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父さん、ボーリングうまかったんですね。
私の父は、アルツハイマー型認知症です。
介護サービスを受けています。
半年前から、週2回、自宅からほど近いデイサービスに通っています。
すっかり慣れてきて、そつなく通っていると聞き、内緒で様子を見に行くことにしました。
お昼ごはんの後、体操やレクリエーションをするので、見学するにはその時間が良いのでは?とのことだったので、午後からおじゃますることに。
到着した時は、ちょうど体操の時間で、遠目から見ていると、ビデオが流れているテレビを見ながら、素直に体を動かしている父がいました。
体操を終えた父に、スタッフの方が私が来ていることを伝えると、ちょっと驚いた様子でこちらを見たあと、少し照れくさそうに手を振ってくれました。
うん。
まだ家族の認識は大丈夫だな。
めったに帰らない親不孝の娘の顔がわかったことで、ホッとしました。
さかのぼること数年前、仕事や家庭での忙しさ、そして、このコロナ禍もあり、しばらく実家の様子は母との電話のやりとりだけで把握していました。
母の「大丈夫、元気だよ」の言葉を鵜呑みにし、父の変化に気付けませんでした。
私はそれをずっと後悔していました。
スタッフの方が配慮してくださり、父の順番を早めてくれました。
ボーリングとバスケットボールを組み合わせたゲーム。
2本のピンが離れて置いてあり、倒したあと、その先のダンボールにカエルの絵が描かれており、そのカエルの口にボールを入れるというルール。
これまで、誰ひとりとして成功せず、
「これ、成功できる人いるの〜?」と、周りからのヤジもチラホラ。
そんな中、我が父の登場です。
父は、ボールを手に取り、狙いをさだめ、、、
カッコーーン!
カッコーーン!
そして、シュート!
コロコロ
ポーーーン!
一瞬静まりかえったフロア。
「わーーーー!!」
たちまち拍手と大歓声につつまれました。
思わず、私も声をあげながら、拍手喝采!
父は、満面の笑みで、バンザイ!
確かに父は、昔から運動神経が良かった。
野球、スキー、テニス、パークゴルフ。
とことんのめり込み、なんでも上手にこなす人だった。
久しぶりに、以前の父の姿を見ているようで、胸が熱くなりました。
帰り際、「やったね!すごかったじゃん!」と、父とハイタッチ。
ドヤ顔でニヤニヤが止まりません(笑)
早く気付いてあげられなかった罪悪感がいつもどこかにあり、
なんとなく苦しかった私。
父のあの笑顔で、少し気持ちが軽くなっていく気がしました。
「これからも父をお願いします。」
そう伝え、施設をあとにしました。
「父さん、あんなにボーリングうまかったんだな。」
父の新たな才能を発見できた『父親参観日』となりました。
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