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超条件世界{五章、世界を整えし者}



これは、同じ力を持ちながらも、対立を余儀なくされた者たちの物語・・・。


「流川。もう大丈夫なのか?」


「ああ。大分時間を要したが、もう大丈夫だ。」

「良かったです!最初は寝たきりで全然喋らないので死んじゃうのかと思いましたよ・・・。」

「二人とも、長い間介抱してくれてありがとう。」

「何言ってんだよ。ケガしたんだから当然だろ?」

「それでもありがとう。あと済まなかったな。心配かけて。」

「大丈夫ですよ!元気になった流川さんを見て安心しました。」

「・・・そうか。じゃ、早速で悪いが出てくる。」

「どこに行くんだ?」

「最近ずっと寝ていたからな。軽く体を動かしてくる。」

「分かった。またケガすんなよ?」

「ああ笑。」


~~~~~


「・・・祓火。歩ける?」

「赤ちゃんじゃないんだから、歩けるわよ笑。」

「それは良かった・・・。」

「もう殆ど回復したわね。」

「一時はどうなることかと思ったけど・・・。」

「・・・さっきからずっと黙ってるけど、どうしたの?」

「・・・とんでもないことをしてしまった。」

「ん?何て?」

「祓火。お前が寝ている間に・・・その・・・。」

「何よ。はっきり言いなさいな。」

「デチーレを殺してしまったんだ。」

「え⁉どういうこと⁉」

「デチーレが祓火たちに雹聚を仕掛けたことがあっただろ?その後、改めて会う機会があってな。その時にあのようなひどいことをして何とも思わないのか?と聞いたんだ。そしたら、何とも思わなくはないと答えながらもその態度がとても傲慢でな。それが許せなくて、彼を火で殺してしまったんだ・・・。」

「それって、いつのこと?」

「5日位前だ・・・。」

「でもさ、そんだけ日数が経ってるのに何にも言われないってことは、大丈夫なんじゃないの?」

「そうなのか・・・?」

「だって、なんかあるなら誰かしら飛んでくるでしょ。ルチークなりビュージュなり陰間が。」

「まあ、そうだが・・・。」

「それにセフィラやデリットの天使の力を使う彼女らも黙ってないでしょ。」

「それが黙ってるってことは実は大丈夫なのよ。」

「でも、死んでるんだぞ?」

「・・・じゃあ、私が少し散歩がてら家の周りをまわってみるわ。それでいい?」

「・・・まあ、それで誰もいなかったら一旦気にするのはやめるよ。」

「分かったわ。じゃ、ちょっと運動してくるわ。」

「は~~い。」



~~~~~

「・・・ようやく元通りか?」

「そうだね。」

「ずっと寝てたので体がちょっと鈍ってますが。」

「でも、大した後遺症もなくて本当に良かった・・・。」

「そういえば私たちが寝ている間、力の返納の件で何か動きはありました?」

「いや、何もないな。」

「そうなんですね。」

「あ、封砕どこに行くんだ?」

「ちょっと太陽を浴びてくるよ。」

「そうか・・・。」

「ついでに私も浴びてきます。」

「おう。行ってらっしゃい。」



~~~~~


「もう大丈夫なの?」

「ああ。全快だ。」

「風凪も?」

「ええ。もう大丈夫です。」

「そういえば、力の返納ってどうなってんだ?」

「さあ、デチーレが来てから誰も来てないから分かんない。」

「あれから結構経ってますよね?」

「そうね・・・って昇旋どこ行くの?」

「心配すんな。ちょっと体を動かしがてら周辺を見てくる。もしかしたら使役者が来てるかもしんねえからな。」

「じゃあ、私も行きます。」

「そう。じゃ、気を付けてね。」

「おう。」


