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条件世界{七章、御霊と印紋、そして全能}

俺(新野貴智)は力の源が同じである龍一とニーレイに接触を図ろうとしていた・・・。


俺は昼休みに、屋上で状況を整理した後、龍一たちに会おうとしていた。

「・・・よし、行くか‼」

「(待て、新野。俺も行く。)」

「(ちょっ・・・あんた誰だ⁉)」

「(俺はフォールだ。それよりお前。これから龍一達に会いに行くのか?)」

「(そうだけど、それがどうしたんだ?)」

「(・・・手ぶらで行く気か?)」

「(いや、そんな気はない。イプノとグラントに声をかけてから、会おうと思ってる。)」

「(それならいいが・・・。とりあえず、そういう事ならグラントたちには俺から声をかけておく。)」

「(それは助かる。)」

「(それと、龍一達と会う時は俺も付き添う。いいな?)」

「(それも助かるよ。)」

そういうわけで、俺は、龍一達に会いにいった。


~~~~~


「えー、今日も修行かよー。」

「当たり前だ。こうしている間にもグリードは町を破壊しているのだぞ‼」

「龍一君~~‼ニーレイさ~~ん‼」

「ん?貴様は・・・?」

「お、新野か。何の用だ?」

「知っているのか龍一。」

「ああ、同じクラスの新野だよ。」

「同じクラスだったのか。で、何の用だ。」

「凄い言いづらいんだけど・・・2人って放課後何してるの?」

「何してるって・・・ってか、何でお前にそんな事言わなきゃいけねーの?」

「ん~~何でって言われると凄く困るけど・・・実は俺、二人が印紋術っていう能力を持ってることを知ってるんだ。」

「貴様‼そのことを何処から‼」

「・・・それは、言えない。」

「新野てめぇ・・・何企んでやがる。」

「・・・とりあえず、落ち着いて話が出来るところまで一緒に行ってくれないか?詳しくはそこで。・・・大丈夫。何もかも話すよ。」

「・・・本当だろうな?」

「龍一‼こいつの言うことを信じるつもりか?」

「・・・少しでも怪しいと思ったら印紋で倒せばいいさ。」

「そんな物騒な・・・。」

「とりあえず、お前をどうするかは話を聞いてからだ。」

「・・・分かった。」

俺と龍一とニーレイは、かなりの険悪なムードの中、落ち着いて話が出来る生命という人の家へと向かった。


~~~~~


「生命ー‼応接間借りるぜー‼」

「おーう、好きに使えー‼」

「・・・で、お前が何で印紋術について知ってるのか、教えてもらおうか。」

「・・・その前に、俺のことについて話をさせてくれ。それが、そのまま龍一の疑問の答えになると思う。」

「お前の事?何だ、お前にも何かあるのか?」

「ああ。実は俺も能力者なんだ。」

「「・・・・・・・・・・・・。」」

「いや、何言ってんだこいつ・・・みたいな反応は分かるよ?けど、聞いて?ね?」

「・・・で、貴様の能力とは何なのだ?」

「一言でいうとイタコだ。霊や妖の様なこの世にはもう存在しないものを体に入れることが出来る能力だ。」

「・・・それってよ、霊能力だろ?俺たちの印紋術はそんなレベルの能力じゃないぜ?」

「それは分かってる。それに俺の能力だって、そこら辺の霊能力と同列じゃない。俺の能力の仕組みはシンプルに言うと、自分以外の意識体や魂を、己の体を入れ物にしてその魂の力を使うってことだ。」

「それって・・・つまり、体に入れる魂が仮に宮本武蔵だったら、お前が宮本武蔵の剣術を使えるってこと?」

「その通り‼しかも、俺の場合は宮本武蔵の意識に支配されずに、自分の意思で宮本武蔵の剣術が使えるってことだ。」

「それは・・・本来なら、宮本武蔵に意識を侵食され、体を貸すだけになってしまうところを、貴様の場合は自分の意思で宮本武蔵レベルの剣術を使えるということか?」

「うん、そういうこと。」

「そりゃ凄げえな・・・。」

「だろ?」

「・・・十分にお前も能力者だということは分かったが、それが私たちの能力をお前が知っていたことと、どう関係するんだ?」

「よく聞いてくれました‼ニーレイさん‼今俺は、魂を体に憑依させる能力だって話をしたよね?」

「したな。」

「実はその魂の中に、神話に出てくる神がいるんだよ。」

「それが?」

「そいつらが、印紋術のことを教えてくれたんだ。」

「・・・は?本当かよ?その話。」

「いや、マジだって‼汗。」

「・・・殺るか?龍一。」

「本当だって‼ニーレイさん‼何なら、今その力を見せてもいい‼」

「・・・新野がここまで言ってんだ。見せてもらおうぜ。その力とやらをよ!」

というわけで、俺は天使の力を龍一たちに見せることにした。


~~~~~


「じゃ、見せてもらおーか。その神を憑依させた力とやらを。」

「了解。(グラント‼近くにいる?)」

「(フォールに呼ばれて、少し前から近くにいるわよ~~?)」

「(悪いけど、力を貸してくれる?)」

「(龍一たちの説得にあたしの力が必要なのね?分かったわ。存分に使いなさい‼)」

「(ありがとう‼)じゃ、いくけど、その前に龍一の印紋術の中で守ることを目的とした技ってある?」

「守印があるな。」

「じゃ、それをもう使っといてくれないか?俺これから、念力使うから。」

「わ、分かった。」

「・・・使った?」

「使ったぜ。」

「よし、それじゃ、いく・・・(何だ?こんな時に、フォール。)」

「(もう少し、お前の力を弱めろ。じゃないと、怪我をさせる。)」

「(わ、分かった。)」

「新野何をしている⁉まだなのか⁉」

「もうやるよ‼じゃ、龍一行くぞ‼」

「よし‼来い‼」

俺は龍一に対してドアを開けるくらいの強さで念力を使った。

そうすると、台風の様な風が龍一めがけて飛んで行った。

「・・・‼」

「マジみたいだな・・・。」

「・・・こんな感じです汗。」

「こんな感じですじゃねーよ‼汗。もうちょっと手加減しろや‼」

「・・・したよ汗。」

「それより、話に戻ろう。龍一。新野の言っていることが、強ち出まかせではないと分かった今、私はもう少しこいつから聞きたいことが出来た。」

「・・・確かにな。じゃ、続きを話してもらいましょうかね。新野君?」

俺は龍一たちに、接触した目的や自分たちの他に能力者がいること。また、神の存在に関して話をした。


~~~~~


「・・・つまり、さっき使った技の力は、神の力じゃなく天使の力ってことか?」

「そうだ。そして、今、現実世界で神と呼ばれている神は実は神じゃない。全て天使だ。」

「どういうことだ?」

「少なくとも神話に出てくる軍神オルゴ、最高神ビランチ、破壊の女神グラント、言葉の女神フェア、最強神フォールは天使だ。」

「・・・そいつらって、もしかして六大側近天使?」

「・・・六大側近天使とはなんだ?龍一。」

「いや、ごく最近なんだがよ、図書室で漫画を読もうとしたんだ。その時に、どっかの中坊が熱心に読んでた本のタイトルが全知全能の神と六大側近天使って名前でよ。丁度、今上げた天使の名前の数と同じだから、もしかしてって思ってよ。」

