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超条件世界{一章、始まりの祠}



これは、信じた者たちに裏切られた怒りの物語・・・。


私たちはアプリオリ様に呼ばれ、集結していた。


「何の用で呼んだんだろうね。アプリオリは。」

「様ね。様。」

「はいはい、分かっているよ。」

「分かってねぇから言ってんだろ?ビランチは。」

「まあでも、怒らないあたりアプリオリ様は容認して下さっているんじゃないでしょうか?」

「でしょうね。それよりそろそろ来るわよ。」

「それも分かってるよ。」

「いや~~済まんの。急に呼び出して。」

「いえ、基本暇ですので何も問題はありません。」

「して、今回はどのような用件で我々を呼び出したのでしょうか?」

「今回はの、地球という星について呼んだのじゃ。」

「最近、知能を持つ生命体が確認された星で御座いますね?」

「そうじゃ。今回呼んだのはその星で生まれた人間に自分自身の力で生命と歴史を続けてもらう為に呼んだじゃ。おぬしたちの力を一時的に譲渡してもらいたく、呼んだじゃ。」

「・・・それは人間にということでしょうか?」

「そうじゃ。わしの全知と全能。おぬしたちの神力。他にも自然神たちの力を七日間という期間に限定して譲渡する。その間に人間たちの世界を自身の手で作ってもらい、七日を過ぎたら返してもらう・・・ということを考えているのじゃが、どうじゃ?」

「・・・私は反対です。何故ならそれを行うにあたっての不確定要素が多過ぎます。まずどのようにして譲渡するのですか?」

「ある祠に譲渡の対象となる人間たちを集め、触れてもらう。」

「返還はどのように?」

「同じく祠に触れてもらい行う。・・・どうじゃ?」

「・・・やはり私は反対ですね。リスクが大き過ぎます。」

「そのリスクとはなんじゃ?」

「一つ。もし、譲渡した後返されなかったらどうするのですか?譲渡は何時でも剥奪出来る付与と違って、力関係を逆転させてしまうもの。返されなかった場合の最終手段はとっておくべきかと。」

「・・・じゃが、わしは人間たちを信じとる。」

「しかし、アプリオリ様。フェアの懸念はもっともです。」

「分かっとるんじゃが・・・。」

「アプリオリ。もし、力を譲渡したら僕たち天使や自然神たちはどうなっちゃうのかな?」

「イプノ?」

「それによっては、僕は譲渡してもいいかな?って思うかも。存在が消えるとかじゃないんだったら別に僕は問題ないかな。」

「・・・まあ、最近は力なんて基本使わないからな。」

「イプノの懸念については心配ない。存在が消えることはない。ただ、神力を介する能力が使用出来なくなるくらいじゃ。」

「・・・それって結構デカいんですけど汗。」

「だから、事前におぬしたちを呼んだのじゃ!」

「(・・・地団駄踏んでる。)でも、それはアプリオリ様も同じってことでしょ?」

「その通りじゃ、ビランチ。」

「・・・あの、何故譲渡しようと考えたのですか?」

「(・・・予知で返される未来を見たとはありきたり過ぎて言えないの。)それは、思い付きじゃ!」

「思い付き?ふざけているんですか!アプリオリ様!」

「ふざけてはおらん!おぬしたちは知っとるじゃろう!わしの思い付きが上手くいくことを!」

「(・・・これは何か見栄を張っているわね。)え、ええ汗。では私たちは神力を譲渡してもいいか考え、結果を報告すればよろしいですか?」

「あと、自然神にもこの話を通し、結果を聞かせてほしい。」

「承知致しました。では、我々はこれにて失礼させて頂きます。」

「待ってください!話はまだ終わっていません!」

「ちょ、いいから行くよ!」

「(済まんの・・・グラント汗。)頼むの!ビランチ!」

「(まったく・・・。)はい。」



~~~~~


「まったく!アプリオリ様のことだから何か深い理由があると思っていたのに、思い付きとは何ですか!神力がなくなるのはそんなことで決めていい小さなことではないというのに!」

「・・・まあ、そうね汗。」

「だが俺はアプリオリ様が何か隠しているように感じたんだが・・・。」

「流石オルゴ。気づいたのね。」

「あれだろ?思い付きって言ったやつ。」

「ええそれ。」

「ビランチはその発言から何かを察してあの場を急に締め始めたが、アプリオリ様は何を隠していたんだ?」

「私もはっきりとは分からないけど、多分予知じゃない?」

「成程ね。予知で力が返還される未来が見えたから、譲渡しようなんて思い切ったこと言い始めたってことか。」

「多分よ多分。」

「(これって、私だけ察していなかったパターン・・・?)も、もしそうだったとしても、力がいつ返されるかは分からないですよね?」

「まあ、アプリオリ様は言って下さらなかったからな。」

「・・・もし破られた場合の自然神説得は私がすることになるんでしょう?」

「ごめんね汗。」

「・・・はぁ。」

「もし破られた場合って言ってるってことはフェアはもう譲渡する気でいるのかい?」

「だって、アプリオリ様には逆らえないじゃないですか。」

「まあそうだな。それに逆らってどうするんだ感はある。」

「確かにね。」

「じゃ、ここらではっきりしときましょうか。私たちが神力を譲渡してもいいかどうか。」

「僕は構わないよ。人間の創造を観察するのは見ていて面白そうだし。」

「俺も構わん。」

「俺も右に同じだ。」

「私もいいよ!」

「・・・いいでしょう。」

「(・・・とっても辛そうね汗。)私も譲渡に賛成だから、イプノ。アプリオリ様に伝えてきてくれる?」

「あいよ~♪」

「じゃ、フェア。行きましょうか。」

「・・・はい。」