~~~~~


「(・・・ふう。ちょっと歩いただけで疲れた。)」

「流川。ここで何してるの?」

「封砕。それに震子もいるじゃないか。」

「ええ。久々に起きたのでちょっと散歩です。」

「奇遇だな。俺も散歩をしていて疲れたから少し座っていたところだ。」

「成程ね。」



~~~~~


「ふう、やっぱり暫く動かないと体が鈍るわねぇ。」

「お、祓火じゃねえか。」

「あら、昇旋。それに風凪も何しに来たの?」

「鈍った体を動かしがてら周辺を散歩だ。」

「そう。」

「あなたもですか?」

「ええ。そうよ。」

「そうか。」

「そういえば、天使の使役者を見ていませんか?」

「見てないけど・・・探してるの?」

「いや、探してるってわけじゃねえんだけど、力の返納どうなったのか気になってよ。」

「あぁ、そういうことね。それなら私も分からないわ。」

「そうか。」

「・・・あ、震子。」

「あら、風凪じゃないですか?」

「・・・昇旋と祓火も元気そうだね。」

「まあな。」

「・・・悪いけどやらないわよ。もう。」

「意外だな。今回も戦いになるかと思ったんだが・・・。」

「もうばかばかしくてな。戦ってケガすんのが。」

「そうか。」

「まあ、だからって全て納得しているわけじゃねえがな。」

「当然だな。」

「・・・変に受け入れるじゃねえか。」

「まったくないと言われる方が信用出来ん。」

「・・・確かに、今までのことを考えりゃ当然だ。」

「ああ笑。」

「んーますます不思議ですね。」

「何がです?」

「力の返納の件が天使から何も言われないのがだよ。」

「さっきまで俺たちはここ最近天使たちの使役者たちがなんの報告も来ないことを不思議に思っていたんだ。」

「そりゃあ、俺達も思ってた。」

「なんせ、もう争ってないからねぇ。」

「水は争ってない。」

「私たち土も争ってない。」

「となると、風か火だと思ったんですが・・・。」

「まあ見ての通り手は出してないわよ。」

「そうですよね。」

「となると・・・今考えられる可能性は二つですね。」

「二つ?」

「ええ。まず一つ。ありえないとは思いますが、今度は雷が何かやらかした。」

「んーでも完全には否定出来ねえよな。」

「確認が取れないからね。」

「ああ。」

「二つ目は何だ?」

「二つ目は天使の使役者側に何か不測の事態が起きて、返納の近況報告どころではなくなっている。」

「そっちのほうが幾分かありえそうだな。」

「うん。」

「あの・・・それについてなんだけど私思い当たる節があるわ。」

「何だよ?それは。」

「・・・これはね、浄煌が言ってたんだけど、私たちが床に臥せっている時があったでしょ?」

「ああ。」

「その時に、デチーレを殺してしまったって言ってたんだけど・・・。」

「本当?」

「ええ。だって、最近ずっと思いつめてたもの。それに彼は嘘をつくような人じゃないわ。」

「確かに、彼はそんな低俗な嘘をつくような人物ではありませんね。」

「それってよ・・・いつのことだ?」

「五日前くらいってい言ってたわ。」

「・・・もしかしなくてもそれが原因で天使たちの動きがぱったりとなくなったのでしょうね。」

「あのよ。今から俺達で一人でも使役者を見つけねえか?」

「・・・別に探すのは構わんが、見つかるかは分からんぞ?」

「夕方になっても見つかんなかったら帰っていいからよ。」

「それなら、行きましょうか。」

「悪いな。」

「別にいいよ。私も少し思ってたから。」


~~~~~



「いやー、やっと休めましたねー。」

「それも、今日までだけどね?」

「それでも嬉しいですよー。今までずっと休みなしでしたからー。」

「まあ、普通はそうなのか。」

「そうですよー、・・・。」

「いた!」

「何の用ですかー?」

「・・・え、何で生きてるの?」

「あぁ、僕のこと?」

「(この祓火の反応・・・嘘じゃないな。ということは、生き返ったとでもいうのか?)」

「そ、そうよ!」

「それは生きてるからだろうね。」

「こ、答えになってないじゃない!」

「そうかな?」

「それより皆さんは揃って何の用なんですかー?」

「もしかして・・・まだ懲りてないのかな?」

「いや、今回はそういうことではないんです。」

「今回はあなたたちに色々話があってきたんです。」

「話?」

「力の返納のことだ。」

「あれから随分経つけどよ、力の返納はどうなってんだ?」

「私たちあれから争ってないんだけど、まだ返す予定が決まらないのかな?」

「あー・・・そういうことで・・・成程。」

「どうなんだ?」

「もしかして今度はお前たちが返さないなんて言うんじゃねえだろうな?」

「それは心配ないよ。」

「本当か?なら何でここ最近ぱったりと動きがねえ。」

「それはですねー。あることでとても混乱したからですー。」

「混乱?」

「ええー。理由は彼です。」

「デチーレ?」

「ええー。さっき祓火さんが驚いてたでしょー?それって浄煌さんから話を聞いたからじゃないですかー?」

「え、ええ・・・。相当気に病んでたわよ。」

「そうか。彼には悪いことをしたな。」

「(心にもないことをー・・・。)僕たちが混乱していた理由もそれですー。彼が浄煌さんに殺されたと聞かされ返納の近況報告が中止になり、混乱していたところに元気ピンピンの彼が現れ更に混乱していたんですー。」

「・・・まあ、死んでいたと思っていた人間が生きていたと分かったらそれは混乱するだろうな。」

「ええ。こればっかりは使役天使も混乱してましたー。」

「成程・・・。」

「理解して頂きましたー?」

「ええ。止まった理由は。」

「けど、今は何してたんだ?」

「それは僕が答えよう。休暇だよ。」

「休暇?」

「ああ。僕たちは始まりの祠で力が返されなかった時からずっと休みなしで働いていたんだ。それに加えて、僕の騒動もあってみんな疲れがどっと出たみたいだからね。ここ最近休暇を取っていたんだよ。」

