、少し時を待ちましょう。」

「・・・そうだな。無水たちのほうだと、俺たちより話が進んでることもあるかもしれない。」

「ということで、今日はこれにて終了いたします。皆さん、ご参加ありがとうございました。」


~~~~~


「その答えは・・・無理だ。」

「・・・無理だと?」

「ああ。」

「何故だ‼これだけの者たちがOKしているのに貴様らだけ無理とは・・・。」

「まあ、落ち着けよニーレイ。でも・・・何で無理なんだ?」

「俺の家や無水の家はこの能力で生活が成り立っているといっても過言じゃない。漿郗の家だってそうだ。」

「それに、俺たちの力の恩恵はこの国にいる殆どの人が受けている。」

「・・・どういうこと⁉」

「例えば、普段私たちが使う電気あるでしょ?あれは、風太のお母さんの一族である建侯家が大半を賄っているのよ?」

「建侯って、もしかしてあの建侯電力の?」

「そう。それに、あたしの母さんだって、全国の火山活動を把握して噴火を最小限に抑えてるし、全国のダムは無水のお父さんが管理してるんだから。」

「・・・確かに、それだと、普通に無理だな・・・。」

「だろ?」

「・・・新野。どうするよ?」

「・・・とりあえずこの件は暫く待ってくれ。天使に相談してみる。」

「・・・じゃ、暫く保留でいいんだな?」

「ああ。心配しなくていい。無断で、ある日突然力が使えなくなる・・・なんてことはないから。」

「それは知ってる。祠に手を合わせないとダメなんだろ?早苗から聞いたよ。」

「そっか。まあ、今日はこれでお開きだ。」

「了解。」


~~~~~


「ただいま。」

「お帰り。で、どうだった?」

「一応、状況はよく分かったよ。」

「それなら良かった。それで、天使の子何だって?」

「天使にお伺いを立てるらしいから、暫く保留ってことで、待ってくれだとさ。」

「ってことは、暫くは進展なしってことね?」

「そうなるね。母さんの方はどうだったの?」

「一応、今回の件はみんなに伝えたけど・・・当然どこの家も無理よね。」

「だよな・・・。」

「あとは、その天使の子が新たな解決策を出してくれることを祈るのみだな。」

「・・・そうなるわね。」


~~~~~


風太たちの返納が改めて無理だと分かり困った俺は天使にどうすればいいのか相談することにした。

「新野よ~。天使に働きかけるって言ってたけどどうすんだよ?」

「どうするって言っても・・・俺も正直困ってる。だから、天使に相談してみるよ。」

「・・・そんなすぐに、天使と交信出来るものなのか?」

「出来ると思います。天使たちは自然神の結論次第で今後の動きを決めるような口ぶりだったので。現にさっき風太たちと話してた時グラントが近くにいましたし。なので、これからしばらく天使と話をするので、俺が目を瞑っている間は話しかけないでもらっていいですか?」

「・・・分かった。」

「ありがとうございます。(グラント・・・近くにいる?)」

「(グラントは今神様に報告に行ってる。僕が聞こう。)」

「(イプノか・・・‼早速なんだが、自然神がやっぱり無理らしい。)」

「(そのようだね。見てたよ。)」

「(そしたら、俺たちはどうしたらいい?)」

「(君たちは少し待っていてくれ。これから、力の返納について考えるから。状況が変わればこちらから逐一、念波を送って連絡する。)」

「(分かった。)・・・暫く待ってくれだとさ。」

「・・・そっか。了解。」


~~~~~


「新野に待つよう伝えたよ。」

「ありがとうイプノ。あとは・・・。」

「グラントの報告待ちですね。」

「・・・どう来ると思う?」

「神様ですか?」

「そうだ。ビランチならある程度予想出来るんじゃないのか?」

「そうねぇ・・・あの方のことだから、自然の力を扱うのは自然神だから、自然神に判断を一任する・・・っていうかもね笑。」

「成程な笑。あの方の全知と全能の力は如月とピストアが了承したことで、帰ってくることがほぼ確定したようなもんだ。」

「しかも、如月もピストアも人格的に問題のある人はいねえからな。」

「確かに。まあ、ビランチの予想通りだとすれば、グラントの帰った後、自然神に下界の件を伝えないといけなくなるので、私とビランチは少し席を外すことになります。」

「頼むぞフェア。お前の言葉の力が今回の命運を分ける。」

「はい。」

「それと、フォール。あなたに一つ使いがあるんだけどいい?」

「なんだ?」

「新野のことについてよ。」

「ああ。あいつの力についてか。」

「そう。あの子の力は当然なくなるんだけど、おそらく声は依然として聞こえると思うわ。」

「まあ、血だからな。」

「・・・そう。あの子はあたしたち天使や神様と友となった人間の子孫。神様が唯一、この天界の声を聞くことを許した人間。でも、あたしたちと仲良くなるってことは下界で孤立することを意味してるわ。」

