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天使たちとの能力戦線(八章、モルテの推理術)



モルテ「久しぶりですね。ミィディア。」

ミィディア「モルテ。久しぶり。」

モルテ「最近調子はどうですか?」

ミィディア「最近ね・・・まぁ可もなく不可もなくかな。」

モルテ「それはミィディアにとって良いことですか?」

ミィディア「俺にとってはな。」

モルテ「それは良かった。」

ミィディア「ま、世間的に見たら底辺なんだろうけどな。」

モルテ「ですが生きていく上では世間的に見てどうかよりも自分自身がどう感じるかの方が重要ですよ。」

ミィディア「頭では分かってるんだけどさぁ・・・。」

モルテ「体の方が反応してしまうのですね。」

ミィディア「そうだよ。比べた方が良いんじゃないか?って。」

モルテ「でしたらミィディアには体でも実感出来るように私の推理術をお教えいたしましょう。」

ミィディア「推理術?」

モルテ「一言で表現すれば物事に対する予測の仕方です。これを習得すれば今ミィディアが悩んでいる自身の人生に対しての今後やあらゆる事象に対しての予測がある程度可能となり無駄に悩んで他人を羨むことも幾分か減らすことが出来ます。」

ミィディア「・・・自分の人生の今後を予想出来るの?」

モルテ「完璧にではありませんがね。」

ミィディア「でもある程度予想出来れば今自分が何をすべきかも分かるよね?」

モルテ「ええ。」

ミィディア「じゃ教えてくれ!」

 モルテ「分かりました。では早速ミィディアの人生を題材にして推理術をお教えしていきましょう。まずミィディアの現在の状況を整理してみましょうか。」

ミィディア「ああ。」

モルテ「年齢は21歳。性別は男。専門学校に在籍中。貯蓄100万前後。奨学金により200万前後の借金あり。本人のデータはこんなところですかね。」

ミィディア「意外と少ないな。」

モルテ「まぁ個人データはそうですね。ですがこの個人に付随するデータは多いですよ。まず母親。年齢40代後半。現在こそ落ち着いているもののミィディアの幼少期には恫喝や足蹴りなどの虐待を行う。このことによりミィディアは毎日涙が止まらなくなる。ふとした時に涙が出るなどの精神異常をきたす。そして、過呼吸を発症するほどの精神的ストレスを与えられる。」

ミィディア「あの時は本当に死ぬかと思った・・・。」

モルテ「自殺を思い留まった直後でしたね。」

ミィディア「肺が何かで固定されたみたいになって息を吸うこともはくことも出来なくなったから無理やり吸ってはいてを繰り返して呼吸出来る状態に戻したんだよ。」

モルテ「普通はそれで戻りませんからね?」

ミィディア「らしいな。」

モルテ「運が良かったんですよ?」

ミィディア「分かってる。」

モルテ「じゃ次。父親。同じく40代後半。現在は魂の半壊により憔悴しまともに働ける状態ではない。しかし半壊する以前から子供の金を使い転職を繰り返し家庭の金銭状況を顧みることなく日々圧迫させていたことから稼ぐ能力自体は元々持ち合わせていなかった模様。母親がミィディアに当たり散らす程のストレスを与えていた原因でもある。」

ミィディア「まぁ子供の学費や生活でお金がいるっていう時に自分勝手に転職に金を使って返さない。しかも使ってるのは自分の貯金などではなく他人の財産ならそりゃストレスも溜まるわ。」

モルテ「しかも自身の親が子供の為にと与えてくれたお金なら尚更です。母親としてはとても辛い思いがあったでしょう。最後に妹さんですがここがミィディアが諦めずに今の時間軸まで生きた理由になります。現在は中学生ですが当時は幼児という確実に守られるべき存在が脅かされているという事実がミィディアの心を大きく突き動かします。」

