筑駒の続き(立体テトリス!?)
というわけで、筑波大学付属駒場中学の2024年度入試算数の問題の続きです。解答の正当性も正統性も信頼性かなり危険です。最後の大問は「立体テトリス」のような問題です。ここでも場合の数をいかに網羅的に検討するかということが鍵になっていると思います。
まあ、テロップの通りなのですが、ここで思ったのは体積の単位としてのLについてです。
私たちが扱うモノの体積というのはメートル単位でいうと1000㎤くらいのオーダーなんですよね。1㎥は100㎤ではなく、1000000㎤です。これはちょっとデカすぎです。一升瓶のお酒は18000㎤で表記が面倒です。ラベルに印字しなければいけない数字としても少々ウザいです。
そこにLの登場です。私たちが扱うモノの体積を分かりやすい数値で表現できるというのはありがたいです。そしてL単位では1kLは1000L(kは10^3倍という意味ですね)、1mLは1/1000L(mは10^(-3))ということで、まあ妥当なものでしょう。
面積においてもa(アール)という単位があるわけですが、これは1辺が10mの正方形の面積ですので、1a=100㎡です。よく出てくる haは、aの100倍ということですので、1ha= 10000㎡なので、何とかhaくらいの土地などの面積をメートル系で表そうとすると桁が大きくなりますし、1k㎡は、1000000㎡ですので、こっちを使うと小数表示になってしまうことになります。なので面積自体に単位を振って表現するというのは実によく考えられた便法であるなぁと感心してしまいます。
次に進みましょう。
やはり、全ての可能性を網羅できるかどうかを聞いてきています。素数7が登場したりして、素数は中学受験算数の一つのポイントなんだなと感じています。私は立体図形の作図が非常に苦手なので、投影図やら切断面やらを描いて考える学生でした。実際x軸に垂直な平面での切断面の面積をS(x)とし、体積を ∫S(x) dx として求めるというのは、大学受験で必須のポイントだったように思います。
そして最後の設問です。
この最後の小設問は悪くないと思います。上の解法では一応全ての可能なブロックの配置を探索していますが、途中から、もっと話はシンプルだということに気付いています。しかし結構苦労してカラーリングしたので敢えて残しておきました。結局はそんなことをしなくてもよかったんです。このような解法の途中放棄ということはアルアルですよね。
ブロックは合計で11個存在し、それを図7と矛盾しないように5をこえない範囲(5をこえると図7にこえた分のブロックの姿が紛れ込みます)で3つの数の和で表すと、
1+5+5, 2+4+5, 3+3+5, 3+4+4の4通り考えられますが、1という配置はブロックAとブロックCの組み合わせ方を考えた段階で排除され、残り3通りで、これらの和を構成する3つの数をどの段に配置するかという問題に帰着できるのではないかと思いましたが、もっと話はシンプルになることが判明します。
ブロックAとブロックCの位置関係をベースに(3, 2, 4)と (4, 3, 2)を作っておき、これにブロックBが縦積みになっている場合には、1段目と2段目、もしくは2段目と3段目の数が1ずつ増えるので(3, 2, 4)からは、(4, 3, 4), (3, 3, 5) が、(4, 3, 2)からは、(5, 4, 2), (4, 4, 3)を作ることができ、ブロックBが横積みになっている場合には、一つの段の数が2増えるのでマックスが5であることに注意して調べると(5, 2, 4), (3, 4, 4), (4, 5, 2), (4, 3, 4)ができます。重複を取り除くと(4, 3, 4), (3, 3, 5), (5, 4, 2), (4, 4, 3), (5, 2, 4), (3, 4, 4), (4, 5, 2)の7つに絞れます。
ここで、1段目と2段目の和が同じであれば、2段目までに充填される水の体積は同じになることを考慮します。和が6のときには元々18000㎤あったスペースのうち6000㎤が排除されて残りの12000㎤に水が充填されますが、これがちょうど12Lなのです!
和が7以上になると2段目まででは12L充填しきれません。
1段目と2段目の和が決まれば、3段目の個数は一意的に決まり、床からの水位も決まるということになります。上の7つの場合の(3, 3, 5)以外を見ると、和が7となっているものが3つ、和が8となっているものが1つ、和が9になっているものが2つあります。
まとめると、2段目までの和が、6(床からの水位20cm)、7、8、9の場合があり、それぞれの場合について3段目に充填されるべき水の体積から高さを求めると考えればよいのではないでしょうか。
それぞれの場合が実現するかどうかという話ですが、それは後付け的にパターンを調べ、1つでも見つかったらOKなのです。そう考える方が探索は遥かに楽でしょう。
おー!完全にアルゴリズムの話じゃないですか!
探索アルゴリズムの考案力をみている。そんな気がします。
結局4つの大問すべてで場合の数の話をしていることがうかがわれ、アホみたいな「〇〇算」に誘導する問題は見当たりません。また、大問1など、数学をマスターしており数式で議論できた方が圧倒的に見通しがよくなる問題もありました。
小学校教育の後半からは児童の資質に応じてSTEM教育を採り入れるべきだという私の主張を補強してくれる問題ではないかと思いました。
詳らかには知りませんが、中学入試に向けた対策を講じる進学塾の多くで「○○算」に代表されるような特殊な考え方を教え込んでいるように思います。
そんなことをせずに、数学を教えてあげればよいだけではないでしょうか?
確かに、数式を操作するより、「あることに気が付けば、サクッと解ける」という問題も存在するのでしょう。しかし、算数縛りの解法で味をしめてしまうと、中学における文章題への数学的アプローチを受け入れる際にモチベーションを低下させるという識者の話を聴いたこともあります。
小学校教育の後半(高学年と言ってもいいかもしれません)の教育の在り方を真剣に議論した方がよいと思います。