「・・・どうなんだ?新野?」

「龍一の言う通りだよ。そして俺は、その六大側近天使の力を使役する能力者らしい。」

「それは、もう分かったんだけどよ。そのお前が何で俺たちに近づいたんだ?」

「それは・・・天使に頼まれたんだ。」

「・・・頼まれた?何を?」

「今、俺たちが能力を使えるのは、神から力を奪ったからで、そのせいで、神は本来の力が行使出来ないから、その力を返してくれって。」

「・・・つまりお前は、俺たちに力を返すよう言うために近づいたってことか?」

「まあ、そうなるな。でもすぐにとは言わない。それに声をかけるのは龍一たちが最初だっただけで、他にも声をかけるつもりだ。」

「まて、能力者は私たちだけではないのか?」

「ああ。天使が言うには俺や龍一たちの他に三種類の能力者がいるみたいだ。一つは全知全能の神の全知の力を扱う如月一族。次が自然神の力を扱う五種類の一族。最後が、全知全能の神の全能の力を扱う人間。この三種類だ。」

「・・・かなりスケールが大きい話になってきたな・・・。」

「・・・確かに。そしたら、この話の続きは明日でもいいか?」

「俺はいいけど・・・ニーレイはどうだ?」

「私も構わん。もう引き留めておく理由もないだろう。」

「そうだな。最初こそやばいやつかと思ったが、今となっては同じ能力者だし、もちろん能力の事は・・・。」

「言わないよ。」

「だよな。じゃ、続きは明日の昼休みにでも飯を食いながら聞かせてもらうぜ。」

「はいよ。」

こうして俺は、なんとか家へと帰ることができた。


~~~~~


そして俺は、翌日の昼休みに、前日に話をした、神に力を戻す話の続きをした。

「でよ、俺たち以外の能力者は誰か分かってんのかよ?」

「分かってるよ。」

「ほう、で、そいつらは何処にいるのだ?」

「ほぼ全員がこの学校にいるよ。」

「はあ?マジで⁉」

「マジで笑。俺も最初聞いた時は驚いたよ。」

「それで、名前は?」

「まず如月一族から言うね。如月一族は・・・。」

「まて、確か隣のクラスにその苗字の女子がいたような・・・。」

「そう、隣にいる。如月早苗だよ。」

「あいつ・・・能力者なのか⁉」

「・・・って、天使は言ってるんだけどね・・・。」

「私には、普通の女子と変わらないように見えたが・・・。」

「人は見かけじゃねーんだな。」

「そうだな。」

「それで、如月一族には早苗の他に、その母親と兄弟も使えるらしい。」

「一家そろって能力者ってわけか。」

「そういうこと。次が自然神の力を扱う一族だけど、その末裔が早苗と同じクラスの無水と風太。」

「あいつらも⁉ってかうちの学校に能力者居過ぎねーか?」

「それは天使も言ってた。集中し過ぎだって。」

「新野。一つ聞きたいことがあるんだが、その自然術とは何なのだ?」

「俺も天使から聞いただけなんで、詳しくは知らねーんですけど、何でも自然を司る神から力を借りてる能力者みたいです。ほら、五行ってあるじゃないですか?多分そういう系の能力じゃないですか?」

「成程・・・。つまり、私たちとは力の出所が違うと?」

「恐らく。あと追加なんですけど、その自然術を使うのはうちの学校には一つ下に無水たちの幼馴染がいるみたいです。」

「了解。で、最後の全能の力を使う人間ってのは誰なんだ?」

「その人間だけはこの学校にはいない。ってか日本にいないらしい。」

「はあ?じゃあ海外にいるってことか?」

「・・・らしい。でも天使たちが日本に来るように働きかけてるらしいから、こっちから出向く必要はない。天使もそっちは後回しでいいって。」

「・・・さっきから、天使の事めっちゃフランクに話すやん。お前笑。」

「いや、なんか何度も会ううちに親しくなっちゃって笑。」

「だが、こうして能力について真剣に話している私たちも、相当変だ。」

「確かに。ちょっと前まではこんな話するなんて想像もしてなかったしな。」

「ところで新野。能力者の説明はこれで全て済んだのか?」

「はい。終わりっす。」

「新野はこの神へ力を返す手伝いを、私たちにしてほしいということか?」

「流石ニーレイさん話が早いっすね。」

「・・・そうしたら、一つ条件がある。」

「・・・何ですか?」

「私たちのアーテ狩りに協力してほしい。」


~~~~~


「私たちのアーテ狩りに協力してほしい。」

「おい、ニーレイ。流石にそれは・・・。」

「そのアーテってのは誰なんだ?」

「俺達と同じ印紋使いさ。けど、そいつは世界各地で印紋術を悪用しててな。都市や街に出る度に破壊を繰り返してる。理由は分かんねえけど。俺たちはそいつを止めなきゃなんねえ。だけど、俺たちだけじゃ正直厳しくてな。今はどうしようもねえってのが現状だ。」

「その、アーテ狩りとやらに協力すれば、神に力を返してもらえるのか?」

「おい、新野まで・・・いいのかよ⁉」

「本人が言っているんだ。別に構わないだろう。」

「そうそう‼それにこう見えて結構強いんだ。俺。」

「そりゃ、本当に手加減してあれなら強いけどよ・・・まあ、お前のことだしこれ以上心配してもしょーがねーみたいだな。」

「まあ、いざとなったら、私たちが守る。心配するな。」

「あざっす‼ニーレイさん‼」

こうして俺は、グリード狩りに協力することを条件に、神に力を返してもらうことで落ち着いた。

そうして、落ち着いたのも束の間。

その話に出ていたグリードは突如日本に姿を現す・・・。


~~~~~


「やれやれ・・・離れ小屋にいる奴に、ピストアの事を聞いたら“日本に行った・・・”とはな・・・。まったく、とんだ面倒をかけさせてくれる。だが、行き先が分かったのは幸いだ。今度こそ息の根を止めてやろう。覚悟して待っていろ。神の子よ・・・‼」


~~~~~


その日、俺たちはいつものように三人で下校をしていた。

「ニーレイさん。今日も修行するんですか?」

「当たり前だ‼あれ程やってお前に攻撃一つ当たらないとは・・・何たる屈辱‼」

「それは仕方ないっすよ~笑。なんたって、天使が味方してんすから笑。」

「・・・それは、俺たちを煽っていると取っていいんだな?新野。」

「じょ、冗談だよ汗。確かに、最大瞬間風速は俺の方が上かもしれないけど・・・二人は、俺にはない持続力と沢山の攻め方があるだろ?俺の場合は天使が勝てるから二人に勝てるだけで、逆に天使が勝てなくなったら、何をどう工夫しても勝てない。0か100しかないんだよ汗。」

