小春日和
2021年2月某日
暖かく風のない日だった。
14歳の犬と散歩に出たが、
彼は自宅アパートの敷地から出ようとしなかった。
ごく地面に近いところになっていた黒い実はなんの実だろう。
大人になるとしゃがんだ景色を見ようとするときに少し勇気が必要になるのはなんでだろう。
「それ以上は行けないよ」
と、声をかけるも犬はお構い無しなもんだから、いい大人が必死に小さい声で声を張って犬に話しかける姿を、同じアパートの下階に住む猫に見られていた。
恥ずかしい。
リュウノヒゲはやわらかい。
ぶち模様を試着。
階段下の小さな木。
枯れたり咲いたり。
芽が出たり。
咲いたり。
枯れたり。
彼は云う。
遠くへ行くばかりが散歩ではない。
そして、
眠いと眩しいは同義だ、と。
小春日和。
まだもう少し冬。
おしまい。
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