ミィディア「けど今はもう中学生だから経済面以外ではそんなに守る必要もなくなって来た。」

モルテ「モチベーションの枯渇ですね。さてここからが未来予測です。この状況でミィディアが今すべきこととは何でしょう?」

ミィディア「・・・分からん。」

モルテ「一つ。経済的自立です。」

ミィディア「それは分かる。」

モルテ「理由は分かります?」

ミィディア「何れ家を出て一人で生きていく為・・・だろ?」

モルテ「それも理由の一つになりますが他にも色々と考えることが出来ます。」

ミィディア「例えば?」

モルテ「例えばミィディアに毒父の毒牙から毒母と妹さんを守りたいという願いがあった場合。この状況でも経済的自立は第一に置かれます。」

ミィディア「何で?」

 モルテ「毒母が働けなくなったらどうします?毒母は毒父と年齢は変わらないのですよ?毒母は毒父が壊れた影響で仕事も家事もほぼ一人で行っています。毒母が働けなくなった場合を考えて経済的に支えられる基盤を作るのが急務ということで一つ。更に予防的な側面としてもう大人なんだから自分の使うお金位は自分で稼いで回す必要がある。それに自分で回せれば結果的に母親はその分妹さんにお金を回すことが出来ます。あなた自身が楽になる。母親を助けたい時に助けられる。母親自身に楽をさせてあげられる。今少し考えるだけでもこの三つの理由が出てきます。そして今現在無理をしている母親さんですがいつその無理がたたるか分からない。であれば今のうちにその無理を取り除くという側面から母親の仕事の中から少しでも手伝えるものを手伝い延命するという措置が取れます。」

ミィディア「母親が動けなくなるのを少しでも防ぐ為だな。」

モルテ「ええ。そして延命措置を行いながらあなたは下手に一人暮らしなどせずに実家でせっせと貯金をしておきましょう。そうすることで母親が動けなくなった後でも助けることが出来るでしょう。」

ミィディア「でもそうすると今度は俺の生活費が心配なんだよな・・・。」

モルテ「そこは色々と覚悟するしかないですね。最悪妹さんに助けてもらうというのも手です。」

ミィディア「助けてくれるかなぁ・・・。」

モルテ「凄く嫌な言い方になってしまいますが人生に対して投資をしているので少しくらいは候補に入れてもいいとは思います。期待し過ぎはいけませんが。」

ミィディア「・・・まぁなるべく考えない方向に考えておく。」

モルテ「それがいいですね。あと物理的には今の対策が現在での最善ですが今後君が就職して給料が上がったりすれば一気に道が開けることもあるのでそのあたりは逐一考え直すことを強く勧めます。」

ミィディア「・・・成程。今出来ることを・・・か。」

モルテ「そういうことです。次は精神面ですね。ミィディアは元々の生育環境の特殊さから周囲と意見が合わないことがありますがここは気にしなくていいです。」

ミィディア「え、いいの?」

モルテ「ええ。気にしたところで分かり合えるものではありませんから。ですが気にしなくてはいいのですが気に留めることくらいにはしておいて下さい。」

ミィディア「どういうこと?」

モルテ「変に気にして悩むことはないのですが周囲がどういうことを考えているのかくらいは頭に入れある程度合わせるという行為は蔑ろにしないようにして下さい。ということです。」

ミィディア「成程ね。」

モルテ「分かり合えずと人間は集団で生きています。なのでミィディアが特殊で希少な人間だからといって周囲の人間が合わせるべきだ!みたいな態度はとらないように。」

ミィディア「特殊だからってそういった態度をとっていいわけじゃないからな。」

モルテ「そうです。しかも元々の動物的視点から見ると特殊・・・所謂少数派は黙殺が定石です。」

ミィディア「まぁ種の存続を考えればそうだな。」

モルテ「ええ。あとミィディアが本当の意味で知恵を極めれば揺らがずとも楽しく生きれるので周囲の人間を心の中で蔑んだりしてもいいですが意図的に脅かすことがないよう常々気を付けてください。」

