前提条件世界{四章、洗練の破壊と平和の再生}
これは、俺と彼女のどこまでいっても相容れない・・・そんな話・・・。
「・・・お前たち。今まで私から何を習ってきたんだ?何故印紋を制限している。」
「・・・使えないのです。」
「・・・?」
「私は、守印と柔軟印が。そして先守は攻印と強硬印がそれぞれ使えないのです!」
「・・・基礎中の基礎だぞ。何とも思わんのか。」
「・・・俺は、大切な人が守れればそれでいい。」
「ヨルディエ。お前は?」
「・・・使えないのであれば、他の印紋で補うまでです!」
「(・・・まったく。)半端者め。そんな調子だから、お前らは、私に印紋一つ食らわせることが出来んのだ。先守。先程、お前は大切なものが守れればいいと、そう言ったな。ならば、まず私から己の身を守ってみせよ。攻印。」
そう言うと師匠は俺に攻印を放ってきた。
「・・・守印‼」
俺は何とかその攻印を守印で防いだ。
「攻印。」
「守・・・グッ。」
俺の守印では力不足なのか、師匠が手を抜いていたのか、ただの攻印にもかかわらず、守りを目的とした印紋にもかかわらず、今度は防ぎきることが出来なかった。
「食らってどうする。命乞いでもするか?したところで、敵は攻撃を止めてはくれないだがな。攻——。」
「攻印{剣}!」
師匠が攻印を放とうとした瞬間、ヨルディエが剣の形を模した攻印によって割って入って来てくれた。
「守印。・・・今のは少し良かった。・・・ヨルディエ。お前に課題を与えてやる。私が出す先守への攻撃を止めさせてみろ。私が攻撃に集中出来なくなるくらい、攻めることが出来れば、今日の修練は終わりにしてやろう。」
「・・・元々止めるつもりでしたので。」
「よかろう。攻印。」
「守印{絶}!」
俺はヨルディエの修練のダシに勝手に使われながらも、今度こそ防ぎ切ろうと先程よりも効果の高い守印を繰り出した。
「攻印{連}!」
「守印。攻印。」
師匠はやはり師匠なだけあって、俺たちがどれだけ印紋の精度を上げようと変わらず攻印と守印で余裕に対応して見せた。
「守印{絶}!」
「攻爆印{連}!」
「守印。攻印。」
「(・・・このままでは埒が明かない。ならば!)守印!網印{糸}!」
俺はこの堂々巡りを終わらせる為、あえて守印で余力を作り、網印{糸}という、魚の乱獲に使うような網を印紋で再現し師匠を捕まえることを試みた。
「攻印{飛雷}。」
しかし俺の二つの印紋は、師匠のたった一つの印紋、攻印{飛雷}によって相殺されてしまった。
だがこの時、僅かなスキが生まれた。
「攻硬印{槍}!」
「・・・守印!」
「構造化!攻硬印{槍}!」
俺はヨルディエの印紋を構造化によって再現し師匠にぶつけた。
「強硬印{楔}!」
そしてヨルディエは師匠を追い込む為、さらなる印紋を放った。
しかし、師匠の球体を作りその中の空洞に身を置くことで地面を含めた死角を無くした守印で俺たちの印紋は全て防がれてしまった。
「守印{球}。・・・やっと、止められたな。ヨルディエ。」
「はい!何とか隙が生まれたので!」
「先守も、中々の機転だったな。ヨルディエの印紋を構造化にて、再現し、加勢したのは良かった。」
「それはあなたがわざと隙を見せてくれたからでしょう?あそこでわざわざ{飛雷}を使うなんて、わざととしか思えない。だって、実際、攻印だけでも俺は手も足も出なかった。」
「それでも良くやった。お前も存外やれば出来るじゃないか。」
「ありがとうございました。」
「じゃあ、お前たち。飯にするぞ。早く準備しろ。」
「は、はい・・・。」
俺たちは、修行中ということもあり、へとへとの中、夕食を作ることになった。
~~~~~
そして、数年後。
「・・・ダメだ。」
「何故です!私では実力不足ということですか⁉」
「ああ。」
「何が足りないというのですか⁉私の何が⁉」
「いいから出ていけ。もう成人になったんだ。各々一人で生きていけ。」
「・・・では、お世話になりました。」
「ああ。・・・先守は出ていったぞ。お前も早く出ていけ。」
「・・・ッ‼お世話になりました。ですが、私は必ずもう一度ここに戻ってきます!今より更に力をつけて・・・‼」
~~~~~
さらに数年後。
「・・・先守様?」
「お、悪い悪い。お茶を頼んでいたんだったな。ありがとう。」
「・・・どうかなさったのですか?」
「・・・昔のことを思い出していてな。」
「それは、クルデーレ様との修行の日々で御座いますか?」
「ああ。それと、追い出された日のことをな。」
「・・・修行、大変でしたか?」
「ああ笑。鬼のような扱きだった。だが、そのお陰で、今日までこの争いの絶えない時代でも生きていられる。」
「・・・ですね。私たち一門。感謝しなければ。」
「お前たちは別に感謝しなくてもいいんだぞ?実際、戦いに関しちゃプロだったが、一人間としては、酷く欠けた師匠だった。」
「ですが、私たちは先守様の力により、今の今まで生きてこられたのです。そのお師匠様にも同様に恩義があります。」
「ありがとな。にしてもずっと昔から引っかかっていることがあるんだよな・・・。」
「・・・それは何でしょう?」
