アグリビジネス(agribusiness)とはなにか。歴史や必要性を解説


アグリビジネスとは、agricultureとbusinessを合成した言葉であり、農業を中心に農産物加工、貯蔵、流通販売、農機具・肥料製造などまで含めた産業としての農業のことであり、それらの産業の総称としても用いられる。

この概念は、1957年にアメリカのハーバード大学のデービスJohn H. DavisとゴールドバーグRay A. Goldbergが提起したものであるが、その後、世界的に広まった。


《日本におけるアグリビジネス》

日本では、1990年代以降輸入野菜の急増に脅かされ、農家も従来型流通システムも消費者ニーズを十分に把握してこなかった反省から、有機農産物の直販や宅配などといった新分野への新規開拓やサービスの見直し、統合を始めた。

従来の農業の枠にとどまらず、従前の事業にバイオテクノロジー (生命工学) や自動化技術などの先端技術を応用、利用した研究開発が進んでいる。また、異業種からの新規参入が活発化しており、バイオインダストリー (生命産業) なるものが形成されつつある。


《現代社会とアグリビジネス》

経済社会の発展に伴って、農業や食料の分野でもさまざまに社会的分業が進展しており、農民から巨大企業に至るまでさまざまな主体(担い手)が活動している。また、それらの活動範囲も国内だけにとどまらず、国際的な分業・交流が進んでいる。現代では純国産の農作物だけを消費するというのはむしろ困難で、生産された農作物だけでなくそれを作るために必要な肥料や機械なども含めれば、外国との関わりなしには成立しないものであると言える。

アグリビジネスの概念を用いることによって、農民やそれぞれの企業の相互連関、依存関係を明らかにし、また農業、食料にかかわる包括的な産業のシステムを総体として把握することができる。さらには、社会経済全体のなかでの位置づけを明らかにすることができる。特に、産業連関分析などの計量的な分析が可能となる点は大きなメリットである。


《産業の高度化》

この概念が考案された背景には、農業とその関連産業のかかわる分野の社会的な分業が深さにおいても広さにおいても極度に進展したという事情がある。分業というのは、文字通り業務を分担することである。

例えば米を作って売るにしても、一人の農家の仕事で完結することはない。トラクターを作る人、肥料を作る人、苗を作る人など、様々な人が関わっている。水を引くための河川の整備や出荷後の流通・販売なども併せて考えると膨大な人数がその仕事に関わることになる。
何人もの人が仕事を分担しつつ協力することで、「米を作って売る」という行為が成立する。高度に社会的な取引やシステムが必要であり、それは単に「作物を育てる」というスキルだけでは成立しない。ビジネスの観点が必要なのである。

よって、農業を中核として、種子、肥料、農業機械、飼料、農薬、燃料などの生産資材を供給する部門、あるいは農産物を加工する食品工業部門、運送、貯蔵、貿易、卸売り、小売りなどを行う流通部門、さらには飲食店などの外食サービス部門、金融部門などを包括・総称した概念としてのアグリビジネスについて考える必要が高まってきている。

ワンポイントアドバイス

今回はアグリビジネスについて取り上げましたが、農業に限らず様々な業界で、より高度で抽象的な思考が必要になってきています。単に「うまい野菜を作る」という技術的探究だけでなく、どう作って、どう流通させて、誰にどういった形で届くのか、ということを考えられる人が必要です。身近な仕事でも、一段階抽象度の高いところからみてみると意外な気付きがあるかもしれません。


《おわりに》

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