見出し画像

天使たちの日常戦線(二章、創造の智天使)


ヴィーゴ「シェンス。調子はどうだい?」

シェンス「どうもこうもないわよ。ここ百年大した仕事なし。」

ヴィーゴ「みたいだね。今や人間たちの成長速度は昔とは比べ物にならない程速くなっているからね。」

ノーヴェ「けどそれっていいことだよな。それだけ人間が自立してきているってことだから。」

ヴィーゴ「そうだね!」

レナ「んで、ヴィーゴはここに何しに来たんだ?」

ヴィーゴ「何って大した用事じゃないよ。いつものように各部門の様子を見て回っているだけさ。」

チェル「・・・そうか。ご苦労なことだな。」

ヴィーゴ「いいんだ。好きでやっているからね。」

モルテ「そうですか・・・ネニアは元気ですか?」

ヴィーゴ「・・・それは相変わらずだよ。一人で遊んでそれで遊び疲れたらスヤスヤ寝てる笑。」

モルテ「彼女らしいですね笑・・・普段は子供みたいな彼女ですが大逆の時の働きは凄かったですね。」

ヴィーゴ「・・・見ていたのかい?」

モルテ「勿論。あなたや他の無所属天使のことも。」

シェンス「何?あんたたちも大逆参加してたの⁉」

ヴィーゴ「まぁ・・・間接的にね?」

モルテ「いや結構直接的でしたよね。イプノの神力攻撃を防ぐウナのさらに後ろから地上を守っていたじゃありませんか。」

ヴィーゴ「・・・だって心配だったんだもん。普通階級が二つも違えば瞬殺されるのが定石なんだよ?それを消されずに存在し続け守り切るなんて普通出来ない。でもウナはイプノの神力の約八割を相殺しながら存在し続けたんだ。あの時とれる最善手をウナたちはとったんだ。そのお陰で僕は天界の争いの影響をほぼ完璧に遮断することに注力出来た。」

ノーヴェ「・・・そりゃそうかもしれねーけどよ・・・お前もお前だぜ。創造の神力で天界と地上の間に大きな壁を作り出すなんて幾らお前が智天使でも本気出し過ぎだ。下手したら神力の過剰放出で存在が消えていたぜ?」

シェンス「ノーヴェ。あんたも知ってんの?」

ノーヴェ「まぁ・・・地上から見えたし。」

ヴィーゴ「・・・ごめんよ?今まで黙ってて。でもビランチは僕が参加するって言ったら止めていたと思うんだ。だって天使同士が戦うなんてこんな不毛なことはないからさ。だけど僕は見ていることは出来なかったんだ。ウナたちが天使の使命を果たしているのにそれより上の僕がただ見ているなんて・・・。」

