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広報は見た!「なんちょうなんなん」誕生物語 No.1

2020年10月16日。
当時3歳の次男が、人工内耳手術のため入院する4日前のことです。

「河原さん、広報で難聴のことを知ってもらうとかできる?」

 画面越しに岩尾が聞いてきます。そもそも入院準備&気も落ち着かないから、オンラインミーティングしてる場合ではないと思いつつ、まあ気分転換になるかと受けたらこの壮大な質問が飛んできました。

 「前々職ではPR代理店を使っていましたが、莫大な費用が掛かります。『広告はお金を、広報は知恵を使う』って言われますけど、代理店通したらとんでもない額になりますよ。
ピンキリですが、2,000万円くらいはかかるでしょうね」

 画面越しに固まる岩尾。いや、こっちが固まりたい。お金かけられないから、プレスリリースを市政記者クラブ投函という最小限の広報活動を地道に続けているというのに……。なぜそもそもこんな質問を?と聞いたところ、いきさつを話し始めました(情熱おじさん編ご参照ください)。

 長い話の中には、共感できる部分がたくさんありました。圧倒的に難聴に関する理解は不足しています。しかし、これだけ多くの情報が溢れる世界、かつこれまで興味を持つことのなかったであろう世界を覗いてもらうってハードル高いよな、しかもお金をかけないって……。その時、あることが頭をよぎりました。

 当時たまたま、とある外国の犯罪に対するスピーチを動画で見たところでした。スピーチが始まって数分間、登壇者は何も話しません。聴衆も静まり返っています。そして登壇者が切り出した言葉が次のものです。

 「ちょうど〇分が経過しました。たったこれだけの時間で、犯人は、多くの人を傷つけたのです」といったものでした。

 ああ、これが伝えるってことかと。そこまで自分事として捉えてなかった人たちに振り向いてもらうことかと。

そして岩尾に動画を作ることから始めませんか? と提案してみました。たまたま本業(女性の再就労支援のNPO・企業の広報)を通じて経験値もあったことから、そこでご支援を募れば形にできるかも思ったのです。

 「おお、いいね! やろう!」

映像作成やクラウドファンディングの大変さを知らない岩尾は即答しました笑。良さそうと思ったことは躊躇せず突っ込んでいくのは、自分にはない岩尾の良いところです。しかしマジで簡単に言うよね、どんだけ~と思いながら、「調べておきます」と言って、長くなりそうな打ち合わせを切り上げました。

 4日後、次男の人工内耳手術&入院(3泊4日)に突入。コロナ禍ということもあり、ほぼベットの上で次男と過ごしました。次男が寝てる間は、突如立ち上がったクラウドファンディングのことを考えるつもりで受けましたが、1秒も考えられませんでした。

 退院して諸々落ち着いた翌日、ちょうど土曜日でしたが、岩尾に連絡したところ、いつも通りのLINEの嵐。「(笑)(笑)(^^ゞ(^^ゞ!!!」が並ぶ文面に、日常が戻ってきたことを感じました。

 さて。「調べておきます」と言った手前、調べておくことがありました。クラウドファンディングには、目標金額の内訳(〇〇費としていくらかかる)を明記する必要があります。映像を作るためには、①作ってくれる人(映像制作会社)、②その映像に間違いはないか(監修)の2つは必ず押さえておかなくてはなりません。

 それ以前に、クラウドファンディングを成立(ご支援が目標金額に達すること)させることがマストになってきます。

 こんな小さな家族会の、費用感もわからない(ってかそもそも成立するかすら不安)プロジェクトに力を貸してくれる方なんているのだろうか? かつて仕事でお世話になった方数名にヒアリングしてみました。さまざまな立場の方からさまざまな考えを聞かせてもらい、一つの結論が出ました。

 「どうせ作るなら、長く愛されるいいものを作ろう」

 話題になるような仕掛けづくり=広報活動を展開すれば、成立への近道にもなる。そのためにはどうすれば良い? 何を考えれば良い?

考える時、いつも思い出すことがあります。『だんご3兄弟』『ピタゴラスイッチ』の生みの親である佐藤雅彦さんの有名な言葉、
「考えることを考える」

 まず何考えたらいいか考えろ自分!と頭をグルグルしていたら、とあるキーワードが頭に浮かびました。

 福岡

 そらいろは「福岡を拠点に活動する難聴の家族会」です。ここ福岡から、難聴理解促進に関する波を起こせば良いのでは? そのためには、福岡で最強のパートナーに協力してもらう必要があります。監修の方から探した方が制作会社へアプローチしやすいであろうという考えのもと、かねてより親交のあった福岡国際医療福祉大学 言語聴覚専攻 平島ユイ子教授に無理を承知で打診してみました。

願ってもない話で、ありがとうございます。
動画作れたらいいなあと思っていました。
以前の分が時代に合わなくなってきているのです。
大変ありがたいです。

ちょちょ、マジー! 一発OK! しかも超前向き!

 この上ない武器を身に着けた私は、福岡のみならず世界でも超有名な映像制作会社「空気株式会社」に打診してみることにしました。江口カン氏率いる超クリエイティブ集団に超無名家族会の話を聞いてくれるかどうかなんて全くわかりませんでしたが、もうあなたのことしか見えないんです……というほど周りが見えなくなっていた私は、連絡してみたのです。そこから数日後のこと。

 「僕、やりますよ」

 当家族会に深い理解を寄せてくださり、手を挙げてくださったのは、ディレクターの白川東一(しらかわ もとひろ)さんでした。

 え? 白川さん空気の副社長なんだけど? え?この映像もこのCMも白川さんが作ってる……。お金ないですよ? 集まるかどうかも不明ですけど、いいんですか?

 いいんです! そうだよね、いいんだよね、うんって言ってくれたからね。よし、岩尾に早速連絡だー!!! 絶叫したい気持ちを抑えLINEします。

 「制作会社目処つきました。空気さんが受けてくださるそうです!!!」

「ありがとう。くうき? (それこそ俺知らないな~みたいな空気感)」

 え? 知らんの? 私が仕事柄知ってただけか……。でも一緒に喜んで欲しかったよここはと思いながら二度絶叫したい気持ちを抑え、LINEを早打ちします。

「福岡を拠点に活動する、世界的にも有名な映像制作会社です。サイト見てください」

「おお、すごいね! よく受けてくれたね! ありがたい!」

 空気さんが受注してくれた喜びの裏には、実はかなりのプレッシャーがありました。映像制作を進める際、空気さんとの窓口は私が担当することになります。果たして、世界トップクラスの空気さんが納得する進行ができるだろうか? 

 そんなことを悩む前に、クラウドファンディングを成立させなくては。映像制作もクラウドファンディングも殆ど知らない岩尾のチャレンジスピリット(たまに熱すぎて若干迷惑と感じることもありますがそれも良さ)に押される形でいろんなことが動き始めました。

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【STAFF】
ディレクション&アニメーション:白川東一(KOO-KI
うた:永山マキiima
楽曲:中村優一(株式会社インビジ
デザイン&アニメーション:斎藤悠実、永田健人(有限会社アイメージ
監修:福岡国際医療福祉大学 言語聴覚専攻 平島ユイ子教授
制作コーディネーター:古城戸利香(KOO-KI

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