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ショートショート 「スタア宣言」

日本の首相が唐突に「私たちはスタアになります」と宣言した。
会見場に居合わせた者たちは皆一様に困惑し、頭の上に?マークを浮かべた。
ざわめきを制するように、ひとりの記者が声を上げる。

「総理。いまの発言をもう一度仰って頂けますか?」
「いいですよ。私たちはスタアになります」
「それは、つまり…どういうことですか?」
「どういうことってあなた、経済も文化も、もはや滅茶苦茶じゃないですか?」
「…あーなるほど。要するに、もう一度高度経済成長のような奇跡を起こして日本を立て直し、国際社会における我々の存在感を…」
「いや。そんなのムリでしょ」
「は…?」
「だって少子高齢化はもう歯止めが掛からないところまで来ちゃってるんですよ。まあ適切な手を打たなかった私たち政治家が悪いんですけどね、アハハハ…。おほん。それはさて置き、今後、労働力不足はますます深刻化するでしょうし、そうなると生産能力が低下するのはもちろん、インフラを維持することさえ難しくなるでしょう。また、そう遠くない未来に年金制度は崩壊し、その他の社会保障制度も立ち行かなくなるでしょうね。言わずもがな経済が悪くなれば治安も悪化しますし、企業も資本家も先を争って海外へ逃げて行っちゃうんじゃないかなぁ。とにかくあれもこれも悪くなる一方でしょう。と言うか、そもそもアメリカが勝たせてくれなくなったいま、エネルギー自給率11%、食料自給率38%のこの国が、軍隊も持たずにどうやって世界の国々と渡り合って…」
「あの、総理」
「はい」
「それをなんとかするのがあなたの仕事なのでは?」
「なんともならないから、止むを得ずスタアになるんですよ。ちなみにあなたはどっちのスタアになるのがいいと思いますか?」
「…と言いますと?」
「青地に白いのか、それとも赤地に黄色いのか…」

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