「まあ、でも安心してくださいー。それも今日で終わるんでー。」

「・・・そうなんだ。」

「ああ。」

「なので、返納に関してはもう少し待ってくださいー。」

「分かったよ。」

「じゃ、話がもうなければ行っていいですかー?せっかくの貴重な休みですしー。」

「お、おう・・・。」

「じゃ、失礼するよ。」

~~~~~


「力の返納については分かったが・・・。」

「デチーレのことですよね・・・。」

「・・・ああ。」

「何で生きてたのかしらね・・・。」

「祓火。本当は生きてるのを知ってたとかない?」

「な、無いわよ!」

「本当?」

「本当よ!」

「封砕、今回は本当に知らないと思うぞ。」

「何でそう思うんだ。」

「だって、知っていたとしたら何で隠す必要があるんですか?」

「・・・それは、分からないけど。」

「もし隠してたとしても、それを隠すメリットが俺には分からねえ。」

「俺も分からん。」

「まあ・・・そうか。意味ないよね。」

「どうやら、分かってもらえたようね。」

「それより、デチーレが生き返ったのが事実ならそっちの方が気になりませんか?」

「どうやって生き返ったのか・・・だろ?」

「そうです。いくら彼が天使の使役者だとしても、絶命からあのように生き返るのはどう考えてもおかしいです。」

「そうだな・・・。」

「あいつが生きてるのって、全能の力ってことはねえのか?」

「全能ですか?」

「ああ。確か、あっち側には全能の力を扱う世全視がいただろ?そいつが蘇生したんじゃないか?」

「まあ、全能の力を扱う世全視なら死者蘇生位しそうだけど・・・。」

「・・・世全視の力なのかな?」

「情報が少な過ぎるが、筋は通るな。」

「・・・もう帰りませんか?日も落ちてきましたし。」

「そうだな。それにもう運動には十分だ。」

「そういえば、病み上がりの調整で動いていたんでしたね笑。」

「じゃ、帰ろうか。」

「ああ。じゃあな。」



~~~~~


「最近は自然神の付与者たちも落ち着いていますね。」

「・・・そうですね。」

「・・・デリット。何か気になることでもあるのですか?」

「いえ・・・。」

「気を使わなくても結構です。思うことがあるのであれば是非話してください。」

「・・・では、話をさせて頂きますが、使役者たちのやり方は強引ではないでしょうか?」

「・・・それは力の返納に対してということでしょうか?」

「その通りです。確かに、自然神付与者たちが返納滞りの発端であることは事実です。しかしだからと言って力で彼らをねじ伏せていい理由にはならない。最近は特に目に余ることがあった。」

「デチーレとルチークの件ですね?」

「ええ。彼らを瀕死に追い込み、返納を強制するなどとても同じ人間のやることとは思えない。」

「それについては俺も思っていた。確かに彼らの力は強大で周囲の者や土地に大きな影響を与えることを考えれば、軽視出来る存在ではないのは分かる。しかし、だからと言って彼ら以外の付与者と使役者で即座に抑え込むというのは間違っていると思う。」

「・・・そうですね。」

「私は正直今の状況は黙ってみていることは出来ない。」

「全能、全知、天使の付与者&使役者で彼らを追い込む今の構図を俺はもう耐えられない。」

「・・・そうなのですね。」

「はい。ですので、セフィラ様。私は今後、私自身の意思で動きたいのです。」

「それは、禊護もですか?」

「はい。もしここで止めるのであれば、神の意思に反するかもしれませんが、対立も厭わない覚悟です。」

「・・・そうですか。」

「如何致しますか?」

「まず、あなた方の言い分ですが至極まっとうな意見だと私は感じています。その上であなたたちに問います。この問いに対する答え次第で私はあなたたち二人が己の意思に従い動くことを許そうと考えています。」

「・・・何でしょう?」

「もしこれから先、思いの違いでここに居る三人が争うことがあっても、其々己の信念を通す覚悟はありますか?最後まで己が選んだ道を歩む覚悟はありますか?」

「もし、セフィラ様が敵方に回ろうとも、私は私の考えを曲げるつもりはありません!」

「俺も、俺の考えを曲げるつもりはありません。俺はもう誰であろうと争いによって恐怖する人々の顔を見たくない。」

「そうですか。分かりました。では、あなた方二人には自由に行動することを許可します。」

「ありがとうございます!」

「ですが、ここを離れる前に一つ聞いてもらいたい話があります。」

「・・・何でしょう?」

「力の返納の結末についてです。」

「・・・どういうことですか?」

「これから話すことは全付与者&使役者にとって、とても酷な話です。しかし、この事実だけは話しておかねばなりません。覚悟して聞いてください。」

「はい。」

「まず、力が返納されるのはいつになるのかということですが、今世ではありません。」

「それは・・・どういうことでしょうか?」

「私たちが生きている間には返されることがないということです。」

「・・・。」

「これは、如月の未知子さんが力の返納について力を使った際に見えた未来だそうです。彼女が言うには、私たち以外の今とは違った様相をした人々が、今では考えられない程に平らになった大地の元、祠に触れる様子が見えたそうです。そしてその時間は途轍もなく先の時代だろうと仰っていました。」

