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パソコンラビイさん

みみちゃんが僕を見て、楽しそうに笑っている。
 
そんなみみちゃんを見て、僕もとても楽しい気持ちになる。
 
みみちゃんが見ているのは、ユーチューブプレミアム。
 
みみちゃんは毎月いくらかお金をはらって、ユーチューブが無料で見られるサービスを利用している。
 
みみちゃんがいま見ているのは、有名なメイクアップアーティストの人の動画。
 
その人はメイクアップのスキルが一流なうえにすごくおもしろい人で、おうちのようすやお洋服なんかも動画にして公開している。
 
そしてその人はたくさん動画をアップしていて、みみちゃんはそのほとんどを見ているのを僕は知っている。
 
今日の動画はお洋服の紹介動画で、1週間ぶんのコーディネートを一挙に公開しているものだ。
 
みみちゃんは途中「へーっ」とか「わあー」とか言って、歯磨きしながら見ている。
 
僕は人間よりもすごく頭がよくてすごくたくさんのいろんなことができるから、みみちゃんは僕を使っていろんなことができる。
 
インターネットで検索したりワイヤレスのスピーカーにつないで音楽を聴いたり、お姉さんの年末調整を代わりにやってあげたり、最近ではZoom をダウンロードしてお姉さんとときどきビデオでお話したりもしている。
 
先月の日曜日も、お姉さんにZoomで近況報告をしていた。
 
「このあいだの水曜日にね、ついに2人目が退職しちゃったんだー」
 
え!また!?
 
僕らは信じられない気持ちで話の続きを待った。
 
「それなのに人員補充はないんだって。本当に不思議な会社だよね・・・」
 
みみちゃんは力なくそう言った。
 
お姉さんとてつこさんはそれを聞いて、2人同時に沸騰しそうになっている。
 
お姉さんは画面の向こう側でひとしきりブーブー言ったあとに「令和なのに昭和極まりないそんな会社、一刻も早く卒業しないとねっ」と言っていた。
 
僕らはお姉さんの言葉に、心のなかで大いにうなずいた。
 
てつこさんは手元のゆるいお姉さんのことを「みみちゃんの仕事を増やすんだから!」とたまに怒っていたけれど、このときばかりは「なかなかいいこと言うわね」とすこしばかり褒めてもいた。
 
1人目が辞めたときもたいへんそうで、その頃からみみちゃんは残業が増え始めていたけれど、僕らだってこれ以上は黙っていられない。
 
だからみみちゃんが履歴書を書いたりして、転職のためのかつどうを始めたことを僕はあっぱれだと思っている。
 
みみちゃんは力まずに生きている人だから、きっといまの会社の仕事だって転職かつどうだって、自分の何かを削ってまで必死にがんばったりはしないだろう。
 
それでも、もしも仕事とか人間かんけいなんかに疲れてしまうことがあったら、僕と一緒にユーチューブを見てリフレッシュしたりリラックスしたりすればいいんだ。
 
画面の向こうにいるあの人みたいに、いつか自分の時間をおもいきり楽しめる日がきっと来るよって、僕はみみちゃんに聞こえないように、音に紛らせてそっとそうつぶやいた。

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この小さな物語に目を留めてくださり、 どうもありがとうございます。 少しずつでも、自分のペースで小説を 発表していきたいと思います。 鈴木春夜