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天使たちの日常戦線(六章、堕天を消し去る者)

ディオ「・・・ッ!」

グラヴィーネ「何痛がってるのよ。大逆の時消された天使たちが受けた痛みはこんなもんじゃないわよ?」

グラヴィーネはディオに向かって5Gの重神力を放った。

重神力とは肉体にかかる重力を一定時間増やす神力である。

重神力は使う場所によって発動形態が異なる。

地球のような星で使用すればその核を中心に引力を発生させることで重力を発生させる。

宇宙といった星以外の場所では擬餌核を生成し、ビランチの空間消滅と同じ原理でその擬餌核に重力を発動し超新星爆発と同じ要領で爆発を起こすことが出来る。

ディオ「分かってるよ。僕が消してあげたんだからね。」

グラヴィーネ「・・・その上から目線。何とかなんないの?反吐が出るんだけど。」

ディオ「君こそ天使長でもないのに大逆で消えた全ての天使たちの怒りを背負ってるかのような態度とってるけどどうなんだい?」

グラヴィーネ「何が?」

ディオ「消えた天使たちに対して今更何をしてほしいのかな?僕たちが懺悔するとでも思っているのかな?」

グラヴィーネ「思ってないわよ。懺悔したって許さない。もう遅いのよ。謝ったって天使たちは帰ってこない。それに謝るくらいなら最初から大逆なんて起こすんじゃないわよ!」

