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天使たちの日常戦線(四章、天使か悪魔か)



グラント「いい?もう一度聞くわよ?本当にイプノのことは知らない?」

ニエンテ「・・・知らないっすよ汗。そんなに信用ないっすか?俺。」

グラント「勿論信用してない訳じゃないのよ?でも私の勘が言ってるの。あんたはイプノと繋がっているって!」

ニエンテ「そんな無茶苦茶な・・・汗。〝流石イプノも恐れる熾天使だ。変なところで勘がいいんだよな・・・。〟」

ドラーク「まぁその辺にしときなさいよ。もし繋がっていても“はいそうです。”なんて言うわけないし。」

ニエンテ「繋がってませんけどね。」

グラント「はぁ~~どうも納得いかないわね。」

ニエンテ「じゃ俺はこれで行くんでまた何かあれば呼んでください。」

ドラーク「ええ。いつも悪いわね。雑用ばかり任せちゃって。」

ニエンテ「いえいえ。これも仕事ですし。それに人間の為に出来る数少ないことですので。」

プロイビー「・・・くれぐれも油断しないことね。」

ドラーク「プロイビー!あんたまで脅すんじゃないよ。」

プロイビー「だっていけ好かないことに変わりはないもの。」

ドラーク「ごめんね汗。」

ニエンテ「いいんですよ。それじゃ俺はこれで失礼します。」

ドラーク「はーい。」


~~~~~


ノーヴェ「シェンスー。来たぜー!」

シェンス「来たわね~~。じゃ私はこれから少し話があるから部門お願いね~。まぁ何もないと思うけど。」

ノーヴェ「はいよ~。」

シェンス「で、どうだった?グラントたちの反応は?」

ニエンテ「バリバリに疑ってました笑。まぁ事実なんでしょうがないっすけどね。」

シェンス「まぁ大逆中どっちにつくかずっと迷ってたもんね。」

ニエンテ「ええ。でもそれも大逆中までです。大逆後は天使とも堕天使とも一定の距離を保ちながら人間を見守るって決めましたから!」

シェンス「つまりどっちにもつかないってこと?」

ニエンテ「いえ。正確にはどっちにもつくしどっちにもつかない。です。」

シェンス「どういうこと?」

ニエンテ「時と場合によっては堕天使につくこともあるってことです。」

シェンス「そんなこと私の前で行っちゃっていいの~~?」

ニエンテ「あなたは思考を司る天使の一人。あなたなら俺の真意を分かってくれると信じています。」

シェンス「・・・つまりは私たち次第ってことでしょ?」

ニエンテ「その通りです。」

シェンス「あんたもそういうところはしっかり考えてるのね~~。上の立場の天使として中々気の抜けないスタンスとってくれるじゃない。」

ニエンテ「俺だってしっかり締めるところは締めます。何時までも半端者じゃないですから。」

シェンス「・・・それ。イプノに言われたんだっけ。」

ニエンテ「ええ。“君はビランチと僕たちどちらにつくつもりだい?”と聞かれ答えられなかった時に言われました。」

シェンス「で、出した答えが結局時と場合なの?」

ニエンテ「笑。まぁ言われる前と行動は変わってませんが考えはしっかりとあります。」

シェンス「へぇ~~じゃあその考えとやらを是非お聞かせ願いたいものね。」

ニエンテ「いいですよ。俺はイプノから大逆に参加しないかと言われた時はどちらが正しいのか分かりませんでした。ですが後になった今ならはっきりとわかります。」

シェンス「・・・どっちが正しいの?」

ニエンテ「どっちも正しくない。」

シェンス「え?」

ニエンテ「どっちも正しくないと思います。まずイプノたちですがあいつらはビランチを天使長の座から引きずり降ろそうとしていました。おかしいことを考えているわけではありませんでしたがその方法が良くなかった。じゃあビランチたちが正しいのかと言われればそうでもないと思うのです。確かにあの数を計画なしには防げなかったでしょうが何も迎え撃つ作戦をすぐさま実行することはなかった。しかもスパイを使って探らせたりあいつ等の敗走を利用して潜入を画策する前にやることがあったはずです。」

シェンス「・・・話し合いね。」

ニエンテ「ええ。俺たちは元々同じ天使なんだ。争う前に正面から話し合う場を設ければ良かったんですよ。」

シェンス「・・・でもそう上手くはいかないと思うわよ。」

ニエンテ「もし決裂するのが分かっていてもビランチには話し合いの場を設けることを提案してほしかった。」

シェンス「・・・まぁそうね。」

ニエンテ「・・・だから俺は天使も堕天使も見てますよ。どっちつかずの半端者として。」

シェンス「成程ね。あんたの考えと覚悟はしっかりと伝わったわ。」

ニエンテ「ありがとうございます。」

シェンス「じゃ、こっからは私の興味で聞くんだけどあいつって潜入してるオッソたちのこと気づいてると思う?」

ニエンテ「気づいていると思いますよ笑。」

シェンス「・・・じゃあ何でオッソたちはイプノと一緒にいられるのよ?」

ニエンテ「・・・疲れたんじゃないっすか?疑うことに。それに寂しいんだと思います。たとえ堕天使と偽って潜入してるとしてもオッソたちが全面的にイプノと敵対をするとは限らない。もし全面的に敵対していたらイプノたちは今頃とっくに裁かれている。それがないってことはオッソやネラそしてオンブもイプノの考えに同調出来る部分があるってことです。」

シェンス「まぁそれはね・・・。」

ニエンテ「ビランチやネニアにしたってそうだ。イプノが完全に間違っていてそれを認めていなかったら全力で消しにかかっている。彼女たちだって心のどこかでイプノたちの切実な思いを感じているから存在することを認めているんですよ。」

シェンス「・・・まぁお互い悪いしお互い悪くないもんね。」

ニエンテ「ええ・・・知恵を持つことがどういう意味を表すのか。それを知っているからこそ人間にそれを背負わせたくなかったんでしょう。地上で唯一知恵を有する存在ということはそれ以外の存在や種族と理解しあえるのを本質的な意味で絶たれているということ。たとえ理解しあえていると感じてもそれは自分自身の妄想や願望からくる勘違いという可能性がついて回る。知恵を極めれば極める程心は周囲から離れていく。本来近づく為に極めた知恵が邪魔になる。そうすると今度は存在していることに疑問を持つようになる。“何時まで続くのだろう。この苦しみは。”と。地上の人間たちが二度と戻らない命を自ら捨てようとするのはこの疑問を感じる程に知恵を極めたからでしょう。」

シェンス「・・・重いわね。」

ニエンテ「そうっすね。」