「・・・まあ、それは確かに言えてるな。」

「それに、バテたら戦力にならないどころか、足手まといにだってなるから、余裕を保たないと成立しないんだよ汗。」

「成程。つまり新野の力は印紋術と比べてピーキーな能力というわけだな。」

「そういう事です。だから力の使い方次第で一瞬でスタミナが0になることもあります。その分、威力は半端ないですけどね。」

「それは、是非とも生かしていきたいな。俺やニーレイには新野みたいな最大瞬間風速はないから、グリード狩りの時に役に立つだろ。」

「それに、癪だが私たちの印紋術を極める練習にもなる。」

「・・・強いからな。」

「強くはない‼」

「やれやれ・・・っと、色々言ってる間に着いたぜ。」

「生命さんって人の家だよね?」

「そうだ。お前と初めてちゃんと話した場所。好きに使っていいって言われてるから、好きに使おうぜ。」

「それ言われてんのは龍一とニーレイさんだけだろ?俺は大人しく使うよ・・・。」

「まあそういうなって‼生命は良い奴だから、話せば分かってくれるって‼おーい‼生命‼」

「なんだ龍一。それにニーレイ君も一緒じゃないか。・・・そちらの方は?」

「ど、どうも、新野貴智と言います。」

「何だ、龍一のクラスメートか。どうも、伊藤生命です。こちらこそよろしく。」

「早速なんだけどよ。こいつアーテ討伐に一緒に連れて行くことになったからよろしく‼」

「⁉。ちょ、ちょっとまて‼龍一お前正気か⁉」

「生命さん、安心してください。このモブ男。一見するとただのモブですが、れっきとした能力者です。」

「・・・能力者?一体どういう能力者なんだい?」

「天使を体に憑依させることで、天使の力を扱うことが出来る能力者なんだと。で、その天使たちは、印紋術の力の源になってる天使なんだと。」

「・・・実在したのか。天使が・・・。」

「実力もはっきり言って、俺たちより上だ。なんせ、攻撃一つ当たらない。」

「それは凄いな・・・。」

「ということで、協力を仰いでもよろしいでしょうか?」

「・・・俺はその子が構わないなら、構わないよ。」

「よっしゃ‼」

「但し、一つ条件がある‼」

「条件?」

「・・・最悪の場合、負けたとしても、その子だけは守ること‼いいね?」

「お、おう・・・。」

「は、はい・・・。」

「よろしい。おっと、電話だ。ちょっと出てくる。」

「はいよー。・・・それにしても、やったな‼」

「そうだな。このモブ男が戦力になるのは、今考えられる中で最善の選択だ。」

「・・・悪いな新野。きっとニーレイはツンデレなんだよ。」

「ってことは、今までの冷たい態度は好意の表れ・・・ってこと?」

「そんなわけ無かろう‼・・・ただ、お前は戦力にはなるということだ。」

「素直じゃないっすね笑。」

「・・・殴るぞ?」

「そ、それだけは、ご勘弁を‼」

「おい!龍一‼今、時間あるか⁉」

「なんだよ生命、血相変えて。」

「・・・電話があったんだが、その電話が姫上からだったんだ。それで今姫上はグリードと接触しているらしい。」

「・・・嘘だろ⁉」

「大マジだ。グリードが日本に来ているらしい。悪いが今から俺と一緒に行けるか⁉」

「・・・行けるけどよ、場所は何処なんだよ?」

「場所は・・・“荒和幸奇(あらわさき)高等学校”。」

「うちの学校じゃねえか‼」

「生命さん。あまり言いたくないのですが・・・今から行って・・・その・・・間に合いますか?」

「・・・分からん。だが行かなくては‼」

「・・・戦ってからどれくらい経つんだよ。流石の姫上でもやばいんじゃ・・・。」

「そんなことは分かってる‼だから、すぐにでも向かわなくては‼」

「・・・生命さん。俺ならすぐに行けるかもしれません。」

「・・・どういうことだい?」

「俺の天使の中に、瞬間移動を使える奴がいます。そいつを上手く呼ぶことが出来れば、一分と待たずに学校まで飛べます。」

「そしたら、すぐにお願い出来るかい?一刻を争うんだ‼」

「分かりました‼すぐにやってみます。(グラント‼それかイプノ‼どちらか近くにいるか?いたら返事してくれ・・・‼)」

「(どうしたんだい?急いでるみたいだけど?)」

「(緊急事態なんだ‼どうかイプノの力を貸してくれないか?)」

「(いいよ。なんの力を使うんだい?)」

「(瞬間移動だ‼ここにいる三人をつれて荒和幸奇高校に移動したい‼)」

「(お安い御用さ。じゃ早速準備して?)」

「(了解‼)・・・呼べました‼早速準備してください‼」

「私はもう行ける。」

「俺も行ける。」

「俺もだ。」

「(みんな準備オーケーみたいだね♪そしたら、新野はみんなと間接的に触れてくれる?)」

「(・・・間接的に?)」

「(誰かと手を繋いでくれればいい。その誰かは、また他の誰かと手を繋いで繋がりの切れ目がないようにしてくれ。)」

「(分かった。)そしたらみんなで手を繋いでください‼」

「手を繋ぐ?」

「簡単に言うと、誰か一人が俺と手を繋ぎ、その誰かが又他の誰かと手を繋いで、間接的にでも俺と繋がらない人を出さないで下さい‼」

「分かった‼」

「そしたら、移動します‼荒和幸奇高校へ‼」


~~~~~


俺たちは荒和幸奇高校の校庭へと移動した。

そしたら、着いたその瞬間。正にグリードが姫上という人にトドメを刺そうとしていた。

「伝説の印紋使いもこの程度か・・・。もう終わりだ‼」

「・・・くそったれ‼」

「そうはさせん‼守印{絶}‼」

そう言うと生命さんはグリードと姫上さんの間に印紋術を出現させた。

「‼、この技は・・・生命か‼小賢しい‼」

「大丈夫か‼姫上⁉」

「ああ、なんとかな。お前らが思ったより早く来てくれたおかげで命拾いしたぜ・・・。」

「礼ならあの子に言ってくれ。あの子がいなかったら間に合わなかった・・・。」

「・・あいつは?」

「詳しい事情は後で説明する。それより、襲われた人というのは?」

「後ろにいる。グリードは何故かこいつを執拗に追いかけてる。“神の子だ。”とか言ってな。」

「そうだ・・・。その者は神の力を扱う神の子。お前ら程度が守り切れると思うな。」

「まあその辺の話も後だ。とりあえず、グリードから逃げるぞ。じゃ、済まないが当初の作戦通りに‼」

「分かったぜ生命‼」

「生命さんの逃げ道は私たちで死守します‼」

「頼むぞ、三人とも。」

そういうと、姫上さんと生命さん。それに加え、襲われた人は安全な場所であるアルアさんという人がいる場所へと向かった。

「ふん、小童どもがこの俺を足止め出来ると?」

「初めましてだったな。アーテグリード。俺は三橋龍一だ。今は足止めで逃がしてもらうけどよ。いつかお前を倒す男の名前だ。覚えておけ。」

「・・・東風情に倒される我ではない。」

「わたしは、あなたと同じ西のルシフニーレイ。あなたには死んでもらいます。」

「お前たちと同列にするな。それに、お前に我を倒すことなど一生かかっても無理だ。あの生命や姫上から修行をつけてもらっている程度ではな。それより・・・貴様は何者だ?先程いきなり現れたのはお前の力か?」

