天使たちの天外戦線(一章、仮初の天使長)
これは天地開闢よりも前の物話・・・。
天使長「〝・・・もう終わりが近い。まったくこの天使長という存在は何なんだ。感情は枯れ果て心は朽ちていく。才有る存在をこうも使い捨てにするシステムなどいっそない方が・・・そうだ。俺が無くしてしまえばいいんだ。どうせこのまま待っていても俺は消滅する。その前に少しでも未来に希望を・・・。〟」
~~~~~
ネニア「ねぇ私たちだけ天使長に呼ばれるなんて何だろうね?」
ビランチ「そうねぇ。全く想像つかないわ。」
ネニア「面倒な用事じゃなきゃいいけど。」
ビランチ「ええ。にしてもあなたは本当に一人が好きね。」
ネニア「だって楽しいんだもん。それに苦手なんだ。誰かと何かをするのが。」
ビランチ「それは私もそうだけど天界で過ごすならもう少し他の天使とも仲良くしてもいいんじゃない?」
ネニア「またその話?いいじゃん別に。私が自由にしていることで誰かに迷惑をかけているわけじゃないんだから。」
ビランチ「まぁそうだけど・・・。」
ネニア「それに誰かといるのってそんなに楽しくないんだよね。角が立つから口にはしないけど。」
ビランチ「そうなの?」
ネニア「うん。最初は苦手だから避けているだけで一緒にいれば少しは楽しいのかな?って思ってたけどどうやらそうでもないんだ。イプノみたいにみんなでワイワイやるのはどうにも性に合わない。」
ビランチ「私はそこらへん良く分からないわねぇ。でもそうしたら私といるのは苦じゃないの?」
ネニア「ビランチといるのは楽だよ。あとイプノとかセイもそんなに苦じゃないな。何でかは自分でも分からないけど。」
ビランチ「不思議ね。」
ネニア「そうだね。」
~~~~~
チクエ「ビランチ。ネニア。よく来てくれた。」
ネニア「で、今日は何のようなのさ。チクエ。」
チクエ「今日は天使長の任について呼んだんだ。」
ビランチ「天使長の任?どういうこと?」
チクエ「僕はそろそろもたなくなってきている。」
ネニア「何で⁉あと一億年はもつんじゃなかったの⁉」
チクエ「・・・済まないね。」
ネニア「謝ってもしょうがないじゃん!」
ビランチ「待ってネニア。で、チクエ。私たちは何故呼ばれたの?」
チクエ「次期天使長を引き受けてもらう為呼んだんだ。」
ビランチ「・・・。」
チクエ「僕は次期天使長をネニアにやってもらいたいと思っている。」
ネニア「お断りだよ。」
チクエ「・・・頼むよ。」
ネニア「だから嫌だ。」
チクエ「今すぐじゃなくていい。まだ一週間は猶予がある。三日。三日後に改めて答えを聞かせてほしい。」
ネニア「だから嫌だってば。三日と待たず答えは出てる。」
チクエ「けどね・・・。」
ネニア「チクエの前では言いたくなかったけど今まで天使長になった天使は何故かみんな衰えが来る。私は消えたくない。」
チクエ「・・・それについては案がある。」
ビランチ「どういうこと?」
チクエ「僕が天使長をやって分かったことがある。何故天使が不死であるにも関わらず衰えが来るか。それは予知神力にある。」
ビランチ「予知神力?」
チクエ「ああ。この神力のせいで代々天使長になる天使は知恵が壊れ代替わりを行う必要があるんだ。」
ネニア「だったら尚更嫌だよ。」
チクエ「しかし僕はそれを克服する方法を思いついた。」
ビランチ「それは何?」
チクエ「この予知神力によって予知を無くしてしまえばいい。」
ネニア「どういうこと?」
チクエ「ビランチ、ネニア。予知神力で見た出来事というのは何をどうしても変えられないというのは知っているね?」
ネニア「うん。」
チクエ「だったらその神力の力を使い予知神力を無くす未来を見たらどうなる?」
ビランチ「・・・理論上は必ず無くなるわね。」
チクエ「ああそうだ。」
ネニア「でもちょっと待ってよ。その予知神力って昔からある天使のルールで一人は必ず所有していなければならないってあるじゃん。」
チクエ「ああ。」
ビランチ「でもそれってルール上だけだから絶対じゃないでしょ?」
チクエ「いや絶対だ。」
ビランチ「どういうこと?」
チクエ「何故予知神力を必ず一人は持っていなければならないのか。それは世界のあらゆる均衡を崩してしまうからだ。」
