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デイサービスでは、利用者さんの席はだいたい決まっている。

車椅子の方、足が不自由な方はトイレの近くに座ってもらう。
男性の利用者さんは、男性だけのテーブルにする。怒りっぽい利用者さんは、ひと席空けて座ってもらう。
認知症のある方の隣には、聞き上手なお話し好きの利用者さんに座ってもらうなど、相性や身体状況を考えて席の配置を決める。そうしないと、トラブルの元になることがあるからだ。

トラブルばかりを考えていてもしょうがない。

デイサービスは高齢者の出会いの場でもある。
仲の良い方同士、なるべく近くに座ってもらうように席の配置を考える。

ニコイチのおじいちゃんがいる。

年が近く、ふたりとも酒や女性の話が好き。下の名前で呼び合い、目を見て通じ合っている。デイサービスにくるとまず、お互いに相方の姿を探すことから始める。

席は必ず隣同士だ。食事の席も隣同士だ。「〇〇さん、風呂入った?」「〇〇さん、コーヒーは?」自分のことよりも相手を気遣う。その光景を見ていて友達のいないぼくは、羨ましくて仕方ない。

今日は、利用日が重なる日なのに、

ひとつ、席が空いたままだった。

ひとりポツンと座っているおじいちゃんは、空いている隣の席に関して言及はしなかった。
いつもと変わらない日常を過ごし、夕方、気分良くデイサービスを後にした。

声に出してしまうと、心の何かが崩れていくことに恐怖心を抱いているのかもしれない。だから変わらない日常を過ごしていたのだと思う。
わかっていたのだと思う。

今日、デイサービスに来れなかったおじちゃんは、昨日自宅で転倒し入院した。

高齢者同士、お互いのこと、体のこと・心のことを理解し共感できるからこそ、仲良くなれるのだと思う。そうして自分のことのように心配し、時に恐怖と不安を分け合うのだと思う。

相方の復調の願いを声に出さないのは、事実として認めたくないからではないか。真実を伝えられるのことが嫌なのではないか。

高齢者の本当の心の内はわからない。でも、寄り添うことはできる。

寄り添っていれば、そのうち心は癒されるかも知れない。だから、今日もぼくは、いつも通り笑顔で過ごすことを心がけようと思った。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。