「如何にも。俺は天使を憑依させることで天使の力を扱う能力者。新野貴智です。」

「ほう、俺の前で天使の力とほざくか・・・このゴミが。我の印紋もその天使の力を使う。どちらが上か勝負したいところだ。」

「何時までくっちゃべってんだ?戦いはもう始まってんだぜ?光爆——。」

「爆印。中々面白い技を使うな。生命の弟子よ。」

龍一が光爆印を発動しようとしたところ、後から発動したにもかかわらず同時に発動し、一瞬にして相殺されてしまった。

「・・・攻印{連}‼」

「強硬印。アルアの技では私は倒せんぞ?ニーレイとやら。さあ・・・次はどうする?」

そしてニーレイが発動した攻印{連}はなんとただの強硬印によって防がれてしまった。

「(くそ・・・本当に歯が立たねえ・・・あとはお前だけが頼りだ。新野‼)」

「(誰か戦える天使は近くにいるか・・・‼)」

俺はグリードと戦う為、心の中で天使たちを呼んだ。

「(ビランチがいるみたいだよ?呼ぼっか?)」

「(・・・そういうイプノは戦ってくれないの?)」

「(勿論、本当にやばくなったら手を貸すよ?)」

「(そんな悠長な・・・‼)」

「(は~い。イプノに呼ばれてきたわよぉ。)」

「(ビランチ‼一緒に戦ってくれるの⁉)」

「(あたしは戦いの専門じゃないわぁ。戦いならオルゴかフォールでしょうね。)」

「(でも、ビランチが手を貸してくれないと、どう見てもやばいんだけど汗。)」

「どうした、新野とやら。お前は何も出来んのか?出来ないなら三人仲良く死ぬだけだ。」

「・・・(やばい‼やばいよ‼ビランチ‼)」

「(あたしがするのは戦いじゃないわ。裁きよ。)」

「新野‼何ぼーっとしてんだよ⁉このままじゃマジでやばいぜ‼」

「分かってる‼(裁きってどういうことだ⁉)」

「(アーテグリードに神の審判を。御使いである天使より下します。三日間の印紋術の封印。新野。アーテに手の平を向けて?)」

「(お、おう。)」

「ふっ、何をするつもりか知らないが、全て我が印紋で消し去ってやるわ‼」

「(そしたら、あなたの体を全て預かるわ。少しの間、意識を強く持ってね?流石のあなたでも、負荷はとんでもなくかかるから。)」

「(・・・分かった。)」

そう返事をしたと同時に、突如、グリードの背後に十字架が現れ、グリードはその十字架へと吸い寄せられた。

「・・・貴様、いったい何をした‼」

「・・・最高神ビランチの裁きだ。受け取りやがれ‼」

グリードの後ろに現れた十字架はグリードの両腕めがけて、荒縄を伸ばし十字架へ縛り付け、その後十字架はガラスのように砕け散った。

「くっ‼こんな縄如きが何だというのだ・・・‼これは・・・まさか‼」

「ハアハア・・・そのまさか。使えないだろ?力。」

「モブ男‼いったい何をしたのだ⁉」

「ニーレイ。それよりも・・・今は、退くぞ‼もう潮時だ。」

「・・・分かった。」

「新野、飛べそうか?」

「(イプノ。最後の一回いい?)」

「(今回はそれで限度だよ。もうこれ以上は君の体がもたない。)」

「(分かった。)行ける。場所は例のあそこでいいのか?」

「とりあえずは、そこで大丈夫だ。」

「了解。」

「待て・・・貴様ら。このままおめおめと逃がすと、思っているのか・・・‼」

「・・・次はちゃんと倒してやるから安心しろや。」

「小童どもがァァァァァ‼」

グリードの捨て台詞を満身創痍で聞いた俺たちは、そのままイプノの瞬間移動を使って、生命さんの家まで飛んだ。


~~~~~


生命さんの家まで移動した俺たちは、暫く休養を取ることにした。

「お、戻ったか‼」

「生命・・・。」

「みんな生きているみたいだな。良かった・・・。」

「殆ど、新野のおかげだ。それより、姫上と襲われた人は?」

「二人とも無事だ。途中でアルアが助けに来てくれてな。今二人はアルアの家で療養中だ。」

「そっか・・・。」

「新野君にも大分無理をさせたね。親御さんには俺の方から言っておくから、暫くは帰らず家で休んでおくといい。」

「ありがとうございます。」

「それに、龍一達も暫くはうちに泊まっていけ。そっちの方が一人で家にいるより安全だ。」

「あの・・・学校はどうなるのでしょうか?長期休みになると色々騒がれると思うのですが・・・。」

「そっちも心配ない。姫上が何とかするといっていた。」

「・・・何か、ちょっとした旅行気分だな笑。」

「確かに。俺、へとへとだけど・・・ワクワクするよ。」

「お前は私たちの中で一番の重傷なんだ。安静にしていろ。」

「そしたら、夜はニーレイさんと一緒に・・・ゴフっ‼」

「・・・お前わざとやってるだろ?」

「・・・。明日になったら、姫上と襲われた人がアルアとうちに来る。グリードの話はその時にでもしよう。分かったね?」

「はいよー。」

こうして俺たちは、グリードとの戦いの傷を癒しながら、戦いの時の様子について話を始めた。

「あの時は新野がいて助かったぜ。」

「まあ、それ程でもないけどね~。」

「ところでお前はあの時、グリードに何をしたのだ?」

「ビランチの力を使ったんだよ。」

「ビランチの?どんな力を使ったんだよ?」

「具体的には俺も分からない。でもビランチは“裁きを下す”って言ってた。」

「裁き?」

「うん。三日間の印紋術の封印を・・・。って言ってたから、グリードに対して三日間の限定付きで印紋術を使えないようにしたんじゃないか?」

「それが確かなら、グリードはあと三日は印紋術が使えないということか。」

「そうなりますね。」

「・・・とりあえず、もう寝ようぜ?今はそれ以上話をしても意味ねーし。」

「そうだな。今日はいろいろあり過ぎた。もう休もう。」

「そうっすね。」

こうして俺たちは何とかグリードを撃退し、一日を終えることができた。


~~~~~


翌日、俺たちはアルアさんとそのグリードに襲われた人と会うことになった。

「生命くん。邪魔するよ。」

「わざわざ、出向いて頂き、申しわけありません。」

「本当だまったく。こちとら、怪我人だっていうのに・・・。」

「・・・お前は来なくても良かったんだぞ?」

「馬鹿野郎‼そんなわけいくかよ‼今一人でいたら命が幾つあっても足りねえ。」

「冗談だ笑。」

「・・・昨日は助けていただいてありがとうございます。」

「いや、礼には及ばないよ。あれは元々うちの問題だからね。それよりも、とんだ災難だったね。えっと・・・。」

「あ、エルティピストアと言います。」

「・・・ピストア君か。俺は伊藤生命だ。よろしく。」

「よろしくお願いします。」

「で、こっちにいるのが左から順番に龍一、ニーレイ君、新野君だ。」

「よ、よろしく・・・。」

「お、おう。」

「ああ。よろしく。」

「よ、よろしくっす。」

「よし。詳しい話は客間で話そう。新野君のことはそこで話す。」

「分かった。」


