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天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会2回戦ヴィッセル神戸対AC長野パルセイロの個人的な見どころ

神戸は中3日、長野は中2日というタフな日程で戦う水曜日の天皇杯

2回戦は全国各地で上位カテゴリーに位置するチームの敗戦もあった

4年ぶりの戴冠を目指すヴィッセル神戸はリーグ前半戦の締めくくり、アウェイの地で悔しさが残る敗戦を喫した。天皇杯、カップ戦、そしてリーグ後半戦に向けてチームの総合力が試される

過去何度も天皇杯で上位を破ってきた長野もリーグ戦は3連敗中。今季のJ3リーグは勝ち点差が詰まる大混戦。だからこそ、カテゴリー関係なく、勝利をして次の上位鹿児島との対戦に繋げていきたい

メンバー編成含めて、今季を戦い切るためにチーム全員で勝利を目指す一戦になりそうだ

(解説:加地 亮さん リポーター:加藤 綾さん 実況:能政夕介)※追記、修正の可能性あります

今季の順位と前節の振り返り(2023/6/13時点)(リーグ戦のみ)

ヴィッセル神戸:10勝3分3敗で勝ち点33でJ1リーグ3位(33得点13失点)+20

前節は関西チーム同士の一戦に大勢のサポーターが駆け付けた
神戸は山川の負傷もあり、メンバーは前節から2人変更。酒井が1か月ぶりの復帰、井出が名古屋戦以来の先発となった

試合は見応えのある一進一退の攻防を見せた
神戸が得意のカウンターからゴール前に迫る場面を見せれば、セレッソ大阪もボールを上手く繋ぎゴールに迫った

セレッソ大阪は幅を使った攻撃で、サイドを起点に決定機をつくる

神戸はロングボールを使い、セカンドボールを上手く拾って圧力をかけていくがお互い前半は得点に結びつかず。それでも球際の攻防も激しい45分間を前半から見せた

後半に入って、神戸は井出に代えて佐々木を投入
ただ、先制したのはセレッソ大阪だった。スローインから、サイドで駆け引きをしてクロスにクルークスが頭で合わせて1-0

しかし、神戸もすぐさま、キックオフからゴールに迫り右サイドから古巣対戦となる山口が得点を決めて1-1の同点に

神戸は終盤に決定機をつくるを勝ち越しゴールは奪えず、逆に最後の最後でセレッソ大阪の北野が得点を決めて1-2の悔しい敗戦となってしまった

終盤はお互い疲労もあり、精度を欠く部分もあった。神戸は今季リーグ戦初のアウェイでの敗戦となってしまった

Jリーグ公式HPより引用

J1リーグを前半戦3位で折り返したヴィッセル神戸、川崎F戦が延期となり1試合少ない状況で、首位横浜FMとは勝ち点差は「3」

もちろん今季初のリーグ戦でのアウェイ戦の敗戦。終盤の失点等、悔しい結果である事は間違いない

それでも昨季苦しかった時間が長かったシーズンを考えれば、今季の順位は期待を上回る結果かもしれない。シーズン序盤の菊地の長期離脱、守備面での不安もあったが、大迫をはじめタフに走り圧倒する攻撃で首位にも立った

リーグ戦は好調の一方でカップ戦など控えメンバーの活躍が長いシーズンを戦う上で重要になる。リバウントメンタリティーに加え、チームとしての総合力を、チーム一丸となって勝利を狙いたい

加えて、リーグ後半戦に向けて「自分がやってやる」という強い気持ちを持った選手の台頭に期待したい

AC長野パルセイロ:6勝2分5敗で勝ち点20 J3リーグ6位 (21得点16失点)+5

J3リーグで戦う長野は現在6位。リーグ戦は3連敗と少し苦しんでいる。今季は3連勝で一時首位に立つも、3連敗で6位に後退

それでも首位富山とは勝ち点差「4」と今季はより熾烈なリーグ戦となっている

前節は5/13以来、約1か月ぶりにホームでの一戦となった
沼津、FC大阪と0-1で悔しい敗戦から再起を図る一戦は先制するも、琉球相手に悔しい逆転負けとなってしまった

長野は前節のFC大阪戦から2人メンバー交代。森川を左のウィングバックに、近藤に代えて音泉を起用してきました

立ち上がりの14分に船橋のスローインを三田が落とし、船橋がロングクロス

山本が上手く駆け引きして先制ゴール。リーグ戦松本戦以来3試合ぶりの得点で先制に成功

ただ、長野は前半終了間際に宮坂のファウルで琉球がPKを獲得。野田が落ち着いて決めて前半の内に同点へ

長野はセットプレーやサイドを使った攻撃でゴールに迫るも追加点を奪えず、逆に後半24分にサイドからのクロスのこぼれ球をコントロールされて失点。1-2と追う展開に

終盤までゴールを迫る気持ちを見せましたがあと一歩及ばず今季初の3連敗となってしまった

Jリーグ公式HPより引用

シュタルフ監督はYSCC横浜時代から非常にパッションのある監督というイメージがある。試合後のコメントについてはサポーターの方への感謝を述べつつ、改善に対しての評価と悔しさをにじませているコメントが印象的だった

