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【0015】えむしたのこと「ねえ、ずっとここにいなよ」

 帰宅すると、明日はほんとうに帰ってきていた。終電帰りのわたしを起きて待っているはずもなく、案の定すやすやと寝息を立てている様子をそっと開けた扉の隙間から見つけると、もうそれだけで膝から崩れ落ちた。
 馬鹿みたいだ。明日が帰ってきただけじゃないか。毎朝LINEも送っていたし、途中から返信は来なくなっていたけれど既読はついていた。

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1,528字
ルームシェアをしながら、歌い手活動をしている「明日」と「えむち」。明日の部屋の一輪挿しが枯れ、花瓶の水が澱みはじめた頃、えむちはようやく今回の失踪が普段の気まぐれとはどこか違うのではないかと察する。不安は的中しており、明日の体には常盤色化と呼ばれる異変が生じはじめていた。植物の蔦を模したようなしみが皮膚に広がり、やがて全身を覆ってしまう奇病。一方、えむちはある事件をきっかけに人前で歌うことができなくなっていた。移り変わってゆく、彼女たちの季節を追う物語。

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