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難聴理解は、事務連絡ではわからない!

こんにちは!
岩尾です。

昨日は、小学校4年生向けのアニメで知ろう!難聴講座をやってきました。
ここは、難聴の子が通う地域の学校です。

難聴の子が通う地域の学校で講座をやって、感想を書いてもらうと必ず書かれることが

「補聴器をつければ聞こえると思っていたけど、聞こえないとわかってびっくりした」
「無視されたと思ってたけど、聞こえてなかったんだと思った」
「保育園の頃から一緒だから難聴のことを知ってると思ってたけど、知らないことが多かった(or勘違いしていた)」

この類のことです。

そして、全てのクラスで、難聴のことは説明しているんです。

誰が?

学校の先生です。
もちろん、親御さんから聞いて、それを子どもさんに伝えます。
もしくは、親御さんが直接話をする場合もあると思います。

だけど、多くの子が、わかってないんです
小学生だけじゃなく、中学生もそうでした。
(高校生はまだしたことがありません)

あ、ちょっと待ってください。
これは、学校の先生が悪いんじゃありません。
ましてや、親御さんの説明が悪いんでもありません。

ここからは僕の仮説です。

「難聴のことを事務連絡するから聞き流されるんです」

1,2分程度でしょうか。
おそらく、そのぐらいの時間でしょう。
口頭での説明だけでしょう。
もしかしたら、親御さんが資料を作っているかもしれません。
それを渡して読んでるかもしれません。
それでも、事務連絡では、わからないんです

「〇〇くんは、耳が聞こえません。だから、ゆっくりハッキリ口を見せて話してください」
「〇〇くんは、耳が聞こえません。だから、言葉がわからない時は、字で書いてあげてください」

もしかしたら、
「補聴器をつけても聞こえる人と同じようには聞こえません。だから、ゆっくりハッキリ口を見せて話してください」

ここまで言ってるかもしれません。

でも、この言葉を解釈すると、
「ちょっと聞こえにくいんだろうな」程度に受け取られる可能性は十分ありますよね。

聴こえないレベルが理解されてないんです。

おそらく、事務連絡の範囲では、どの程度聞こえないのか理解することはできないでしょう。
しかも、先生が話す場合は、又聞きしたことをしゃべるだけなんです。

となると、しゃべる人に実感が伴いません
ほとんどの場合、説明する先生は身近に難聴の人がいたわけではないでしょう。
ただ、字を読んでるだけの状態になります。

説明にも技術は必要です。
でも、いくら技術があっても、事務連絡の中で難聴のことを相手の肚に落とすのは至難の業です。
できる人いないんじゃないでしょうか。
もちろん、僕も事務連絡の中では無理です。

だから、クラスの友達への説明を学校の先生に頼んでも、ほとんどの生徒さんが正しく理解できてないんです。

聞こえないって、どの程度なのか?

おそらく、自分で耳をふさいだ程度。
「ああ、聞こえにくいね」ぐらい。
でも、これは、聞こえている状態なんです。

これをイメージしているから、聞こえのフォローが必要だとは思えないでしょうし、そもそもそこまで思考が辿り着きません。
おそらく、「目が悪くてメガネをかけている人」という認識でしょう。
つまり、「聞こえている」という認識になってしまっているのではないでしょうか。

補聴器をつけても聞こえにくいですと言ったとしても、事務連絡ではその場で流れていくはずです。
頭にも、心にも残りにくいはずです。


もう一つ気になっていることがあります。

聞こえの通級教室に通っていると、そこから難聴理解の講座をしてくれることもあります。
どんな内容かは様々でしょうが、「補聴器体験」をすることがあります。
もちろん、通級教室じゃなくても補聴器体験をすることはよく聞きます。

僕は、これは学校の子どもたちに・・・というか、難聴を最初に理解してもらう時にやっても何の効果もないと思っています。
いや、逆にこのせいで誤解するはめになっているんじゃないかと思っているぐらいです。

補聴器体験は、聞こえる子が補聴器をつけてどんな聞こえ方をするのか体験することです。
狙いは、普段気にならない音も全部大きくして、音が重なってうるさい、聞こえにくいということをわかってもらうことです。

この体験は、「一人ずつ話してくれるとわかりやすいんです」ということをわかってもらうためには有効だと思います。

ただ、これをやってしまうと、「補聴器ってうるさいんだね」という理解になるんじゃないでしょうか。

つまり、「聞こえているけどいうるさい」という認識になりかねないと思うんです。
だって、言葉は聞こえてるんです
聞こえる子が補聴器をつけてるんだから

そこじゃないと思うんです。
最初にするべきはそこじゃないんです。

まず最初にわかってもらうべきは、
補聴器や人工内耳をつけても、ほとんど聞こえてないんだという事実
です。
これがまず最初に必要なんです。

ここが理解されてないから、どんどんすれ違っていくんです。
聞こえてないのに、聞こえてると思うから、問題のある子だと先生からも友達からも捉えられてしまう
もっときついときは、親からもそう思われてしまう。