グラヴィーネは重神力によってディオにかかるGを増やしていった。

ディオ「・・・ッ!別に・・・謝って・・・ない・・けどね・・〝今回ばかりは流石の僕でもまずいな・・・。〟」

グラヴィーネ「そのままつぶれて消えなさい!」

ディオ「・・・!」

ディオがつぶされそうになっていたところディストルが現れグラヴィーネに奇襲を仕掛けた。

ディストル「おい!ディオ!なんてざまだ。」

ディストルが奇襲を仕掛けたことによりグラヴィーネの意識が逸れディオに向けられていた重神力は解除された。

グラヴィーネ「チッ!」

ディオ「ありがとう。今回ばかりは助かったよ。」

ディストル「〝・・・グラヴィーネか。〟はしゃぎ過ぎたな。」

ディオ「・・・みたいだ。今回ばかりは素直にイプノの言うことを聞いておけばよかった。」

ディストル「・・・退くぞ。」

グラヴィーネ「逃がすわけないでしょ!」


~~~~~


セイ「・・・疲れましたね。」

オッソ「本当ね笑。」

ロッサ「あんたらは精神的な意味で疲れたかもしれないが俺は肉体的な意味で疲れた。なんせ・・・!」

オンブ「〝・・・何だ?急に体が重く・・・⁉〟」

グラヴィーネ「久々に見つけた・・・!堕天使の総本部!」

グラヴィーネは堕天使達の根城一帯に5Gの重神力を放った。

ディストル「お前らー‼グラヴィーネだ!」

ムジカ「〝・・・この声はディストル!〟」

オッソ「〝・・・成程。これはグラヴィーネの攻撃ってわけね!〟」

グラヴィーネ「さぁ堕天使ども!出てこい!今全員根絶やしてやる!」

セイ「〝上天使である私とオッソそしてイプノは辛うじて動けますが他の者には無理でしょうね・・・一体どうすれば・・・!〟」

イプノ「大丈夫かい⁉君たち!」

オッソ「イプノ!」

イプノ「大丈夫。他のみんなは僕の空間移動の神力でグラヴィーネの神力影響範囲外に移動させたから!」

グラヴィーネ「・・・まったく。いい加減天使の裁きを受けなさいよ!」

イプノ「何故だい?」

グラヴィーネ「あなたたちが多くの天使を消したからよ。」

イプノ「君たちも消したじゃないか?(オッソ。セイ。今のうちに安全な場所に逃げるんだ。)」

セイ「(・・・あなたはどうするんですか?)」

イプノ「(・・・誰かがこいつを止めてやらないとな。)」

オッソ「(あなたがおとりになるってこと?)」

イプノ「(心配ないよ。ちゃんと消えずに君たちが隠れる場所を見つけてみせるから。)」

グラヴィーネ「あいつらは天使じゃないわ。それに先に天界に仕掛けてきたのはそっちでしょ?」

イプノ「でも僕たちだって何もおかしいことを主張していたわけじゃないんだよ?(さ、行くんだ。)」

セイ「(・・・分かりました。)」

グラヴィーネ「・・・逃がさないわよ!」

イプノ「おっと!彼らを消すにはまず僕を消さないと駄目だよ♪」

グラヴィーネ「・・・考えがおかしくなければ天使を殺していいの?」

イプノ「だからそうさせたのは君たち天使だろ?君たちは僕たちを迎え撃たずに話し合いの場を設ける提案も出来たはずなんだ。」

グラヴィーネ「そんな上の話は知らない。私はビランチも本当は許せない。けど理由を作ったのはあんたたち。あんたたちが天界を攻めなければあんなにも多くの天使たちは消されなかった。」

イプノ「けどその消えた天使たちは戻らないよ?」

グラヴィーネ「そう。戻らないわ。だからあんたたち堕天使も二度と戻れないように消えなさい。消した罪は消えることでしか償えない。本当はどれだけ消してもどれだけ苦しめても足りないくらい。今までにも天使を消した堕天使は消すのが通例だった・・・なのに大逆の時だけが!大逆を起こしたあんたたちだけが!存在しているのはどういうことなの!」

イプノ「〝・・・グラヴィーネ。こいつは最愛の天使を失った悲しみと苦しみで僕たちに対する怒りに支配されてしまった・・・僕たちの責任だな。〟さぁ?どういうことなんだろうね?」

グラヴィーネ「聞いてるのはこっちよ!」

そう言うとグラヴィーネは重神力をイプノに向けて放った。

しかしイプノは神力をぶつけグラヴィーネの重神力を相殺した。

イプノ「おっと。危ないな。」

グラヴィーネ「・・・。」

イプノ「そう睨むなよ。でも考えたことはないかい?なぜ僕たちは存在出来ているのか。」

グラヴィーネ「・・・ビランチの怠惰でしょ。」

イプノ「それだったら何故ネニアは動かない?知っているだろ?君は。ネニアの実力を。」

グラヴィーネ「・・・天界最強よ。彼女の判断こそ聡明で絶対。だからビランチは天使長の座には相応しくないわ。」

イプノ「・・・確かにビランチは相応しくないと僕も思うよ。けどその聡明で絶対のネニアも僕を見逃しているのはただの怠惰とは思えないけど?」

グラヴィーネ「・・・。」

イプノ「彼女はね。人間の存在を天界全体の罪と表現していたよ。」

グラヴィーネ「天界全体の罪?」

イプノ「ああ。僕はその言葉を聞いた時実に的確な表現だと思ったよ。なんせ人間を作った途端天界は荒れたんだから。人間を蔑む者。認めぬ者。危害を加える者。成長を促す者。見守る者。様々な立場の者や感情を生み出した。」

グラヴィーネ「・・・それが何だっていうの?」

イプノ「試練なんだよ。全て。ビランチが失敗したこともそれに対して僕たちが怒ったことも。行動を起こした結果を憎む君たちの感情も全てが何れは越えていかなければならないものなんだ。だから——。」

グラヴィーネ「だから消さないでくださいってこと?元とはいえ熾天使だったあんたが命乞いでもしてるのかしら?」

イプノ「〝・・・もう彼女を天使の心に戻すのはだめなのか・・・。〟」

グラヴィーネ「天使を消した奴を消してはいけない理由なんてないのよ!」

イプノ「・・・!」

グラヴィーネが重神力を放とうと手を前にかざしたその時——。

ペスト「そこまでだ。グラヴィーネ。」

ピオージャ「二人とも、ここは一旦こらえてくれねーか?」

ペストとピオージャが二人の間に立ちふさがった。

グラヴィーネ「・・・揃いも揃って何で止めるのよ。」

レナ「ビランチの呼び出しだ。」

アッズ「ったく。派手に暴れ過ぎだ。」

ヴェン「流石のビランチでも今回のあなたの行き過ぎた行動は見過ごせないそうです。」

グラヴィーネ「・・・何?あんたたち。堕天使の味方をするっていうの?」

デーチ「違う。俺たちは人間に被害が出かねない君のやり方を黙ってみているわけにはいかないんだ。」

レナ「そういうことだ。今すぐ判断部門にこい。」

グラヴィーネ「・・・分かったわよ。」

ピオージャ「ということなんでここはこれで見逃してくれませんかね?」

イプノ「いいよ。君たちの謙虚さに免じて特別に見逃してあげるよ。」

ヴェン「感謝します。」

ペスト「じゃ、行くぞ。」

グラヴィーネ「ちょ、引っ張んじゃないわよ。」

ペスト「はいはい・・・ってデーチ。来ないんですか?」

デーチ「イプノに少し話があってな。後から行く。」

ペスト「了解です。」

イプノ「・・・で、話って何だい?」

デーチ「一言だけだ・・・グラヴィーネのことありがとう。」

イプノ「・・・どういうことだい?」

デーチ「ネニアからの伝言だ。」

イプノ「・・・成程〝・・・直接言いに来いよな。まったく・・・。〟」


