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【ドラマ木22時】大奥 第一話 不穏な初回

1月18日(木)から始まった『大奥』。将軍に気に入られ、後継ぎを生むことで権力を得ようとする女たちの争い。今回は徳川十代将軍家治とその妻倫子を中心に物語が描かれる。初回では、倫子が家治のもとへ輿入れをし、大奥という場所の実態を知る。牢獄のようなその場所で苦しみ、傷つけられながら、それでも強く、逞しく、そして切なく涙を流す。愛妻家であったという話も聞かれる家治の時代。大奥史上最も切ない愛の物語が幕を開けた。
一話では、不安な気持ちを抱えながら輿入れをする倫子に対し、早速卑劣な仕打ちが降りかかる。付き人で一番の理解者であるお品の監禁に始まり、陥れられ恥をかかされるなど、当然のことでまだ序の口。倫子は苦しみのあまり幼馴染の久我信通に助けを求めるが……。

女の争いを描いた大奥。目の敵とされる倫子に対し、誰が味方で誰が敵なのか、ほとんど分からない。親しげに話しかけてきた松平定信も、言葉の最後に不穏な気配を残す。敵か味方か、善人か悪人か、さっぱり分からない違和感を残したまま立ち去る。それが、倫子の大奥での生活の不穏さをすべて物語っているようで恐ろしい。

女たちが争うのは、権力でもあり将軍の愛でもある。だからこそ、争いはさらに手段を選ばない残酷さを増す。自分の努力だけではどうにもならない誰かの心をつかむこと。誰かは選ばれ、誰かは弾かれること。そのすべてが将軍の心次第で決まる。そんな場所で一番になろうとする者たちは、それだけで心をすり減らしていく。
それにしても、嫌がらせや足の引っ張り方があまりにも顕著で露骨なことには驚いた。意味深な視線を交わし、口元に笑みを浮かべ、知らない顔をして口を滑らせる。そのすべてが悪意と計算でできている。将軍の目にそれがどういう風に映るのか。それを考えればできないはずのことですら、いとも簡単にできてしまう。人を貶めるためなら何でもする。自分が気に入られるためなら手段は選ばない。大奥を生きる女性たちがどれだけ傷つき、怒り、嫉妬をくり返し、すり減ってきたのか。その感情が渦巻き作り上げられた大奥という世界の実態を知る初回となった。

これからどんな展開が待っているのか。女たちの争いは激しさを増し、倫子の苦しみはさらに深いものとなっていく。それでも、芽生える家治と倫子の恋。さらに二人を取り囲むすべての人の目論見。これから、視聴者が目の当たりにすることは、幸か不幸か。時に愛らしい笑顔を浮かべ、時に顔をゆがめて涙を流す倫子が逞しく御台所として生き抜く姿を丁寧に見守っていきたい。

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