「俺がいつものように修行を受けていた時、印紋師を継ぐ気があるか聞かれたことがあってな。その時俺は、正直にないと言ってしまってな。すぐに、いつもの鬼のような扱きがくると思ってたんだが、その時は逆に修行が終わったんだ。」
「・・・何ででしょうかね?」
「さあな。最初は俺のやる気のなさに呆れたのかと思ったがどうもそんな感じじゃなかった。師匠は笑ってたよ。なんか“当然だよな”と言わんばかりの顔だった。同時に、とても悲しそうだった。その顔がどうしても忘れられないんだ。」
~~~~~
「(・・・あれから、何年も経ったが、やはり、クルデーレ様との修行の日々に比べれば生ぬるいな。全然力が上がらない。今は昔と比べて大分平和になってしまったからな。仕方ないか。それにしてもクルデーレ様は何故あの時私たちを追い出したのだろう。・・・そろそろ、もう一度クルデーレ様のところに行ってみるか。)」
~~~~~
「おばさん。最初はすっごい怖い人かと思ったけど・・・本当は優しい人だったんだね!」
「そうでもないさ。私は、お前が私の印紋が見えると言って・・・って揉むな!」
「だってぇ~~~。」
「・・・怒。」
「わ、分かったよ汗。それにしても、さっきから何を悩んでるの?」
「・・・何の話だ?」
「クルデーレおばさん、僕がさっき揉んでた時は上の空で、気づかなかったよね。」
「・・・怒。・・・まあ、少し引っかかっている言葉があってな。」
「何?」
「もう何年も前の言葉なんだが、私には先守という弟子がいてな。昔、そいつに印紋師を継ぐ気はあるかと聞いたことがあってな。そいつは、それを聞いた時、きっぱりとないと言ってな。その言葉だけは今でも鮮明に覚えている。」
「どうして?」
「何故か分からないが、少し、嬉しかったんだ。当時私はあいつらに印紋術を教えながらも、今後、印紋術が必要なのか疑問に持ち始めていた。今の時代、平和には程遠いが、それでも数年前よりは確実に平和に近づいている。ということは、これより先の時代は更に平和へと近づくだろう。そんな平和な時代に私やヨルディエのような印紋師は似合わない。その点、先守はまさに平和な時代な印紋師としてぴったりだ。私はあいつに新たな印紋術の可能性を垣間見たんだ。しかし、同時に私のやり方は後世に残すべきではないと思ったんだ。」
「・・・だから、弟子を取ることをしようとしないんだね。」
「ああ。私やヨルディエのような印紋師は昔であれば、重宝しただろう。だがこの先の世には他者より優れている印紋師など必要ない。己と向き合い、どんな状況においても、最善を保ち続けられる。そんな印紋師が必要なのだ。」
「・・・そうなんだね。」
「・・・真剣な顔で揉み続けるな!・・・もういい。私は少し出かける。ヨハト。お前に少し小遣いをやるから、お前も少し遊んで来い。」
「分かった!」
「じゃ、無駄遣いするなよ。」
~~~~~
「・・・先守様‼」
「ん?どうした?」
「・・・例の件です!」
「・・・分かった。すぐ行く。」
~~~~~
「そんな・・・私たちが何をしたっていうんだ!」
「・・・大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫に見えますか?家を破壊され、町を破壊されこれからどう生きていけばいいのか・・・。」
「・・・これをやったのは冷刻の魔女ですか?」
「・・・そうですが、それが・・・」
「安心してほしい。この土地もあなたの家も全て元に戻る。」
「それは・・・一体・・・どういう・・・?」
「創印。」
「・・・これは‼」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・家や土地が、壊される以前の状態に戻って・・・‼」
「・・・・・・・・・ふう。」
「あの・・・これは・・・何がどうなって・・・?」
「私の力で戻しました。(・・・にしてもヨルディエめ。あれほど力を無闇に使うなと言われていたのに。民間人に危害を加えて一体何を考えているんだ。)」
「・・・もしかして、先守様ですか?」
「先守様⁉あなたが、かの有名な伝説の陰陽師。結野先守様でしたか・・・‼」
「・・・まあ、確かにそうなんだが・・・あまりそう呼ばれるのは慣れないな。とりあえず、あなたたちの土地は無事直した。これで失礼するよ。」
「もう行かれるのですか?せっかく直して頂いたので、何かお礼を・・・。」
「いや、お礼されることではない。これは私の問題でね。」
「・・・どういうことですか?」
「ヨルディエと私のこの力は実は同じ人から習ったものでね。つまり同門なんだ。だが私は彼女が何を考えているのかさっぱり分からない。だが、分からないからといってこのような愚行を放っておくことは人としてないと思ってな。こうして来て、直接直しているのだ。・・・済まないな。」
「いえ‼こうして足を運んで頂けるだけでとてもありがたいです!」
「・・・それでも、済まないな。土地や家は戻せても、あなたたちの心は酷く傷ついたことだろう。・・・今度こそ失礼させてもらうよ。あっと。言い忘れるところだった。もし、あなたたちの知り合いで同じような被害にあっている者がいれば、私たち結野一門の者を捕まえて冷刻の魔女が出たと言ってくれ。すぐに駆けつけよう。」