「・・・セフィラ様は何故俺たちにこの話をしたのですか?」

「今のあなた達ならば、この事実を受け入れられると思ったからです。」

「その予知とは、改変は不可なのでしょうか?」

「それは分かりません。世全視は改変が出来るかもしれないと今まで必死にあらゆる方策を考えてくれていましたが、今現在改変されていないところを見ると出来ないのかもしれません。そして私自身、改変は出来ないと思っています。」

「・・・何故でしょう?」

「予知をしてしまったからです。つまり、知ってしまったからです。遥か先に返されることを。」

「成程。予知にてその不確定な出来事を確認してしまったことによって、事実として固定されてしまったと考えているのですね?」

「ええ。もし、努力で変わるのであれば、それ以前までに見たその予知はどうなるのでしょうか?記憶から消えるのでしょうか?私はそんな都合良くいくとは考えられないのです。いくら神の力とは言え。」

「確かに、そこまで都合良くいくなら、そもそも俺たちに力の返納を求めないで勝手に戻すことも出来そうですからね。」

「ええ。・・・以上で話は終わりになります。最後に何か言うことはありますか?」

「私は、たとえ力が返されるのが遥か先だとしても、くじけません。」

「俺も、遥か先だとしても、ぶれることはありません。何故なら、裏を返せばその時代まで俺たちの意思を継ぐ者たちが生きていることの証明だと思うからです。」

「私たちが出来なくても、先の世の者がいつかは分からずとも、必ずやってくれる。今の私たちにとってこれ程心強い事実はありません!」

「・・・そうですか。やっぱり、話して良かったです。ではお二人とも。達者で。」

「はい!」


~~~~~


「世全視。」

「セフィラじゃないか。どうしたんだ?」

「今日はあなたに報告しておかなければいけないことがあります。」

「・・・何だ?」

「これから先、印紋師集団は必ずしもあなたの命令を聞くと約束が出来なくなりました。」

「な、何故だ?」

「デリットと禊護が私の元を離れたからです。」

「何があったんだ?」

「昨晩、彼女たちは自分達や使役者たちの自然神付与者に対する行動があまりにも目に余ると私に話してきました。話を聞いた時、私は彼女たちを無理に引き止めれば新たな争いが生まれると感じたので、条件次第では己の思うがままに行動してもいいと提案しました。そして彼女たちは見事にその条件をクリアしました。なので彼女たちは今私の元を離れています。」

「そうか・・・。」

「ですので、どうか彼女たちを責めないで頂きたいのです。今回の分断に至った責を問うのであればこの私に問うてください。」

「・・・誰が責めるものか。彼女たちは今まで自分以外の者の為に動いてくれた。それに彼女たちの言っていることは至極まっとうな意見だ。」

「あの・・・世全視。私思うのですが、もうこれ以上付与者たちを統制し続けるのは無理があるのではないでしょうか?」

「・・・確かにそうかもな。セフィラ。今度は少し俺の話を聞いてはくれないだろうか?」

「え、ええ。構いませんが・・・何の話ですか?」

「如月一族の予知についてだ。お前は彼らを守りに行ったからあの予知のことは当然覚えているな?」

「はい。」

「実はその予知、俺たちに力を付与する以前の神も見ているんだ。」

「・・・それは、本当ですか?」

「ああ。本人に確認したから間違いない。そして俺はその予知を彼らから改めて聞いたことでとても恐怖を感じていたんだ。」

「何故ですか?」

「・・・彼らの前で俺は努力次第で予知は変わるかもしれないと、口ではそういったが、本心では何となくだが変わらない気がしていたんだ。」

「・・・。」

「まず、予知とは神の力だ。それは混沌としたこの世界で唯一絶対とされる力。それがたかが人間の努力次第で変わるとは、どう楽観的に考えても都合が良過ぎる。それに、遥か先まで返されないのであれば、そこに至るまでの俺たち人間の時間はどうなる?今のように幾度となく争うのか?その終着点に至るまで一体どれだけの血が流れる?たとえ俺達の代は平和になったとしても、その先のまだ見ぬ子供たちの時代にはどうなっている?・・・こうしたことが頭の中を巡る度に俺は今生きることが怖くなる。」

「・・・成程。世全視。その予知。実は別れる前に彼女たちに話しました。」

「そうなのか。」

「ええ。そしたら、それでも、自分達の意思は曲げないと仰っていました。そして、こうも言っていました。“裏を返せば、その時代まで私たちの意思を継ぐ者たちが生きていることの証明だ。”と。“自分達では返せずとも、先の世の者たちが必ず返してくれるという事実ほど心強いものはない。”と。ですので世全視。そう暗い方ばかり考えないでください。」

「・・・そうだな。」

「あと、世全視。これは私からの提案なのですが、暫く自然神付与者への介入は控えませんか?」

「・・・そうだな、そうするか。今までのことを考えると、俺たちが介入することで返って状況がややこしくなっている場合もあるからな・・・。」

「彼ら彼女らが自らコンタクトを取るまで待ちましょう。」

「・・・だな。」


