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花組公演「鴛鴦歌合戦」とにかく恋と愛がたくさん!

 7月7日に花組宝塚大劇場公演「鴛鴦歌合戦」が開幕した。鮮やかな衣装に彩られた舞台上では、鴛鴦の名前の通り恋する者たちがドタバタと話を展開していく。思わずクスリと笑ってしまうような場面や憎めないキャラクタ―たち。とにかく、どこでもかしこでも恋、恋、恋――。恋人同士の愛、友情、親子の愛が散りばめられ、舞台は温もりに包まれる。

 そんな中、少し距離を置いて物静かに人々を見つめるのが柚香光さん演じる浅井礼三郎。周りにある「人と人との縁」を敏感に感じ取りつつ、そこから自らを遠ざけ、幸福になることを拒む彼の背中には、いつも少し影が落ちる。憂いを帯びたその背中からは柚香光さんならではの色気が漂い、劇中の女性のみならず観客も魅了する。

 幸せになることから自らを遠ざける礼三郎は稽古の金も受け取らず、古着で生きる。多くを望まず、育ての父親から受けた愛だけで充分だと自分を納得させ、傍にある愛も遠ざけようとする。しかし、人と人との繋がりやそこにある温もりを感じるとき、舞台上と同様に彼の心にもシトシトと雨が降る。そんな礼三郎の心にも星風まどかさん演じるお春の登場と共に晴れ間がさす。彼を想いながら素直になれない彼女の愛らしい文言に観客も微笑み、会場には柔らかな時間が流れる。

お春が傍にいるとき、礼三郎に必要なのは雨傘ではなく、日傘なのかもしれない――。

礼三郎が自分の中にある愛に気づき始めたとき、二人の間を引き離す出来事がそれぞれに起きる。そこにもまた人々が誰かを思う愛が垣間見える。

「日傘さす人、作る人」
それもまた目には見えない人々の縁。礼三郎が自分の中にある愛を知り、それに手を伸ばすとき舞台上はいくつもの愛に包まれる。

物語には骨董を手にするものや経済力に恵まれたものなど、傍(はた)から見ると恵まれた幸せな人たちが度々登場する。しかしながら、彼らも求めたのは結局、愛。

最初から最後まで賑やかに進む物語の中に散りばめられた人々の「偽りのない愛情」に観客の心はほっこりと温かくなる。互いを思う鴛鴦たちが愛を歌う歌合戦のような舞台は、礼三郎の心のように、温かな愛に包まれたまま幕を下ろす。


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