#6 大進生昌が家に(前編)
どうも、綴人です。
この章段は、前中後編の3つに分けて紹介していきます。
前半は、清少納言の上司である中宮定子が、訳あってよく知った生昌のところで暮らすことになり、その家に向かう場面。
彼女たちは、車(牛車)に乗って移動します。中宮はもちろん、官女ともなればその車も当然豪華なもの。
普段は車を建物の専用口につけて、直接乗り降りします。
そのためにはまず、家の門を通過しなければならないわけです。
ところがこの生昌の家、門が想定よりも小さく、車がつっかえてしまって入れなかったのです。
すぐに家の中に入れると踏んでいた清少納言たちは、ろくに化粧もしていませんでした。
しかし、門を車がくぐれなかったために、道を敷いて歩くことになりました。
それを他の貴人たちに見られて、恥ずかしい思いをした、というのが前半のオチ。
ところが、このことを上司である中宮定子に報告すると、
「よく知った者のところだからといって、どうしてそれほど油断していたの?」
と、笑われてしまうのです。
これに対し清少納言は、
「私たちのことをよく知っているここの連中は、私たちがしっかりと化粧をしていたら、逆に驚いて身構えてしまうでしょう」
といって、
「それにしても、これほどの人なのに、門が低すぎではないでしょうか?」
と門に対して文句を言うのです。
このやり取りから察するに、定子は流石、皇族というだけあって、常にしっかりとした仕度をしていた様子。
親しき中にも礼儀あり、でしょ?と言っているようにも聞こえます。
清少納言もそれはもちろん分かっていて、半分冗談交じりに言い訳をしているのです。
文脈からは、清少納言がしっかりと仕度をしていたかどうかは分かりません。しかし、これを笑って報告しているところを見ると、彼女はちゃっかり準備をしていたのではないかと思います。
定子が言う「親しき中にも礼儀あり」と清少納言の言の見極めは難しい所。自然体の方が好まれる場合もありますよね。
それを判断する基準は、やはり、相手との親しさなんだろうと思います。
裏返しが、定子と彼女に仕える女房たちの関係性に表れているようです。
さて、前半はこの辺りで。
良い一日を。
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