~~~~~


アッズ「連れてきたぜ。」

ビランチ「みんな済まないわね。」

ヴェン「いえ丁度手が空いていましたから。」

トゥオ「・・・怖かったですけどね汗。」

ビランチ「笑・・・じゃ早速何でこんなことをしたのかを聞かせてもらえるかしら?」

グラヴィーネ「・・・。」

ヌーラ「何か思うことがあって故の行動なのではないのですか?」

グラヴィーネ「・・・何でってじゃあ逆に聞きますけど私たち天使がイプノたちを野放しにしている理由は何ですか?」

ビランチ「・・・それは。」

グラヴィーネ「地上に被害が出るからですか?それとも今は更生しているとでも思っているからですか?教えてくださいよ!」

ビランチ「・・・〝困ったわね。〟」

フォルテ「〝・・・今グラヴィーネがビランチに聞いているのは何故堕天使を野放しにしているのか・・・じゃない。何故堕天使を消してはいけないのか。罪を犯したから償う機会を与える。消すより存在させるほうが償いになる。彼らを堕天使にさせたのは僕たちの罪でもあるから存在させることで罪を忘れないようにしている。もっともらしい理由はいくつも挙げることは出来るだろう。けどそれじゃ彼女は納得しない。何故なら彼女が求めているのはもっと本質的な答えだからだ。でもそんなものはない。何故ならこの質問の本質は何故天使は天使を消してはいけないのか。それと同義だからだ。倫理的道徳的な作られた答えなら幾つもあるが本質的にはない・・・どうする。ビランチ。〟」

グラヴィーネ「・・・答えられないんですか?説明出来ませんか?」

アッズ「おい、そろそろ・・・。」

グラヴィーネ「あんたたちは黙ってて!」

ペスト「・・・流石にそんな言い方はねぇだろ。こっちがどんな思いでお前をここまで連れてきたと思ってんだ!」

ビランチ「ペスト。ここは抑えて・・・そうね。何であたしたちがイプノたちを野放しにしているかだったわね。それはね。とても個人的な理由よ。」

ヌーラ「〝・・・ビランチ。天使長の立場よりも彼女の心の救いを優先するんですね・・・!〟」

グラヴィーネ「個人的な理由・・・ですか?」

ビランチ「ええ。単純に彼らを消したくないって思ってるの。」

グラヴィーネ「・・・何故ですか?」

ビランチ「今でもイプノが大切な天使の一人だから。」

グラヴィーネ「どういうことですか?」

ビランチ「・・・彼らが何故大逆を仕掛けたと思う?」

グラヴィーネ「・・・人間を一から作り直す為ですよね。」

ビランチ「それは大義名分。本当は違うわよ。」

グラヴィーネ「じゃあ何で仕掛けたんですか?」

ビランチ「人間を中途半端に作った私たちを許さない為よ。私たちは人間をつくるという大きなことを失敗したの。人間からしたらたまったもんじゃないわよね。でも私たちは進むと決めた。イプノたちも決めたのよ。私たちを許さないって。だから私はイプノを追放しながらもずっと地上に存在させているの。お互い罪を犯した者として。」