神戸にとっても、長野にとってもリバウントメンタリティーが試される一戦となる。長野は中2日という日程に加えて、移動も伴う天皇杯2回戦

週末には中3日で神戸はカップ戦、長野はリーグ戦が控えているだけにどのようなメンバー編成で臨み、サポーターに対して、強い気持ちを示せるか注目していきたい

過去の対戦戦績

過去の対戦成績は2015年の9月9日に天皇杯2回戦で対戦し5-0で神戸が勝利

その時は渡邉千真の2ゴール、岩波拓也、増山朝陽、奥井諒が得点を記録している

神戸と長野の公式戦での対戦は実に8年ぶり。お互いにタフな日程、だからこそチームの総合力、そして勝利することで次の試合へより強く向かっていく事ができるはず

天皇杯については長野は2年ぶり(11回目)の出場
そして、過去は上位カテゴリー相手に勝利を何度も記録している

▼主な天皇杯での戦績(長野)▼
2012年にJ1札幌にPK戦で勝利し3回戦へ
2013年にJ1名古屋に勝利、3回戦で北九州に勝利してベスト16に
2015年に神戸に敗戦(2回戦)※前回対戦
2016年にJ1名古屋に勝利
2017年にJ1FC東京にPK戦で勝利、岡山にも3回戦で勝利してベスト16
2021年にJ1川崎と対戦し1-1でPK戦の末敗戦(4-3)

一方の神戸は2019年に天皇杯で戴冠
昨季は準々決勝で鹿島に敗戦。4年ぶりとなる天皇杯優勝、更には初のリーグ制覇に向けて勝利を目指したい

今シーズンの成績(リーグ戦のみ)

ヴィッセル神戸:10勝3分3敗で勝ち点33の3位 (33得点13失点)+20

先制試合:13試合 10勝2分1敗(9節の横浜FM戦で今季初の逆転負け)
先制された試合:2試合 0勝0分2敗(4節の浦和戦,17節のセレッソ大阪で敗戦)
スコアレスドロー:7節の新潟戦

ホーム: 6勝1分2敗 勝ち点19  17得点  6失点 得失点+11
アウェイ: 4勝2分1敗 勝ち点14 16得点  7失点 得失点+9

リーグ戦では9名が得点(大迫11得点、武藤6得点、佐々木4得点、山口・汰木3得点、酒井が2得点、初瀬、泉、パトリッキが得点を記録)

複数得点:10試合  
複数失点:4試合(2試合続けて複数失点中)
無失点:8試合 
無得点:2試合

<得点>前半に14得点 後半に19得点 
<失点>前半は3失点 後半は10失点

33得点中セットプレーでの得点は9点の27.2%。大迫のPKで2得点
初瀬がFKとCKから起点をつくる(CKから2得点、FKから2得点)

11失点中セットプレーからの失点は4で割合は36.3%(2PKで3失点とスローイン起点で失点)

前節のセレッソ大阪戦でリーグ戦は初のアウェイ戦敗戦となった。後半、そして終盤の失点を減らすために交代メンバーが試合を良い方向に導くプレーが必要になってくる

カップ戦では今季苦しんでいただけに、後半戦に向けてメンバーの起用及びその奮起に期待したい

AC長野パルセイロ:6勝2分5敗で勝ち点20 (21得点16失点)+5

先制試合:9試合 6勝1分2敗(8節福島、前節の琉球戦で逆転負け)
先制された試合:4試合 0勝1分3敗(4節の富山戦は先制を許すも、点の取り合いで3-3になった)
スコアレスドロー:なし

ホーム: 3勝0分3敗 勝ち点9  10得点 9失点 得失点+1
アウェイ: 3勝2分2敗 勝ち点11 11得点 7失点 得失点+4

リーグ戦では8名が得点(進・三田・山本大貴が4得点、秋山・船橋・西村が2得点、佐藤・原田もゴールを記録)

複数得点:6試合 
複数失点:4試合
無失点:4試合(リーグ戦は現在6試合連続失点中)
無得点:3試合(奈良・沼津・FC大阪) 
※最多得点は岩手、讃岐相手に4得点を記録

<得点>前半7得点 後半に14得点 
<失点>前半は3失点 後半13失点
後半に試合が大きく動く傾向にあり。得点も取れば、失点もしている状況

セットプレーからの得点は21得点中8得点と38%を記録。セットプレーからの失点は16失点中5失点と31%となっている

リーグ戦は2試合続けてセットプレーから失点。FC大阪戦はCKから、前節の琉球戦はPKによる失点もあり6試合続けて失点を記録

ビルドアップのミスによるピンチも沼津戦では見られたが、少しづつ勇気を持ったプレーも展開できている

監督コメントでも述べられていたが、今季は混戦のリーグ戦。次節の鹿児島戦も見据えたメンバー構成に加えて、連敗中という状況だけに気持ちを上向ける結果、プレーを見せていきたい