~~~~~


ヴィーゴ「やぁ!元気にしていたかい?みんな!」

グラント「ヴィーゴ~~!久しぶりね!私はこの通り快活よ!」

ヴィーゴ「みたいだね!他のみんなはどうかな?」

ミスティオ「まぁいつも通りっすよ笑。」

ヴィーゴ「そっか!」

ヴェール「あなたこそ最近はどうなのよ?」

ヴィーゴ「まぁまぁかな。」

ヴェール「ふーん。」

ドラーク「そういえばさ。前々から気になってたんだけどあんたは何で部門に入ってないのよ?」

ヴィーゴ「・・・痛いとこつくね。ドラークさん汗。」

ドラーク「ネニアだったら分かるわよ?彼女協調性ゼロだから。けどあんたは違うじゃない。」

タッソ「確かに。ヴィーゴならどの部門に入っても上手くやっていけそうなのに・・・どうして?」

ヴィーゴ「・・・確かにどの部門に入ってもやっていく自信はあるよ?」

シントス「ヴィーゴさん程の天使がもし堕天使狩りにでも入ってくれれば堕天使狩りももっと楽に仕事が出来るんじゃないですか?」

ヴィーゴ「でもね・・・。」

ソーマ「でも・・・何です?」

ヴィーゴ「僕はね、全部を見たいんだ。」

ドラーク「全部?」

ヴィーゴ「うん。例えばドラークさん達は基本奇跡部門の仕事しかしないだろ?」

ドラーク「・・・まぁそうね。」

ヴィーゴ「でも僕は堕天使狩りの役割も奇跡の役割も全5部門の役割を満遍なくやりたいんだ。」

ヴォルティ「・・・成程。全ての部門を臨機応変にサポートするためにあえて所属していないんですね。」

ヴィーゴ「ああ。そういうことさ。」

ドラーク「〝・・・なるほど。まぁ彼は汎用性の高い神力を使うし位も智天使だからその立場で融通が利くのはいざという時を考えるなら意外とありかもね。〟」

プロイビー「まぁ今更無理に部門に入る必要はないんじゃない?」

グラント「そうよね。ヴィーゴ可愛いもんね!」

プロイビー「それは関係ないけど・・・今の今まで彼が自由の身で動けたお陰で色々助かってるしこうして過ごせている時点でビランチはこの状態を許しているわけだし・・・ね?」

