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2021年1月15日 少し春

 ダウンジャケットを刺し通す、錐のような冷たい空気が拭われた。日中は上着を脱げるほど。三寒四温というにはまだ少し早いが、一番寒い時期は終わったのかも知れない。

谷風にとくる氷のひまごとにうち出づる波や春のはつ花
                     (『古今和歌集』12 源当純)
 春風にとけた氷の割れ目から飛沫あげる波春の初花 

 谷風は谷を吹く風で、何だか骨身に沁みそうな印象もある。けれど漢詩由来で、春の東風のことを言う。梅の花が主を思い起こすきっかけとなるはずの風。

 「ひまごとに」とある。一箇所や二箇所ではあるまい。だから結句で見立てられているのは、一面の白い花畑だ。

 「うち出づる波や」が良い。8音ある。規定から飛び出している。いかにも「うち出づる」だ。言葉につられて元気良く音も飛び出た。

 花咲く前に、見渡す限りの満開の白花。浮かれてらあ。春だねえ。

 

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