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相談の心得

 キャッチーのためではないが,あえて少し乱暴に言えば,相談は(被相談者がよっぽどの専門的な知識を有している分野でないかぎりは)基本的に不発する。

 ほとんどの場合,相談という事態において,相談者の語りは十分ではない。意図的に自分の非になりうるところは話さないという心的傾向も否定はしないが,そも問題の本質を相談者がわかっていない場合も多くあるため,彼が誠実さを尽くして相談をしたところで,殊に人間関係的な問題については,繰り返しになるがその語りが十分である場合は極めて少なかろう。

 しかして,得てして被相談者は相談者に比して問題の文脈を把握しないことになるから,被相談者の枢要な仕事は,情況を客観視するだけの心情を相談者の中に整えること,つまり,アドバイスではなくカウンセリングであろうという私見がある。

 むろん,法や医療の専門家が各々の専門分野についての相談を適当な文脈において受けたときには,「情況はあなたが一番わかっている筈ですから,よく内省してごらんなさい」等と言わずに,誠実に「アドバイス」をすべきであろうとはおもう。

 とかく被相談者は,判断に主体的になってはならず,なるべく出典を明かしながら文脈(知識や経験)を補強したり,相談者が冷静さを欠いていそうであれば,彼を落ち着かせることで事態を俯瞰できる心情を整えさせることが枢要な仕事であるべきだ。

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