ヴィーゴ「みたいだね。ほんとビランチさんの采配には助かってるよ。」

プロイビー「まぁこっちとしても人間を守ってもらったからね。」

ヴィーゴ「・・・君も見ていたのかい?」

プロイビー「勿論。なんたってあたしは智天使で知天使だからね♪」


~~~~~


ニエンテ「・・・よう。久しぶりだな。」

イプノ「・・・。」

ニエンテ「大逆の時以来か?」

イプノ「・・・何の用かな?」

ニエンテ「おいおいお前から呼んでおいてそりゃないぜ。」

イプノ「・・・結局半端をやっているからね。君は。」

ニエンテ「〝・・・こいつ結構根に持つんだよな。〟半端で何が悪い。それを言ったらお前だって人間を一から作り直すって計画はどうしたんだよ?」

イプノ「・・・。」

ニエンテ「それに俺はもう半端者じゃねぇ。俺はあの時どっちも正しくないと思ったから大逆には参加しなかったんだ。」

イプノ「それは初耳だね。」

ニエンテ「だろうな。後から振り返って思ったことだからよ。あの時俺はお前に半端者って言われて何も言い返せなかった。でもよ、この世界は善悪ではっきり示せる事柄なんてほとんどないだろ?」

イプノ「・・・まぁそうだけど?」

ニエンテ「あの時俺が迷ったのは俺が半端者だったからじゃない。あの状況じゃ誰だって迷ってた。お前たちはビランチたちを敵に回してまでも人間を一から作り直そうとした・・・いや少し違うな。」

セイ「・・・何が違うんですか?」

ニエンテ「セイ!それに他の奴らも・・・⁉」

ディオ「やっほ~~♪イプノがこそこそしてたからつけてきちゃった!」

フルート「俺たち抜きでなーにこそこそ話してんだよ笑。」

ディストル「イプノだけじゃなくて俺たちにも聞かせてくれよ?」

イプノ「やれやれ。君たちにとってはあまり気分のいい存在じゃないと思ったからこそこそ出てきたのに。」

ディストル「いらねぇ気を回すな。心配ねぇよ。俺たちだってニエンテがどういう思いでここにいんのか。俺たちに対してどういう感情を持ってんのか知ってる。」

ムジカ「・・・天使にしておくにはもったいない。」

ニエンテ「笑。そっちにはいけねぇぜ?」

イプノ「・・・オッソたちはどうしたんだい?」

セイ「彼女たちにはあえて無視してもらっています。天使と会っていることを知ったら報告せざる負えなくなりますから。」

イプノ「そっか。戻ったら謝っておかないとな。」

セイ「そうですね。」

ディオ「それよりさっきの話の続きを聞かせてよ!」

ディストル「そうだな。俺たちが人間を一から作り直そうって立ち上がったことの何が違ぇのか是非お教え願いてぇもんだ。」

イプノ「・・・話せよ。せっかくここまで来たんだ。今更隠し事はなしだぜ?」

ニエンテ「・・・分かったよ。ほんとはあんま大勢に話したくなかったが仕方ねぇ。話すよ。確かにお前たちは本気で人間たちを一から作り直してやりたいと思っていたと思う。けどそれは人間たちへの思いで大逆を起こした理由じゃねえって俺は思ってる。」

ディストル「じゃあ俺たちは何の為に天界を相手に大戦争をおっぱじめたってんだ?」

ニエンテ「・・・主張する為だろ?天界は間違いを犯しているって。忘れんなよって。」

ディオ「・・・。」