「ありがとうございます!」
「では、気を——。」
ドン‼
「何だ⁉」
「・・・私が行こう。(・・・ヨルディエ。また来たのか?)」
~~~~~
「うわああっっ‼」
「(・・・何?・・・ヨルディエじゃないのか?)」
「は~い♪ここに冷刻の魔女がいるって聞いて来たわよ~?」
「・・・残念だが、彼女はもうここにはいないよ。」
「あら残念。でも、それって本当かしら?」
「本当だよ。」
「じゃ、ここの建物を全部破壊して確認するしかないわね!」
「守印。」
俺は彼女の目に見えない力を守印を使って防いだ。
「(・・・⁉)」
「どうかしたのかな?」
「(・・・どういうこと?攻撃が効かない・・・‼)・・・ハッ‼」
「守印。」
「(・・・まただ・・・これはまるで・・・。)」
「この町は壊させないよ。」
「・・・あなた。クルデーレって知ってる?」
「ああ。知っているよ。それが?」
「・・・同門ね?あなたたち。」
「同門ではないな。戦ったことがあるのかな?」
「まあね。」
「強かっただろう。彼女。」
「・・・ええ。自分が嫌になるくらい。」
「師匠だからね。私の。」
「(・・・‼)・・・そうなの。」
「同門はヨルディエだ。」
「(・・・‼)」
「この様子じゃ、クルデーレには手も足も出なかったようだな。」
「・・・チッ‼」
「消えたか。」
「・・・先守様。」
「もう大丈夫だ。・・・それと、ここも元に戻るよ。」
「重ね重ね、ありがとうございます!」
~~~~~
「ったく・・・どいつもこいつもカス雑魚ばっかじゃねえか。・・・誰だ!」
「クフフフッッ。流石、世界最高の殺し屋。気配には敏感ですね。」
「(・・・なんだ。ただのクソガキじゃねえか。)・・・俺に何の用だ?」
「・・・初対面で不躾なのは分かっているのですが、今回はあるお願いをしに参りました。」
「・・・何だ?」
「クルデーレを狩るのに協力して頂きたい。」
「・・・協力だと?」
「はい。私一人では残念ながら彼女は倒せない。なので、一緒に協力して倒しましょう。もちろん見返りはあります。クルデーレの懸賞金です。この額をそっくりそのままあなたに差し上げましょう。・・・如何ですか?」
「・・・却下だ。」
「何故です?」
「話が旨過ぎる。それに、一緒にと言ったが、お前は戦えるのか?俺にだけ戦わせて寝首をかこうとしているようにしか思えねえな。」
「・・・成程。なら、均等に三等分というのはどうでしょう。」
「三等分だと?」
「ええ。先程私は少し、あなたに有利過ぎる条件を提示致しました。ですが、私は本来、あなた以外にももう一人声をかけるつもりでした。」
「だから三等分ってわけか。・・・で、そいつの名前は?」
「ツィオ・ボンディーレ。」
「・・・戦争屋か。」
「ええ。それと私の力を疑っておいででしたが、それは今ここで、試してみれば分かること。どうしますか?」
「・・・じゃ、早速試させてもらうぜぇ‼」
剣帝がそう言うと霞の少年は体に目に見えない膜を張った。
「(・・・身体強化‼)」
「(・・・刃が通らねえ‼)」
そして、目に見えない力を自分を中心として外部に放った。
「(・・・からの斥力!)」
「クッ・・・‼」
「(・・・そして、一点集中型念力弾!)」
続けて飛ばされた剣帝を追い込む為、人差し指に目に見えない力を集中させ、それを放った。
「痛!(・・・鉛玉でもぶち込まれたか⁉・・・いや、これは空気の塊か‼超圧縮された空気の塊がピストルの弾みてーに飛んできやがる‼なら、こっちは・・・。)飛ばすぜぇ‼」
剣帝はそう言いながら、剣を振り回し霞の少年へと突撃した。
「(・・・何⁉真っすぐに向かってきているのに何故か念力弾が逸れていく・・・‼)身体強化‼」
剣帝は剣を振った時の風圧を利用し、目に見えない力の軌道を逸らしたのだ。
「遅え‼」
霞の少年は攻撃が通らないと判断し、防御に回ったが少し攻撃を食らった。
「クッ‼」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「確かに、そこらのクソガキよりは出来るな。」
「あなたこそ、そこら辺の大人よりは強いですね。」
「カスが。・・・協力はしねえ。各々勝手に襲う。いいな?」
「ええ。ですが、日時だけはお伝えいたしましょう。」
「・・・当然だぁ。」
~~~~~
「先守様‼」
「どうした?」
「あの・・・それがですね・・・‼」
「使いの者など要らん。私と先守の仲だ。」
「ヨルディエ・・・‼」
「ひ、久しぶりだな!先守‼」
「・・・。」
「な、何だ?」
「君は下がっていいよ。俺が対応する。」
「はっ‼」
「ヨルディエ。とりあえず客間に来い。」
「わ、分かった。」
~~~~~
「何の用だ?」
「・・・単刀直入に言う。私と一緒にクルデーレ様に会いに行ってほしい!」
「・・・何故?」
「それは・・・私か先守。どちらかを真の印紋師として認めてもらう為だ。」
「その為に、人様の土地を壊したのか?」
「・・・え?」