ネニア「じゃあやっぱり無くせないじゃん。」
チクエ「いや無くせる。」
ネニア「何でそうなるんだ。」
チクエ「予知はもう行ったんだ。」
ビランチ「え?」
チクエ「結果僕はもう存在することに未練はなくなってしまった。」
ネニア「待ってよ。もう予知した後なの?」
チクエ「そうだ。」
ビランチ「結果はどうだったの?」
チクエ「・・・結果は僕の居ない未来だ。」
ネニア「どういうこと?」
チクエ「予知の無い未来を見た結果その未来には僕はいない。それしか分からなかった。恐らく予知神力は熾天使である君たちより下位の天使に出る。そこで君たちにはどちらかが天使長になりその予知神力を封じてもらいたいと思っている。」
ネニア「それはチクエがやればいいじゃないか。というか何で予知神力が無くなる未来がチクエの居ない未来なんだ。」
チクエ「それは予知神力の特性故だ。」
ビランチ「予知神力の特性?」
チクエ「予知神力は他の神力と違い複数の天使が持つことはない。故にその神力を無くすにはまずその神力所有者が消滅しなければならない。そしてその後新たな天使に発現させ封じる必要がある。」
ビランチ「その封じる力を次の天使長には授けるってこと?」
チクエ「いや封じる力は君たち二人に授ける。」
ネニア「何で?」
チクエ「一人で封じることが出来なかった場合に備えてだ。」
ネニア「ちょっと待ってよ。私はまだ天使長の任をやるとは言ってないよ。」
チクエ「そう言うだろうと思ってビランチも呼んだんだ。ビランチ。ネニア。三日間考えて答えを聞かせてくれ。」
ビランチ「・・・分かったわ。」
~~~~~
ネニア「どうすればいいんだよ・・・。」
ビランチ「ホントよね・・・。」
ネニア「まさかチクエがもう駄目なんて・・・。」
ビランチ「・・・そのチクエが天使長をあなたにやってもらいたいって言ってたわね。」
ネニア「・・・無理だよ。私はチクエみたいに万能じゃない。」
ビランチ「それを言ったら私だってそうよ。天界じゃ強くてもただそれだけよ。」
ネニア「・・・はぁ。どうすればいいんだ。」
イプノ「あ、ネニアじゃないか。」
ネニア「イプノ・・・。」
セイ「ビランチも一緒ですか。」
ビランチ「・・・セイじゃない。」
イプノ「どうしたんだい?二人して深刻な顔して。」
ネニア「・・・チクエがね。もう駄目そうなんだ。」
セイ「もう駄目って・・・もうですか?」
ビランチ「本人が言ってたから間違いないわ。」
イプノ「・・・あとどれくらいなんだい?チクエは。」
ネニア「一週間だって。」
イプノ「・・・何でそんなになるまで言ってくれなかったんだろうね。」
ネニア「・・・そうだね。」
セイ「天使長になった天使はいつもそうですね。一人で抱え込み人知れず壊れていく。」
ビランチ「・・・さっきね。そのチクエに次の天使長を私かネニアにしたいって言われたのよ。」
イプノ「‼」
セイ「次の天使長は・・・ネニアかビランチのどちらかになるんですか?」
ビランチ「次の天使長はネニアの予定よ。」
ネニア「私じゃない。」
イプノ「・・・。」
ビランチ「でもチクエはあなたにやってほしいって・・・。」
ネニア「私は断った。」
ビランチ「・・・じゃあ私がやった方が良いってこと?」
ネニア「それもダメだ。」
ビランチ「じゃあどうするのよ!」
ネニア「分かんないよ!」
イプノ「二人とも一旦落ち着くんだ!」
ネニア「イプノは良いよね。関係ないから。」
イプノ「・・・それはそうだけどさ。」
ビランチ「ネニア。今の言い方はないんじゃない?」
ネニア「・・・悪かったよ。でも・・・。」
セイ「・・・分かっていますよ。僕たちはあなた方の心境を理解することは出来ない。」
ビランチ「でも私たちに寄り添ってくれているのは理解出来るわ。」
セイ「・・・ビランチが天使長になる可能性はあるのですか?」
ビランチ「わたしがなると言えばなれる状態にはあるわ。」
セイ「そしたらあなたもネニアと同じ状況にあるということですか?」
ビランチ「まぁ・・・そうね。」
ネニア「それはだめだよ。」
ビランチ「じゃあどうするのよ。」
