6 そしてチームも「霧」に包まれる
本noteは連載形式です。全部で約100回の予定となります。本連載「想定外を克服する『究極の状況判断力』」のリンクは最下部に記載してあります。
6. そしてチームも霧に包まれる
再び上司のBさんとの会議をセットし、あなたは意を決して話を切り出した。「Bさん、色々と検討を重ねてみたのですが、やはり、不明な点が多過ぎて困っています。会社がどの程度のことをやりたいと考えているのか、僕たちは何をどこまでやるべきなのか。相談すべき相手も多過ぎて、オプションも無数にあるように感じてきます。できない、というつもりは全くありませんが、A案件に関し、もう少し具体的にお聞かせ頂きたいと思っています。すみません。」
あなたは、会社への忠誠心を失ったわけでも無く、上司のBさんとの関係を壊すつもりもない。でも、本当に分からなくなってしまっていた。だから、出来る限りBさんの心象を悪くしないように努めた。そして、何よりも自分もいつまでも足踏みしていたく無かった。
上司のBさんは、あなたのそんな態度を十分に感じ取った。「(あの優秀でポジティブな彼がそんなに嘆願してくるということは、やはり、この案件は相当難しいことになるかも知れんな。困った、競合のC社との関係では常にビハインドだ。ここで巻き返す戦略を作り出したかった。しかも、市場としてもチャンスはあったのに。)」上司のBさんは、Aさんの申し出を聞いて、しばらく黙り込んでしまった。
あなたは、黙り込むBさんを見て、少し安心した。自分の不安が伝わった気がしたからだ。同時に、少し焦りを感じた。あのBさんでさえ、このA案件を進めて開発していくことに対して、大きな困難を感じている。既になにか解答案があるわけではなく、本当に新しい状況にチャレンジしようと試みているということが今になって腑に落ちた気がした。
上司のBさんは、あなたが思っている以上に、あなたからの申し出に痛手を受けていた。イメージを伝えたと思っていて、それを考えてみて欲しかったのだが前に進めることができない。いったいどうすれば良いのか。A案件だけでなく、様々な分野の課題が未だ未解決だ。この案件は逆転ヒットを狙えるものであっただけに、計算が狂った。Bさんは、思った。仕方がない、A案件はもう少し気長に構えておくか。やはり、これまでの延長線上で勝負をしかけるしかないか、と。
後日、Bさん率いるあなたのチームは、A案件への取り組み状況について役員会議で問われ、「検討中です。」と応答した。様々な夢を語る上層部に対し、Bさんは上手に意見交換をしたものの、最後の言葉は「検討中です。」に終わった。会社から、あなたのチームのA案件に対する取り組みに対する期待値は下げられ、イノベーションを起こす事には繋がらなかった。
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