ミィディア「分かった。」

モルテ「次はミィディアが学校内で実際に置かれた状況をもとに推理術を行使していきましょう。」

ミィディア「俺が学校内で置かれた状況?」

モルテ「ある特定の異性に好意を持たれるという状況です。」

ミィディア「そんな状況になったことなんてないよ笑。」

モルテ「まぁ当事者程気づきにくいですよね。」

ミィディア「あったら確実に気づいてるって笑。」

モルテ「・・・ミィディア。認めてください。私が見ている限り高校と専門学校内で一度ずつ。ある特定の女性があなたに好意を向けていた時期がありました。」

ミィディア「・・・嘘だろ?」

モルテ「本当です。心当たり位はあるはずです。」

ミィディア「・・・高校はないけど専門学校では一人不審なことを言う奴がいたな。」

モルテ「どんなことですか?」

ミィディア「なんかめんどくさそうな女の人がいてとある事情で一緒に帰らなきゃいけなくなった時に大ぼら吹いて“俺はどんな人でも見れば性格がある程度分かる。”っていったら“じゃあ私はミィディアにとってどう見える?”ってめんどくさいこと聞いてきたから“可もなく不可もなく。”って答えたら直後にもう一度同じこと聞いてきた奴。」

モルテ「その人ですよ・・・君に好意を寄せていたという人間の一人は・・・。」

ミィディア「・・・全然好意とか分かんないんだけど?」

モルテ「・・・では何故何時も的確に相手の裏をかくような行動がとれるのですか・・・?」

ミィディア「自分でも分かんねぇよ。ただなんとなく分かるんだよ。あ、次はこうした卑劣なことしそうだな。とか悪意?みたいなものが。」

モルテ「〝・・・成程。今までの生育環境で身に着けた察知能力と思考の歪みが恋愛ごとにおいては悉くマイナスに作用しているのか・・・〟あれは流石にデリカシーが無さ過ぎるというか配慮に欠けていると思いました。」

ミィディア「だってああ言わないと何時までもうるさかったんだもん。」

モルテ「無慈悲なくらい合理的な対処でしたけど。」

ミィディア「・・・駄目だったのか?」

モルテ「まぁミィディアがその女性と付き合う気がないのであれば実に誠実な態度にうつるでしょうけど・・・本来はもっと躊躇するはずです。」

ミィディア「何に?」

モルテ「相手に嫌われるよう仕向けるということにです。本来異性に好かれるというのは普通の男性であれば例え特段好きでなくとも嫌いでなければ嬉しいはずです。」

ミィディア「そうなの?」

モルテ「・・・そのはずですよ?しかしミィディアの場合は高校、専門学校と態度が不自然なくらい一貫しています。まず高校の頃ですがいつもバス停で待っていたツインテールの女の子。君、気づいていて毎回無視していたでしょう?」

ミィディア「べ、別に無視してたわけじゃないよ汗。」

モルテ「では何故話しかけなかったのですか?」

ミィディア「いや車道二車線とガードレール挟んでるんだぞ?ふつう話しかけないだろ⁉」

モルテ「ですが毎回帰りに同じバス停で待っていたんですよ?おかしいと思わないんですか?」

ミィディア「思わないだろ。あ、定番の帰路なんだな。としか思わないわ汗。」

モルテ「彼女はそこまでして君から話しかけられるのを待っていたんですよ?しかも友達も言っていたではありませんか。“あれお前を待ってるんじゃね?”と。」

ミィディア「まぁ言ってたけどこっちに用はないし・・・ってか用があるなら直接俺に話しかければいいだろ?」

モルテ「それが出来ないから話しかけてもらうように仕向けてるのではありませんか。」

ミィディア「だったら残念でした。だよ。好きという気持ちを行動に移せない時点で俺の中では色々と終わってんだ。多分仮に付き合ったとしても価値観が合わないで別れてるよ。」

モルテ「〝・・・ミィディアの価値観はそれほど特殊ではないのですが彼の同年代にはそのハードルは高過ぎますね。〟まぁそうですかね。では専門学校の女性の方は何故いきなり連絡先を消したのですか?」

ミィディア「あれは相手から見たらいきなりかもしれないけど俺からすると元々予定していたことだったんだよ。」

モルテ「連絡先を消すことがですか?」

ミィディア「ああ。まずあの女の人と連絡先を交換する前にその人のことで周囲が色々と困っているかのような雰囲気があった。だから世間話の一環のていで話を聞いてみると独断が過ぎるとか頑固だという情報が出てきたから多分協調性のない人間なんだろうなと思った。」