~~~~~

「アプリオリ~~!」

「お、意外に早かったの!で、どうじゃった?」

「天使はOKだよ♪・・・まあ、ひとり不服そうなやつはいたけどね。」

「フェアじゃろ?」

「ああ。」

「・・・済まんと言っておいてくれ。」

「了解♪でも珍しいね。アプリオリがこんな大きなことを決断するなんて。」

「・・・おぬしも不服かの?イプノ。」

「いや、全然。むしろここ最近はずっと退屈だったから少し感謝してるくらいさ!」

「・・・そういってもらえると助かる。」

「その様子じゃ、アプリオリ自身もあんまり納得いってないようだね?」

「まあの・・・。」

「まあ口には出さないけど、オルゴとフォールも少し訝しんでいたよ。」

「じゃろうな・・・。ビランチとグラントはどうじゃった?」

「ビランチはアプリオリが思い付きって言った時何かを察したみたいだったよ?」

「何かとは?」

「多分、予知で力がちゃんと返される未来が見えたから譲渡なんて思い切った決断に踏み切ったんじゃないか?って言ってたよ。」

「流石じゃのぉ・・・。」

「じゃ、見えたんだ。」

「ああ。七日後ではなかったがの・・・。」

「・・・何日後なの?」

「2021年後の9月2日17時27分じゃよ・・・。」

「それはまた、随分と先になるんだね・・・。」

「・・・ああ、そうじゃの。」

「だからアプリオリも納得いかない顔をしていたのか。」

「そうじゃ。返されるのは予知の性質から確実なんじゃが、そこまでに至るまでが人間の寿命を大幅に超えておることがどうにも気がかりなんじゃ・・・。」

「でもさ、返されること以外にも一つ確定していることがあるよね。」

「・・・何じゃ?」

「約二千年後まで人間は存在しているってことだ。」

「・・・確かにそうじゃ!」

「笑。じゃなかったら、返す光景なんて見えないだろ?」

「そうじゃな。ありがとう。イプノ。少し不安が和らいだ。」

「良かった♪・・・今の話はどうすればいい?」

「・・・秘密にしといてくれ。おぬしはわしの突拍子もない考えを何の抵抗もなく受け入れてくれた礼と思って受け取っとくれ。」

「分かった。ありがたく受け取っておくよ。」

「予知だという部分はビランチだけには伝えといとくれ。」

「それも、了解♪」



~~~~~


「自然神の皆様方。本日はとても重要な話をさせて頂きたく参上致しました。」

「・・・その話とは何だ?」

「あなた方の能力を人間に譲渡して頂けないか?という内容でございます。」

「・・・ふざけているのか?」

「いえ、決してふざけているわけではありません。」

「・・・まずは詳細を話してみよ。それから判断する。」

「寛大なる配慮。感謝申し上げます。」

「では、お話しさせて頂きます。まず、アプリオリ様が私たち天使に話した内容とは、アプリオリ様の扱う全能と全知の能力。私たち天使の扱う神力の能力。自然神様方の扱う能力を地球にある祠を介して七日間という条件のもと譲渡するというものでした。」

「アプリオリ様自身も能力を譲渡するといっておるのか?」

「はい。そして、その七日の間に人間たちには自分自身の手で己の住まう地球という星を整備させ、七日後には譲渡の際に使用した祠に再度触れてもらい、返還してもらうというお考えのようです。」

「・・・リスクが大き過ぎないか?譲渡というのは。」

「それはわたくし自身アプリオリ様に進言致しましたが本人は何か確信があるようで意見を変えることはありませんでした。」

「この懸念に関してはわたくし自身少し心当たりがあり、現在イプノを使わしているので、もしかすると確認が取れるやもしれません。」

「・・・その心当たりとは何じゃ?」

「予知で御座います。あの慎重なアプリオリ様がここまでリスクの大きなご決断を進めようとするのには、そういった理由があるのではないか?とわたくしビランチは考えています。」

「・・・確かに、確実に返ってくると分かっていなければここまで思い切ったことは言わぬか・・・。」

「・・・恐らく。」

「どうする?」

「・・・アプリオリ様自身も能力を譲渡なさるのだろう?」

「それに、この者らも運命を共にするのだろう?」

「・・・分かった。わしら自然神一同も譲渡に賛成しよう。」

「ありがとうございます。」

「・・・ひとつお願いがあるのじゃが、良いか?」

「何でしょう?」

「出来ればで構わないのじゃが、もしイプノにアプリオリ様の真意を聞くことが出来たらわしらにも教えてほしい。」

「承知致しました。」

「では、失礼させて頂きます。」

「うむ。使い、ご苦労だったな。」