セイ「そもそも何故天使長は毎回消えてしまうのでしょうか?」
ネニア「それは予知が理由だって言ってた。」
イプノ「予知?」
ネニア「予知の何が原因なのかは分からない。」
イプノ「・・・そうなんだ。」
ネニア「・・・ビランチ。少し一人にしてくれない?」
ビランチ「・・・分かったわ。」
ネニア「・・・三日後には必ず現れるから。」
ビランチ「分かったわ。」
イプノ「それでビランチ。どうするんだい?」
ビランチ「・・・天使長の件でしょ?いざという時は受けようと思ってるわ。」
セイ「・・・消えるかもしれないのにですか?」
ビランチ「その消えるかもしれないと分かっているものをネニアにさせられないでしょ?」
~~~~~
ネニア「・・・ねぇチクエ。何で天使長を私にやってほしいの?」
チクエ「君なら天界をより良く出来ると思ってさ。」
ネニア「無理だよ。私一人じゃ。」
チクエ「僕だって一人じゃこんな愉快な天界には出来なかったさ。君やビランチといった様々な天使たちのお陰でここまで出来たんだ。」
ネニア「・・・天使長を私にやってもらいたいってことはチクエは私に不幸になってほしいってこと?」
チクエ「ネニアはいつも悲観的だねぇ~。どうしてそう思うのさ?」
ネニア「だって天使長っていつか必ず代らなきゃいけないじゃん。」
チクエ「・・・そっか。ネニアは天使長の座が何か罪を犯した者を処刑する断頭台のようなものだと思っているのか。」
ネニア「実際そうじゃん。不死の私たちが何で消滅に追い込まれるまで枯れ果てるんだ。」
チクエ「まぁそれは僕もそう思うんだけどさ。もう天使長になっちゃったから今更何をどうしても変えられない。それに嫌なことばかりじゃないよ?天使長も。」
ネニア「・・・そうなの?」
チクエ「ああ。僕が保証する。それに一番の気がかりは予知神力だろ?」
ネニア「うん。」
チクエ「ビランチと二人の時はちゃんと聞いてなかったみたいだからもう一度言っておくけどもう予知は行ったんだ。心配はいらないよ。」
ネニア「・・・何でチクエはそんなに楽観的なの?何でそんなに未来を信じられるの?」
チクエ「長の僕が信じないと誰も安心して後をついてこれないだろ?それに僕の力を僕が信じないでいったい誰が信じてくれるのさ?大丈夫。僕の勘だと予知神力は君たち二人には出ない。」
ネニア「・・・勘でしょ?」
チクエ「知らないの?僕の勘は良く当たるんだよ?」
ネニア「・・・。」
チクエ「だからもし天使の中で予知を発現した者がいたら君とビランチで助けてあげるんだ。頼んだよ。」
~~~~~
~~~三日後~~~
チクエ「やぁ二人とも。また会えて嬉しいよ。」
ネニア「・・・。」
チクエ「で、どっちが天使長になるか答えは出たかい?」
ネニア「・・・。」
ビランチ「・・・私がなるわ。」
チクエ「そっか。」
ネニア「待ってよ!ビランチ!」
ビランチ「・・・どうして?」
ネニア「だって天使長になったら何時か必ず消えちゃうんだよ?」
ビランチ「でもしょうがないじゃない。誰かがやらないと天界は混乱するわ。」
ネニア「でも・・・!」
チクエ「ビランチの言う通りだね。天界を統率する長がいないと色んな天使が困ってしまう。ならビランチ。君に問う。君に天界の長として君臨し続ける覚悟はあるかい?」
ビランチ「はい。あります。」
ネニア「・・・。」
チクエ「よし分かった。なら天使長チクエより次期天使長をビランチとすることをここに命ずる。」
ビランチ「承知致しました。」
チクエ「ではこれより天使長の神力譲渡を行う。ビランチ。ネニア。其々片手を出して?」
ビランチ「はい。」
チクエ「・・・はい完了。これでビランチは僕の時間支配を。ネニアは構築の神力を新たに得たね。君たちにはこの力で何れ発現する予知を封じてほしい。これは天使長としての命令じゃなく友人としてのお願いね。僕からの最後のお願い。じゃ頼んだよ。」
~~~~~
ネニア「・・・ビランチ。」
ビランチ「・・・何?」
ネニア「何で引き受けたの?」
ビランチ「・・・あなたを失いたくなかったから。」
ネニア「・・・ごめん。」
ビランチ「謝らないでよ。これじゃまるで私があなたに強制されて天使長になったみたいじゃない。」