~~~~~



「・・・ということだ。」

「何故です!今介入をやめてしまえば力の返納はまた、振り出しに戻ってしまいます!今度こそ、更に積極的に介入し力の返納を終えるべきです!」

「しかし、今まで積極的に介入してきた結果がこれだ。確かに発端は自然神かもしれない。だがその後、如月、天使の付与者&使役者たち、全能の俺の介入で彼らはひどく傷つけられた。」

「それは仕方がないでしょう!それに、今の状況は依然と比べ一番返納に近づいています!」

「仕方なくはない。俺たちは俺たちの意思で彼らを傷つけてしまったんだ!これは忘れてはならない!それに、力の返納は今のように近づく度に遠ざかっている。恐らく俺たちは焦り過ぎているんだ。あと一歩というところでいつも道を踏み誤っている。だからこそ、ここはあえて静観をし、成り行きに任せようと思っているんだ。」

「・・・そうですか。分かりました。もういいです。」

「ヴァティーラ!どこに行く⁉」

「・・・世全視が今話をした力の返納の考えを使役者に周知してきます。」

「・・・分かった。」

「では、失礼いたします。」


~~~~~


「・・・ということだそうです。」

「・・・そうなのね。」

「僕はその考え、納得出来ないんだが。」

「けど、世全視の言うことは一理あると俺は思う。今まで俺たちは彼らに過干渉になり過ぎていたのかもしれない。」

「ですが、今動かないでいつ動くんですか⁉」

「ヴァティーラの言うことも分かりますけどー。こういうのって長い目を見た方が結果上手くいく気がするんですよねー。」

「ルチークも世全視の考えに賛成ということですか?」

「賛成っていうかー。今までよりは上手くいきそうだなって感じですねー。」

「そもそモ、七日を過ぎた時点デ、急いで返す理由ってあまりなくないカ?」

「あるだろう。期限を過ぎてるんだ。一刻も早く返さないと駄目だろう。」

「けど、その切羽詰まった感が色々悪い方悪い方へと導いた感はあるわよね。」

「しかし!」

「・・・なあ、ヴァティーラ。そんなに急いで返すことに拘らなくてもいいんじゃないか?」

「そんなことはありません!遅れているからこそ、一刻も早く返さねばなりません!」

「ストップ!さっきから話が堂々巡りしてるわ。」

「・・・そうだね。それにこれ以上話しても無意味のようだ。」

「あ、デチーレ!・・・行っちゃったわ。」

「で、結局力の返納はどうなったんでしたっけー?」

「暫く俺達からの働きかけはなしだ。陰間。俺と一緒に各一族に飛んでくれないか?」

「あア。分かったゾ。」

「じゃ、デチーレも行っちゃったし、これで暫くは解散ね。」

「・・・ええ。そうですね・・・怒。」

~~~~~


「・・・ってことになった。」

「だから、気分で動いていいゾ!」

「(気分でって・・・)まあ、言い方はあれだが実際そういうことだ。」

「・・・随分と方向転換をしたもんだな。」

「俺達使役者も色々思うところあってな。それと恐らくだがこの方向転換の発端は天使の付与者たちだ。」

「何でそう思うんですか?」

「最終決定権のある世全視に意見出来る奴なんて数が限られてる。」

「ヴァティーラかセフィラ位だヨ。」

「その中でも意見するだけでなく、その意見を変えられるなんてセフィラ位だ。」

「でもよ、その決定には俺達も賛成だな。」

「ええ。特に私たちの生活を脅かさないところがいいですね。」

「そういってくれて良かった。実際俺達も過干渉になっていた部分があった。セフィラと世全視は何があったか知らないが、良い判断をしてくれたと今回は思うよ。」

「まあ、とりあえず、力の返納の件。確認した。」

「ああ。じゃあな。」

「おう、気をつけてな!」



~~~~~

「・・・ということがあってな。俺はセフィラ様のところから離れてきたんだ。」

「そうなんだ・・・。」

「それで、今日はお前たちに頼みがあってきたんだ。」

「・・・何ですか?」

「もう予知は行わないでほしい。特に付与者たちに関することは。」

「未知子。どうだ?」

「・・・いいわよ。」

「ありがとう。」

「で、でもさ、世全視に強要されたらどうしたらいいのよ⁉」

「洽。彼はそんなことをする愚かな人ではない。それに、もしそんなことになれば俺が全力で止めてみせる。」

「・・・でも、世全視さんって、何者にも脅かせないんですよね?」

「ああ。だがお前たちが逃げる時間くらいは稼いでみせる。それくらいならなんとか出来るだろう。」

「まあ、彼は今まで一度も何かを強要したことがないから、その辺は心配ないと俺は思うがな。」

「そうだな。」

「それと、もう一つ頼みがある。」

「・・・何だ?」

「これは・・・その、とても個人的な話で・・・言いにくいんだが・・・。」

「ああ。何だ?」

「暫く、一緒に過ごさせてくれないか?勿論、家は別でいい。」

「全然いいよ!」

「ありがとう。」

「ってか禊護、家作れんの⁉」

「ああ、創紋ですぐだ。」

「まあ、家はべつにしなくてもいいぞ?」

「そうか!じゃあ、これから世話になる!」

「こちらこそ!」


