記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

MIU404:人は後悔とともに生きていく

映画でもドラマでも、すばらしい作品ほど感想を書けないもので、
書けば書くほど自分の語彙の足りなさを痛感し、
作品のすばらしさの微塵も伝えられないもどかしさに落胆して、
すばらしいから見て。以上。みたいになってしまうのですが、
どんなに言葉が足りなくても、自分で書くことが大事なんだよ、
とツイッターのタイムラインに流れてきた誰かの言葉に励まされたので、
このドラマのどこが刺さるのか、ちょっと書いてみようかと思います。
ここからはネタバレ入るので、見てみようかなと思ってる人は、
ここまでで見ちゃってくださいね・・・ぜひ。


○人生における後悔・取り返しのつかないことが
 全話を通じて描かれている

スイッチという言葉が何度か出てきます。
人は誰と出会うか出会わないか、
何かが起きた時にどう判断して、どう行動したかしなかったか。
それによって全然違う未来につながっている。
その岐路となるポイントをスイッチと表現していて、
とてもよく描かれていました。

そして、同時に取り返しがつかないことが起きたときに、
いつ、どこで、自分に何ができたのか、を後悔する姿。
取り返しがつかない、ということについても
同様に深く描かれていたと思います。

その描写にピタゴラ装置でボールを転がすシーンがあるのも印象的でした。
ほんの少し角度が違えばボールは全然違うところへ転がって行ってしまう。

主人公の志摩には大きな後悔があり、
もう1人の主人公伊吹は物語の途中で大きな絶望を経験して
どうして自分には何もできなかったのかと後悔する。
このふたりの大きな後悔が軸にありながら、
描かれる事件の関係者やメインではない話の中にも
ずっとこの後悔が描かれています。
これが深く刺さりました・・・


○普通の人が、それぞれの場所で、それぞれの立場で、
 それぞれにできることをしている姿が描かれていて、
 励まされる

主人公は機動捜査隊という
初動捜査をするチームにいる伊吹と志摩のふたり。
さらに同じ隊にいる陣馬さんと九重と桔梗隊長。
この5人が主要なメンバーとしてドラマは進むのですが、
事件の描写を通じて、たくさんの普通に働く人がその役割をこなして
社会を作っている、ということがよく描かれています。

1話でメインではない行方不明になった認知症気味のおばあちゃんの話。
おばあちゃんを心配する孫娘が交番へ行ったときに、
やさしく話を聞く警察官とか
お絵かきを一緒にしながら励ましながら付き添う警察官とか。

3話で虚偽の110番通報と同じ声の通報を聞いて、
虚偽通報と同じ声だという声紋の分析結果を見てなお、
今の通報は切迫感からして虚偽ではないかもしれない、
本当に危険な状態にあるかもしれない、と気づく担当者とか。

7話で家出少女2人に、
声をかけてくる知らない人の家に行ってはいけない、
まずは福祉に頼りなさいと伝える通りがかり?の弁護士とか。

そうやって、
ごく普通の人が、ごく普通の行動として
真面目に仕事をしていて、
それが積み重なって社会ができているのだから、
無力に思える1人の行動であっても
世界をほんの少しだけ良くすることができている、
のかもしれない。
と思わせてくれて、自分もできることをがんばろう、って
思って励まされるのでした。

そして、何より、このドラマの作り手は、
ドラマ制作を通じて世界をほんの少しでも良くしたい
と思っているんじゃないかと思ったのでした。

それぞれがそれぞれの立場でできることをする。
作り手こそが、それを実践して、
このドラマができていると感じました。


○社会的弱者に寄り添う立場と巨悪の描写

作り手がドラマを通じて
この世界をほんの少しでも良くしたいと考えているのではないか、
と思ったのは社会的弱者やマイノリティと悪の描き方でした。

認知症気味の女性、技能実習生、ホームレス、家出少女、
シングルマザー、血縁のない人と家族のように暮らす女性、
暴力団から逃れられない女性、LGBT・・・

メインのストーリーのこともあれば、
サイドストーリーやちょっとした登場人物のこともあるのですが、
それでも丁寧に弱者に寄り添う視点で描いて、
見ている人に社会問題の存在を意識させようとしている
と感じるところがあったり。