ネニア「だって実際そうでしょ?ビランチは私のわがままのせいで天使長に・・・。」
ビランチ「違うわよ。大丈夫。あなたのせいじゃないわ。私は私の意思で天使長の座に就いたの。だって天界で二番目に強いのに天使長になれるなんてこんなについてることはそうそうないでしょ?」
ネニア「・・・でもごめん。私怖かったんだ。自分が消えるのが。それで結局どっちも選べずに・・・こんなことに・・・。」
ビランチ「だから大丈夫よ。それにね、チクエが去り際に言ってたの。“恐らく天使長は君の代で変わることは必要なくなるだろう。”って。」
ネニア「・・・どういうこと?」
ビランチ「“予知を引き継がないで天使長の任を引き継いだからいくら天使長といっても壊れることはないだろう。だからこんな悲劇はこれで最後だよ♪”って。」
ネニア「・・・その悲劇に自分も巻き込まれてちゃ世話ないじゃんよ・・・。」
ビランチ「・・・ほんとよね。ほんと少しくらい自分のこと考えても罰は当たらないのに・・・。」
~~~~~
チクエ「・・・やぁイプノ。セイ。来てくれて嬉しいよ。」
イプノ「・・・チクエ。」
チクエ「何か言いたそうだね。」
イプノ「君は・・・消えるのかい?」
チクエ「消えるよ。」
セイ「・・・怖くはないのですか?」
チクエ「怖いよ。」
セイ「じゃあ何故そんな平静を保っていられるんですか?」
チクエ「見ないようにしてるんだ。僕が消えるって事実を。」
セイ「・・・一緒にいても?」
チクエ「良いよ。けどもう少ししたら離れてほしいかな。」
イプノ「・・・分かった。」
チクエ「助かるよ。イプノ。君は優しいね。」
イプノ「最後くらい君の意思を通してほしいのさ。」
チクエ「そっか・・・。」
ドラーク「ねぇチクエー・・・ってあんたたち如何したの?」
イプノ「ドラーク!」
セイ「あなたもビランチから聞いてきたんですか?」
ドラーク「何を?私は暇だからチクエと話に来たんだけど・・・どったの?」
チクエ「ドラークか。運が良いね。消える前にもう一度会えるなんて。」
ドラーク「え?消える?どういう事⁉」
チクエ「ごめんね、ドラーク。僕そろそろなんだ。」
ドラーク「ちょっと待ってよ!天使長の期限はまだ一億年はあるんじゃなかったの⁉」
チクエ「その期限は予知を使ったからあと四日になってしまった。」
ドラーク「・・・何で・・・天使長は⁉次の天使長はどうなるのよ⁉」
チクエ「それなら心配ないよ。ビランチとネニアに託した。」
ドラーク「・・・・・・あなたはどうするの?」
チクエ「後はただ待つだけさ・・・そうだドラーク。それにイプノ、セイ。君たちには一つ頼みがあるんだ。」
セイ「・・・何ですか?」
チクエ「ネニアとビランチを助けてほしい。彼女たちと力を合わせてこれからの天界を盛り上げていってほしいんだ。」
ドラーク「・・・分かったわ。」
チクエ「・・・イプノ。そろそろいいかな。最後は自分の為に使いたい。」
イプノ「・・・分かったよ。チクエ。今までありがとう。それと楽しかったよ。」
チクエ「僕もさ。じゃまた会おうね。みんな。」
~~~~~
ドラーク「ねぇいったい如何いうことなの⁉チクエが消えるって・・・。」
イプノ「それは僕たちにも詳しくは分からない。ビランチたちに聞いたから。」
ドラーク「・・・そしたらビランチかネニアに聞いた方が早そうね。」
セイ「ええ。だと思います。」
~~~~~
イプノ「ビランチ。」
ビランチ「イプノ。それにセイも。どうしたの?」
イプノ「天使長の件どうなったの?」
ビランチ「私が引き受けたわ。」
イプノ「じゃあ・・・。」
ビランチ「心配しないで。もう天使長が壊れることはないから。」
セイ「どういうことです?」
ビランチ「まず私とネニアはこの話を聞かされた時何故代々天使長が壊れ消滅し代わらなければならなかったのか。その原因と思われるものを突き止めたとチクエから聞かされたわ。」
イプノ「その原因って何なんだい?」
ビランチ「予知神力よ。この予知神力の重圧によって代々天使長は知恵を壊し知恵と不老不死の均衡を保てなくなり消滅しているんだろうって言ってたわ。でも今回の天使長の座譲渡は予知を引き継がずに行ったから大丈夫だろうって言ってたわ。」