ニエンテ「あの時の行動はどっちも正しいことと間違っていることをしたと俺は思ってる。イプノやセイたちは人間を一から作り直すという主張を良くない方法でした。ビランチたちは確かに伝え忘れといった誰にでもあることでそれ自体は悪いとは言えないが伝え忘れてしまった後の処置が良くなかった。人間が知恵を持った状態になってしまったことを何でそうなってしまったのかを作り終えた時点で全天使に経緯を説明して謝るべきだった。“伝え忘れとはいえごめんなさい。”と。それを上天使のみで知恵を有した状態で続行した。ビランチなら時間を戻せた。だったら全天使で話し合ってから一から作り直すのかそれともそのまま進めるのか決めることも出来たはずだ。」

イプノ「・・・そうだね。僕は大逆の時ビランチが時間を戻せることを知ってさらにビランチが許せなくなった。」

セイ「私も上天使だけで人間の処遇をスイスイと決めていく状況に激しい嫌悪感を覚えました。」

ディストル「・・・ビランチが最初から話し合っていればヌーラだってあんなに苦しい思いをせずに済んだんだ。」

ニエンテ「大逆の時だってビランチはまるでイプノたちがもう完全に敵に回ったかのような作戦を立てた。」

フルート「・・・確かにな。かつては仲間だったといえば甘えになるかもしれねーけどあんなにも早く手のひらを返されたような態勢を整えられちゃ本当は信用されてなかったんじゃねーか?って心のどこかで思っちまう。」

ニエンテ「あの時だってすぐに戦うってスタンスをとったのを俺は間違ってると思う。話し合えたはずだ。俺たちは元々同じ天使だったんだから。」

ムジカ「・・・そうだな。」

ニエンテ「それにあの時我関せずだった俺たちも少なからず悪かったと俺は思ってる。」

イプノ「・・・それはちょっと違うと思うよ。」

セイ「ええ。あの時対立していたのは私たちとビランチの陣営です。ネニアの所にいた君は悪くない。」

ニエンテ「いや。そんなことはない。」

イプノ「・・・もしかして僕が言った半端者って言葉が引っかかっているからなのかい?」

ニエンテ「まぁそれは結構引っかかるが・・・大逆に関してそれは些末な問題だ。ネニアは大逆が終わって暫くした後人間のことをこう言っていた。“人間の存在は天界全体の罪を表している。”って。それを聞いた時ネニアはビランチとお前たちの間に入って話し合いを取り持っていれば良かったって後悔しているんだって分かった。俺たちも我関せずじゃ駄目だったんだ。」

セイ「・・・天界全体の罪ですか。」

ニエンテ「ああ。」

ディストル「・・・今ふとネニアが天使長をやっていたら良かったのにって思っちまったよ。」

ディオ「・・・だね。何か違ったのかもしれない。」

ニエンテ「ネニアはこうも言っていたよ。“人間の存在は天使の試練のようなものだ。”って。“完璧だと思い込んでいた私たちが完璧ではないことを自覚する為の試練。”」

フルート「完璧ではないことを自覚する為の試練・・・か。」

イプノ「・・・シェンスめ。こうなることが分かってたんだな。」

ディストル「・・・だろうな。実際人間を創造したことで天界は大きく割れた。」

セイ「試練に立ち向かう者。試練から目を背ける者。試練に敗れる者。様々な者を生み出しました。」

ニエンテ「俺たちは目を背けていた。」

イプノ「僕たちは敗れた。」

セイ「彼女たちは立ち向かった。」

ニエンテ「・・・俺はこれから俺のやり方で人間を見届けるよ。」

イプノ「僕たちは僕たちでやらせてもらう。」

ニエンテ「分かってる。やり方は一つじゃない。ビランチのやり方だって見届け方の一つに過ぎない。」

セイ「ですね。にしても・・・。」

イプノ「ああ分かるよ。シェンスに手のひらで踊らされている感じ。気に入らないな・・・。」

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