~~~~~


「・・・ってことになった。」

「そうなんだ。」

「まあ、私たちは少し前から争ってないから、もう働きかけようがないんだけどねぇ。」

「最後の返納の日程があるだろ?」

「あ、そうだったわね笑。」

「ま、そういうことだからよ。暫くは俺たちを気にせず過ごしてくれ。」

「ちょっと待ってくれ。今俺たちが争ってないのに返納の件で動かないってのはどういうことなんだ?今こそ動けばすぐに返せるんじゃないのか?」

「世全視はどうもそうは考えていないらしい。」

「何故だ?」

「理由ハ、はっきりとはないんだナ。」

「ない?」

「いや、理由と呼べるほどはっきりしたことは言えないという意味だ。世全視は今までの状況から、俺達がお前たち自然神付与者に過干渉になり過ぎていると考えたようだ。その結果いつもあと一歩のところでどこかに歪みを生じている。だからこそ、ここであえて静観をすることで、自然な流れに任せてみようとのことらしい。」

「まあ、最後の最後で誰かしらやらかしてる感はあるわよね。」

「ああ。実際今度は俺達使役者がちょっと怪しい。」

「・・・どういうこと?」

「この話をヴァティーラから持ち掛けられた時、デチーレは納得いってなかった。」

「まあ、彼の性格なら妥協は許さなそうだものね。」

「それと、この話を俺達にしてくれたヴァティーラ自身も相当キていた。注意してくれ。」

「・・・この話は全自然神付与者にしているのか?」

「いや、していない。ここは水の次なんだが水には話していない。」

「何故だ?」

「あまり、こういう言い方はしたくないんだが、お前たち火は恐らくヴァティーラとデチーレに良く思われていない。」

「まあ、実際、私のせいで返納が滞ったところもあるからねぇ。」

「ああ。だから今後行く風にもこの話はする予定だ。」

「でも、発端は封砕よね?」

「そうなんだが・・・あいつらが誰を狙ってるのかは実際分からないんだよな・・・。」

「成程。フェルト自身、誰に話し、誰に話さないか決めかねているわけか。」

「ああ。風とお前たち火は確実なんだが・・・土は微妙なところだ。」

「土は、今となってはしょうがない部分もあるってことで、狙われないんじゃない?」

「だが、フェルトの話を聞いていると、全ての自然神付与者たちに伝えた方がいい気がするんだが・・・。」

「どういうことだ?」

「まず、フェルトたち使役者の立場となって見てみると、発端は土だ。だが、それを助長したのは俺達火と風だ。水は土側のように扱われてはいるが彼らは俺たちの作った状況に巻き込まれただけ。雷は唯一何処とも関わりがなかった。」

「だかラ、火と風は確実デ、土を悩んでるんだロ?」

「だが、今の状況はどうだ?俺達を含め、全ての自然神付与者たちが争いを一時的なのかもしれないが収めている。そして、その状況で力の返納が成り行き任せになれば、早く返したい彼女たちにすれば、もう全ての自然神付与者が同じように見えてくるんじゃないか?」

「・・・力の返納を行わなイ、反逆者・・・ってことカ?」

「ああ。」

「・・・じゃあ、どうすりゃいいんだ・・・?」

「・・・今の話を私たちが聞かなかったことにすればいいんじゃない?」

「どういうことダ?」

「この話、私たちにしかしてないのよね?だったら、私たちは聞かなかったことにしてフェルトと陰間は後の三組には、返納が成り行きになったとだけ伝えればいいんじゃない?」

