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【00012】えむしたのこと「きっとあきらめていないから」

 起き上がるのが面倒くさい。雨が降っている気がする。頭の奥の奥の方がじんわりと痛んで、寝返りを打つとからだの節々がきしんだ。横になっていたソファーベッドはやわらかすぎるうえに、ところどころスプリングが壊れていて、思わぬ拍子に腰が深く沈み込んだ。
「だっるい」

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1,401字
ルームシェアをしながら、歌い手活動をしている「明日」と「えむち」。明日の部屋の一輪挿しが枯れ、花瓶の水が澱みはじめた頃、えむちはようやく今回の失踪が普段の気まぐれとはどこか違うのではないかと察する。不安は的中しており、明日の体には常盤色化と呼ばれる異変が生じはじめていた。植物の蔦を模したようなしみが皮膚に広がり、やがて全身を覆ってしまう奇病。一方、えむちはある事件をきっかけに人前で歌うことができなくなっていた。移り変わってゆく、彼女たちの季節を追う物語。

・文学フリマ東京37 (星屑と人魚2023秋冬号/https://bunfree.net/event/tokyo37/)  └ 「つむじ…

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