~~~~~



「アプリオリに伝えてきたよ~♪」

「了解だ。」

「自然神に賛成を貰ってきました。」

「分かった。」

「で、イプノどうだった?」

「何が?」

「アプリオリ様。真意を聞いたんじゃないの?」

「聞いたよ。」

「・・・予知だったのか?」

「予知だったよ。」

「そうなのね!じゃ、七日後には返されるんだ!」

「・・・。」

「違うの?」

「ノーコメント。」

「・・・アプリオリ様に言うなって言われてるの?」

「そういうこと。」

「・・・了解。じゃ、フォールはアプリオリ様に自然神の件を伝えてきてくれる?」

「ああ。」

「オルゴは自然神にアプリオリ様の真意は予知でしたって伝えてきてくれる?」

「それは、自然神に頼まれているのか?」

「ええ。もし確認出来たら教えてほしいと言われているわ。」

「・・・どこまで伝える?」

「“予知だった”だけ。いつ返されるとかまでは言わなくていいわ。」

「分かった。」

「・・・そんなに長い時間返されないの?」

「だから言えないんだって汗。」

「しょうがないわよ。それより今のうちに少しでも休みましょ。」

「そうですね。これから嫌という程忙しくなりそうですから。」


~~~~~


「アプリオリ様。」

「おう、フォールよ。自然神の件か?」

「左様で御座います。確認が取れました。」

「で・・・何といっておった?」

「自然神一同譲渡するとのことです。」

「了解じゃ。そしたら、おぬしたちは能力を譲渡する下界の人間集めを行っとくれ。」

「了解です。」


~~~~~


「ビランチの言っていたアプリオリ様の真意の件にて参上いたしました。」

「・・・どうじゃった?」

「イプノから確認が取れました。予想通り予知に御座います。」

「そうか。」

「それと・・・これは蛇足なのですが・・・力の返納の期限についてお話しておいたほうが良いと思われる事案が御座います。」

「・・・何だ?」

「恐らくですが・・・七日間では返されないかと思われます。」

「どういうことだ?」

「・・・イプノにアプリオリ様の真意について聞いたところ、予知にて力が返納されるということは確実のようなのですが、その期間についてはアプリオリ様に口止めされているということで聞くことは叶いませんでした。そしてビランチからはこの懸念を感じさせぬよう“真意が予知だったという事実のみ伝えよ。”と言われているのですが、それでは自然神の皆様方にとって不本意かと思い、わたくしオルゴ、勝手ながらこのような不確定な情報をお伝えした次第であります。」

「・・・成程、分かった。」

「・・・気苦労をかけるな。オルゴよ。」

「いえ、話を持ち掛けたのは我々ですので・・・。」

「しかし、力を譲渡するのはお前たちも同じだろう?」

「それはそうですが・・・。」

「もう少し肩の力を抜いてもいいのだぞ?いくら神といっても、あの方に振り回される側という意味では同じ立場なのだからな。」

「まあ・・・そうですが。」

「それより、先程の話を整理するとこういうことか?アプリオリ様は予知で力を譲渡しても返されるのは確実だと分かっている。しかし、その返される期間が七日後ではなく遥か先なのではないか?ということか?」

「その通りで御座います。」

「・・・成程。」

「まあ、話の通りならその可能性はあるな。」

「分かった。では我々は知らぬふりをすればよいのだな?」

「・・・はい?」

「違うのか?」

「まあ、そうなのですが・・・。」

「恐らくビランチはアプリオリ様の意を汲んで、力の譲渡の意欲を事前に削がぬようあえて予知という事実のみ伝えることを指示したのだろう。」

「我々は知ろうが知るまいが譲渡しなければならないのだからな。」

「おぬしもわしらの精神的ショックを考え、伝えてくれたのだろう?」

「・・・恐れながら。」

「まあ、確かに知らずに返されなかったらアプリオリ様への不信に繋がっていたかもしれないからな。」

「ええ。我々はアプリオリ様の代行者ですので。アプリオリ様の想いを正確に伝えなくては。」

「了解だ。じゃ、もう下がっていいぞ。」

「畏まりました。また報告などがあれば参上いたします。」

「ああ。気を付けて。」


~~~~~

「戻ったぞ。」

「で、アプリオリ様何て?」

「譲渡する人間を集めとけとさ。」

「了解。グラント!」

「はーい。なるべく知恵の高い人間たちを祠に集めとくー。」

「お願いね。」

「戻った。」

「オルゴもお疲れ様。」

「じゃ、グラントが戻り次第始めよっか。」

「そうですね。」

そして私たちは遂に神々の力を人間たちに譲渡することになったのだ。

~~~~~


「なんか神の力を貸してもらえるって言われたから試しにここに来てみたんだけど、私たち以外にも結構来てるわね。」

「本当だね。最初はあんな怪しい声を聞いて行くなんてどうかしてると思ったけど他にもいたんだね。来ている人たちが。」

「(さて、ここに集まってもらったのは他でもありません。あなたたちには地球というこの星をあなたたち自身の手で作れるよう、私たち神の力を与える為呼びました。)」

「(そして、これから与える力は全部で五種類。一つ全知全能神の全知の力、一つ全知全能の全能の力、一つ自然神の力、一つ天使の力、一つ天使を使役する力。この五種類。)」