「・・・この力返しを機に、神の友をただの人間に解放してやるってのか?」

「そう。私たちの使命を忘れたの?フォール。」

「“神に背こうとも、神の使命を全うするべし。”」

「あたしたちと話せるばっかりに、新野に心許せる者が出来た時に邪魔になるのであれば、もはや、私たちはあの子から離れるべきなのよ。これだけ、あたしたちのために奔走してくれる子だもの。きっとこれからもずっと友達のように接してくれるでしょう。崇めたり・・・頼ったりすることもなくね。でも、あの子はあたしたちの知る友ではないのよ。彼とあの子を重ねてはだめ。」

「・・・確かにな。神も俺たちも新野とあいつを心のどこかで重ねていたかもしれん。でなければ、あの気まぐれな神がここまで本腰を入れて力を返すように命じなかったかもしれん。」

「・・・勿論、覚悟のいる任になるわ。」

「・・・確かに、神が怒れば、無事に消されずに帰ってくる保証があるのは俺だけだな。」

「・・・そう。あたしたちはそれぞれ、あの方より生み出された。あの方の強さを持つあなた。権限を持つあたし。同じ言葉を使うフェア。同じ戦い方をするオルゴ。同じ瞳をしたイプノ。同じ考え方を持つグラント。この中で帰ってこれるのはあなただけ。おそらく複数で行けば、あたしたち天使に否定されたとあの方は感じてしまうはず。だから・・・。」

「分かってる。必ず、説得して帰ってきてやるさ。」

「・・・お願いね。」

「ごめん、戻ったわ‼」

「で、神様はなんて?」

「・・・ビランチの予想通り。自然神の判断を最大限に尊重する・・・と。」

「了解。じゃ、行きましょうか。フェア。」

「はい。では行ってきます。」


~~~~~


「五行の自然神の皆様。神の使いできました。ビランチです。」

「同じくフェアです。」

「ふむ。要件は分かっている。下界の人間に力を返してもらうかどうか・・・だろ?」

「はい。その通りです。」

「で、あの方はなんと?」

「あなた方の決定を最大限に尊重すると。つまり、この件はあなた方に一任するとおっしゃっています。」

「・・・あの方らしいな。分かった。この件、我らがしばらく預かる。結果が決まり次第、意識を飛ばし、対応させてもらう。」

「ありがとうございます。」


~~~~~


「アプリオリ様。グラントと入れ代わり立ち代わり失礼致します。今日は大切なご相談があり、参上させて頂きました。」

「おお・・フォールよ。久方ぶりじゃな。・・・どうやらその様子、よほどの用じゃの。言うてみい。」

「・・・はい。今回こうして参上させて頂いたのは、ヨハトから続く血の結びを解いてはもらえないかと・・・。」

「・・・何故じゃ。」

「・・・確かに、アプリオリ様とヨハトは特別な関係であることは存じております。それにわたくしたちにとってもそうです。ですが、わたくしたちの存在が新野という人間の妨げになるならば、それはあなた様にとっても我々にとっても不本意のはず。」