~~~~~


「まずはピストア君が何故、アーテに狙われているのかを話すとしようかの。」

「それは是非聞きたいです。」

「・・・聞いたらきっと驚くぜ?」

「お前は聞いたのか?」

「アルアのじーさんと俺はもう聞いたよ。」

「では、ピストア君。話してくれるかな?」

「はい。俺がグリードに狙われている理由・・・それは俺がある神話に出てくる者と同じ能力を持っているからです。」

「神話?何だそりゃ。」

「神の子神話じゃよ。ニーレイは知っているね?」

「・・・はい、知っています。1世代に1人・・・神の力を扱う人間の話。」

「彼がその神の子なんじゃよ。」

「・・・本当ですか⁉」

「ああ、本当だ。」

「・・・さっきから話してる、その神の子神話って何なんだよ⁉」

「・・・わたしやアルア様が住んでいる地域に語り継がれている有名な神話だ。学校で最初に習う神話の一つで、その内容とは神の力を持つとされる人間の話。紀元前より、世界各地で起きる災害や天災を、己の身一つで解決していく人間の話だ。時には火山の中心に入り、噴火を止め、時には隕石を消し去り、地震を止めたり・・・数々の神がかりの様な行いから、人々より神が現世に遣わした存在。神の子である・・・‼そう呼ばれる人間の話だ。」

「・・・じゃあ、このピストアはその神の子と同じ力が使えるってことかよ⁉」

「・・・そういうことになる汗。」

「ニーレイさん、龍一。ちょっと。」

「なんだ?こんな時に。」

「実はですね。ゴニョニョ・・・。」

「・・・はあ?マジで⁉」

「マジで汗。さっきグラントが言ってきた。」

「いや、タイミングばっちりだけどさ・・・はあ・・・。」

「どーした?龍一。」

「いや、何でもねえ。それより、その人が神の力を使えるってのは分かったから、次は新野の事を話すぜ?」

「頼むよ龍一君。」

「とりあえず、こいつは能力者だ。天使を体に憑依させて天使の力を扱うことが出来るらしい。」

「・・・東北とかで聞くイタコとは何が違うんだ?」

「・・・新野。」

「・・・分かったよ笑。イタコとは魂の質が違います。」

「魂の質?」

「もう少し分かり易く言うと憑依させる意識体の力の質です。俺が憑依させるのは、死後の人間の魂みたいなものじゃないんです。」

「それはさっき聞いたよ。天使を憑依させるんだろ?」

「そう、俺が憑依させる天使は、あなたたち印紋術師が力の源としている六大側近天使です。」

「‼、何でお前印紋術の事を・・・⁉」

「天使から聞いたんです。で、その天使からピストアさんの話も聞いていました。全知全能の神の全能の力を扱う人間がいるということを。」

「え?じゃあ・・・俺の力って本当に神の力なのか?」

「天使が言うにはそうみたいです。」

「そして、このモブ男ですが、この者は天使よりある使命を受けているそうです。」

「・・・その使命とはなんじゃ?」

「神に力を返してほしいといわれました。人間は昔、神から力を“期間限定で”与えられたそうです。ですが、人間はその期限を過ぎても神に力を返そうとはしなかった。天使たちはその時、人間に罰を与えようとしたそうなんですが、神は人間が自発的に返すのを待つように天使に言ったそうです。それを天使たちはずっと見守ってきたけど返すどころか、その力を使って争い、数千年という時間が経過したそうです。」