「お前、巷じゃ冷刻の魔女と呼ばれているのだろう?」
「・・・。」
「何が目的なんだ?」
「(・・・口が裂けても、力を上げる為とは言えないな。)」
「答えられないのか?」
「・・・済まない。」
「幸い、けが人や死人が出ていないがな。」
「(そりゃ、空き家を狙って試しているからな・・・。)」
「全く、あれだけ師匠に言われただろ。無闇に力を使うなと!」
「・・・済まない。返す言葉もない。」
「いい年して、子供じゃあるまいし。・・・まあ、この話はここまでにしよう。で、何の用だったんだっけ?」
「・・・私と一緒にクルデーレ様に会いに行ってほしい。」
「・・・それなんだが、行っても意味ないと思うぞ?」
「何故だ?」
「あの人は、誰にも継がせる気がない感じだったからな。」
「・・・でも、もう20年も経っているんだ。流石のあの人も心変わりしているかもしれない!」
「(・・・希望的観測だな。だが・・・)分かった。それでヨルディエが納得するなら行こう。クルデーレのところへ。」
「本当か⁉やった!ありがとう!先守‼」
「(やれやれ・・・。)」
~~~~~
「ったく・・・ここんとこ失敗続きだわ・・・誰‼」
戦争屋は草むらに向けて目に見えない力を放った。
「・・・いきなり、念力とは随分なご挨拶ですね。」
「今私はむしゃくしゃしてんの。要件は何?聞いてあげるから手短に話しな!」
「クルデーレを——。」
「その名前は今私の前では禁句よ!(・・・!)」
戦争屋は霞の少年に再び目に見えない力を放った。しかし・・・。
「・・・せめて、話くらいはさせてくださいよ。」
「(あたしの念力を同じ念力で相殺した・・・?)あなた何者?」
霞の少年は同じ目に見えない力で身を守った。
「喋ったら攻撃して来て、今度は質問ですか・・・。」
「いいから答えなさい。何者なの?」
「・・・使役者、とだけ言っておきましょう。」
「・・・クルデーレを、何?」
「倒しませんか?」
「(・・・‼)」
「見返りは彼女の懸賞金。そして戦力はわたしとあなたとそしてスパード・ヴィータを想定しています。ヴィータの方は各々勝手に動くという名目で協力を了承済みです。」
「・・・。」
「・・・どうですか?」
「良いわよ。協力してあげる。」
「感謝します。」
「但し!戦いの前に全員で揃って作戦会議をするわよ。」
「それは、わたしも同意見ですよ。彼女は侮れない。」
「・・・分かってんじゃない。」
~~~~~
「ふんふふっふふ~~ん♪クルデーレおばさんから貰ったお小遣いで何買おう?」
「・・・参ったな。」
「ん?どうしたんだろう?」
「ともー!宿はまだー?」
「もうすぐ着くからねー晴天丸。(・・・まずい汗。)」
「おじさん!何か困ってる?」
「・・・君は?」
「僕はヨハト。もし道に迷ってるなら僕が案内しようか?」
「(・・・助かった‼)じゃ、じゃあ、B地区ってどこか分かるかな?」
「それなら、ここからすぐだから一緒に行ってあげるよ!」
「ありがとう!助かるよ!」
「ともーこの人誰ー?」
「僕はヨハトっていうんだ!君の名前は何て言うんだい?」
「ぼくはせいてんまるっていうんだ!いま、ともとりょこーちゅーなの!」
「そっか!じゃ、楽しくいかないとね!」
「うん!」
~~~~~
「・・・ったく、あのマセガキめ。好き放題触りやがって。」
「久しぶり~~!お・ば・さん♪」
「また来たのか・・・。」
「そう。でも今度は一人じゃないのよ♡」
「よおぉ!クルデーレ。お初だなぁ‼」
「・・・思ったより小さいですね。」
「(・・・妙なクソガキと殺し屋のガキか。)」
「じゃ、早速飛ばすぜぇ‼」
「攻印。」
剣帝がそう言うと、師匠は剣帝の動線に印紋を出現させた。
「(念力・・・‼)」
師匠が手を前にかざしたことで何かしかけられたと思った戦争屋はとりあえず、目に見えない力を放ち、師匠の攻印を偶然にも相殺した。
「(ほう・・・まさかのコンビプレーか。)」
「(超圧縮念力弾!)」
霞の少年は師匠に向けて、5ミリほどの鉄板なら簡単に貫通するほどの目に見えない力を放った。
「守印。(・・・守印にヒビか。)」
「(・・・手ごたえアリです‼)」
師匠は長年の戦いの勘でそれを防いだが、印紋に少しヒビが入った。
霞の少年は師匠の少し曇った顔に手ごたえを感じていた。
「終わりだぁ‼」
剣帝は師匠に一太刀を浴びせようとしていた。
「守印(強硬)。」
師匠は剣帝の剣を印紋で弾いた。
「・・・クッ‼(弾かれただとぉ⁉)」
「短い命だったな。殺し屋。攻印{滅}。」
師匠は剣を弾かれ隙が出来た剣帝の腹に印紋を叩き込み、消し炭にしようとした。
「(瞬間移動!)」
しかし、戦争屋の機転によって剣帝は無傷で師匠の印紋を躱した。
「・・・戦争屋か。」
「大丈夫⁉」
「ああ!救われた!」
師匠の隙を狙う為、今度は霞の少年が先程の目に見えない力を立て続けに飛ばした。
「(超圧縮念力連弾!)」
先ほどの守印のヒビで学んだ師匠は、守印を連系で中心に大きなものを1つ。小さいものをその周囲に8つ、計9つ出現させ、その全てに強硬印の効果を付与した。
「守印(連){強硬}。」
ドドドドドドドドドッッッ!
