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i /西加奈子 22.12.7読了

最初、分厚いし読めるかな?と思ってた。
何故なら小説を読み出したのは最近だから。
選んだ理由は、何となくパッケージが色鮮やかで良いし、西加奈子さんって聞いたことあるし、帯見たら又吉さんがコメントしてるし、愛について書かれているってことだったから。
最近失恋したこともあって、「愛」について考えること、に抵抗と必要性を感じていて、惹かれたのだと思う。
分厚さの抵抗は、読み始めてすぐ無くなって、あっという間に読み終わってしまった。

アイという1人の女の子がひとりでもがきながら女性として成長していく話。自分の事を愛せない人が、自分も周りも愛していく話。

最初は結構びっくりしてしまう始まりで、空気感は重くて寒くて、黒白の世界をみている感じだった。
だけど、色んな事を経験していくうちに、色がすごくゆっくり増えていくような感じがした。その色は寒色だったり地味だったりする時も多いし、たまにとても鮮やかな時があって、でも鮮やかな後が鮮やかとは限らなくて、その鮮やかな瞬間がラストにかけて増えていくようなかんじだった。
鮮やかな色はパキッとした色でビビッドに近いばかりだったんだけど、ラストはとても穏やかででも明るくて強くて、パステルカラーの優しい色とビビッドな強くて明るい色と沢山の色がついたのかなと思った。
人間って生まれた瞬間にひとりひとり真っ白のキャンバスが与えられていて、そこに経験という色が載せられていくようなものなのかなって。それが人生なのかなって。
アイのキャンバスにダークな色から少しずつ綺麗な色が登場してくるところ、絵の具が増えていくところで、これからやっと素直に色んな色を塗れるようになった解放されたところまでを描いていて、彼女がまだまだある余白部分にどんな色を塗っていくのか、それもすごく楽しみ。(それは各読者が想像していくべきもので、続編は必要ないと思うけど)

そして、今回読んだのは1回目だから、アイの感覚、視点で物語を読み進めていた。
だけど、2回目3回目と回数を重ねていくときに、両親の視点、ミナの視点、ユウの視点と視点をずらして、客観的にアイをみるのも面白いし、そうして周りからのアイを一通り見た後に、自分が一個人としてアイをよく観察すると、アイの視点として読むと、自分の年齢や心境が変わったら、また違う感覚が芽生えるのかなと思う。

良い小説に出会えてよかった。

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