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ベテランジャンプ読みと『守れ!しゅごまる』を振り返る【最終回】

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ベテランジャンプ読みと『守れ!しゅごまる』を振り返る【最終回】

https://www.youtube.com/watch?v=xiqg052ZucY

最終回単体の振り返り
実は黒幕サイドの小福ちゃん視点から全てを振り返る最終回。
そういえば水が針にすり替わってたくだり謎のままでしたね。ちょっとした伏線。
潜入してた監視役キャラが潜入してるうちに居場所を得て…というベタっちゃベタなオチではありましたが、ピクニックの見開きで心が温かくなったので良い最終回だったな…ってなりました(ちょろい)。
メインキャラ以外の追風マッシュルームとかはおそらく人気高かったキャラを最後に出すファンサの側面もあるんだろうな。
おそらく無念な終わり方ではあったと思うんですが、見開きといい最後の「じゃあな!」といい、応援してくれた読者に対しての真摯さをすごく感じたので、伊原先生、また頑張ってくれ…!と素直に思えました。

ここからは多少ドライに全体の振り返り。
○キャラ
・しゅごまる
厳しい言い方になるけどおそらく一番の敗因。序盤なんかはポンコツボディーガードをやってたんだけど、「仮にもプロのボディーガードじゃないの!?」と「言うても子供だしなあ…」の間でストレスが行き場をなくしてたイメージ。ボディーガードであることを除けばただの男児なので、強くツッコむのもなんだか罪悪感…というところでストレスが笑いに昇華されにくく、噛み合いが悪かった気がする。ギャグ漫画のメインボケはどんだけツッコんでもものともしないタフさが必要なんだなあ…
メインギャグ担当が可愛い系に当たるタイプの漫画の例で言うとケロロ軍曹なんかも該当するけど、あちらは見た目はマスコットだけど中身は調子乗りのオタク軍人でフィジカルもなかなか頑丈というバランスの取り方。
中盤以降のしゅごまるは男児の部分がどんどんクローズアップされ、ストレス要素が減った代わりにキャラとしての独自性も薄くなった印象。どこにでもいそうなヤンチャ男児。ただそれを逆手にとって終盤さなぎと擬似親子関係に着地したのは個人的には結構好き。
総合すると、ギャグ漫画の主砲を担うにはパワーが足りないキャラだったのかなと。
正直しゅごまるのポジションには初期案通り追風マッシュルームを置いたり筋肉増強児薫を置いたりした方がギャグ漫画としては面白かったんじゃないかと思っちゃった。上に挙げた諸々の問題も解決するし。
・さなぎ
好き。でも恋ピのナミと割と同じなので伊原先生のツッコミキャラが好きなだけかもしれない。
でもお嬢様設定あんまり活かされてなかったしどんなものが好きな子なのか今振り返っても分かんないな…
常識人ツッコミキャラとしてキレのあるツッコミを入れるという役割は全うしてたけど、最頻出の遊戯王ネタに明るくないのは勿体なかった気がする。恋ピでは解説も兼ねたツッコミが異常に詳しすぎることで笑いを産んでた側面もあったので。
・その他のキャラ
ちびっ子のしゅごまるにできないチャラ男アプローチができる蛇原、何にでもちょっとした補足情報を入れられる小福ちゃん、しゅごまると競い合い引き立てるさなぎ団のちびっ子たち、と脇を固めるサブキャラは割と便利そうなキャラが揃ってて良かった印象。恋ピとの差別化も自然にできてるし。
ただやはりしゅごまるをメインに据えたい都合、しゅごまる以上のパワーがあるキャラを出しにくい(そして上限のしゅごまるもそんなにパワーはない)ため、全体的に火力のあるキャラが不足していたように感じた。
筋肉増強児薫の出番が少なかったのもそのあたりに理由があったりするのかも(筋肉増強児薫好きすぎだろこいつ)。

○パロディ
ロボコとの被りを忌避してか、本誌勢のパロディが少なかった印象。もっと遠慮なく連載陣をイジりにいって良かったんじゃないかと思った。
特にワンピースに関しては恋ピとの差別化も狙ってか不自然なほど触れず。せっかくだから恋ピでできないようなイジり方すればよかったのにと勿体無く感じてしまった。画風似せて描くとか。
本編で実際に出てたパロディはほとんど遊戯王ネタでしたね。一時期はノルマと言われるほど毎週出てた。
ただその頃の遊戯王ネタは面白くするために出したってよりは出したいから出したみたいな雰囲気を感じてました。手段と目的が逆転してたというか。
パロディネタって、元ネタが分からない人でもなんとなく笑えて、元ネタが分かる人にはより深く刺さるみたいなのがあるべき形だと思うんだけど、この作品の遊戯王ネタは度々分かってる人以外置いてけぼりになってる時があったよなー。というかわたしが置いてかれてた。
伝わらないと笑えないパロディは個人的にはただの内輪ネタと変わんないと思うんだ…
恋ピの何が面白かったのか伊原先生自身見失ってたのかなあと思ってしまいました。

○おわりに
そもそもの話として、ボディーガードというテーマ自体が、必然的に「襲ってくる暗殺者(ゲストキャラ)を迎えうつ主人公」=受け身という構造を取らざるを得ないので相当厳しかったんじゃないかと思う。
最も主体性を持って動けるのがゲストキャラなので、毎回話の軸をゲストに担わせないといけない作り。
それで言うと追風マッシュルーム回なんかは暗殺者が面白かったのでうまくいってたと思うんですが、現実問題としてそれずっとやって面白くし続けるの難しすぎない?っていう。
ボーボボって自分から殴り込みに行く仕組みなのさらっとやってたけど理にかなってたんだなあ。
例えば、暗殺者も固定のレギュラーキャラにして、ばいきんまんとアンパンマンみたいな構造にすれば同じボディーガードテーマでも変わってたのだろうか。

恋するワンピースを中断して始めた連載ということで、早く何か変わったことをしなければという逸りがあったのかもしれないとも思った。
遊戯王ノルマなんかもその発露の代表例みたいな。
型があってこその型破りという言葉があるけど、この作品もまだ型ができてない頃から型を破ろうとしていた印象があって、それもうまくいかなかった一因なのかなあと感じた。

伊原先生の漫画のどういうところが面白いのかや、どういう部分に次気をつける必要があるかなど、恋ピだけでは分からなかった色々なことが浮き彫りになった連載だったと感じた。
そういう意味では、伊原先生の作家生命という観点から見ると、恋ピを中断してまで描いた意義は大いにあった作品だとわたしは思う。
特殊な飛び道具に頼らなくても面白い漫画が描ける作家さんなのは知ってるので、今度はフラットな状態でのびのびはっちゃけてほしいですね。

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