「・・・どうです!」
「・・・フフッ。久々に感じる実戦の空気だ。」
当然、霞の少年の目に見えない力は師匠の印紋にヒビ一つ入れることが出来ず、防がれた。
「(あれでダメなの・・・?)」
「(チッ!ならば・・・‼)ボンディーレ!」
「・・・了解!」
剣帝の掛け声により、戦争屋は空高く飛び上がり目に見えない力を限界まで圧縮し始めた。
その目に見えない力により、周囲は肺が焼けそうな程の熱気に包まれた。
「飛ばせぇ‼ジオーネ!」
「・・・どうなっても知りませんよ!」
霞の少年は剣帝の指示で、剣帝を物凄い速さで師匠の元へと飛ばした。
「・・・守印{球}。」
「(・・・ッ!力の方向を逸らされたか!)グッ!・・・——。」
しかし師匠はその剣帝を守印によって力の軌道を変え、建物に突っ込ませた。
結果、剣帝は建物を2棟程貫通し、3棟目の真ん中あたりで止まった。
そして、気を失った。
「・・・これなら力を逸らせないでしょ!念力・水爆殺!」
戦争屋は空高くから超高圧縮された超高温の目に見えない力を師匠の方へと向け爆発させた。
「それは自分で食らってもらおう。守印(連){反射}。」
師匠は守印を、中心に大きなものを1つ。それを囲うように小さいものを8つ×3周分。計24+1=25個発動させ、その全てに反射効果を付与した。
加えて小さい守印は少しずつ角度をつけ、間違っても地上にその力が逃げないよう、全ての力が空に霧散するよう調整して。
「・・・そんな、念力が返って・・・ぐああああっっっ!」
戦争屋は自分が放った目に見えない力をモロに食らい、まるで撃ち落された鳥のように地面に落ちていった。
「(何たることだ。世界で五本の指に入る実力者たちがこうもあっさりと・・・。)」
「攻印{穿}。」
師匠は剣とも槍とも似つかぬ形の攻印を霞の少年に投げつけ、肩を貫いた。
「・・・クッ‼」
「お前はそれで勘弁してやる。・・・特別にな笑。今後二度と私を狙おうと思わないことだな♪雑魚共が。」
そう言い放ち、師匠はその場を後にした。
~~~~~
「・・・もう嫌‼」
「・・・散々だったな。」
「・・・まさか、ここまで一方的とは。」
「元はと言えば、この話を持ち掛けたあんたがいけないのよ!」
「ですが、乗ったのはあなたではありませんか。」
「・・・もう解散しようぜ。」
「・・・そうね。もう一緒にいる理由もないし。」
「・・・そうですね。では、さようなら。皆さん。」
~~~~~
俺とヨルディエは10年程前まで世話になった師匠の居住地へと足を運んだ。
「クルデーレはまだここに住んでいるのか。」
「・・・取り敢えず入ろう。」
「ああ。」
~~~~~
そして、その居住地には妙な少年がいた。
「・・・お姉さんとお兄さんは誰?」
「貴様こそ、誰だ!クルデーレ様の家で何をしている⁉」
「僕はヨハト!お姉さんたちはクルデーレおばさんの知り合いなのかな?」
「・・・聞いているのは私の方だ。貴様は何者・・・。」
「まてヨルディエ。まずは彼の・・・ヨハト君の話を聞こう。」
「しかし、先守!」
「確かに俺たちはクルデーレのことをよく知っている。だが、それは10年も前の話だ。今は部外者も同然。それに彼は悪い子には見えない。まずは話を聞こう。俺たちの話はそれからでも出来るだろう。」
「・・・そうだな。」
「(・・・先守って、もしかして・・・)・・・!」
「帰ったぞヨハト・・・って、何の用だ?お前ら。」
~~~~~
「何の用だ?お前ら。」
「・・・クルデーレ様‼」
「確か、私は誰にも印紋術を継がせる気はないと言ったはずだが?」
「・・・その意思は今でも変わっていないのですか?」
「当然だ。」
「・・・無駄足だったな。」
「成程笑。お前はこいつの付き添いか。先守。」
「ええ。ついて来いと聞かないもので。」
「・・・まあ、あちこち壊されてはかなわんからな。」
「・・・え?」
「聞き及んでいるぞ。ヨルディエ。お前の愚行。」
「・・・・・・。」
「冷刻の魔女・・・だったか?」
「・・・・・・はい。」
「遠路遥々、来てくれて助かったぞ。出向く手間が省けた。」
「・・・?」
「来なければ、こちらから出向いて、不肖の弟子の始末。私自らつけに行くところであった。」
「(・・・!)」
「・・・先守に感謝するんだな。こやつが後始末をしていなければ、お前を殺していたところだ。」
「・・・‼」
「・・・まあ、そういうことだ。ヨルディエ。お前に真の印紋師を受け継ぐ資格はない。去れ。」
「・・・そんな。」
「それと先守。いつもいつも済まんな。」
「いえ。同門の不祥事ですので当然です。・・・幸い、被害は建物だけでしたので、けが人や死人は出ていませんし。」
「・・・そうか。それと先守。お前は継承についてどう考えている?」
「10年前と同じです。・・・というより、継がせる気がないでしょう。あなたは。」
「(・・・分かってたんだ。先守お兄さん。)」
「たとえ俺に継ぐ気があったとしてもあなたは、継承させない。」
「・・・何故そう思う?」