アッズ「・・・しけた話はここまでにしようぜ!話題を変えよう!」

ヴィーゴ「そうだね!そういえばオルゴはどこにいるんだい?」

シェンス「〝気持ちの切り替えふり幅エグ・・・〟・・・お、オルゴなら力部門で剣術指南中よ汗。」

ヴィーゴ「そっか!じゃあ力部門は後回しにして次は堕天使狩り部門に行ってくるよ!」

シェンス「い、行ってらっしゃい・・・。」

~~~~~


ヴィーゴ「やぁ堕天使狩りのみんな!元気にしているかい?」

フォール「まぁ・・・ぼちぼちな。」

ヴィーゴ「それは良かった!」

ブッピラ「で、何の用だ?」

ヴィーゴ「各部門の様子を見て回っているのさ!」

ブッピラ「それはビランチに頼まれたのか?」

ヴィーゴ「いや自主的にさ。」

フォール「ご苦労なことだな。」

ヴィーゴ「そういえばドゥエがいないけど何処にいったんだい?」

ヴェロ「下界に行っています。」

ヴィーゴ「そうなんだ。」

ラーナ「もしかしたらさぼっているんじゃないですかねー。」

ヴェロ「ドゥエに限ってそんなことはないと思いますよ?」

ラーナ「・・・まぁそうですよねー。」

ブッピラ「俺たちとしてはやることさえしてくれればむしろ少しはさぼってもらいたいものだが・・・。」

ヴィーゴ「そしたら僕が地上に行って確認してこようか?」

フォール「・・・そこまでしなくていい。そこまでするとドゥエの精神衛生上良くない。」

ヴィーゴ「・・・そうだね。監視されているみたいになって良くないね。余計な気遣いだったよ汗。」

ブッピラ「いや気持ちはありがたく受け取っておく。」

ヴィーゴ「助かるよ。でも僕はこれからどっちにしろ地上に行くから見かけたら少し様子を見るよ。」

ブッピラ「了解だ。」

ヴィーゴ「じゃあね。」

フォール「おう。」


~~~~~


ドゥエ「ったく!今時暴れてるのなんてお前くらいだぞ!」

ディストル「まぁそういうなよ。ここで会ったのも何かの縁だろ。もう少し遊んでくれよ?」

ドゥエ「お前から奇襲を仕掛けてきたくせによく言うぜ。もし俺がお前との戦いの最中にブッピラかフォールを呼んでいたらここがお前の最後になるんだぞ?それは分かっているな?」

ディストル「呼んでねぇよ笑。お前は上天使にすぐ頼る程器用じゃねぇ。」

ドゥエ「・・・そりゃお前も同じだろ。イプノかセイを呼べば一瞬なのにいまだにこうして一対一で立ち合ってる。」

ディストル「イプノかセイを呼んでいたら俺が消されるわ。」

ドゥエ「何故?」

ディストル「自分の尻を自分で拭けねぇ奴は堕天使の中にはいねぇんだよ。」

ドゥエ「成程。他人に自分のケツを拭かせるような奴は堕天使の中で存在出来ないということか。」

ディストル「そうだ。」

ヴィーゴ「やぁお二人さん。ここで何しているんだい?」

ドゥエ「ヴィーゴ!どうしてここに⁉」

ヴィーゴ「ちょっと地上に用があってね・・・で、堕天使の君はここで何しているのかな?ディストル君。」

ディストル「〝・・・大逆時でさえ静観を通した奴が何故ここに。〟暇つぶしにこいつとちょっと手合わせをな。」

ヴィーゴ「そっかぁ。でもあまり地上を傷つけないでほしいな。僕がここに来る途中にどれだけ直したことか。」

ディストル「・・・次からは考えとくよ。」

ヴィーゴ「ありがとう。もう行っていいよ。僕は君たちを捕まえる気はないから。」

ディストル「・・・それはネニアの意向か?」

ヴィーゴ「〝・・・やっぱりしっかりと意識しているんだね。イプノ。〟いや?ビランチの意向だ。」

ディストル「・・・そうか。なら俺はお言葉に甘えて帰らせてもらう。」

ドゥエ「・・・行ったか。」

ヴィーゴ「そうだね。それよりドゥエ。しっかり休んでいるかい?」

ドゥエ「〝・・・唐突だな汗〟・・・まぁ多少はな汗。」

ヴィーゴ「・・・本当かい?」

ドゥエ「・・・実をいうとここ百年地上にいる時は時々息抜きをしているというか・・・なんというか。」

ヴィーゴ「〝・・・成程。ちゃんとさぼっているんだ。〟気分転換をしているってことかい?」

ドゥエ「〝・・・これは怒られるのか?〟・・・その通りだ。」

ヴィーゴ「〝流石ブッピラ達だ。人前で休めない性格をちゃんと見抜いていたんだね・・・そしてあえて単独の状況を作ることで休むことを促していたんだ。〟良いじゃないか!そのまま続けるといいよ!」