「(これらの五種類の力を使い、そなたたちには世界を創造してもらう。)」

「(期限は七日。この期限内に世界を創り、力を返納してもらう。)」

「(何か問いたいことはあるか。)」

「質問・・・じゃないんすけど、七日って短過ぎませんか?」

「(そんなことはない。我々の力があれば本来は一日とかからず出来るところをそなたらに合わせ、七日という猶予を与えている。)」

「でも・・・。」

「(与えた後でも短いと感じるのであれば再度申し出るとよい。)」

「・・・わーったよ。」

「(では、これから順番に付与していく。まずは、五名の人間よ。前に出よ。全知の力を授けよう。)」

「私一番乗り~♪」

「え?じゃ、私も行く~!」

「全知か。いいね~面白そうだ。」

「・・・俺たちも行きます?」

「ああ。行こう。全知全能の神の知恵。興味がある。」

「(では、祠に触れる前にそなたらの名を聞かせよ。)」

「未知子。」

「洽{あまね}。」

「智心{ともみ}だ♪」

「過智。」

「・・・間知郎だ。」

「(では、未知子、洽、智心、過智、間知郎。そなたらには全知の力と如月の姓を授けよう。祠に触れよ。)」

「如月?何それ?」

「(如月という名はそなたらが全知の力を扱う証のようなものだ。今後如月以外で全知を名乗る人間は全て偽物だということを他の付与者に知らしめる意図がある。)」

「・・・じゃあ、普段どうやって名乗ればいいの?」

「(今までの名の前に如月をつけよ。)」

「じゃあ、私は如月未知子になるってこと?」

「(その通りだ。さあ、早急に祠に触れよ。)」

「分かったよ。」

「・・・触れたけど、なんか変わった?」

「いや・・・分からん。」

「(力の使用法と使用目的は全ての付与者に与え終えてから説明する。)」

「成程。」

「(では次、自然神水の神の付与者。三名前に出よ。)」

「次は俺たちか。」

「(順番に名を名乗れ。)」

「海生{かいせい}。」

「流川{りゅうせん}。」

「留湖{るこ}です。」

「(そなたらには水分{みくまり}の姓と水の神、水分之龍の力を授けよう。祠に触れよ。)」

「へえ、水分之龍っていうんだ。水神。」

「無駄口はいい。早く済ませるぞ。」

「へいへい。」

「(では次、火の神、灯毘沙之命の付与者三名、前に出よ。)」

「はい。」

「(名を名乗れ。)」

「祓火{ふつび}です。」

「浄煌{しんこう}。」

「煉聖{れんせい}です!」

「(では、そなたらには夜藝速{やぎはや}の姓と灯毘沙之命の力を授けよう。)」

「・・・あれ触るの?」

「何か問題でも?」

「だって、私たちより前に何人が触ってんのよ・・・あの祠。」

「あなた、これから神の力が貰えるのに正気⁉どんなタイミングで潔癖発動してんのよ!」

「でも・・・。」

「(神の力に勝つんだな・・・)とりあえず触って終わらせよう。どうせ一瞬触ればいいんだ。」

「・・・分かったわ!」

「(・・・では次、土の神、比売之庭の力と迦流美の姓を授ける。付与者よ。名を名乗りながら前に出よ。)」

「抑地{よくじ}。」

「震子{しんこ}で~す。」

「・・・封砕{ふうさい}だよ。」

「(では、祠に触れよ。)」

「・・・。」

「(よし。では、次——)」

ドン!