「・・・確かに世界を巻き込んだ戦いまで人間は起こしておるからの。」

「ですが、今俺がいる学校には、かつて争ってバラバラだった能力者が集中しているみたいで。後にも先にも、力を返すチャンスは今しかないと言われました。」

「・・・大分長々と語ってくれたがよ、そりゃ無理な相談だぜ。」

「そうじゃな。何故なら我々はアーテを倒さなければいかん。」

「・・・アルア様。そのことなのですが、新野はグリードを倒すことを協力すると言ってくれました。」

「そっか。それでお前は昨日、あの場に来てくれたのか・・・。」

「はい。」

「・・・じーさん。グリードを倒した後なら、無くなってもいいんじゃねえか?力。」

「そうじゃの・・・今すぐ答えは出せんが、考えてみるかの・・・。」

「・・・ありがとうございます‼」

「そしたら、とりあえずはグリードを倒さないといけねーな。」

「それはそうじゃの。新野君の話に協力するにしても、目先の問題はアーテじゃ。」

「そのことなんですが、グリードは今、印紋術を使える状態ではありません。」

「どういうことじゃ?」

「俺の天使の力でグリードの印紋術を三日間という期限付きで封印しました。昨日の夜に封印したので、明後日の夜まではグリードは何も出来ません。」

「それは助かるの。お陰で作戦会議が十分に出来るわい。」

「そしたら、その話は午後にでもしましょう。とりあえず昼食にしませんか?ほらよく言うでしょう?腹が減っては。」

「戦は出来ぬ・・・か笑。まあ、確かに戦だな。」

こうして俺たちは、しっかりと栄養を取り、午後の作戦会議に備えることにした。


~~~~~


「で、どうするか。」

「まずは、戦う場所からだろ。ヘタに町中でドンパチは出来ねえ。」

「そうだな。関係ない人を巻き込むわけにはいかない。」

「・・・生命の家は?」

「馬鹿‼俺を家なき子にするつもりか‼」

「じゃあ何処にすんだよ。」

「あの、荒和幸奇高校はどうですか?」

「・・・お前らの高校?大丈夫なのか?そこで。」

「大丈夫かは分かりませんが、うちの高校は校庭“だけ”は広いので、戦うスペースとしては申し分ないかと。」

「だが、肝心の遮蔽物がないぞ。校舎は当然守りながら戦わなければならない。」

「ニーレイ君たちはその辺のことは気にしなくていい。周囲への被害は俺たち大人が食い止めよう。君たちは戦いに集中してくれ。」

「ありがとうございます。生命さん。」

「でも、ニーレイの言った通り、戦いの中、遮蔽物がないのは厳しいな。」

「それ以前に誰が攻めるかだ。私は確定として、最低でもあと一人か二人は欲しい。」

「・・・新野君はどうかな?」

「確かに・・・それは構わないのですが、モブ男の天使の力は少し扱いが難しいのです。」

「・・・というと?」

「新野の天使の力というのは、力の加減が難しく、バテ易いんです。力は絶大なのですが、その分スタミナ切れを起こし易い。私と龍一の考えでは苦境を打破する為の一手や決定打として使うのが望ましいと思っています。」

「確かに、バテ易いならそれが妥当だな。」

「・・・新野君。出来れば君が憑依させることが出来る天使の名前とその力を聞いておきたいんじゃが・・・いいかな?」

「はい、分かりました。俺が呼ぶことが出来る天使は全員で六人。軍神オルゴ、最高神ビランチ、破壊の女神グラント、言葉の女神フェア、最強神フォール、邪視の始祖イプノ。この六人です。」

「して、その六人が出来ることは?」

「全員の事は詳しく知りません。オルゴはヤンキー三人に絡まれた一回しか憑依していないので、戦いの知識について豊富なくらいです。ビランチは空間を支配する能力が使えます。具体的には空間を固定したり、瞬間移動をしたり、空間に入りこんだものを感知したりです。グラントとイプノは力の手解きを受けたので結構詳しく話せます。グラントは念力と瞬間移動とサイコメトリーが使えて、イプノは念力とテレパシーと瞬間移動と催眠術が使えます。確か龍一たちと初めて会った時に見せた力があっただろ?」

「おう、生命の家が吹き飛びそうだった時な?」

「あれは、グラントの力の念力だよ。一割も出してないけど。」

「あれで一割以下⁉まじかよ・・・。」

「なら、新野は決定打に決まりだな。」

「ニーレイよ、どんな感じなんじゃ?その念力というのは?」

「・・・龍一。」

「お、おう。なんていうか・・・でっかい空気がぶつかる感じで、威力としては守印なしで本気で蹴り飛ばされた感じっすね。」

「フルの四割を出すと、ここら一帯が更地になるとグラントは言ってました。」

「それは・・・おっかないな・・・笑。」

「・・・フルで四割っていうのはどういうことだ?」

「天使が言うには四割以上は人間の体がもたないらしいです。」

「成程ね。力が強すぎるのか。」

「その通りです。」

「新野君。残りの二人の天使の話を。」

「はい、次がフェア。この天使に戦闘力はありませんが、“言葉を扱う場面では必ず優位に立てるわよ‼”と本人は言ってました。最後がフォールなんですが、フォールは会ったのが龍一たちに会う直前だったので、ほぼ何も分からないです。」

「・・・その天使たちは、会いたいと思えばいつでも会えるのかね?」

「呼べば来るとは言ってるんですが・・・そうそう思っている通りには・・・でも、決戦の時には、“全員近くにいるようにする”と言ってます。」

「そうか・・・なら、新野君の力に頼り過ぎるのも避けた方が良いの。」

「そのようですね。」

「ここで、一旦それぞれの役割を整理しようぜ。じーさん。」

「そうじゃの。まず最初にわしら大人組じゃが、わしらは主に校舎の守りに努めよう。大部分は生命君に任せることになるじゃろうからよろしくの。」

「分かりました。」

「そして、手が空いている時はわしと姫上君が印紋で加勢する。いいね?ニーレイ?」

「助かります。アルア様。」

「次に攻めじゃが、基本はニーレイと新野君にお願いするじゃろう。覚悟してくれ。」

「わ、分かりました。」

「特に新野君は戦い慣れていないだろうから、龍一がしっかりサポートするんだ。いいな?」

「分かってるよ。」

「よし、これで作戦会議は終わりじゃの。」

「ちょっと待ってくれよじーさん。まだ肝心なことがぬけてんぜ?」

「ん?肝心なこと?」

「ピストアはどーすんだよ?」

「ピストア君は当然不参加じゃよ。」

「そうそう、本人には関係ねーわけだし。」

「でもよ、グリードはピストアを狙ってんだぜ?仮にこいつを生命の家に置いて行って、グリードの方に向かったとしても、グリードがまだ狙ってるなら、入れ違いになって今度こそ殺されるかもしれないぜ?」

「・・・確かに、それはあり得るな。」

「だったら、最初からピストアもメンバーとして考えた方が守りやすいし、それに、ピストアが力を自由に使えるなら、いざという時の盾として役に立つんじゃね?」

「盾って・・・言い方汗。」

「あの・・・ピストアさん。こんなこと急に聞かれても回答に困るとは思うんですが・・・私たちと一緒に戦っていただけますか?」

「・・・出来れば、参加したくないですが、一緒にいるだけでいいのであれば、承諾します。渋々ではありますが・・・。」

「善処、感謝します。」

「決まりじゃの。ピストア君はわしら大人組が守ろう。」

「ありがとうございます。あと、今思ったんですが、俺がいた方がグリードってやつも誘いやすいんじゃないでしょうか?以前俺は日本以外の地であのグリードに襲われました。その時はアルアさんに助けて頂いたので事なきを得たのですが、奴はここに来るまでに沢山の町や人を殺しています。この日本でも同じようなことをする前に止められるのであれば、止めた方が良いと思います。」

「そうじゃの。いまは幸い、新野君の天使の力でグリードの力は封じられておる。その間に出来ることをせねばの。」

「そしたら、今度こそ作戦会議も終わったことですし。今日はお開きにしましょう。」

「だな‼ピストアはどうするんだ?」

「生命君。彼をここに置いてもらえないかの?グリードを倒すまでの間じゃが。」

「構いません。」

「ありがとうございます。生命さん。」

「礼には及ばないよピストア君。」

こうして俺たちはグリードとの戦いの準備へと一歩ずつではあるが、前進していった。


~~~~~


「・・・クソッ‼やはり、印紋術が使えない。一日経てばもしやと思ったが・・・確かあの時、十字架と荒縄が出て来たんだったな。俺の記憶に間違いがなければ、あれは最高神ビランチが裁きを行う際に現れるという、時止めの十字架と時縛りの荒縄。時止めの十字架に張り付けられた者は時の流れから外れ、全ての時間が止まるという。全ての時間が止まるということは臓器の動きも止まるということ。別名、死神の十字架とも呼ばれる。そして、時縛りの荒縄。これは堕天使を処刑する為に神々が編み出した処刑道具。その効果は能力の封印。人間と違い、特別な力を持つ天使たち。この天使たちが堕天し、裁きの対象となった場合。いざ裁きを執行するとなった時、力を使い逃げられないようにと神の側近である六大天使のみ所持を認められるという神聖な道具だが、まさかこの世でその効果を体験することになるとは・・・。あの新野とやら、ただのガキではないな。最高神ビランチを呼び出し、力を使っているということは、あのビランチを使役していることになる・・・。ならば、一番最初に消すべきは新野だ。新野さえ倒せば、他の奴らなどどうとでもなる・・・。今は、我の印紋術が戻るまでは身を隠すか・・・。」


~~~~~


「戻ったわよぉ、みんな。」

「で、どうだった?新野の様子は。」

「満身創痍だけど、特に問題はないわねぇ。」

「ま、グリードと対峙した時はめっちゃ焦ってたけどね笑。」

「それはそうでしょうね。私たちからしたらあんなのどうってことないけど、新野達からしたら一大事だし。」

「そうねぇ。でも、そのグリードもあたしの力で一時的に力は封じて来たから今は大丈夫でしょ。」

「だな。それに、丁度いいタイミングでピストアの件も片付いた。」

「ほんと、ベストタイミングでしたね。」

「状況報告はそれくらいにして、そろそろ当日の流れを決めるぞ。」

「はいはい、分かったわよ。で、あたしたちはどうすればいいの?オルゴ。」

「グラントは新野が印紋術を躱せなかった時、お得意の念力で相殺してくれ。」

「はいよ~~。」

「基本、新野をサポートするのは俺とフォールだ。威力だけを考えるなら、グラントとイプノのサポートが妥当なんだが、それだと新野の体力の消耗が激しい。長期戦が予想出来る今回は攻撃を確実に躱せる者が憑依し、サポートするのが望ましい。」

「それは言えてるね。僕たちは瞬間移動で躱すことに慣れてるけど新野はそうじゃない。それに新野が瞬間移動を使うと、ヘタすると攻撃を受けた方がましなくらい体力が減るから。」

「そこで、俺たちの出番ということだ。俺とオルゴで新野をサポートし、足りない部分をグラント。この布陣で行く。」

「じゃあ、僕たちは、戦わなくていいの?」

「いや、イプノにはフェアと協力してグリードが最後に行うであろう、搦め手の対策をしてほしい。」

「ああ、言葉か。」

「そうだ。グリードは戦いに勝てないと悟った時、言葉によって新野達を洗脳しようとするだろう。それをフェアと一緒に防いでほしい。」

「分かりました。お任せを。」

「よし、そして最後にその言葉による搦め手さえも出来ないと悟った時は、ビランチ。あんたに頼むことになる。」

「了解。時間止めて、グリードを自害させないようにすればいいんでしょ?」

「頼む。」

「よし、作戦会議も終わったことだし、あとは当日を待つだけだな。」