ドゥエ「〝・・・?〟あ、あぁ汗。」

ヴィーゴ「じゃ、僕もお暇するよ。行きたいところがあるからね!」

ドゥエ「・・・どこに行かれるんです?」

ヴィーゴ「ん?イプノの所♪」


~~~~~


ヴィーゴ「やぁ久しぶりだね!イプノ!」

イプノ「久しぶり♪いつも来てもらって悪いね。」

ヴィーゴ「問題ないさ。僕は無所属だから。」

イプノ「そうなんだ・・・で、天界の様子はどんな感じなんだい?」

ヴィーゴ「特に変わったことはないよ・・・っていうかそういうことはオッソとかに聞けばいいじゃないか。」

イプノ「今更改めて聞くのは気が引けるよ笑。“そんなに気になるの?”って言われそうだし。それにそこまで本気で聞きたいわけじゃない。」

ヴィーゴ「成程。あいさつ代わりってことだね。」

イプノ「そういうこと。」

ヴィーゴ「・・・にしても天界に戻る気はないのかい?」

イプノ「急だね笑・・・そうだな・・・ネニアとビランチが本気で僕を説得してきたら考えるかもね。」

ヴィーゴ「んー・・・それは・・・。」

イプノ「ないだろうな。分かってるよ。それくらい。それに僕は天界に戻るべきじゃないと思ってるんだ。」

ヴィーゴ「・・・それは自分で自分が天界に戻ることを許さないってことかい?」

イプノ「その通りだ。もし僕が天界に戻る選択をしたらここまで一緒に来てくれたセイやディストル、ディオ、ムジカ、ロッサ、フルートを裏切ることになる。それにあの時誓った決意も無意味になる。態々天使長に背く決意をしてまで意見を通そうとしたんだ。それを人間たちが成長したのをいいことに有耶無耶にして天界に戻るなんて行為は僕はしたくないね。」

ヴィーゴ「・・・成程ね。」

イプノ「さぁ昔話もここまでにしてそろそろ遊びに行こう!」

ヴィーゴ「・・・そうだね!で、どこに行くんだい?」

イプノ「それは僕についてくれば分かるよ♪」