個人的な見どころ

①メンバー編成
神戸は6/6にバルセロナとの親善試合があった。川崎F戦は台風の影響で延期も、メンバー構成は慎重に選択した印象だった
セレッソ戦は負傷した山川の代わりに酒井を起用も、まだ本調子とは言えないプレーにも見えた

天皇杯の3日後にはカップ戦も迎える。チームとしての優先度、そしてメンバー編成をどのように行うのかは非常に興味深い

負傷者が多く出ている神戸は強行出場ではなく、カップ戦アウェイの名古屋戦のようなベースで戦う可能性が高い
その上で様々な状況を考慮して、サブメンバーに主力を控えさせるかもしれない

どちらにせよ、リーグ戦でのプレータイムを伸ばす事、そしてこれから夏場でタフな戦いになっていく中で総合力を発揮し、結果を残せるか。この天皇杯、カップ戦はチームの総合力を考える上でも重要な試合になる

一方の長野は天皇杯1回戦ASラランジャ京都との一戦は、日程の兼ね合いもありリーグ戦のメンバーから大きく変える事なく臨んだ一戦だった

ただ、今回は日曜日の試合から移動も含めて中2日とかなり厳しいスケジュールとなっている
そしてまた週末には同じ上位に位置する鹿児島とのホームでの一戦が待っている
もちろん長野としても、チーム状況を上向きにしていくために良いプレー、そして勝利という結果を目指して戦う

シーズンは長い。主力だけで結果を出し続けることは難しい。ケガや移籍、コンディションの浮き沈みなど多くの要因がある
サッカーはスタートの11人だけではなく、サブの18人だけでなく、色んな競争原理の中全員で戦う(もちろん選手以外のスタッフも含めて)

強いチームは各メンバーが強い野心やリスペクトを試合に向けて準備をして表現する。もちろん起用するかどうかは監督はじめ、首脳陣の采配もあるが、そこに至るまでのコミュニケーションやプロセスの中、誰が起用されるか楽しみでもある

②プレスの強度とビルドアップ
今季の神戸は前線からのハードワーク。良い攻撃が守備にも結び付き、前線のプレス、中盤でのボール回収などで高い得点力と堅守をここまで展開し上位につけている

前線のクオリティーが高く、大迫11点、武藤6点とこの2人で全体の半分の得点を担っている。それだけ個の技術もだが、ハードワークをすることができている

今季交代メンバーの得点は佐々木の2得点、パトリッキの1点。カップ戦では途中交代からの得点は大迫の1点のみ

またカップ戦の戦績は2勝3敗(3得点・9失点)となっている。5/24のカップ戦は1-0の勝利を収めたように、システムの変更があっても今季体現するスタイルをすべての選手が意識を揃えて実施ができるか、そしてその中で結果に繋げる事ができるか注目したい

一方長野は3バックから、リーグの中でも高い攻撃力を誇っている

岩手戦や讃岐戦での4得点など、三田・山本に加え、負傷中だが進も高い決定力がある
船橋や森川も仕掛けやクロスも上手く、良い状況で得意な形を表現できれば得点に結びつく可能性も高まっていく
沼津戦やFC大阪戦では後方からのビルドアップで苦戦する部分もあった

J1リーグで戦う強度やスピードに対して、速い予測と対応で上手く守備をはがして、自分たちのペースでプレーする時間を少しでも長くつくっていきたい

③流れを変えるセットプレーの攻守
神戸はFC東京戦はPKで2失点、前節のセレッソ大阪戦はスローインからのクロスで失点とセットプレーからの失点が続いている

大きく崩されての失点というのはないだけに、セットプレーでの守備や、得点・失点の後すぐの部分で集中力を切らせる事なく戦いたい

同じく長野もFC大阪戦でのCKや前節のPKとセットプレーからの失点が続く。メンバー編成を読めないが、セットプレーから得点を今季は8得点挙げているだけに厳しい局面で流れを変える一発にも期待したい

天皇杯はトーナメント方式であり、90分で決着がつかなければ延長戦もある。リーグ戦では悔しい敗戦が前節あった両チームがどれだけ高く集中力を持って試合に入るか、そして試合を終わらせるか。どのメンバーが起用されても、チームとしてそうした思いの共有を図って戦っているかどうかも1つのポイントになるかもしれない

毎年様々なドラマが生まれる天皇杯。6/14に実施される試合はこの1試合のみ

熱くて、タフに戦い、怪我なく、未来に繋がる1戦になる事を願うばかりです

試合は19時~ノエビアスタジアム神戸で。現地、またはスカパーにてお楽しみください!



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