グラヴィーネ「・・・でもそれはビランチがイプノを消さない理由であって堕天使を消してはいけない理由にはなりませんよね?」

ビランチ「まぁ・・・そうね〝・・・どうしても許せないのね・・・どうしましょう。〟」

ネニア「じゃあ私が説明してあげるよ。堕天使を消してはいけない理由。」

グラヴィーネ「・・・ネニア!」

ネニア「ビランチ。久しぶり。」

ビランチ「・・・久しぶりってあなた何しに来たの?」

ネニア「グラヴィーネに話をしに来た。グラヴィーネ。何故天使が堕天使を消してはいけないのか知りたいんでしょ?」

グラヴィーネ「え、ええ・・・!」

ネニア「じゃあ一緒に地上に行こう。そこで話をしてあげる。」

グラヴィーネ「・・・分かった。」

ネニア「そういうことだからビランチ。色々騒がせたね。」

ビランチ「え、ええ・・・。」

フォルテ「〝・・・ビランチでも説得出来ないグラヴィーネをどう説得するんだ?〟」


~~~~~


グラヴィーネ「で、消してはいけない理由って何なの?」

ネニア「そう焦らないで。」

グラヴィーネ「でも・・・!」

ネニア「大丈夫。私はイプノやビランチみたいに個人的理由を持ち出して消しちゃダメなんて説教じみたことは言わないから。」

グラヴィーネ「・・・?」

ネニア「大分奔走したみたいだね。」

グラヴィーネ「だってみんな嘘ばっかりつくんだもん・・・。」

ネニア「・・・そうだね。〝今のグラヴィーネにはそう感じるかもしれないね。〟」

グラヴィーネ「何でみんな堕天使が存在していて平気なのよ。何で何にも悪いことしていない天使が消されなきゃいけないのよ・・・。」

ネニア「・・・そうだね。受け入れきれないよね。耐えられないよね。」

グラヴィーネ「ねぇネニア。教えてよ。何で堕天使を消してはいけないの?」

ネニア「・・・そうだね。その前に私はグラヴィーネに謝らないといけないことがある。」

グラヴィーネ「・・・何?」

ネニア「さっき私は堕天使を消してはいけない理由を教えてあげるって言ったけどそれは出来ないんだ。」

グラヴィーネ「・・・ここまで来てどういうこと⁉」

ネニア「ここだけは堪えて最後まで話を聞いてくれない?まずグラヴィーネは堕天使をどうして消してはいけないか分からないって言っていたよね。」

グラヴィーネ「・・・ええ。」

ネニア「それってさ、突き詰めると天使は何故天使を消してはいけないのか?って問題と同義ってことでしょ?」

グラヴィーネ「・・・まぁそうなるわね〝・・・認めたくないけど根幹は同じだし。〟」

ネニア「つまりグラヴィーネの引っかかりを解くにはこの問題に向き合わないといけない。天使なら一度は考える問題だね。」

グラヴィーネ「でも誰も正解を出せていないわ。」

ネニア「そうだね。」

グラヴィーネ「ネニアは出せたの?」

ネニア「出せていないよ。でもこの問題を考えていく中で新たな疑問は出てきたんだ。」

グラヴィーネ「・・・その疑問って何?」

ネニア「私たち天使が存在していい理由は何か。消していい理由を考えるならその反対の存在していい理由にも言及する必要があるよね。」

グラヴィーネ「〝・・・確かに〟・・・で、そっちの問題の答えは出たの?」

ネニア「出なかった。でもこの両端を考えたことでまた新たな問題が出たんだ。“そもそも天使の存在とは理由で片づけることの出来る問題なのか。”ってね。」

グラヴィーネ「・・・どういうこと?」

ネニア「つまり論点がそもそも違うんじゃないか?ってこと。理由があるから存在出来る。理由がないから消していいで論じる内容ではないんじゃないか?ってこと。」

グラヴィーネ「・・・まだ分かんない。」

ネニア「グラヴィーネ。今の問題を人間で置き換えてみて。人間は同じ人間を何故殺してはいけないのか。」

グラヴィーネ「それは下界のルールで定められているから・・・。」

ネニア「それはビランチやイプノが言う表面的な理由だ。それに人間は同じ人間を何故殺してはいけないか?って問題の前に何故存在しているのか?がくるでしょ?」