「な、何⁉急に岩が降ってきたんだけど・・・。」

「ごめん。それあたしだ。」

「(封砕とやら。説明の前に力を使うのはやめてもらいたい。)」

「気を付けるよ。」

「(では、次。雷の神、建之霹靂御の力と霹靂の姓を授ける。付与者よ。名を名乗れ。)」

「祆矢{けんや}だ。」

「雹聚{ひょうじゅ}よ。」

「響{とよ}です!」

「(では、次。風の神、風伯師の力と志那都の姓を授ける。付与者よ。名を名乗れ。)」

「昇旋{しょうせん}。」

「嵐花{らんか}よ!」

「風凪{ふうな}です。」

「(では、触れよ。)」

「自然神の力はこれで全部か?」

「(そうだ。次は我ら天使の力の付与者だ。該当する三名。名を名乗り、前に出よ。)」

「セフィラです。」

「イニー・デリットだ。」

「禰禊護{かたしろけいご}。」

「(では、触れよ。次に、天使を使役する力を与える。該当する者。順番に名を名乗れ。)」

「ルーキル・フェルト。」

「無子陰間{なしごのいんま}だヨー。」

「リグ・ビュージュよ。」

「サラン・ヴァティーラといいます。」

「ドゥセッタ・デチーレ。」

「フェロア・ルチークですー。」

「(では、今回は一人ずつ祠に触れよ。)」

「一人ずつ?何でだ?」

「(力の付与の関係から使役権は一人ずつでなければ授けることが出来ない。)」

「成程ね。」

「(では、最後まで残った人間よ。そなたの名を聞かせよ。)」

「・・・神予世全視{かみよのよぜみ}。」

「(では世全視とやら。そなたには全能の力を授けよう。)」

「ああ。」

「(・・・これで、全ての者に行き渡ったな。)」

「ねえ、まだ終わんないの?」

「(案ずるな。あとは各力の使用法と使用目的で終わりである。)」

「(まず、如月の者。そなたらの能力の使用法と使用目的を話す。)」

「(使用法は様々である。まず手の平を意識し、過ぎた時間やこれから先を想像すること。また、この世界の広さを想像すること、人間の魂を想像することでその力を使用することが出来る。)」

「(それらの力を用いてそなたらには世界を導いてもらいたい。)」

「・・・はいはい。」

「(次に自然の力を扱う者。そなたらは自身の対象とする自然を想像すること。これにより力を扱うことが出来る。)」

「(そして、そなたらには世界を創ってもらいたい。)」

「具体的には何をすればいいんですか?」

「(海を創り。大地を創り、空を創り・・・自然を創るのだ。)」

「はいよ。」

「(次に、天使の力を扱う者。そなたらには自然神の創った世界を整えてもらいたい。)」

「・・・整えるとはどういうことでしょうか?」

「(洗練させよ。あらゆるものを洗練させるのだ。)」

「(次に天使を使役させる者。そなたらには他の力を扱う者を上手く繋ぎ合わせるのだ。)」

「・・・繋ぎ合わせるって?」

「(それは、俺たちが逐一伝えていく。)」

「うわっ!誰⁉」

「(オルゴだ。)」

「(こんな感じで一人に一天使憑くから、よろしくね~~!)」

「よろしく。グラント。」

 「(最後に、全能の力の者。そなたらには彼らの作る世界を見届けてもらいたい。)」

「見届けるとは具体的に?」

「(彼らや彼らの作る世界が道を誤ったのなら正してほしい。)」

「(われらは争いを望まぬ。)」

「(もし、力を持つ者が暴れたのならば、普通の者では止められぬ。)」

「成程。最悪の場合に動く存在が俺ということか。」

「(その通りだ。)」

「(さて、話はこれにて終わりだ。)」

「(期限は七日。七日後。無事力が返ってくることを願っている。)」

そういって私たちは、人間に力を譲渡した。



~~~~~



~~~初日~~~

「世界を導くってさ、具体的に何をすればいいんだろうね。」

「分かんない。」

 「それは後でアプリオリって神様に聞けばいいんじゃない?」

「俺たちはまず自分の能力がどんなものか確認するのが先なんじゃないのかな?」

「そうだね。」

「で、どうやって使うの?」

「天使たちは手の平を意識して・・・とか何とか言ってたね。」

「じゃ、みんなでそれを順番に試していこうよ!」

「そうだな。最初は手のひらだったか?」

「ああ。それで過去と未来を想像すればいいって言ってたな。」

「じゃ、やってみますか!」

「・・・みんな出来た?」

「私は・・・何だろ、これ。変な服装の人間たちが見たことない景色の中で昨日触った祠に集まっているのが見えるけど。」

「それ、私も見える!何か凄い平らな大地に集まってるよね!」

「・・・俺は見えないな。」

「俺も見えないっすね。間知郎さんはどうっすか?」

「俺も見えん。」

「じゃあ、未来が見えたのは未知子と洽だけか。」

「みたいだね。」

「じゃ、今度は過去でこれをやってみよう。」

「・・・どうっすか?」

「今度は・・・見えない。」

「私は・・・何だろ。真っ黒な空間に浮かんでる岩が、ある一点に向かって集まっていく光景が見える。」

「そんなの見えないんだけど・・・汗。」

「俺・・・それ見えますよ!何か集まっていってる岩石がどんどん大きくなってきてますよね!」

「そう!一つ一つの岩石が砕けて一つの大きな岩みたいになってきてる!」

「・・・間知郎は?」

「見えん。」

「(良かった・・・。)じゃ、過去とやらが見えたのは過智と洽ってことだね汗。」

「そうね汗。じゃ、今度はこの世界の広さを想像してみる?」

「でも、世界の広さって何なのよ?」

「・・・空間じゃないか?」

「空間・・・ねえ・・・。」

「とりあえずやってみよ!」

「そうだね。」

「・・・どう?今回も私は何も見えないけど、みんなは何か見えた?」

「・・・私たちの生きる地球って星。丸いんだね。」

「(また見えない・・・)また見えたの?」

「うん。何か不思議な感覚なんだけど私たちって丸くて途轍もなく大きい岩石の上に立ってるんだなあってのが分かる。」

「みたいだな。それに地球の他にも似たような岩石が、途轍もなく大きな火の塊の周りを漂っている。」

「え?地球だけじゃないの?星って?」

「・・・見えないか?」

「地球より外は・・・見えない。」

「洽さんと間知郎さんで見える範囲が違うってことっすか?」

「・・・そうなんじゃない?」

「成程ね。ちょっと分かってきたよ。この力の性質。」

「どういうこと?」

「今までずっと洽がどのパターンでも見えたことがさ。恐らく洽はバランスタイプなんだよ。全ての知が満遍なく使える。逆に未知子や過智、それに間知郎は特化型なんだ。一部の知が突出してるんだよ。」