「そしたら、全員に改めて話す必要はない!」

「しかしな・・・。」

「フェルト。色々と俺たちの為に気を回してくれるのはありがたいが、俺達もそうバカではない。大丈夫。ちゃんと気付いているさ。彼らも。彼らなりにな。」

「なア。ここハ、浄煌たちの案に乗っからないカ?」

「・・・そうだな。悪い!浄煌。煉聖。祓火。お前たちの考え、使わせてもらう!」

「ああ笑。」

「やっぱ、フェルトは信用出来るわね。」

「?」

「天使の使役者でありながらいつも私たち側で考えてくれるじゃない。」

「・・・そりゃあ。」

「当然って言いたいんでしょ?でも当然じゃないのよ?私が知ってる中でもこれが出来る使役者はビュージュとあなたくらい。」

「ワ、私ハ・・・?」

「あなたは、悪気もないけどやる気もない感じよね。」

「ソ、そんナ・・・。」

「ま、まあとにかく嬉しいよ。じゃ、次に行かせてもらう。じゃあな。」

「ええ。またね。」


~~~~~


「・・・ってことになった。」

「・・・そうか。」

「どう感じた?」

「・・・もっと早くにこの決断をしてほしかったな。そしたら、彼女たちは傷つかなかったかもしれない。」

「・・・かもな。」

「それに、不躾に家を訪ねることもなかったかもしれない。」

「それは、雹聚のことか?」

「見ていたのか?」

「陰間がな。」

「あの時は冷や冷やだったゾ。」

「悪かったな。」

「いや、こっちこそ、今まで色々過干渉にして悪かった。・・・多分俺たちは急ぎ過ぎてたんだ。それで人の生活というものを蔑ろにし続けてきたから、目に見えない何かに色々邪魔されたんだ。」

「・・・かもな。」

「そういえバ、封砕と震子はどこダ?」

「彼女たちなら外に出ている。」

「そうか。せっかくだから一目見ておきたかったが・・・。」

「大丈夫だ。特に後遺症もなく、元気にやっている。」

「それなら良かった。」

「ジャ、私たちは行くヨ。」

「ああ。気を付けてな。」



~~~~~


「・・・ってことになった。」

「はあ?じゃあ、今まで私たちがあんたたちに手を貸してきたのは何だったの⁉」

「・・・返す言葉もない。」

「それに、何故今なんだ。逆に今こそ返すのに適しているんじゃないのか?」

「それは、そうなのかもしれない。しかし、今まではそのあと一歩というところで返納から遠ざかっていた。だから今回はあえて成り行きに任せることで様子を見ようと・・・。」

「確かに、今まではその原因は私たち自然神付与者にありましたが、今回はあなたたち側が原因になりそうですね。」

「ソ、それハ、一体どういうことダ・・・?」

「言葉通り、あなたたちが成り行きに任せたことで返納が遠ざかるという意味ですよ。」

「・・・かもしれないな。」

「で、用件はそれだけか?」

「ああ。」

「じゃ、もう帰ってくれ。ここ最近は色々と気分が悪い。」

「・・・分かった。」


~~~~~


「最後の方、気分が悪いって言ってたけド、大丈夫かナ?」

「はあ・・・陰間。お前は本当に鈍感だな。あれは遠回しに俺たちが気に食わないと言ってるんだよ。」

「そんナ!こんなに頑張ってるのニ、何でそんなに言われなければならないんダ!」

「今回ばかりはしょうがない。彼らからすれば、今まで原因になった奴らを責めるなと言われているようなものだ。今回ばかりは甘んじて受け入れよう。」


~~~~~


「・・・ってことになった。」

「そうですか・・・。」

「了解だ。」

「お、おう・・・。」

「ん?どうした?」

「イ、 いヤ、昇旋があまりにもあっさりと受け入れると思ってナ・・・。」

「まあ、実を言うと少しほっとしてる。」

「・・・何故だ?」

「ちゃんと俺たちのことも考慮してんだなって思ってよ。俺はてっきり、もうまともな判断で見られてねえと思ってたからな。」

「まあ、色々やりましたし。」

「それはそうなんだが・・・。」

「それも分かってるよ。お前たちの中でも俺達を良く思ってねぇ奴がいるんだろ?」

「ド、どうだろうナ~~・・・。」

「嘘つくの下手くそ過ぎるだろ笑。ま、お前たちにとっては仲間だろうからそこも心配すんな。仲間を売らせることはしねえよ笑。」

「・・・悪いな。」

「いいって。それよりこのことは他の奴らにも言ってるんだよな?」

「言ってるっていうか、もう言って来た。」

「言って来た・・・ってことは、他もあんたたちが言ってるの?」

「ああ。」

「もしかして、全部あなたたちで行ったんですか?」

「ああ。そうだ。」

「俺たちが言うのもなんだが・・・お前たち、そんなに仲良くねーのか?」

「・・・結構仲良くないかもな。」

「そだナ。」

「私、あなたたちの関係性ちょっと興味あるんだけど、聞いてもいい?」

「いいゾ!」

「やった!」

「ジャ、フェルトお願イ!」

「(・・・このくだり、もう慣れたな。)はいはい。まず、俺と陰間は基本お守りする側とされる側として認識してくれて構わない。」

「エ⁉」

「実に分かり易い例えですね笑。」

「そんナ・・・。」

「次はビュージュだがあいつは使役者の中じゃ一番のまとめ役だ。面倒見がいい。」

「まあ、あいつは使役者の中じゃ信用出来る方だしな・・・。」

「ああ。次がデチーレだがあいつは色々と考え方がぶっ飛んでる。だからあいつと話すのは一苦労だ。」

「あいつなんか私たちを見下してて嫌い。」

「笑。お前たちを見下してるってより、自分以外の人間全てを見下してる感じだな。だから、使役者の中でも少し浮いてる。」

「そうなんですね・・・。」

「けど、あいつが俺達を見下すのは幾分か仕方ないのかもしれない。」

「何で?」

「・・・生き返れるからか?」

「昇旋は知ってたか。そう。あいつは一度死んで生き返ってる。」

「え⁉それってどういうこと⁉」

「嵐花、その話は俺から後でしっかりと話をしてやる。フェルト。あいつはどうやって生き返ったんだ?そこんところ詳しく聞きてえ。」

「了解だ。・・・といっても、現実離れした話だから覚悟して聞いてくれよ?」

「分かってる。天使も混乱していたって聞いてるからな。」

「ああ。デチーレが使役する天使のフォールも“ありえない。”と連呼していたからな。」

「それで、彼はどうやって生き返ったの?」

「それは、ある技による効果だそうだ。」

「ある技?」

「神とフォールだけが使える妙技で、その技とは常時覚悟が決まっている者だけが発動出来、その効果は24時間おきに一度、完全に塵も残さず消滅したとしても生き返ることが出来るという技だ。」