~~~~~


翌日、俺たちはグリードにどうやって戦う場所を伝えるか悩んでいた。

「無事戦う場所も決まりましたね。生命さん。」

「そうだね。でも、まだ問題が一つ。」

「問題?何ですかそれは?」

「決戦の場所をどうやってグリードに伝えるか・・・だ。」

「それなら心配いらねーぜ?さっき俺からアルアのじーさんに頼んでおいた。」

「本当か?」

「ああ。じーさんに出来るか聞いたら、直接出向いて伝えに行くって言ってたぜ?」

「・・・それ、色々と大丈夫なのか?」

「・・・それは、俺にも分かんねぇ。アルアのじーさんとグリードは昔は親友だったらしいが、流石に寝返るなんてことはねーと思うぜ。・・・多分。」

「・・・あったら、どうする?」

「・・・あったら?そしたら・・・いや、言えねえな。その時になってみねーと、自分でもどうするか分からねえな。」

「俺もだ。そんなことがあったなら、一番辛いのはニーレイ君だろうな・・・。」

「そうだな。だけどその時は・・・それでも、俺は戦うよ。じゃなきゃ関係ない人が死ぬのは変わらねえ。」

「確かにな。」


~~~~~


「久しぶりじゃの、アーテ。」

「・・・懐かしい名で呼ぶじゃないか、アルア。何しに来た?力の使えない俺を殺しに来たのか?」

「いや、今日は若き印紋師達からの言伝を預かって来たんじゃよ。」

「言伝だと?」

「そうじゃ、“明晩の同じ場所で神の子と共に待つ”だそうじゃ。」

「つまりは、俺の力が戻るまで待ってやると?」

「そうじゃ。」

「随分と舐められたものだな。あの小僧がいなければ、ここまで持ち込むことも出来ない奴らが。」

「そうじゃの。しかしどうじゃ?その小僧たちにここまで追い詰められた気持ちは。」

「・・・何が言いたい。」

「・・・わしとおぬしがここまで言葉を交わすことなど、いつ以来じゃ?アーテよ。」

「・・・さあな。あまり覚えていない。しかし、皮肉なものだ。力を欲しいままにしてきた俺が、こうして力を一時的にではあるが、使えなくならなければ、他人とまともに話をすることも出来ない。」

「・・・そうじゃの。アーテよ。その力がもしなくなったとしたら、おぬしは今よりも楽になれるのかの?」

「さあな。それは分からない。だが、この力がない世界では、俺は生きられない。」

「・・・そうか。そしたら、わしはそろそろ行くかの。」

「アルアよ。次会う時は・・・。」

「分かっておる。・・・じゃあの。」


~~~~~


戦う場所も決まり、これからという時に何故か俺たちは学校に行くこととなった。

「え?学校に行けって?正気かよ⁉」

「ああ、正気だ。もう戦う場所は決まってるんだ。今更じっとして悶々としているよりはましだろう。」

「まあ、それはそうだけどよ・・・。」

「いいから‼ほれ‼」

「へいへい・・・。」


~~~~~


「決戦の日に普通に学校に行くってどうよ?」

「・・・それは確かにそう思うが、正直なところ私は少しほっとしている。」

「俺も。何か上手く言えないけどさ、学校に向かってるってだけで、安心するっていうか・・・不思議な感じ。」

「・・・まあ、それは・・・な。」

それから俺たちは久しぶりに学校に行った。

授業を受け、昼食を食べ、そして放課後になり、日が暮れると共にグリードと戦う時が近づいているという感覚が。これから死ぬかもしれないという感覚が、俺たちを複雑な感情へと導いた。

そしていよいよ。グリードとの戦いが幕を開ける・・・。


~~~~~


放課後俺たちはグリードを倒す作戦の確認を決戦の場の学校でしていた。

「それじゃあ、作戦の最終確認だ。最前列がニーレイ君と新野君。そして、中衛が龍一。そして後衛が俺とアルアと姫上。その後ろにピストア君だ。いいね?」

「はい、構いません。」

「新野君。スタミナの方は持ちそうかな?」

「はい。今回は肉弾戦主体で行くので、3時間は持ちます。」

「念のため、新野君の天使の布陣みたいのがあるなら、聞いておきたい。いいかな?」

「はい、まず、第一陣が軍神オルゴと最強神フォールの身のこなしや武術などの肉弾戦によるサポートです。そして、第二陣がグラントによる念力サポート。これは、グリードの印紋術を躱し切れなかった場合に念力で相殺するという計算です。そして第三陣。これはイプノとフェアによる言葉対策です。」