「なんか偉そうに語ってるけど、あんたまだ何の知も使えてないわよね。」

「それ気にしてたんだから言わないでよ・・・。」

「ご、ごめん。」

「最後の魂を想像するやつやってみましょうよ!きっと智心さんはそれですよ!」

「過智!ありがとう!じゃ、早速やってみよう!」

「・・・どう?何か見えた?」

「・・・見えるっていうか、めっちゃ感じるんだけど。」

「何を感じるんだ?」

「地球中にいる人の精神状態だったり、意識の方向性だったりが手に取るように分かる!」

「視界に入っていなくても分かるの?」

「ああ。例えばあっちの方角、自然神の力の人たちがいる。なんか集中したり散漫になったりしてるから多分俺たちと同じように能力を試してるんだと思う。」

「洽さんはどうっすか?」

「私は、ここにいるあなたたちのしか分からない。・・・ってか間知郎。私たちのことちょっと苦手でしょ?」

「な、何でだ?」

「だって一人だけ緊張してるもん。」

「・・・ま、まあそういうことは後でやろうぜ!」

「そ、そうだ!それより今はこれまでの出てきた情報を整理する方が先じゃないのか?」

「・・・出てきた情報って何?」

「まず、さっきからずっと気になってたんだが・・・未知子と洽が見た未来の内容の中に俺たちがさっき触った祠に、触れる人たちが見えたってことなんだけど・・・。」

「待て。見えたのは俺たちじゃないのか?」

「うん。誰一人知らない人だったよ。」

「・・・それってさ、おかしくない?」

「どこが?」

「だってこの力って、七日後には返すんだろ?祠に触れるのなんて力を貰う時か返す時しかないよな?」

「確かにな。返す時にしても、もらう時にしても俺たちが見えていないというのは意味が分からない。」

「力を持ってんのは俺たちっすもんね。」

「そう。」

「・・・じゃあ、見えたのが嘘なんじゃない?」

「そしたら、逆に俺たちの見えているって感覚が全て嘘になる。・・・そっちが噓なのかな?」

「いや、そんなことはない。実際俺は洽の身勝手なところが少し苦手だ。」

「・・・それ、悪口だって分かってる?」

「普通は俺が苦手と感じてることは分からない。力を使って見たんだからお互い様だろ。」

「ムキー!言わせておけばー!」

「ストップ!洽と間知郎の遺恨は後にしてくれ。」

「・・・分かったわよ。」

「情報を整理するぞ。恐らく能力は洽と間知郎のことからも本当なんだろう。けど見えた未来には俺たちは居なかった。」

「ってことは・・・この能力が返されるのは七日後じゃないってことっすかね?」

「多分そうでしょうね。これは私の感覚なんだけど、この力を使った時、とても先の時代を見ているような感覚だった。それこそ数百年、数千年先を見ているような・・・。」

「・・・でもさ、それが分かったところで私たちに何が出来んのよ。」

「確かにな・・・。」

「・・・力が返されないってことは、他の付与者たちもその見えた未来まで力を持ってるってことっすよね?」

「そうね。」

「それ、まずくないっすか?」

「どうまずいんだ?」

「自然神付与者を考えてみてくださいよ。火の神の力を争いに転用したら滅茶苦茶有利じゃないですか?」

「・・・やばいってレベルじゃないよね汗。」

「天災を自在に操れるんだもんね。」

「・・・対策を立てよう汗。」

「天災相手に対策なんて立てようがないでしょ!」

「まあ落ち着けよ。俺たちには神様の全知があるだろ?その力で事前にその天災を避けるんだよ。みんなで力を合わせれば、何とか生き残れるかもしれない。」

「確かに。特に間知郎の空間を感じ取る力は有利だわ。彼らが暴れてもすぐに分かるでしょ?」

「私だって分かるもん!」

「それを言ったら、未知子の未来を見る力だって使いようによってはかなり有利だ。数百年と言わず数日単位で見ることが出来るなら、事前対処もし易い。」

「そしたら、ここらへんで一度、有事の際の役割みたいのを決めません?」

「そうね。最初から決めておけばいざという時、すぐ動けるし。」

「・・・じゃあ、それ俺が決めていいか?」

「あんたに出来るの?」

「結構出来ると思う。」

「そんなに言うならまずは聞いてみよう。」

「ありがとう。じゃまず、俺から。俺はリーダーにしてくれ。」

「はあ?正気?」

「正気だ。大丈夫。ちゃんとした理由がある。」

