1%の光
1%が、未来を照らす光になる。
日本の合計特殊出生率は、過去最低を更新し続けている。
「また産みたい!」
そう思えるお産がある。
41歳。助産師。2児の母。15年ぶりの出産をした。念願の自宅出産が叶った。
20代の時に、病院で2度の出産を経験。1人で耐え抜いた。
第2子が1歳の時に助産師学校に入学。助産院実習でのお産を見て、心を鷲掴みにされた。
ありのままを受けとめてもらえるお産。産声を上げる赤ん坊を、母がその胸にしっかりと抱く光景は神々しかった。
「自分もこんなお産がしたい」
と思った。
40歳で妊娠。助産院へ。
妊婦健診。助産師がお腹に触れ、日々の色々を話す。臨月を迎える頃には信頼関係ができている。
40週。陣痛かと思えば遠退くことを繰り返した。焦る私に助産師が言った。
「冬に向かう時だからね。皮膚を丈夫にして生まれて来るのがよいよ」
欲しい言葉をくれる。
本格的な陣痛が来た。子宮口が全開して以降、思うように進まない。
助産師がずっと傍にいてくれる。
赤ん坊が降りて来るのに時間がかかっていた。
「動いていきもう!」
助産師に言われ、階段昇降やトイレに籠りいきむことを繰り返した。
痛みに涙し、弱音を吐く。
キッチンの丸椅子にもたれ掛かり、痛みが来たらいきむ。助産師が腰に手をあて、痛みが来たら擦ってくれる。その手が温かく、何度も励まされた。
最後は横向きで力いっぱいいきんだ。赤ん坊の頭が出た。
「ほら!最後は自分で迎えてごらん」
助産師に導かれ、両腕を伸ばし、わが子を胸の上に連れる。産声が上がった。
「あー!やっと会えた!!」
その光景を目に焼き付けておきたいけれど、涙で滲んで見えない。赤ん坊と一緒に泣いた。
経験したことのない幸福感。
今、わが子を抱き思い出すのは、あの時の温かい手。それは幼い時に母に擦ってもらった時に似ていた。大きな安心感。
「この子にも、あの安心感を届けたい」
人から人へ、温もりある安心感が伝わっていく。
信頼できる人が傍についていてくれるお産。
「また産みたい!」そう思った。
1%。日本の全出産に占める、助産院や自宅での出産の割合である。この1%に、少子化を打開する可能性を感じている。
「また産みたい!」
そう思えるお産を増やしたい。
そのために、助産師として、また、1%の世界を見た者として、お産についての正しい情報の普及と、その選択肢の拡大に尽力したい。