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校閲クロスワード~「語ちゅう意」から~

入社7年目の中川です。


今回は前回のnoteでお知らせしたように、中日新聞の社内報である「語ちゅう意」と連携したものです。語ちゅう意とは、何だっけという方は下のリンクでおさらい。

中日新聞校閲部では、普段の校閲業務で共同通信社の「記者ハンドブック」を使っています。その記者ハンドブックに載っている事柄や、意味を誤って覚えていることが多い言葉を中心にキーワードとして配置した、クロスワードパズルを自作してみました。クロスワード制作は初心者ですので、見苦しい箇所はありますがお許しください。

記者ハンドブックが手元になくても解けますが、これを機会に書店などに並んでいるハンドブックを手に取ってみてはどうでしょうか。

問題編

こちらから問題用紙をダウンロードできます。
印刷して、ぜひ挑戦してみてください。

これより下は解答・解説編となります。
クロスワードを解き終わってから読んでください。







解答編 


A~Gを並べてできる言葉は
チユウニチシンブン(中日新聞)
でした。

解説編

クロスワードのキーワードとなった言葉の中から、使い方や似た言葉について解説を書きました。
簡単な解説なので、もっと知りたいと思ったら国語辞典やインターネットで調べてみてください。

タテのカギ

1 御来迎 と 御来光
漢字で書くと似ていますが、御来迎は「ごらいごう」、御来光は「ごらいこう」と読みます。御来迎はブロッケン現象(高い山などで太陽を背にして立った時、自分の影が雲や霧に映り、その影の周りに光の輪が見える現象)、御来光は高い山で迎える朝日と、それぞれ別のことを指す言葉なので混同に注意。

2 打つ と 指す
碁は「打つ」、将棋は「指す」。将棋でも、持ち駒を使うときは「打つ」といいます。では、チェスやリバーシはどうなるでしょうか。

3 奇特
「奇特な人」と言われると、漢字の「奇」から、奇妙や奇抜などの言葉が思い浮かぶことに引っ張られて「風変わりな人」と言われているように感じますが、「他と違って優れている」という意味なので素直に喜びましょう。

4 登録商標
新聞記事中に出てくる言葉の中には、登録商標といって使用に注意するものがあります。例えば「味の素」は便利な調味料ですが商標登録されているので、記事中に出てくる類似品を「味の素」と呼ぶことは「味の素」の商標権を侵害することになります。この場合、類似品は一般名称である「うま味調味料」と書き換えています。ハンドブックの578ページからは代表的な登録商標が載っています。「オセロゲーム」や「糸ようじ」など、てっきり一般名称だと思っていた言葉も載っていて驚くこと間違いなしです。
また、登録商標かどうかは「特許情報プラットフォーム」で検索できます。

6 ぶぜん
漢字で書くと「憮然」です。ハンドブックでは平仮名で書くように指示されています。「憮」の漢字は見ての通り、「心(りっしんべん)」が「無い」ということなので、失望してぼんやりしていることを言います。感情がない状態のことなので、よく間違われますが腹は立てていません。

10 コンゴ と コンゴ共和国
正式には、コンゴは「コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)」、コンゴ共和国は「コンゴ共和国(Republic of Congo)」です。こうして並べてみると、どちらも「共和国」とつくのでますます混乱しそうです。コンゴは1997(平成9)年にザイールから国名変更しています。
ちなみに、日本国内ではボノボを公開している動物園はないようです。

11 期待外れ
「期待外れ」を期待倒れと誤って覚えている人もいるようです。期待通りにならず、倒れてしまいそうになる気持ちも分かりますが、「期待が倒れる」では変なので、期待は外れるものと覚えましょう。

13 確信犯
「あの場面であの発言は失言だったと、本人は言うけど、絶対確信犯だよな」と日常会話の中でもよく使われる言葉ですが、本来の意味は「宗教・政治・思想的確信のもと正しいと信じて行う犯罪や人」のことです。冒頭に挙げた例の「悪いことと分かった上での行為」とは覚悟の大きさが違います。