「しかし、まだ、妨げになると決まったわけではないじゃろう。」

「・・・わたくし、ずっと不思議に思っていたことがあります。」

「な、何じゃ?」

「いくら、ヨハトの子孫とはいえ、何故急に私たちの声が聞こえ、力が使え、それに使役まで出来るのかを・・・。」

「・・・・・・。」

「血は確実に薄まり、力は薄まるはずなのに何故、ヨハトよりも力を使えるのかを。」

「・・・・・・。」

「それは、あなた様が手心を加えていたからに他なりません‼」

「うっ・・・・。そ、それは・・・。」

「確かに、あの少年はヨハトに似ていますが、彼はあなたの知っているヨハトではありません‼」

「そ、それは分かっておる‼分かっておるつもりじゃが・・・。隠せないものじゃの。我が子たちには。」

「・・・あなた様の考えを予測していたのはビランチです。」

「嬉しいような悲しいような・・・複雑じゃ。」

「では、ご決断を・・・。」


~~~~~


「ビランチとフェアの話によると、アプリオリ様の下界の者はもう片が付いておるらしい。」

「あとは我らだけだ。・・・して、どうする?力を戻すかだが・・・。」

「・・・下界の者の様子を見る限り、なくすことを拒否しているのは強ち、無下には扱えん。」

「だな。現に彼らは彼ら自身の手で能力を正しく使い、運用している。」

「神の啓示である“人間たちの世界を人間自身の手で・・・。”という言葉を体現しているようにも思える。」

「だとしたら、能力を戻すこと自体がかえって神の啓示に背くことになるんじゃないか?」

「・・・そうかもしれないな。」

「でも、俺たちの力はどうなる?幾ら人間が人間自身で生活を成り立たせているとしても、俺たちの力でサポートしなければならない部分も出てくる。現に今までそれが出来なかったから、下界では温暖化やオゾン層だってここまで悪化したんだ。」

「・・・そしたら、彼らには地球にあるエネルギーで力のエネルギーを賄うようにしてもらったらどうだ?」

「・・・というと?」

「今回の力返し。これは、予定通り実行してもらう。しかし、力返しの完了と同時に彼らの力の源を我らから地球に移すのだ。地球には彼らが本気で能力を1万年間使い続けなければなくならないほど、エネルギーが蓄えられている。それに我々も、時々地球にはエネルギーを送っている。下界の者らには力の使い方さえ残し、わしらの主導権を返してもらえれば、何ら問題はないだろう。・・・どうだ?」

「確かに・・・それは名案だ‼我らは力の主導権が戻り、以前のように行使出来る。下界の者らは力の出所が変わるだけで、彼らの生活は何ら変えなくてもいい。」

「それに、そのエネルギーを引っ張ってくる地球には定期的に我らがエネルギーを送るのだからな。」

「よし、そうと決まれば、ビランチたちに使いの者を出せ‼」


~~~~~


「フォール遅いね。」

「あの方の説得に手間取ってんでしょ。」

「まあ、それはそうだな。この分だと、自然神の方が先に片付きそうだな。」

「・・・答えが出たのかな?彼ら。」

「じゃなきゃ、呼ばないでしょ~~?」

「・・・遅くなった。」

「フォール‼」

「どうだった?アプリオリ様は・・・なんと?」

「血の結びの解除を約束して下さった。これで、あとは自然神待ちだ。」

「・・・戻りました。」

「ビランチにフェア‼」

「丁度さっき、フォールも戻ってきたところだ。」

「ああ・・・フォール。よくぞ無事で・・・‼」

「何とかな・・・‼それより、自然神の件は?」

「こちらもOKです。あとは・・・グラント‼」

「はいはい。伝えてくればいいのね?」

「・・・頼むわ。」


~~~~~


保留状態から1か月程経ったある日。

「・・・来た‼」

「・・・遂に来たか‼」

「ああ。もう一度みんなを集めるぞ‼」


~~~~~


俺は天使の判断を伝える為、再びみんなに集まってもらった。

「遂に来たんだって?天使からの結論が。」

「ああ。」

「で、どうなったんだ?結果は?」

「結論から言うと、力は残るらしい。」

「そうか・・・‼」

「けど、みんなと一緒に祠には来てもらわないとならない。」

「え?何で?」

「何でも、自然神以外の人たちが力を返すのと同時に力の主導権を戻しつつ、出所を地球に移すらしい。」

「つまり、自然神から直接エネルギーをもらっているのを、これからは地球からもらえと?」

「そうらしい。」

「でもさ、地球からって言ったって、何時かはエネルギーなくなっちゃったりしないの?」

「それも心配ないらしい。今地球には自然神の末裔の君たち全員が1万年間フルで力を使い続けないとエネルギーがなくならないくらいあるらしいし、それに、そのエネルギーを定期的に地球のほうに自然神自身が送るらしいから。」