グラヴィーネ「それだったら分かるわ。私たちが生み出したから・・・あ、そういうことか!」

ネニア「分かった?そう人間の場合は何故殺してはいけないのか?の前に何故存在しているのか?に行きつきその終着点は私たち天使が生み出したから。で落ち着く。つまり人間の存在は理由ではなく結果で論じるのが適切なんだ。何故存在しているのか?じゃない。天使が生み出した結果なんだ。」

グラヴィーネ「そして私たちは人間の行いを悉く無視している。」

ネニア「ああ。人間は最終的に独立するべきって一つの考えのもとでね。そのせいかは分からないけど人間には随分と過酷な道を歩ませたように思うよ。けどその人間を生み出したことで一つの可能性のようなものが見えてくる。」

グラヴィーネ「・・・私たち天使もまた何者かの意思によって生み出されたのかもしれないって可能性ね。」

ネニア「そう。でもそう考えるともうキリがない。」

グラヴィーネ「・・・確かに。」

ネニア「そしてここまで世界が広がってしまうとまた一つ疑問が出てくる。」

グラヴィーネ「・・・何?」

ネニア「本質って何だろう?ってこと。さっき私はイプノやビランチの考えを表面的と表現したよね。でももし世界が何者かの意思によって作られていようがいなかろうがその可能性が出てきた時点で私たちの本質は一体どこにあるのか?って話になってくるよね。」

グラヴィーネ「・・・確かに遥か上の存在がいるのだとしたら私たちの立場は人間と大して変わらない存在だもんね。」

ネニア「そう。私たちが人間を感知できないところから見ているように未知の存在が私たちを見ているかもしれない。私たちが人間の想像が及ばない存在のように未知の存在も私たちのことをずっと遠くから見ているのかもしれない。」

グラヴィーネ「でもそうしたら私が堕天使を憎んでるのも小さい問題だってこと?」

ネニア「そういう見方が出来ちゃうよね。残念ながら。とても小さな無にも等しい存在が抱く小さな問題。でも私はそうは思わないな。」

グラヴィーネ「・・・どうして?」

ネニア「・・・また人間を引き合いに出しちゃうけど彼らが消えることって私たちにとって小さいこと?」

グラヴィーネ「小さくはないわ。だって人間の命は私たちにとっても大事だもん。」

ネニア「だよね。私たちでも人間たちでもいくら何者かの意思で生み出されたとしてもその生み出された者にとってはその問題はとても大きくてその者の命はその者にもそれに関係する者にとっても大切なものだ。だからグラヴィーネ。堕天使が憎かったら憎んでいいんだ。それはグラヴィーネにとって大切なものなんだよ。消された天使に対する思いも消した堕天使に対する怒りも憎しみも。そしてイプノたちはそれを受け止める責任がある。」

グラヴィーネ「・・・。」

ネニア「でもあんまりやりすぎるとビランチが止めに入る。レナたちも止めに入る。それは彼ら彼女らの大切なもので彼ら彼女らの意思だ。だからグラヴィーネは何度でもイプノたちを狙ってもいいしイプノたちを何度でも消そうとしてもいい。ただし次狙う時はもう少しだけ人間の命を脅かさない程度にしようね。」

グラヴィーネ「・・・分かった。」

ネニア「落ち着いた?」

グラヴィーネ「うん。大分。特に天使を殺してはいけない理由がないって正直に話してくれたこと。その上で更に肯定してくれたことが嬉しかった。」

ネニア「そっか。まぁイプノかビランチなら最後には必ず否定するからね。」

グラヴィーネ「そうよ!直接は言わないけど“でも・・・。”って意味合いの言葉が必ず入ってくる。私だって分かってるわよ。イプノやディストルだって私と同じように怒りを抱えているのを。あのイプノが大逆を起こしたのもディストルが参加したのも泣きたくなるような怒りがあるからだって。でも私だって時々抑えられなくなるの。」

ネニア「・・・それが分かっているからイプノはグラヴィーネといつも正面から向かい合っているのかもね。」

グラヴィーネ「・・・そうかもしれないって思うとなんかむかつく。」

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