「あなたが印紋術の存在に疑問を感じているからだ。」
「・・・クルデーレ様?本当ですか⁉」
「・・・。」
「本当だよね‼クルデーレおばさん‼」
「・・・ったく。余計なことをベラベラと・・・。ああそうだ。私はお前たちに印紋術を教えながらも、その必要性に疑問を感じていた。」
「何故ですか‼」
「ならば、逆に聞くがヨルディエ。この10年。その力をふるい続け、以前より力は上がったか?」
「それは・・・。」
「上がっていないんだろ?それはそうだ。世界はどんどん平和に近づいている。昔のような戦乱期ならいざ知らず、今のような生活がままなる平和な世界では当然力は上がらない。普段から使っていた力が、普段は使わない力になったんだからな。これがどういうことを意味するか分かるか?」
「・・・わたしやクルデーレ様のような力は今の世に必要とされていないということですか?」
「そうだ。重宝から一転、用なしだ。だからお前たちにはせめて平和に馴染めるようになってもらいたかったのだが・・・困ったものだ。」
「・・・だから、あの時ここから追い出したのですか・・・?」
「・・・そうだ。」
「・・・。」
「この話を聞いても、まだ印紋師に執着するのであれば、勝手にしろ。もう尻拭いはしないからな。」
「・・・・・・。」
「・・・先守お兄さん、ヨルディエお姉さん。少しあっちで話しない?」
「・・・え?」
「クルデーレおばさん。いいよね?」
「勝手にしろ。」
「どうかな?・・・ダメ?」
「私は構わないよ。」
「・・・私も、構わない。」
「じゃ、お話ししよう‼大切な話を‼」
~~~~~
「・・・で、確認したいんだけど先守お兄さんとヨルディエお姉さんはどうしたいのかな?」
「・・・その前に、ヨハト君は何でそんなに私たちを気にかけてくれるのかな?」
「気になるからだよ。お兄さんたちの出す答えが。確かに、赤の他人の僕が口を出すことじゃないのは分かってるよ。でも、僕は何故か放っておけないんだ。僕はお兄さんたちに自分自身が納得出来ない答えを出して、後悔しながら生きてほしくないって思ってるんだ!」
「(真っすぐな子だ・・・。)そうか。それは心強いな。・・・俺はね、印紋術はなくなってもいいと思っている。これは本心だ。」
「・・・みたいだね。クルデーレおばさんも同じ考えだったみたいだし。」
「ヨルディエはどうだ?」
「・・・私はなくしたくない。」
「それは何で?」
「・・・クルデーレ様はこの世が昔より平和になったと仰っていた。それは私もそう思う。だが、それでも、この世界はまだまだ危険であふれている。大戦こそ少なくなったが戦争はなくなっていないし、争いは日常茶飯事だ。」
「・・・まあ、仕掛けてもいないのに襲われる世の中だからな。」
「お前も覚えがあるか。そうだ。仕掛けてもいないのに襲われる。力があれば身を守ることも出来るが、クルデーレ様や先守の言ったように全く力をなくすというのは私はすべきではないと考えている。」
「まあ、それはそうだが・・・。」
「それに、力をなくすにしても、どうすればなくなるのか分からない。」
「そうなんだ・・・(・・・アプリオリ!何?)」
「(・・・力をなくす方法は、あるんじゃが、今はおそらく不可能じゃ。)」
「(何で?)」
「(それは、この世界に存在する能力者が一か所に集まり一つの祠に手を触れる。これが出来なければ能力はなくならん。)」
「(・・・それって。)」
「(無理じゃろうな。この争いの絶えない人間界では。)」
「(・・・今はね。)」
「(・・・?)」
「・・・ヨハト君?」
「・・・ん?」
「大丈夫かい?」
「ごめん!少し意識飛んでた。そっか、ヨルディエお姉さんは印紋術を残したいと考えているんだね?」
「ああ。今程力は強くなくてもいい。せめて自衛が出来るだけの力を継承していきたい。」
「良いと思うよ!」
「でも、クルデーレ様が許してくれるか・・・。」
「何で、おばさんの許しがいるの?」
「え?」
「確かに、ヨルディエお姉さんはクルデーレおばさんに恩義があるかもしれないけどヨルディエお姉さんが新しい形の印紋師を継承していくこととは関係ないと思うよ!」
「・・・何故だ?」
「分からないからだよ!」
「・・・何が?」
「これから先、もっと平和になるか、将又、危険な時代に戻るのか。僕は先守お兄さんとヨルディエお姉さんが協力しながらそれぞれの印紋師を継承していくのがいいと話を聞いて思った。クルデーレおばさんは印紋術をなくした方がいいと思ってる。二人はどう思ってる?僕はそれをクルデーレおばさんに通せばいいんじゃないかとも思ってるんだ。」
「(それぞれか・・・)・・・ヨハト君。君のおかげで私は新たな答えが出来た。二人それぞれ、違う形で印紋術を継承する。これならば俺は今のまま戦わない印紋師でいられるし、ヨルディエはヨルディエで好きな形の印紋師として生きていけるではないか。」
「・・・まあ、そうだが。」
「どうかな?」
「・・・ヨハトの言う通り、違う形の印紋師は今までの答えの中で一番良いと思う。クルデーレ様は絶対意見を変えないだろうしな。ただ・・・。」