モルテ「まぁそうでしょうね。周囲からの評価が出るということは少なくとも社交性はなくはないのでしょう。ですが周囲との協調を図るのが出来ていない。」

ミィディア「ああ。だから良くない噂が出る。まぁこの時点で“超関わりたくねぇ。”と思ったが学校内での授業の関係上関わらなければいけない事態になってしまった。」

モルテ「実習ですね。」

ミィディア「ああ。普通の授業なら“携帯持ってないです。”で押し切るところだが実習はそうはいかない。何故なら二人で連絡を取って色々と確認しなければいけない事態が色々とある。こうした状態だと押し切ることで他の人にも迷惑がかかる。」

モルテ「だから消す前提で交換したんですか?」

ミィディア「そうだよ。」

モルテ「しかも後を辿れないような方法で?」

ミィディア「ああ。アプリ上での連絡先ならそのアプリから消してしまえばすぐに断つことが出来るが電話番号とかメールを教えると下手にばらまいたりして嫌がらせとかも出来るからな。」

モルテ「・・・そこまではその女性は考えていないと思いますよ?」

ミィディア「どうかな・・・状況が変わればやっていたかもしれない。」

モルテ「その後も随分と無慈悲でしたね。連絡がつかなくなったことにも気づかずその女性は暫くミィディアにほの字の所をまるで夢から覚ますかの勢いで彼女から距離を取り続けて・・・。」

ミィディア「小中高と学んだんだよ。言葉で否定しても人は納得してくれないって。だから俺は相手と同じルールで言葉以外で示し続けたんだ。お前じゃ絶対に無理だってことを。」

モルテ「相手と同じルール・・・ですか?」

ミィディア「女の人って思ってることを言葉にしないって意味分からない文化があるじゃん。」

モルテ「あ、だからその“言葉にしない。”というルールで態々対応したんですか・・・?」

ミィディア「そうだよ。どんな馬鹿でも自分の土俵で負ければ嫌でも思い知るだろ?無理なんだって。自分じゃ絶対に届かないんだって。幸いその察して土俵は人より得意だから基本どう出てくるかも読めるし常に先手を取れる。」

モルテ「・・・まさに手のひらの上ですね。」

ミィディア「でもその中で通路を挟んで隣に座って来た時と授業が終わった後に追いかけてきた時は流石に焦った。」

モルテ「あの時も逃げてましたね。」

ミィディア「まあな。」

モルテ「授業後に追いかけてきたのを逃げきれたのは正直私も驚きました。」

ミィディア「捕まると思った?」

モルテ「ええ。捕まってミィディアが痛い目を見ると思ったんですがまさか途中の階で階段を降りるのをやめて相手が先に階段を降りるのを確認した後静かに降りるのを見た時はセイのまやかしを思い出しました。」

ミィディア「咄嗟に思いついた策だけどな。階段を下りながら“これ途中ではけたら誤解して一番下まで降りてくれるんじゃね?”って。」

モルテ「見事に誤解しましたね。」

ミィディア「ああ。それによく色恋沙汰で逃げ切れないって言うけどほんとに逃げ切れないのか確認したかったんだ。」

モルテ「普通逃げ切れないんですよ?」

ミィディア「じゃあ何で俺は逃げられたのかな?」

モルテ「冷静だったからでしょう。冷酷とでもいうのでしょうか。普通は他人を傷つけていることと追われているということ二つの点で動揺するものですがミィディアはそこに動じず無慈悲なくらい合理的な策を編み出し即座に行動に移しました。彼女は暫く一番下の階で立ち尽くしていましたよ?完全に逃げられたと思い込んで。」

ミィディア「そうか。でも結果これで良かったんだよ。」

モルテ「・・・何故ですか?」

ミィディア「俺にはその気はない。けど彼女にはその気がある。この状態で仮に付き合っても悲惨な結果にしかならなかっただろう。よくある貢ぎ続ける女性のような構図。」

モルテ「でもそれはミィディアが気を付ければいいのでは?」

ミィディア「俺にその気はないって言ったろ?」

モルテ「でも付き合い始めたら変わるかもしれないではありませんか?」

ミィディア「かもしれないが変わらなかったらどうする?多分俺はその時彼女を捨てたくなる。それにもしその時子供がいたらどうする?険悪なまま子供を育てるのか?俺は毒親と同じ失敗は嫌だね。それに子供が一番可哀そうだ。親の一時の感情で人生が左右される。」