マイノリティの人々が
珍しがられたり差別されたりすることなく、
普通に暮らす世界が描かれていたり。

そして、巧みに人を取り込んでいく巨悪の描写。
特に印象的だったのは3話で軽犯罪を犯す高校生の話でした。

大人の事情に巻き込まれて理不尽を飲み込んだ高校生たちが、
ウサ晴らしでゲームを真似て虚偽の110番通報して遊んでいるうちに、
本当に犯罪に巻き込まれてしまう。

この回で高校生たちは捕まるのですが、
1人だけ捕まらずに逃げた高校生がいました。
この高校生のその後が数回にわたって描かれるのですが、
これがとても残酷でした。

ネットに顔も名前もさらされて、家に帰れなくなり、
そのまま放浪する高校生を取り込む巨悪。
お金も住むところも提供して
覚せい剤の入り口となる安いドラッグの売人をさせたり、
ネット上の情報操作をさせたり、犯罪の手伝いをさせる大人。

なんとなく、良くないことをしていると気づきながら、
行き先もなく、そういう大人に頼る以外に道がなかった高校生。

1人の女性が殺されそうになっている場面を目の当たりにして
疑問に感じた姿を見つかって殺されそうになり、
初めて、自分が利用されているだけだと気づく高校生。

そして彼も殺されそうになったところを助けたのは、
最初の軽犯罪の時点で彼を逮捕できなかったことを
ずっと後悔していた警察官でした。

逮捕された高校生は家裁送りになったものの更生の道があって
すぐに家庭に帰れて人生をやり直すことができた。
でも、逮捕されずに逃げた高校生は危うく殺人に加担するところだった。
その分かれ道にかかわってしまった警察官の
「あのとき逮捕できていれば・・・」という後悔。

人生のスイッチ、取り返しがつかないこと、後悔、
をよく描いていて印象的でした。

他にも違和感のない場面で、大事なことを言うセリフが多い。
・問題なのはゲームじゃなく、実際にしでかすやつです
 (ゲームを模倣した軽犯罪に対して:志摩)
・いたずらという言い方はやめませんか。
 例えばいじめは暴行傷害・強要・侮辱罪。
 児童への性的いたずらと呼ばれる行為はいたずらなんて
 軽いもんじゃない。性的な加害、性暴力です・・・(桔梗隊長)
・罪を裁くのは司法の仕事。
 世間が好き勝手に私的制裁を加えていいわけじゃない。
 (捕まった未成年の顔写真と名前がネットに流れたことについて:桔梗隊長)
これ、全部3話で出てくるセリフなんですよ。濃い・・・。


○登場人物の人間関係のこなれ方

ドラマの初回で、以前から知り合いだったのは
桔梗隊長と陣馬さんと志摩の3人。
伊吹と九重は初回で初めて3人に会うという設定で、
相棒となった志摩と伊吹、陣馬さんと九重、
そして全体を見る桔梗隊長の人間関係の描き方がとてもいい。
ぎこちなかったり、互いに気に入らなかったりする状態から、
信頼関係ができていく過程がとてもなだらかに描かれていて、
たった11回のドラマで最後はとってもいい感じなのですが、
それが違和感ないんです。

人間関係の描き方については、
このドラマと同じチームが制作していた
アンナチュラルというドラマでも同じように感じました。
MIU404のドラマ放映中にアンナチュラルを引き合いに出す人が
多かったのでアマプラで見たのですが、
チームの人間関係の変化はひとつの見どころだったのではないか、
と思うドラマでした。


と、いうわけで。
Paraviでディレクターズカットの全話配信中。
クレカの情報まで登録させられますが2週間無料期間があるので、
このドラマ見るためだけに登録してもいいんじゃないかと思います・・・。

テレビで10話11話を見て、
良さそうだなと思ってParaviで見始めたら感動(1周目)。
特に印象的だった3話〜9話の2回目を見たら、
やっぱり最初から見ないとダメだ!と思って最初から2周目を見て、
そうしたら1話目から伏線があちこちにあって
泣けるポイントが多すぎてほぼ毎回号泣。

3周目を見たいところなんですけど、なにせ1話1時間弱が11話なので
長すぎて3周目を見終われる自身がなく・・・
結局今日8話〜11話を見直しました・・・。

とても励みになります。