「何でっすか?」

「俺の魂の知の力だ。洽なら分かると思うが、この力は相手の考えていることや次の行動が言葉を介さずに確認出来る。」

「それが何なの?」

「争いになった時の指揮に、これ程心強い力はない。敵味方の状態を言葉なしで把握出来るんだ。」

「そっか、状況判断で常に先を取れるのか。」

「そうだ。もし、相手が何か企んでいれば確実に分かる。逆に洽たちが何か伝えたい時は俺のことを一瞬意識してくれれば確実に伝わる。」

「言葉を使うと、耳の良い奴がいた場合聞かれてしまうからな。」

「そしたら、智心は状況判断役でいいじゃない。」

「そうね。」

「(リーダー。なりたかったな・・・。)・・・そうだね。」

「・・・智心。地球全体いけるんだったよな?」

「ああ、いけるよ?」

「洽も空間なら地球全体いけるんだよな?」

「ええ。」

「そしたら二人で定期的に知の力を使えば大抵のことはそれで事足りるんじゃないのか?」

「・・・確かに!言われてみればそうじゃない!」

「な~~んだ。なにもリーダーなんて立てる必要なんて最初からなかったんじゃん。」

「でも、地球内はそれで対処出来ても外はどうするんすか?」

「外って?」

「・・・封砕ってやつのことだろ?」

「付与の時いきなり使った奴だな。あの岩はどう見ても空から降ってきたものだ。」

「空は流石に私無理なんですけど・・・。」

「心配ない。それは俺が探知しておく。」

「成程。それで智心さんに伝えればいいのか。」

「ああ。」

「私と過智は何か出来ることはある?」

「未知子は未来を確認する為に、数日後の予知を自由に出来るようになってもらいたい。」

「分かったわ。」

「過智は過去のことで真偽を確認する場合に力を使ってもらいたい。」

「見落としがないかとか、確認する為っすね!」

「そうだ。」

「・・・なんか間知郎の方が向いてるよね。」

「何が?」

「リーダー。」

「・・・泣。」


~~~~~


~~~三日目~~~

「・・・で俺たちはどうする?」

「世界を創るんでしょ?」

「それは分かっている。問題は・・・。」

「どの順番で作るか・・・ってことですよね?」

「そうだ。」

「でも実際、この世界の大部分を創んのは水と土だろ?」

「私たち火と風は厄を祓って浄めるだけだしねぇ。」

「雷は何するの?」

「空を創るのよ。」

「・・・何か平等性に欠けるよな。」

「しょうがないじゃない。役割なんだから。」

「とりあえず、水と土が創ってくれねえと何も始まんねえんだが?」

「・・・こっちが創らないと何にも出来ないくせによく言うよ。」

「あ?何か言ったか?」

「別に。」

「と、とりあえず俺たちが海と大地を創るから、それまで少し待ってくれ汗。」

「は~い♪」


~~~~~


「じゃ、改めて。水分海生だ。よろしくな!」

「迦流美抑地だ。よろしく。」

「水分流川だ。」

「水分留湖です~。よろしく。」

「迦流美震子です。よろしくね♪」

「迦流美封砕だよ。」

「よろしくな!じゃ、始めますか!」

「ああ。」

「にしても封砕ちゃん。祠の時は凄かったね~。」

「・・・岩のこと?」

「それ以外に何があるのよ笑。あれってやっぱり土の神の力なんでしょ?」

「うん。ずっと遠くの空から持ってきたんだ。」

「凄いわね~~。」

「(・・・封砕とやらはあまり感情の起伏がないな。)・・・にしても火と風の奴は少し態度がなっていなかったな。」

「祓火と昇旋のことですか?」

「そうだ。」

「確かに、祓火の投げやり感は少し気に入らないですね。」

「昇旋の高圧的な態度も納得がいかん。」

「・・・まあ、な汗。」

「にしても、この力、七日後には本当に返すのか?」

「何でだ?」

「・・・確かに俺たちは七日以内には世界を創ることが出来るだろう。しかし、世界とは創って終わりなのか?」

「終わりじゃねえだろ?それこそ火と風の奴らが整えてくれんじゃねーのか?」

「今はな。」

「今?」

「俺はもっと未来の話をしている。確かに今現在は我らで最後まで創れるだろう。しかし、創った後はどうする?これから何年も先。俺達の創った世界が上手く機能してくれるとは考えにくい。」

「・・・天使の力を使う奴らがそれを保持してくれるんじゃ・・・。」

「・・・だといいんだがな。」