モルテ「・・・確かにその痛みはミィディアが一番知っていますからね。」

ミィディア「ああ。逆に関係が強くなる前に切っておけばその女性も被害にあわないし新しい男を探せる。いい男なんてこの世に星の数ほどいる。けど関係を切るにはそれなりの口実が必要だ。しかも相手に非がない口実。」

モルテ「・・・だから一貫して無慈悲なことを?」

ミィディア「無慈悲な奴なら切っても罪悪感なんてないだろ?確かにその時は辛いかもしれないけど俺が消えた後は周りの人が慰めてくれるさ。友達がいないって言ってたからそれで友達も出来るんじゃないか?」

モルテ「・・・人が良過ぎますよ。ミィディア。」

ミィディア「しょうがねぇじゃん。こっちの都合で切るんだから。」

モルテ「ではその女の人とはもう一生会わないつもりですか?」

ミィディア「その方が良いだろうな。会ったとしても人でなしを演じた方が良い。」

モルテ「まぁあの時逃がした魚が実は大きかったと知れたらそれこそ酷ですからね。」

ミィディア「ああ。」

モルテ「・・・では大分話がそれてしまいましたが推理術のお浚いと行きましょう。と言いたいところですがミィディアはもうすでに推理術を使えていますね。」

ミィディア「どういうこと?」

 モルテ「今までの考え方がもう推理術の基礎なんですよ。感情に流されずただひたすらに事実をもとにした状況予測をしそして各人間の感情予測&相互作用を意識する。これがミィディアはもうすでに出来ています。今までの恋愛の話を聞いていてそれが分かりました。」

ミィディア「・・・どの部分を聞いてそう思ったんだ?」

モルテ「特定の部分には限定出来ませんね。複数ありますから。」

ミィディア「例えば?」

モルテ「連絡先を交換するくだりです。交換する前から普通はあそこまで考えません。そして極めつけが階段での逃走劇です。あの近距離から逃げ切るなんてまるで奇跡ですよ。悪い意味で聖人です。」

ミィディア「悪い意味で聖人ってどういうことよ?」

モルテ「情緒・精神的に出来過ぎだということです。人間社会の中ではあまり起こりえないタイプの無慈悲ですね。」

ミィディア「なんか全然褒められてる気がしないんだけど・・・。」

モルテ「褒めてませんからね。」

ミィディア「えぇ・・・。」

モルテ「ですが一概に責められないのが厄介です。」

ミィディア「どういうこと?」

モルテ「君が苦痛から逃れる為に努力した結果が他人に圧倒的な差を感じさせているのでどちらも悪くないんですよ。」

ミィディア「まあな。」

モルテ「まぁ人間社会の中では責められるでしょうけどね。」

ミィディア「でもそれが目的だから。」

モルテ「それを知った時相手は更に怒り出すでしょうね。」

ミィディア「手のひらの上で弄ばれたことに対する怒り・・・か。」

モルテ「当事者の場合は人生を思うがままに操られてしまったかのような絶望感です。」

ミィディア「なんか変な技術ばっか極めてる気がするなぁ。俺。」

モルテ「でも使える技術じゃないですか。」

ミィディア「でも何でだろうな。」

モルテ「何がです?」

ミィディア「人間世界で真面目に勉強してる人の技術より俺みたいに天使の技術や個人独自の技術の方が現実世界で使えるのは。」

モルテ「それは知恵と工夫が込められているからですよ。」

ミィディア「知恵と工夫?」

モルテ「技術を習得する段階で考えるという行為と自分のものにする為の工夫が介在しているからです。人間世界で真面目に勉強している人というのは他人のルールに合わせて作られた自分に合わない技術を何も考えずにただ覚えようとしているんでしょう。しかし個人独自の技術とは0から習得する為工夫なしでは技術体系にすら出来ません。なので考えるという行為と自分のものにする為の工夫が自然と介在します。そしてそれが介在することにより自然と自分に合った形で習得出来るので使えるのでしょう。」

ミィディア「成程。」

モルテ「ではこれで私が伝えたいことは全てなので上に行かせて頂きます。何か最後に聞きたいことなどはありますか?」

ミィディア「いや特にない。」

モルテ「そうですか。では頑張ってください。」

そういうとモルテは消えていった。

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