イプノ「でも彼が消えた後に突然発現しないとは限らないんじゃないのかい?」
ビランチ「それは・・・もう賭けね。彼は予知したことは変えられないから大丈夫だって言ってたけどその対象が予知だと正直どっちの法則が優先されるのか・・・。」
セイ「・・・ビランチ。私たちは先ほど彼と会ってきました。」
ビランチ「・・・そうなの?」
セイ「はい。そしてその時あることを託されました。」
ビランチ「・・・何?」
セイ「ビランチとネニアを助けてほしいと。あなたたちの治める天界を一緒に盛り上げていってほしいと。」
ビランチ「〝・・・チクエ。〟そうなの。なら私も頑張らないとね。他ならぬチクエの最後の頼みだもの。」
イプノ「そうだね。一緒に頑張ろう。ビランチ。」
ビランチ「ええ。」
~~~~~
ドラーク「・・・ネニア。」
ネニア「ドラーク。何しに来たの?」
ドラーク「チクエのことであなたを探していたのよ。」
ネニア「・・・彼はもうすぐ消えちゃうんだ。」
ドラーク「知ってる。本人から聞いた。」
ネニア「じゃあ何で来たの?」
ドラーク「次の天使長あなたかビランチなんですってね。」
ネニア「それもチクエから聞いたの?」
ドラーク「ええ。彼女たちに託したって。」
ネニア「天使長はビランチになった。」
ドラーク「そうなの?」
ネニア「私は怖くて何も言えなかった。チクエもビランチもセイもイプノもみんなみんな辛くて苦しいはずなのに私だけ自分ばっかりだ。自分が消えたくないってわがままばっかり。そのせいでビランチは天使長になっちゃったし——。」
ドラーク「ストップ!そんな自分ばっかり責めてもしょうがないでしょ?それにこれは誰も悪くないわ。」
ネニア「・・・どうしてそう言えるの?」
ドラーク「だって悲しいことではあるけれどチクエは何れ消えてしまう運命にあったしあなたが天使長を断ったのだって当然の反応。急に頼まれたら誰だって嫌でしょ?」
ネニア「でもそのせいでビランチに迷惑かけちゃった・・・。」
ドラーク「・・・ビランチは何て言ってたの?」
ネニア「自分で選んだからあなたに強制されてやるって言ったわけじゃないって・・・。」
ドラーク「そしたらそれはビランチの選択。あなたは悪くない。」
ネニア「そっか・・・そうだよね。」
ドラーク「・・・落ち着いた?」
ネニア「うん。少しは。」
ドラーク「良かった。ところでビランチは何処に行ったの?」
ネニア「ビランチは別の場所にいる。私が一人になりたいって言ったら離れてくれたんだ。」
ドラーク「そっか・・・にしても次はビランチが・・・。」
ネニア「それについては大丈夫だってビランチが言ってた。」
ドラーク「・・・何で?」
ネニア「チクエが消滅の原因が予知神力にあるからその神力を無くす予知をして消すようにしたからって言ってた。」
ドラーク「でも天界のルールで予知神力は天界で誰か一人は持ってなきゃいけないんじゃなかったっけ?」
ネニア「うん。だから多分予知神力は自分が消滅した後新たな天使に発現すると思うって。その天使は私でもビランチでもないって言ってた。」
ドラーク「・・・予知が予知で封じられるなんて・・・そんな都合の良いことがあるのかしら?」
ネニア「私もそう思ってた。だから怖いんだ。もしチクエが消えた後に私かビランチに出たら・・・。」
ドラーク「そうよね。そうなったら意味ないわよね。チクエは何か確信みたいなものがあるのかしら?」
ネニア「チクエは僕の勘は良く当たるからって言ってた。」
ドラーク「全く最後まであいつらしいわね。」
ネニア「それに無くす未来を予知したから大丈夫だって。」
ドラーク「それ根拠になってないじゃん笑。」
ネニア「だよね。その対象が予知なのにね。でも彼は自分が自分の力を信じないでどうするんだ?って言ってたよ。」
ドラーク「・・・そしたら信じてみましょうよ。彼が信じる彼の力を。」
ネニア「・・・そうだね。そうするよ。もうこれ以上彼が信じる私たちを裏切りたくはないから。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?