~~~~~

「何か険悪な感じだったな。水と風の奴ら。」

「それに土と火の人たちも嫌な感じだったね。」

「・・・まあ、土の封砕とやらの態度が気に入らないのもあるんじゃないのかい?」

「祠の時、いきなり岩としてきたやつだろ?やばかったよな、あれ。」

「下手したら死人が出ていたよ。」

「あの時、みんなの雰囲気がピリッとしたのを覚えてます。」

「そりゃ、するだろう。いきなりあんなもの落ちてきたら。」

「はあ・・・前途多難だな。俺たち。」

~~~~~


「じゃ、始めましょうか。」

「そうね♪」

「では、まず我々が世界中に炎を放つ。」

「それが出来たら次は俺たちが空まで炎を伸ばせばいいんだろ?」

「風の力でねぇ。」

「じゃ、早速やるわよ!」

「うおー!すごーい!こんな大きな炎初めて見た!」

「暑いですね。」

「・・・火ですから。」

「にしても、土の封砕ってやつ。何考えてやがるんだ。」

「ほんとよ。岩なんていきなり落としてきて、心臓止まるかと思ったわ。」

「もしかして、私たちを殺す気なのかな?」

「・・・流石にそれはないと思う。」

「でも普通あれだけの大岩を空から持ってきたらやばいことくらい分かるだろ。」

「私はそれよりこっちを睨んでた二人のことが気になりますねぇ。」

「流川と震子ってやつでしょ?感じ悪かったわよねぇ?」

「何で睨まれなきゃなんねえんだよ。」

「(・・・まあ、こっちも自由過ぎるきらいがあるからそこはな。)」

「はあ・・・仲良く出来なさそ。」



~~~~~


~~~五日後~~~

「・・・で俺たちは何をすればいいのでしょうか?」

「力を極めましょう。天使たちはあらゆるものを洗練させよと言っていました。ですが、まずは何を洗練させるにも私たちの力が洗練されていなければそれは叶いません。よって、今私たちがすべきなのはこの天使の力を、天使たちと同程度まで使いこなすこと。これが急務です。」

「成程。承知致しました。セフィラ様。」



~~~~~


「で、俺たちは何すればいいの?」

「(まずは各一族の居る場所まで向かい、様子を見てくることだな。)」

「で、その後ハ?」

「(予定通りならまた戻ってくればいいわぁ。)」

「・・・じゃなかったら?」

「(是正すること。)」

「でも具体的にはどうやって行うんです?」

「(あなたであれば、私の力を使って言葉を発すればいいんですよ。)」

「・・・抵抗されたらどうすればいいんだい?」

「(その時は少しお灸を据えてやればいい。)」

「でも、それでちゃんとやってくれますかねー?」

「(さあね。でもちゃんとやらないで困るのは彼らだし。)」

「それ、僕らも困るんですけどー。」

「(確かに汗。でもとりあえずは一旦各地に散ってもらわないと。)」

「了解だナー。」



~~~~~


「・・・つまり、こういうことか?俺はアプリオリを使役出来るということか?」

「(そのようじゃな。まあ、今は何の力も使えんから話し相手くらいにしかならんがの。)」

「しかし、力の源にはなっているだろう。現に俺はこの力を得てから疲れない。」

「(本来なら、一瞬で底をつく力じゃからな。この全能の力は。)」

「つまらんな。」

「(済まんの。)」

「というか、何故世界を人間に任せたんだ?」

「(人間の住まう世界は自身の力で作ってもらいたかったからじゃ。)」

「・・・それは本音か?」

「(そうじゃ。わしは祠では“作れるように。”といったが、正直なところ“それくらいは自分で作れ。”と言いたかったのじゃ。おぬしらだって知恵を有している。神や天使ばかりに頼るなと言いたいわけじゃ。)」

「そうか笑。確かにな笑。有能な者にも有能なりの苦労がある。」

「(やはり、グラントの目に狂いはなかったの笑。)」

「・・・どういうことだ?」

「(わしは天使たちに力を付与する人間を集めてもらった。)」

「五日前のことだな。」

「(そうじゃ、その時そなたらに声をかけたのはグラントなのじゃ。あ奴はわしと考えが近い。わしは天使たちに人間を集めよとしか言っておらぬが、あの祠に集まった人間たちは普通の人間より知恵の扱いに長けていた。)」

「・・・にしては、気性の荒い奴や情緒の乏しい奴も混じっていたがな。」

「(知恵の高さは様々じゃ。一概に誰かが一番高いとはいえんのじゃよ。それをグラントは実に幅広く集めてきてくれた。)」

「でも、本当に二日後に返すことが出来るのか?」

「(さあの。その時になってみなければ分からぬよ。)」



~~~~~


~~~七日後~~~

「あれ?自然神の付与者がいなくね?」

「・・・困りましたね。」

「どーすんだよ。これじゃ返せないぜ?」

「あ、ちょっとどこ行くのよ?」

「自然神の奴らが返さないんなら俺たちも返せないぜ。」

「・・・確かに、このまま来ないなら居たってしょうがないからね。」

「あ、ちょっとー‼」

「(・・・予想はしてたけど、やっぱ返されないのか。)」

「(どうするんだ?)」

「(とりあえずアプリオリ様に報告よ。)」



~~~~~


「アプリオリ様!」

「・・・下界の件じゃな?」

「左様で御座います。・・・如何致しますか?」

「待つのじゃ。」

「待つ・・・とは、何時まででしょうか?」

「人間たちが自発的に返すまで待つのじゃ。」

「しかし!」

「フェアよ!これは人間が成長する上でとても大切なことなのじゃ!」

「・・・。」

「(済まぬ。皆の者。耐えてくれ・・・!)力の件は帰ってくるまで待つ!これは絶対じゃ!」

「・・・畏まりました。」

こうして私たちは、人間たちが力を返すのを長い間、待ち続けることとなったのだ。

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