「聞こえてないんだ」
「聞き取ろうとするのは、本当に労力を使うんだ」
ということをまずわかってもらうことが絶対に必要だと思っています。

もちろん、難聴の子を持つ親に、補聴器ってこんなふうに聞こえるんですということに使うのは有効です。

学校の子どもたちにも、難聴って、全然聞こえないんだということをわかってもらった後に、一斉に喋られるとわからないんだよということを体験するために使うのは有効です。

難聴の理解も、進め方を間違っては逆効果なんです。


僕は、難聴の人の聞こえ方体験をします。
どれだけ聞こえにくいかを体験してもらうんです。
もちろん、僕も本当はどんな聞こえ方なのかはわかりません。
だから、似た聞こえ方ですが、本当に聞こえないんだということを体験してもらいます

昨日の講座でも、もちろんやりました。
昨日は親御さんも聞いてくれました。
昨日やった学校の難聴児はろう者で、デフファミリーです。
その親御さんが、

「あの聞こえ方の体験は良かった。
子どもの気持ちが一番わかったんじゃないかと思う。
毎日わかりにくい言葉を頑張って読み取ろうとしてるんだってことを少しでも知ってもらえて良かった」

と、言われていました。

まずはここの理解が最初だと思うんです。

ここがわかれば、
「無視してると思ってたけど、聞こえてなかったんだ」
など、実際の体験とリンクした理解につながるんです。

ある学校でこの講座をやった時に、
「そういえば、無視をしたという感じでよくトラブルが起きていた。あれは聞こえてなかったんだと思いました」
という感想もありました。

難聴児が通う多くの学校でよくあることなんです。
これは、言わないだけで発覚してないこともあるはずです。

聞こえてないのに、無視をする奴だと捉えられることは、実に悲しいことですよね。
「いや、無視してないよ。聞こえなかった」
と言っても、
「いや、誰誰が呼んだときは振り向いてた!」
などと言われるんです。

それは、周りの状況次第で聞こえるときもあれば聞こえない時もあるんですが、このことも時間をとって体験して肚に落とさないとわかってもらえないんです。

だから、事務連絡ではわかってもらえないんです。
最低、1コマは必要です。

そして、肚に落ちれば、子どもたちはすぐに変わると思います。
昨日の講座の感想はすごく良かったです。

子どもたちは、

・そんなに聞こえてなかったんだ
・そんなに聞こえない中いつも元気に学校で過ごしてるのはすごいな!
・無視されたと思ってたけど、あれは聞こえてなかったんだ

と、気づいてくれました。

「注意しても聞こえなくて怒られたり、とても嫌な思いしてると考えると、何だか前の自分がとても最悪に思えてきました」

と書いてくれた子もいました。

直接本人と何かあった子かもしれませんし、自分は関係してないけど、怒られているのを見て、本人を悪いと決めつけてしまったことがあって、それを最悪だと思ったのかもしれません。

いずれにしても、肚に落ちたからこそ生まれた気づきですよね。

こじれたらすればいいわけではありません。
絶対的に、こじれることを防ぐためにやった方がいいです。

一時でも、こんな悔しい悲しい思いを我が子にさせないために、まずは1コマとって、難聴について友達にわかってもらうことは大切です。

参考までに、昨日の講座の感想はこちらです↓

↑このリンクの【4年生】のところです。


うちの娘のクラスにも5月の終わりにやっていまして、その後どうなったか、交流クラスの担任に確認していましたが、これはあり得ないほどの対応の悪さで担任から確認するのは諦めました。
でも、娘に聞くと、こんなことがわかりました。
2月に聞いた最新の話はこうです。

「友達とお話しするとき、何か困ることとかある?」
「ないよ」
「ないの?でもみんなマスクで絶対話わからんやろ?」
「あのね、みんなマスクとって話してくれる」
「そうなん?へー!嬉しいやん!みんな?」
「〇〇くん以外。あ、とらない人は、字を書いてくれるか、手話してくれる」
「〇〇くんはとってくれんのや(笑) でもみんな嬉しいなあ!」

講座の中で、
「マスクをしたら、本当に言葉がわからない。
できる人は、マスクをずらして話してくれたりすると嬉しいです」
ということは、体験とともに伝えました。

これに関しては、交流クラスの担任も、娘の言ってることがわからないと言ってきた子に、「マスクずらして話してみたら」と言ってくれていたようで、そこは感謝しています。

子どもたちは、正しい知識が入れば、自然に対応できるんです。
もちろん全員ではありませんが(笑)

そういえば、参観日の時、子どもたちの発表で、子ども用のマイクが先生の目の前の机に置かれているのに使ってなく、「先生、マイク使ってください」と言ってマイクを子どもに渡してもらったら、その後は子どもたちが実にスムーズに次から次へとマイクを手渡していました。

これも、一番最初は戸惑ってなかなかできませんでした。

当たり前です。
新しいことはすぐにはなかなかできません。
難聴学級の先生のフォローと共に、あそこまでできるようになったんだと本当に感慨深かったです。

このような成果をみれば、アニメで知ろう!難聴講座が、大きな役割を果たせているなと実感しますし、ぜひ、多くの学校で広げていきたいなと強く思っています。

それには、やはり親御さんが動かないと実現できません。

学校へのアプローチもしていますが、一番早く実現できるのは、親御さんから学校へ要望することです。

これだけ難聴児にとって大きな成果を出せている講座なので、ぜひ、呼んでいただければと思っています。
子ども向け講座は交通費実費のみでやります。
まずは、お問い合わせください(^^ゞ


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