「・・・ただ、何だ?」
「・・・その場合、継承書は、別々になるのか?」
「だろうな。それぞれの印紋師を継承していくのだから。」
「・・・?」
「・・・そうかぁ。」
「(・・・!)ヨルディエお姉さんは元の印紋師の継承書をこれから作られる継承書と別に作りたいんだね?」
「あ、ああ!そうだ!ほら、やっぱり起源は大事だろう?子孫の為にも!」
「・・・それならクルデーレが持って・・・。」
「いや、私とお前の名前が入ったのがいいだろう!な?」
「先守お兄さんとのが、良いんだよねぇ~~~~?」
「ん?それはいったい、どういう・・・?」
「・・・ふがっ!」
「い、いや!なんというかその・・・。」
「・・・まあ、クルデーレが大人しく渡してくれるとは思えないか・・・。」
「(・・・なんて鈍感なんだ。先守お兄さん・・・。)」
「そ、そうだ!クルデーレ様はきっと渡してくれないだろう!だから改めて作ろう!な?」
「・・・分かった。作ろう。継承書。それでいいか?」
「ああ!」
「じゃ、これで話はまとまったね!」
「そうだね。」
「じゃ、早速クルデーレ様に報告しよう!」
「・・・え?報告するの?」
「当然だ!最後位は筋を通さねば!」
「・・・先守お兄さん。」
「分かっている。争いの予感がするぞ・・・これは。」
~~~~~
「・・・ヨハトよ。まとまったか笑。」
「・・・うん。」
「(・・・?)」
「クルデーレ様。ご報告があります!」
「(こっちはこっちでさっきまで叱られていたのに元気だな・・・)・・・何だ?」
「これからの印紋師の未来についてです!」
「・・・何?」
「私と先守はこれから、それぞれ別の形で印紋術を継承しようと考えています!」
「・・・何だと?」
「(・・・あの言葉足らずが・・・)クルデーレ。聞いてくれ!ヨルディエは・・・」
「惰弱な印紋を残すつもりなのだろう?そんなことは私が許さん。印紋は神の御使いから授かった特別な力。それをお前ら、愚弄する気か!」
「(・・・やっぱり、クルデーレおばさんおこだよ!)」
「・・・愚弄などするつもりは毛頭御座いません!しかし、クルデーレ様も仰ったように今の印紋師の在り方はこの時代には合わなくなっています!なので私と先守はこれからの時代、どのような印紋師が時代に求められるのか模索しながら、代々継承させていこうと考えているのです!」
「(・・・!)・・・ならば、その意思。二人で証明して見せろ!二人で協力して私を倒せたならば、認めてやろう!」
「(・・・ヤバ!)」
「(心配するなヨハトよ。おぬしはわしが守る!)」
「(どうやって?)」
「(わしの力を少し与える!少しじゃから、考えて使え!)」
「(分かった!)」
「分かりました!では早速・・・」
「攻硬爆印(連雷)。」
師匠はいきなり攻印{飛雷}を中心に1つ、周囲に4つ、計5つ出現させ、その全てに強硬印、爆印付与した状態で発動させた。
「守滅印(連)!抜印。ヨルディエ!」
俺は滅印を付与した守印を3つ出現させた。
加えて、自身に抜印を付与した。
「・・・クッ‼攻爆印(連槍)!」
ヨルディエは槍の形をした攻印を5つ出現させ、それに爆印を付与し、師匠へと飛ばした。
「守印。攻印{穿}・・・?」
師匠はヨルディエの攻撃を防ぎつつ、俺に槍でも剣でもない尖った攻印を放ったが、それは俺の抜印の効果で無効化された。
「構造化。攻印{穿}。」
俺は師匠の攻印{穿}を構造化によって再現し、師匠へ放った。
「・・・守印‼(どうなって・・・)」
師匠は印紋が通用しないことに珍しく激しい動揺を見せていた。
「(・・・からの、柔軟印{網}‼)ヨルディエ!」
「ああ!構造化!柔軟印{網}‼」
俺は網のような形の柔軟印をヨルディエと共に師匠へと放った。
「・・・守印{球}‼」
師匠は咄嗟に守印{球}で直撃こそ避けたが、俺たちに拘束されたことには変わりなかった。
「これで、動けないでしょう。クルデーレ。」
「・・・ああ、そうだな。」
「・・・これでも、認めてはもらえないのでしょうか?」
「(・・・潮時だな)・・・勝手にしろ。」
「それでは・・・‼」
「勘違いするな!私は認めたとは言っていない。今後お前らが何かしでかした時は真っ先に私が敵となること、覚悟しておけ!」
「はい!心得ております‼」
「・・・ったく‼世話の焼ける。」
「(・・・それはお互い様だと思うけど・・・。)」
「まあ、何はともあれ、まとまりましたね。」
「そうだな!」
「・・・ここが更地になったこと以外はね・・・。」
「それなら問題ない。私が戻す。」
「・・・そんなこと出来るの⁉」
「ああ。印紋術とは本来、破壊だけでなく、創造も兼ね備えている均衡の取れた力。私やヨルディエのように破壊するだけが印紋術ではない。」
「そうなんだ・・・。」
「創印・・・・・・・・・。」
「うわぁ・・・本当に元に戻っていく・・・‼」
俺は創印の効果によって壊してしまった建物を元に戻していった。