「・・・そうか。そしたらあとは・・・。」

「そう。力を返すだけだ。」

「俺たちは、なくならないが、新野達や、早苗たちは・・・。」

「まあ、思うところがないって言ったら嘘になるけど・・・でも、この世に神様がいて、色々動いてくれてるって知れただけでも、意味はあったよ‼」

「確かにな。それに、ここまでの人が集まることは能力がなければ、恐らくなかっただろう。」

「そりゃ言えてるな。みんな別々に生きてたかもしれねえ。」

「俺も天使がいなかったら龍一やニーレイさんと話すことも出来なかったと思う。」

「特に、ニーレイは怖いからね笑。」

「何⁉どこがだ?」

「ま、俺もこれで、ようやく自分のところに帰れるよ。」

「あ・・・ピストアさんは日本人じゃないんでしたっけ?」

「半日本人だよ。俗に言うハーフさ。」

「何処と何処のハーフなんですか?」

「イタリアと日本。」

「そうなんですか~~‼」

「じゃ、俺は母さんにこのことを伝えないといけないから帰るわ。」

「俺も父さんと母さんに話さないと。」

「あたしも母さんに話さないといけないから、帰るね~~。」

「了解。じゃ、あたしたちも帰ろうよお姉ちゃん。」

「そうだね。丁度いいかも。帰ろっか。三葉。千。」

「うん。」

「じゃ、俺たちも帰るか。ニーレイ。」

「そうだな。じゃ、新野。また明日な。」

「・・・はい。ニーレイさん。」

こうして俺たちは、それぞれの家に帰宅した。


~~~~~


「・・・ってことは、今まで通りでいいのね?」

「うん。何とか話はついたよ。」

「一時はどうなることかと思ったが、上手くまとまったんだな。」

「・・・うん。」

「でも、なんか新鮮な気分だな。」

「あたしたちの行いを神様が見てて、判断してることがでしょ?」

「ああ。俺たちの仕事も捨てたもんじゃないと思えてくる。」

「何?砂一郎。今まで捨てたもんだと思ってたの~?」

「い、いや。そうは思ってないが、なんか初心に戻った気になってな笑。」

「成程ねぇ。」


~~~~~


俺たちは力の返納を行う為、荒和幸奇高校の校庭にある祠の前に来ていた。

「よ~~し‼みんな揃ってんな‼」

「そしたら、いよいよ・・・。力を返す時が来たな・・・。」

「あ、その前に‼」

「何だよ新野。最後の最後に今更力を返したくねーなんて言うんじゃねーだろうな?」

「いや、ビランチが“みんなで手を合わせてみて”って言ってるんだけど・・・。」

「どういうこと?」

「“手を合わせると良いことがあるよ♪”ってイプノが言ってる。」

「良いこと?」

「“最後にプレゼント‼”ってグラントが・・・。」

「・・・じゃあ、最後に手を合わせてみようぜ?」

「そうですね‼どんなことが起こるか楽しみです‼」

「最後に何か貰えたりすんじゃない?」

「・・・神器みたいなものとかですか?」

「・・・どうなんだろうね。」

俺たちは祠に手を触れる前に、天使の能力者たち、神の能力者たち、自然神の能力者たちで手を合わせたところ、驚くべきものが頭の中に流れた・・・‼

「これは・・・‼」

「何だこりゃ・・・⁉」

「もしかして・・・神の記憶?」

「・・・間違いないだろうな。天使の誕生。自然神の誕生。そして・・・天地開闢であろう情景。」

「最後のプレゼントとは神の記憶の断片であったか・・・。」

「あたしたち全員の起源が・・・。」

「如月一族って、かなり多いんだな・・・。」

「それを言ったら天使の憑依者も六人もいるぞ‼」

「・・・俺たちの先祖か・・・‼」

「最後にこんなものをくれるなんて・・・神様も粋なことしてくれるぜ・・・‼」

「だな・・・‼」

「・・・そしたら、そろそろお別れしますか。俺たちの能力と。」

「そうだな・・・。」

俺たちは今度こそ、荒和幸奇高校の校庭にある祠に手を触れて、力を神へと返した。


~~~~~


「じゃ、行ってきまーす。」

「貴智‼今日も遅くなるの?」

「うん。今日は龍一やニーレイさんの他に早苗たちや風太たちと卒業旅行の計画を立てるから。」

「そう・・・。」

「でも、遅くなっても帰るのは早いと思うよ。」

「何で?」

「それは・・・頼れる仲間がいるから‼」

「そう。それなら良かったわ。」

「じゃ、行ってくるよ‼」

「行ってらっしゃい。」

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