「・・・確かに、ありえねえな笑。」

「は、はは・・・何それ。」

「やばいだろ・・・?」

「やべえな。天使がありえねえっていう気持ちが良く分かるぜ。」

「あいつはその技のお陰で生還し、翌日、死亡の報の際に俺たちの前に何食わぬ顔で現れた。」

「でも、その能力って不憫よね。」

「何でダ?」

「だって、一回じゃ死ねないのよ?その妙技って寿命にも適用されるんじゃないの?だったら、人生最後を二回迎えることになるわ。」

「・・・そんな発想お前くらいだよ。」

「次、お願い!」

「次?」

「ほら、関係性の奴!」

「あ、そうだったな汗。次はヴァティーラだ。あいつは俺たちの中で一番人当たりがいい。愛想もいい。言葉遣いも丁寧だ。」

「なんか、良いとこしかなくてムカつく。」

「けど、一番危険な奴だ。」

「何でそう思う?」

「あいつは本心を隠すのが滅茶苦茶上手い。俺は察しが良い方で通ってるんだがそんな俺でも、あいつが本心で話していないことは気づけても、何を考えているのかはさっぱり分からない。それに、あいつだけどんな力を使うのかも分かっていない。」

「同じ使役者なのにか?」

「恥ずかしながらな。使役者は其々使役する天使によって様々な人知を超えた力を使えるのが特徴だ。俺は並外れた意志力。陰間は空間支配能力。デチーレは並外れた身体能力。ビュージュは目に見えない衝撃波、全知の真似事、空間移動。ルチークは目に見えない衝撃波と空間移動。しかしヴァティーラは一度もそういった並外れた力は使ったことがないんだ。」

「そうなんですか・・・。」

「あえて気になるところを上げるとすれば、会話が上手いことくらいだろう。」

「会話ねえ・・・。」

「それより、全知の真似事ってなんですか?」

「それは、ビュージュは触ったものの情報が少しだけ分かるんだ。けど、時代を超えたりは出来ない。」

「だから真似事なのね。」

「ああ。最後がルチークだがあいつは何というか・・・常にぼーっとしたような奴だな。感情の機微がほぼないと言っていいだろう。」

「あの間延びしたやつでしょ?すぐやられちゃいそうよね。」

「でも、あいつは一度もスキを突かれたことはない。あいつは感情がある意味常時凪状態だから、驚くことがないんだ。」

「それって・・・戦いじゃめちゃくちゃ大きなアドバンテージじゃねーか。」

「ああ。揺らがないからな。隙が無い。作ることも出来ない。実力は兎も角、精神面では最強だな。」

「あ、最強で思い出したんだがもう一つ聞いてもいいか?」

「何だ?」

「世全視の能力って何だ?」

「あー・・・それはな、何者にも脅かされることのない力って言っていたな。」

「具体的にはどんな能力だ?」

「比喩が難しいが・・・例えるなら攻撃力ゼロの力だな。」

「それって、弱くない?」

「いや、攻撃力がゼロの分、防御力に全振りしてるからそんなことはない。」

「防御力に全振り・・・成程、そういうことか。そりゃ最強だな。」

「何故です?」

「だって神の力を一つの値に全振りしてんだぜ?もしそれが攻撃力なら絶対に防げねえ。防御力なら絶対に崩せねえ。俺達の力は攻撃にも防御にも働くがその特性を無視してあらゆる防御に全振りしてりゃそりゃ最強だ。」

「ああ。純粋がゆえに弱点もない。」

「成程。全属性に対応してるってわけか。」

「そうだ。例えば俺達風なら火に対して有利にも不利にも働くが世全視の力はそんなの関係ねえ。ただ守ればいい。それで全て防げるんだからな。」

「・・・何か自信なくなってきちゃったな。」

「そう言うな。俺なんかそんな超自然的な力使えないんだからよ。」

「そっか笑。意志力だもんね。あなた。」

「ああ。これで話は終わりになる。最後に何か質問とかはあるか?」

「いや、大丈夫だ。」

「じゃ、失礼する。」

「おう。」

こうして力の返納は前回と同じ過ちを繰り返さぬよう、様子を見ることとなった。

しかし、それによって、新たな火種が生まれていることに彼らはまだ気づかなかった・・・。

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