「・・・・・・・・・念の為、この町の地形をよく見ておいて良かったよ汗。」
「済まないな。」
「本当ですよ。あなたまで全力を出そうとするなんて。」
「仕方なかろう。やり方が他になかったんだ。それより、先守。」
「何ですか?」
「お前、私の印紋術を守印なしで防いだだろう。あれは何だ?」
「あれは、一定時間あらゆるものをすり抜ける効果を持つ印紋術ですよ。」
「(・・・あ、クルデーレ様また始まったな・・・。)」
「どうやって生み出した?」
「どうやってと言われると・・・。」
「教えろ。私も覚えてやる。」
「(貪欲だなぁ・・・おばさん。)」
「いや、大したことじゃないんですけど、一時期、攻撃を守るのがめんどくさくなった時がありまして。」
「ほうほう、それで?」
「守印で守るにしても衝撃はある程度あるじゃないですか?そこでふと、守るんじゃなくてすり抜けたらいいなーと思ったんですよ。」
「成程、それでその時に生まれたのがあの印紋なのだな?」
「ええ。最初は普通に印紋として出したのですが、守印以上に使い物にならなかったんです。」
「それはそうだ。すり抜ける印紋なんて、意味が分からないからな。」
「ああ。だが、ここでふと、体にこの印紋を触れさせたらどうだろう?と考えた。そして試してみたら使える印紋となった。」
「だが、あらゆるものをすり抜けるなら何故、地面には働かない?」
「それは、この抜印。すり抜けるのは俺の力で同調した対象物だけだからです。」
「成程。本質は力の同調か。」
「ええ。」
「・・・どういうことです?」
「・・・そういうことはホントに弱いな。ヨルディエ。」
「・・・・むむぅ。」
「ま、取り合えず、話はまとまったんだ。さあ、さっさと出てけ出てけ。」
「・・・まあ、それはそうですが・・・。」
「分かったよ、クルデーレ。じゃ、さっさと行こうヨルディエ。クルデーレは印紋術を教えてもらわなくてもいいそうだからな。」
「・・・いや!まて!待ってくれ‼それだけは教えて帰ってくれ‼頼む‼」
「・・・分かりました笑。」
こうして俺とヨルディエは、ささやかな一矢を報いて師匠の元を去るのだった。
~~~~~
「・・・ったく、何時までついてくるのよ!あんたら!」
「仕方ねえだろ!船に乗るにはこっちに行くしかねえんだよ!ってか、お前らは空飛べんだろうが!」
「今は無理なの!何度も言ってんでしょ?クルデーレとやったから力が枯渇してんの‼」
「てめえもか?」
「・・・同じく。」
「はあ・・・イライラするぜ、まったく・・・。」
「仕方ないでしょ!・・・‼」
「おや、これはこれは、また会ったね。お嬢ちゃん。」
「あんたは・・・‼」
「何だ先守。知り合いか?」
「・・・顔見知りだ笑。」
「(・・・あいつは、ヨルディエじゃねえか。)」
「・・・そうなのか。」
「君も、如月は見つかったのかな?」
「・・・余計なお世話ですね。」
「そうか笑。見たところ、満身創痍だが何かあったのかな?」
「・・・あんたには関係ないわよ。」
「もしかして、三人でクルデーレに挑み、返り討ちに会った・・・とか?」
「「「‼」」」
「図星か。」
「フフッ。」
「おい、冷刻のヨルディエ‼何がおかしい!」
「いや、お前らがクルデーレ様を倒せると思っていることが、おかしくてな笑。」
「(・・・クッ、何も言い返せない。)」
「そう言ってやるな、ヨルディエ。じゃ。」
「・・・何もしていかないの⁉」
「生憎、俺たちも余力がなくてね。お暇する。」
「・・・じゃあな、殺し屋のガキたち。」
~~~~~
「にしても、クルデーレ様。私たちが来る前にあいつらと戦っていたとはな。」
「ああ。道理であっさりと俺たちを認めてくれたわけだ。」
「ああ。にしても、あの三人とやった後にあの力を出せるとは、我が師匠ながら末恐ろしい。」
「ついてたな。俺たち。」
「そうだな。」
~~~~~
「もう嫌‼今日は厄日だわ‼」
「・・・ってか何であいつらクルデーレを知ってたんだ?」
「それは、彼らがクルデーレの弟子たちだからですよ。」
「弟子⁉・・・成程な。」
~~~~~
「・・・クルデーレおばさん。」
「何だ?」
「僕、ここを出ていくよ!」
「何故だ?」
「僕、先守お兄さんとヨルディエお姉さんを見てて思ったんだ。もっと色んな世界を見てみたいって!だから出ていくよ!」
「・・・ふう、分かった。勝手にしろ。」
「ありがとう!たまには顔を出すよ!」
「・・・毎日出せ笑。」
「そんな無茶苦茶な・・・笑。」
「冗談だよ笑。いいから、行ってこい。新しい世界へ。」
「うん!」
~~~~~
「・・・先守。これから暫くは会えなくなる。」
「ああ。」
「だが、いつか必ずまた会いに来るから、それまであの地で待っていてくれ!」
「分かったよ笑。じゃ、俺はこれから帰る。」
「ああ!」
こうして、俺とヨルディエは別々の道を長い時間をかけて進むこととなった。
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