16 御の字
「一応、納得できること」という意味ではなく、「それ以上になく、満足できること」です。平たく言えば、及第点ではなく、合格点といった感覚です。

17 干支 と 十干十二支
干支えとは字から分かるように、十干十二支を縮めた言葉です。十干は「甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸」の10。十二支は「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」の12。つまり、干支とは本来ならば両方の組み合わせ(最小公倍数)で60通りあります。現在では、十二支を指して干支と呼ぶことがあり、ハンドブックでも許容されています。

19 病名の表記
マダニに刺されると「重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)」を引き起こすことがあります。ハンドブックでは病名などの表記例が597ページから載っています。このページを見たとき、ハンドブックの守備範囲の広さに感心しました。

23 正字「」 と 異体字「
字体(字の骨組み)は校閲をしていて悩まされる問題です。漢字には、同じ読みと同じ意味であるのに字体が違うものがあります。「桑」と「桒」もその関係です。新聞記事では基本的には正字(標準的な文字)を使い、異体字(正字とは字体が異なる文字)は正字に書き換えることになっています。名字の「くわた」を例にすると「桒田」は記事中では「桑田」に書き換えます。強い希望があった場合は異体字で紙面に載ることはありますが、乱用はできません。
また、正字と異体字の関係であっても、字体を統一していない漢字も多くはないですがいくつかあります。新聞で探してみてください。


ヨコのカギ

1 号泣
「号」という漢字には、号令や怒号という言葉に使われているように「さけぶ」という意味があります。そう覚えておけば、大声を上げて泣いているシーンが想像できると思います。

5 正字「」 と 異体字「
「タテのカギの23」で書いたように、これも正字と異体字の関係です。記事中に名字で「薮田」と出てきたら、本人の強い希望がない場合、「藪田」に書き換えます。
また、「藪」は表外字(常用漢字表に載っていない漢字)でもあるので、草木の生い茂ったところの意味で使う場合や「藪から棒」「藪医者」などは、新聞記事では平仮名で「やぶ」と書きます。

7 ラット と マウス と モルモット
どれもネズミですが、ラットは大きなネズミのドブネズミ、マウスは小さなネズミのハツカネズミで、モルモットはテンジクネズミです。いずれも動物実験に使われます。ちなみに、モルモットは和製外来語なので海外では通じません。

8  と 
「町」は主に人家が集まっているところ、「街」は主に店などが並んでいるところです。人家と店を厳密に区別するのは難しいので、よほどの違和感がない限り取材記者が書いてきたままにします。

11 菌(細菌) と ウイルス
どちらも肉眼では見えないくらい小さいですが、細菌は細胞を持つので比較的大きく、一方のウイルスは細胞に入り込むことができるのでより小さいです。

12 ごて得
「ごね得」という言葉のほうがよく耳にしますが、本来は「ごて得」と言いました。「ぐずぐずと不平を言う」という意味の「ごてる」から「ごて得」はきています。「ごねる」という言葉もありますが、本来の意味は「死ぬ」という意味で、「ごてる」と混用され、「ごねる」にも「不平を言う」という意味が加わったようです。

14 上を下への大騒ぎ
「上や下への~」や「上へ下への~」は誤用です。意味は、入り乱れて混乱した様子を指します。「上を下へ」なら「上にあるはずのものを下に、下にあるはずのものを上に」という混乱した情景が思い浮かんできます。

15 うろ覚え
うる覚えと間違えて覚えていた人はいないでしょうか。

21 鳥肌が立つ
音楽のライブやスポーツの試合での観客のコメントなどでよく見かける「鳥肌が立つ」ですが、感動や興奮したときに使うことは、ハンドブックでは慎重にとの注意書きがあります。本来の意味は、恐怖や寒さのために肌がざらつくことです。国語辞典の中には、本来の意味とは違う用法を許容するものも出てきています。

23 クスノキ
ハンドブックでは「クスの木」と書かないように指示されています。「楠」は1文字で「くすのき」と訓読します。「~ノキ」がつく樹木は他に「エノキ」「ヒノキ」「スズカケノキ」などがあります。

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