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28. プレゼント・モーメント



先日、バスに乗ったときのこと。

バスのからだの先端側の、

3席ほど1列に連なっている、低い、一人がけ席の

1つに座っていました。


その日は雨。


目的のバス停までの途中で、

ご年配の男性がのってきました。

たくさんの方々が乗ってきた。


雨。


ご年配の男性。


2車輪の、膝丈くらいの手押しカバンのような、

それを、体にしっかり引き寄せながら引いて、

ちょうどわたしの前の席に座られた。

そのカバンからは細い透明の管がでていて、

男性の首元をゆるく、ぐるりと一周。

どの部分かはわからなかったのだけれど、男性のからだに

きっと、たぶん、繋がっていた。


よく日に焼けていて、

頭の形に並行にきちんと切り揃えた

真っ白の、豊かで、ぴんと、ハリのある髪。


お連れ様がいらっしゃって、

きっとご夫婦だったとおもう。

バスに乗り込んでこられた時には気がつかなかった。

段のあがった、後ろの二人がけの席に座られていた同年代ぐらいの女性と

4、5回、

座ってからしばらく、目配せをしていた。





「ああ、今、この瞬間が、一番若いんだったなぁ」




そんなことを思いました。


わたしは20代なかばで、

身体の 老い を、自分のからだでくっきりと感じたことがないんだ

と、気づく。


1秒前、1秒後、

からだの老いは不可避で、

1度吸って、吐く、

そんな風に、自然に、からだはすこしずつ、今も、

死 

に近づいていってる。





「今」


は、神さまからのギフトだ。




「プレゼント・モーメント」



だ。





なるみ.







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