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北村薫「街の灯」

北村薫さんらしい優しい雰囲気のミステリー

時代は昭和初期 上流家庭のお嬢様が謎を解く三篇のお話
ヒロインの英子は古き良き時代の女性といった感じで 清らかで理知的

三話目の「街の灯」がよかった
軽井沢の別荘に避暑に来ていた 英子や友人達やその婚約者
彼らが催した自作映画の試写会でひとりの女性が死んでしまう
その死の真相を解明する英子と運転手のベッキーさん

英子の友人の言葉 

わたしはね、自分のことも駄馬だと思っているの。だから、自分の前に千里の馬が現れるまで待つ気もないわ。むしろ、尻尾をつかんだ駄馬の方が扱いやすいような気がする。

自分の夢と何不自由ない暮らしの為に (駄馬だと思われる)資産家の男と結婚してもいいと言う 
この時代の女性って受身で弱い立場かと思ったら 相当したたかだ

また貧しい庶民の暮らしを見た英子は 貧富の差を不当なものだとは思うけど でも彼らと同じような暮らしができるかと問われたらとてもできないと言う 
そんな英子をベッキーさんはやさしくたしなめる 

あのような家に住む者に幸福はないと思うのも、ひとつの傲慢だと思います。

豊かな生活を維持するために結婚する女性も つましい暮らしをする庶民もたぶんそれぞれが 自分は幸せなのだと思っているのだろう

本当にいいものが目の前にあっても 自分の目が曇ってたら気がつかないし ただのゴミにしか見えないことさえある
要するに 見えているのは自分の心そのものなんだろう 


(2008.10.03)

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