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漫画紹介「ロスト・ラッド・ロンドン」

前こんなこと書いてから紹介してなかったんで紹介しようかなと思うんですけどね。
なんか見返すと自分でハードル上げた気がしてならないですね。

さて、3巻で完結しているこの作品。
BEAM COMIXは表紙が作品毎に凝ってて良いよね~
漫画じゃなくて小説と言われても疑わないかも。
中の絵柄はシンプルな線で描かれていて、イラストレーターの方が漫画を描いたって感じですかね。
個性的な絵柄ではあるものの、そんなに読む人を選ぶ絵柄では無くて読みやすいと思います。

主人公は2名。
南アジア系の青年、アルとアフリカ系の警部、エリスのいわばバディ物と言って良いと思う。
この二人の出自も、ストーリーの中では微妙に関わってきていて良い組み合わせです。

シマ先生のTwitterより↑

あらすじ

ある日いつも通りの暮らしを送っていたアルは、学校から帰ると自分の上着のポケットに血のついたナイフを見つける。
全く身に覚えのないナイフを手に持ちながら、テレビで流れたニュースを思い出す。
それは「地下鉄車内でロンドン市長が刺殺され、凶器は見つかっておらず捜査がされている」というもの。
そこに部屋のブザーが鳴る。
アルを尋ねてきたのは、事件の捜査にあたるエリス警部だった。
果たしてアルは自身の容疑を晴らすことができるのかーー

踏み込んだ話(1巻までネタバレ)↓

はい、あらすじを書くとザッとこんな感じですが、わざとミスリード気味に書きました。
エリス警部は過去に担当した冤罪事件のことが記憶に残ったままで、アルからナイフのことを聞いても警察には連れていきません。
二人で真実を明らかにしよう、とここから二人の捜査が始まります。

捜査と言ってもこの漫画、漫画らしい劇的な展開を作るわけではなく、淡々と話が進んでいきます。
淡々と進行するのに、当たり前のように起こる第二の事件。
それを取り巻く人たちの描写もリアルで、他の人の感想でもあったけど海外ドラマを観ているような感覚を覚えます。

1巻の中で出てくる話だけはネタバレとして話しますが、最初は「アル=たまたま容疑者となった青年」と思われていたものが、事件の中心にアルがいて、しかもその原因はアルの出自に関わるのではと推測されます。
アルは養子として引き取られ育てられた青年で、これを機に初めて自分の本当の親に会いに行く決心をするも、実の母親は亡くなっていました。
しかし、叔母と会い、遺品としてもっていた写真を見ると、そこには若い頃の市長と思われる父親の姿。
一方その頃、警察には一本の電話が入る。
電話の主は自身のことは語らず、ただ「事件当日市長に接触した人物を知っている。身長170~175cmで痩せ型のアジア系。名前はアル・アドリー」とだけ言って電話が切られるーー

感想

これが1巻。
これ以上のストーリーは完全にネタバレになるのでやめときましょう。

淡々と進んでいくのに、1巻でここまで話が動きますからね。
無駄な描写が少ないんですよ。
ただ、ちゃんと登場人物たちに興味が持てる掘り下げはあるし、そのあたりのバランス感覚が良いです。
あと漫画としての引きが良い。次の巻を読みたくなる引きで、一気にラストまで読ませます。

今回は二人しか紹介しなかったけど、ストーリーを彩る他のキャラたちも人間味があって確かにそこに存在していて、言葉の言い回しにもセンスがあるんですよね。
全体的に大人な漫画だと思います。

ストーリーのラストも素っ気ないもんです。
素っ気ないけどそこがリアルでもあって。
アルとエリスが過ごした3巻分の短い時間は、二人にとっては濃密で、お互いにとって良い時間だったんだなと思えます。

二人が前に向かって歩き出していくんだな、と、そんな細やかだけど気持ちのいい読後感は良い物語を読んだなという感じです。

3巻完結で読みやすいのも良いですね。

ぜひ。


ちなみにネタバレになる可能性が高いので書くか迷ったんですが、全て見終わったあとにもう一回1巻読むと、アルが電車に乗るときにしっかり伏線張られてますね。
怖い怖い。


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