ベルジェさん
みみちゃんが「脱硫」と書かれた安全なマッチに火をつけて私に近づいて来る。
きゃーっ、あつい。やけどしちゃう・・・!
なーんて、うそ。
私はおへやの空気をきれいにできる、とっても有能なパフュームアロマオイルのランプ。
モーリスさんて人が100年以上も前に大発明した、かっきてきなアイテムよ。
みみちゃんが大学の卒業旅行でフランスに行ったときにおみやげの品としてみつけてくれたのよ。
せっかくの海外旅行だからってふんぱつして、みみちゃんはお姉さんにもおなじアロマランプを買ってあげていたの。
私はうすむらさきのクリアガラスにちょうちょがついている、だえんけいのアロマランプ。
お姉さんのは白いすりガラスにいい具合のカットが入ったまんまるのランプ。
お姉さんはそのおしゃれなおみやげに感動して、みみちゃんになんどもお礼を言っていたわ。
それからみみちゃんが社会人になって何年もたったけど、みみちゃんもお姉さんも私たちをだいじに使い続けてくれている。
日本は春になると大陸から黄色い砂が風に乗ってやって来たり、空を汚してしまう物質が飛んで来たりするらしいから、そういうときに私が大活躍するのよ。
窓が開けられないような日だって私を使えば空気をきれいにできるから、本当に重宝すると思うわ。
みみちゃんたちが大きらいなタバコの匂いだって、すぐにクリアにしてしまえるのよ。
私たち姉妹にはいろんな色と形の子がたくさんいて、私が言うのもなんだけれどみんなとってもエレガントでキュートなの。
それに肝心のオイルもいーっぱい種類があって、気分によってえらべて、すてきなのよ。
みみちゃんたちは2人ともラベンダーとかシトロネラとかのオーソドックスな香りが好きみたい。
みみちゃんはユーカリも好きで、きっとスーッとする香りが好きなのね。
みみちゃんは鼻や喉があんまり強くないから、おへやの空気をきれいにできる私はみみちゃんにとって重要なアイテム。
大きな声じゃ言えないけど、見た目もいいしけっこう気に入られているはずよ。
みみちゃんがセラミック芯に火をつけて、香りがひろがるのを待っている。
最近みみちゃんのおうちの近くで工事をやっていて、今朝は窓が開けられなかったから私の出番。
なんてったって私はみみちゃんのおへやの空気を守る、最高にかわいくてハイブリッドな舶来ものの番人なんだもの。
みみちゃんはあいかわらず鼻をぷうぷうさせているけれど、ちゃんと朝ごはんを食べて会社に行く用意をしている。
おうちを空けるときは消さなきゃいけないから、あと20分くらいしか活躍の時間がないけれど、まあいいわ。
また必要なときはいつでも言ってねって、洗いものをするみみちゃんに心の声で伝えてあげた。
この小さな物語に目を留めてくださり、 どうもありがとうございます。 少しずつでも、自分のペースで小説を 発表していきたいと思います。 鈴木春夜