~~~~~


オルゴ「・・・よし。訓練はここまでだな。」

ピオージャ「いや~~久々にいい汗かいたぜ!」

オルゴ「そりゃ良かった。だがお前の場合時々最後の詰めが甘くなる。気をつけろ。」

ピオージャ「そりゃ訓練だからっすよ笑。本番じゃ気は抜きません!」

オルゴ「・・・だといいがな。」

フォリア「にしても最近は本当平和になりましたね。」

オルゴ「そうだな。大きな争いはあの時以来起きていない。」

フォリア「ええ〝・・・にしてもあれは見間違いだったのかな・・・。〟」

トレ「・・・にしてもイアス。またミィディアの様子を見てんのか?」

イアス「だって不憫でよ。あいつは生まれてから今の今まで父親に自分の所有物みたいに扱われてきたんだぜ?」

ヴェッキ「・・・まぁそれはな。」

イアス「それにそれは俺たちと別れてからも終わってないんだぜ?」

ラーナ「そうですね。ミィディアは生まれてから逃げることも出来ず地獄の中で戦い続け様々なものを犠牲にしながら今日まで命を繋いできた。」

ウナ「普通なら途中で殺されてもおかしくない状況の中でな。」

イアス「でもそんな状況をあの父親は何とも思っていないみたいだぜ?」

ヴェッキ「みたいだな。家族中から金をたかり出ていけと言われれば“俺を見捨てるのか!”とか言ってるからな。」

パンピ「見捨てるって・・・それって子供の金で生きてるって自覚しているからでる言葉だよな。」

ガンペーデ「確かに。それで自分が不機嫌になることで家族を何をされるのか分からないって恐怖で支配して金をたかっているからな。」

ペスト「金がもらえなければ家の食べ物を盗み、自分の思い通りにならなければ叫ぶからな。」

ヴィツ「・・・それってもう人間じゃないよな。」

ヴェッキ「ああ。だがそうなったのはミィディアを虐げ続け自分の子供でありながら他者という存在を軽視したからだろう。それと問題から逃げ続けたことにあるだろう。」

シュルケル「・・・もうあいつに力を与えるのは嫌なんだが。」

イアス「そりゃあな。反省するどころか更に悪化してるからな。」

ヴェッキ「それでも与えるんだ。命が続く限り反省の機会を作り続けることでしかあの人間の魂が救われることはない。」

モルタ「命で思い出したがちょっと前ミィディアがあの父親をボコボコにしたことあったよな?」

ヴェッキ「ああ。父親の嫌がらせにブチ切れた時か。」

モルタ「あれって罪になんねーのか?」

ヴェッキ「ならなくはないが・・・父親側にも色々罪があるからな。それに俺たちは天使なんだ・・・どういうことか分かるな?」

フォー「・・・俺たちは天使。ミィディアは人間。そして今話をしてるのは人間の問題。だから俺たち天使がどうこう言う問題じゃないってことか?」

ヴェッキ「そうだ。これはミィディアの問題。俺たち天使が今更どうこう言う問題じゃない。それに今回は天使の力を使っていない。つまり罪を犯していても天使の裁きは与えない。」

フォー「・・・そうか。」

オルゴ「おいお前ら!話はそこまでにしてそろそろ仕事に戻れ!・・・ミィディアなら大丈夫だ。地上のことは地上に任せておけ。」

ペスト「・・・りょーかい。」

オルゴ「そう不満そうな顔をするな。」

ペスト「だってよ・・・。」

オルゴ「・・・気持ちは分かるがミィディアは大丈夫だよ。あいつには地獄を生き抜いたことで普通の人間にはない希少で比べ物にならない経験がある。普通は精神的に不調をきたしてもおかしくないところをあいつは肉体的にも精神的にも最終的に巻き返せる程度にダメージを抑えながら生き抜いたんだ。生きることに関したらそこらの人間よりずっと得意だ。」

トラン「確かに。それに本気になった時のあいつは凄かったな。俺たち天使の技術を自分に合わせて使いそれぞれの技術の弱点を補いあうように使うことを直感していた。」

ヴェッキ「・・・特に戦いに関しては凄かった。あいつは脊髄反射レベルの反応速度を意図的に使うことが出来る。」

ウナ「あれか・・・あれを編み出した時は流石の俺もぞっとしたな。」

ピオージャ「・・・どういうことっすか?」

ウナ「そのまんまの意味だ。ミィディアは脊髄反射のような速さで相手の攻撃を見切りその虚をつく状態に意図的に持っていくことが出来るのさ。」

ピオージャ「・・・どうやって取得したんですかね・・・それ。」

オルゴ「記憶と想像。そして再現性だ。まずあいつは無意識で体が動いた時の経験を思い出しその時の感覚を忠実に意識に叩き込んだ。その後その時の自分をこれまた忠実に演じ切ることにより再現したんだ。」

トラン「・・・しかも再現するだけでは飽き足らずその状態に天使の技術を乗せるという応用までしたんだ。」

パンピ「でも肉体はそれで制御出来ても精神はついていかなくないっすか?」

オルゴ「普通はな。だがミィディアは精神面の補強も完璧だった。あいつはビランチやネニアのような凪のような精神状態をこれまた想像で作り出した。ビランチの様子を思い出し分析し心を揺らがないようにするには意識の支点を無意識層まで落とし動きを反射に委ねる必要があることを自分自身に思い込ませた。そうすることで余計な雑念を極限まで取り払ったんだ。」

イアス「・・・なんか心配してるのがあほらしいな笑。」

オルゴ「だろ?さ、分かったらとっとと仕事に戻るぞ!」

トレ「はいよ!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?