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『解体屋ゲン』 #4 プロローグ4 日本一

みなさんは「爆破解体」と聞いて何をイメージするでしょうか?一般的に、高層ビルが仕掛けられたダイナマイトによって崩れ落ちる映像ではないでしょうか。

さて、泣いても笑っても4回枠の4回目。人気が取れなければこれで終わりかも知れません。爆破解体を特技とする主人公を考えた以上、本当はここでビル爆破をやりたかった。でも調べれば調べるほど日本でビルの爆破解体をやるのは困難だという現実が見えてきました。

法律の壁、住民の反対の壁、耐震構造に優れた日本のビルを爆破する技術的難易度の壁、どれをとっても一筋縄ではゆきません。漫画だから…そうですね、例えば時間をいきなり『3年後』とか飛ばして、一気に高層ビル爆破シーンに持ってゆくこともやろうと思えばできなくはありません。でもそれはしたくありませんでした。

なぜなら、よく言う「漫画だから」という言い回しを、作り手側が言い訳に使ってはいけないと思うからです。それは前回書いた、ゲンさんが1年中タンクトップ姿でいるのが「漫画だから」とは意味合いがまったく違います。あれは記号的な象徴としてのキャラ作りなので「漫画だから」と言い切ってしまっていいのですが、きちんとした施工計画と組織作りが必要で、準備期間も資金も人材も必要な爆破解体が「漫画だから」あっという間に出来てしまうのは、職業漫画としてやってはいけないと思いました。

それでは、このクライマックスに何を書けばいいのでしょうか。実は4回目だけではなく、初回から通しのテーマとして、バディ物としての骨格を作り上げることを念頭に置いていました。つまりゲンと慶子をコンビとして成立させることです。「この二人にもう1度会いたい」「この二人ならなんとかしてくれる」読者がそう思ってくれれば、この物語は続いてゆく、そう考えていました。
ひょっとして未読の方がいたら、前3回を読んでいただければ分かると思います。

ゲンを見つけ出してくるのは実は慶子の方。二人の出会いの第1回。


慶子が押し付ける無理難題。ゲンがそれに見事に応える第2回。


外部の視点でゲンが慶子に好意を持っていることを知らされ、慶子もまたゲンのことを意識するようになる第3回。


そして第4回では、慶子の過去が語られ、始めて二人の関係が逆転、これまでは発注主だった慶子がゲンに助けられることになります。

でも二人の関係を描くだけでは絵的に弱い。漫画である以上、きっちりと絵で見せなくてはいけません。なのでテロリストがドーム球場の隣のビルを爆破し、ビルを倒壊させてドームを潰す、それをゲンさんが阻止するストーリーを考えました。この話では犯人は最後まで出てこないし、実際にドームが潰されることもありません。でもここは「漫画だから」こそ、絵で見せることが出来る。

爆弾の赤白の導火線のどちらかを切って、成功すれば爆破を止められ、失敗すればドカン!、ここは非常に古典的な話です。でも大事なのは、赤白どちらを切るかをゲンに決断させるのが慶子だということです。このピンチを乗り越えることで、二人の絆は強くなり、将来二人で大きな仕事をする暗示を示して、とりあえず4回の短期連載は終了しました。                  <続く>



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