「言葉対策?どういうことじゃ?」

「天使達はグリードが力で敵わないと悟った時、言葉による搦め手でこちらの動揺を誘うだろうと考えているようです。」

「成程な・・・。」

「そして、最後の第四陣。これは、グリードが自害しようとした際に、最高神ビランチが時間を操り、グリードを止めるというものです。」

「・・・是非、そうならないよう願いたいものだな。」

「ですね。」

「グリードを止めた後はどうするのですか?」

「それはわしに任せておけ。わしが呼んだ者に連行させる。」

「分かりました。」

そして、準備が整った正にその時。グリードは姿を現した。

「・・・おい、来たぜ。」

「「「「「「・・・‼」」」」」」

「揃いも揃って・・・そんなに私が怖いのか?」

「フン、その強がりも何時までもつかな?」

「私をここに呼んだのはお前たちだ。お前たちからこい。」

「・・・言われなくても。」

ニーレイはグリードに近づき、攻印を放とうとした。

しかしグリードはニーレイを躱し、俺の元へと一直線に向かってきた。

「何⁉」

「・・・攻爆印{強硬}。」

そして、恐らくグリード自身の最大火力である印紋術を俺に放ってきた。

「龍一‼」

「分かってる‼守印{絶}、空間光爆紋{引}‼」

龍一は咄嗟に守印{絶}でグリードの印紋を無効化しつつ、空間光爆紋{引}でダメージを与えながら印紋の中に引きずり込もうとした。

「構造化。」

しかし、グリードがそう呟くと、空間光爆紋{引}がもう一つ出現し、互いに相殺する形で弾けた。

「・・・あいつ、龍一の技を・・・。」

「ああ・・・パクりやがった・・・。」

「しかもあんな一瞬で・・・。」

「・・・それが、アーテの厄介なところじゃ。」

「フッ、確かに姫上や生命よりは強い。反応も中々良い・・・。」

グリードが余裕の笑みを浮かべている時、俺はある天使を憑依させ、グリードの背後へとまわっていた。

「お前の反応は鈍いがな。」

「なっ・・・‼」

俺は爆発を躱しつつ、そのまま体を低くし、高速でグリードの背後へとまわった。

「転べ。」

俺はグリードの膝関節を後ろから、さらうように蹴り上げ、グリードの体制を崩した。

「今だ‼ニーレイ‼」

「分かっている‼攻爆印{強硬連}‼」

「じーさん‼俺たちも‼」

「分かっておる‼攻爆印{強硬連}‼」

「攻爆印{強硬}‼」

三人の攻撃によって、凄まじい爆炎が荒和幸奇高校の校庭に立ち込めた。

「やったか⁉」

「・・・今のは流石に効いたぞ‼」

「クソッ‼吸引か・・・‼」

グリードはあの一瞬で吸引を発動させ、ニーレイたちの攻撃を弱めていた。

「ああ。だが、二人分を吸収するので限界だ。」

「(・・・もう一度、新野に隙を作ってもらって私と姫上。そしてアルア様の印紋を叩き込むしかない・・・‼)」

「悪いが、同じ手はもう食わんぞ?」

「(・・・チッ、読まれてやがる。多分ニーレイはさっきのやつをもう一度やろうとしてるんだろうが、グリードはそれを読んでやがる。さっきの発言はそれをしたらどうなるか・・・その警告と牽制に俺は聞こえた。それに、戦いのしょっぱなで新野を狙ってきた・・・これは恐らく、俺たちの攻めの要が新野だって見抜いてやがるからだ。これは攻め方を変えないと、あっという間に形勢逆転だ・・・。)ニーレイ‼サポートに回れ‼」

「‼(龍一・・・攻め方を変える気なんだな・・・‼)分かった‼新野‼二陣だ‼」

「はい‼分かりました‼」

「ん?何をするつもりか知らんが、攻守交代をしたくらいで打破出来る戦力差ではないぞ?」

「それはどうかな?」

「(・・・ついに始めたか。あのフォーメーションを‼)」

俺たちは、以前のグリードとの戦いで印紋術が通用しないのは分かっていた。

そこで、龍一たちは印紋術で攻めるという戦い方を捨て、全力で俺のサポートをするという戦い方を編み出したのだ。

発想の転換。印紋術が敵わないのであれば、使わなければいい。

印紋術は新野の憑依の攻撃を当てるためのサポートに徹する。

そうすることで、破壊力は結果、何倍にも跳ね上がったのだ。

「飛ばせー‼龍一‼」

「おっしゃ‼屋上の高さまで飛んで行きやがれ‼」

「(グラント‼準備はいいか?)」

「(もっちろ~ん♪それじゃいくわよ~?2.5割‼)」

龍一が柔軟印で俺を上まで飛ばした後、俺は上から念力をグリードにかました。

「うぐっ‼ぐああああっっっ‼」

グリードは呻き声をあげながら地面にめり込んだ。

「・・・終わったな。」

「貴様、いったい何を・・・。」

「グラントの念力だよ。今のは結構力込めたから、大分効いただろ?」

「体の骨が・・・軋んだぞ・・・小僧。」

「(終わりみたいね。)」

「(天使から見てもそうなの?)」

「(まあね。それにしても、予想では気絶すると思ったんだけど・・・中々頑丈なのね。)」

「(頑丈って・・・言い方笑。)」

「おーい‼・・・終わったのか?」

「はい。グリードを倒しました。」

「そうか。そしたら、ここからはアルアのじーさんに任せようぜ。」

「そうだな。いこう龍一、ニーレイ君。新野君。」

「え?もう?」

「いいから。な?」

「分かりやしたよ。」

「・・・生命さんが言うなら。」

「・・・分かりました。(結構頑張ったんだけどな・・・。)」


~~~~~


「アーテよ。今から貴様をノーヴェの監獄へと送る。あそこがどういう場所か・・・勿論、知っておるな?」

「ああ。知っている。別名、生の監獄。死にたくても死ねない。強制された生を罰とする監獄の事だろ?生きたくても、生きられなかった者たちを殺した奴にはお似合いの場所ってわけだ。」

「・・・おぬしには、そこで自分を見つめ直すことが必要じゃ。そして、自分の行いを振り返った時に、後悔することを望んでおる。」

「後悔?この俺が?」

「そうじゃ。今はまだ分からんかもしれんが死ぬ前までにはきっと分かるじゃろう。」

「・・・分かりたくもないわ。そんなもの。」

こうして、グリードはノーヴェの監獄へと投獄された。


~~~~~


「なあ、何で、さっきはあんなに急いでたんだよ。」

「それはな、話せば長くなるから色々端折るが、アルアのじーさんとアーテが昔親友だったからだよ。」

「え、それ、初耳なんですけど・・・。」

「言ってねーからな。だから、最後くらいはじーさんにけじめをつけさせてやりたかったんだよ。」

「つまり、アルア様に気を使ったと・・・?」

「そういうことだ。」

「龍一、ニーレイさん。約束覚えてる?」

「約束?あー‼力を返すってやつな‼覚えてるぜ‼」

「そしたら、協力してくれるってことでいいんだよね?」

「俺は、協力するが、ニーレイはどうかな~?」

「わ、わたしも約束は守る‼それよりも、モブ男‼貴様、戦闘中に私を呼び捨てにしただろ?」

「あ、あれはフォールが憑依してたんで俺じゃないっすよ汗。」

「三人とも若さというか、元気だね笑。」

「なんだ生命?もしかしてバテてんのか?」

「ば、バテてはいない‼ちょっと疲れているだけだ‼」

「・・・それをバテてるっていうんだぜ?」

「こ、こら‼大人をからかうな‼汗。」

こうして俺たちは無事にグリードを倒し捕まえることが出来た。

そして、龍一たちの協力も得られたことで、今度は全知の一族と自然神の一族に接触を図ることになる。

しかし、その話はもう少し後の話・・・。

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