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詩 夜を抱いて

夜、夜、夜

何かを生み出したくて
創り出したくて

深い闇色のカーテンみたいな空とか
そこに散りばめられたビーズみたいな星とか

冬を攫ってきた風とか
全てを飲み込む純白の雪とか

急き立てるように、ずんずんと進んで
それでいてなかなか進まずに永遠にも思える
そんな時を等しく刻む時計とか

昨日と今日と明日の境目とか
焦燥と欲望と期待の差異とか

誰かを想って痛めた心とか
自分が知らないところで傷付いた傷跡とか


なにかになりそうなものたち
形を成して
思いを乗せて
どこかのだれかに響いてほしいと

なのに、それらは
言葉にならずに
崩れ落ちていく
意味が曖昧になって
感覚は薄れ去って
消えてほしくないと重ねれば重ねるほど
元の元が分からなくなる

それでも

夜、夜、夜

何かを形にしたくて
その気持ちだけは確かで

そんなこの夜を抱きしめる
形も色も大きさも
なにもはっきりしないけど

この夜を抱いて
そっと瞼を
閉じましょう

夜、夜、夜




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