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劇団フィータル『ベース』観劇速レポ

仕事の関係で一度トークイベントにお招きした、劇作家の(ジェシカ)さんが主宰している劇団フィータルの第二回本公演『ベース』が上演されるということで、お邪魔してきました。括弧付きで (ジェシカ) が正式らしい。知らんかった。
 (ジェシカ)さんは穂の国とよはし芸術劇場PLATが行っている「高校生と創る演劇」出身者で、この事業に参加したのが初の舞台。そこでカルチャーショックを受けるとともに、演劇の世界にはまっていった方です。高校を卒業したあとに演劇をやりたいと思っても場所がない、機会がないという理由から仲間うちで公演をうったのが劇団を始めたきっかけとのこと。トークイベント時には、東京や大阪など、豊橋の地を離れた人が豊橋に帰ってきたときに戻れる居場所になれば、という話もありました。現在は(ジェシカ)さんと照明の松本さんに二名体制で、キャストは作品ごとに集まっていただくようにしているようです。

 さて、本題。今回の公演『ベース』について。まず会場に入って思ったのが、会場の独特な空気感。演劇というものに普段あまり親しみが無いと思われる人が多く、そこから生まれている空気感だと思うが、それが新鮮で面白かった。恐らく(ジェシカ)さんのことを知っている方やキャストの知り合いなど、そういった方々も多く観劇されていたんだろうな。今回の作品に携わった方々の人柄が出ている気がします。上演に先立って行われた(ジェシカ)さんの挨拶でも、そんな雰囲気が出ていました。地元の劇団が地元の劇場で作品をみせるというのは非常に健全だし良いことだなあなどと思いました。(ただ上演中に何度もペットボトルの飲み物を飲んでた挙句、途中会話した目の前の人とか良くなかったよ。イラっとしたよ。最低限のマナーは守ろうぜ。)

 作品のあらすじを超ざっくりと書くと、あまり他人に理解してもらえない特性を持ち、生きづらさを抱えながらも懸命に生きているちくわ工場で働くA(役名)が、人とのつながりの中で悩み、そして…?というお話。ちょっと説明しなさすぎかもしれなけれど、まあ良いでしょう。
 扱っているテーマとしては非常に難しいテーマだと思います。ただ、(ジェシカ)さんと直接色々話してきた僕としては、これは(ジェシカ)さんだからこそ書けるホンだなあと思いました。ストーリーの中でAに向けられる言葉や態度、それらが嘘くさくなく説得力があって、だからこそ観ているこちらとしては苦しいところもある。台本自体が持つ力が伝わるということは、Aを演じた赤石さくらさんの演技も良かったということですね。演出(演技)なのかどうかわからない部分もあったけど良いように観てました。

 「みんなちがって、みんないい」という言葉があるように、それぞれ人には特徴があって、同じ人はいない。ただ、どうしても「普通かどうか」という一つ引かれている線がある。わかりやすく誰が見てもわかる特性もあれば、今作のAのように他人からはわからない悩みを抱えた人もいる。むしろAのような人こそ、「生きづらさ」を感じて悩み、苦しんでいるのかもしれない。そしてそんなAのような人が、実は自分のすぐそばにいて、自分が気づいていないところで悩んでいるのかもしれない…なんてことを考えさせられる作品でした。Aの立場に立ってこの作品を観る人もいれば、そうでない人もいるだろうけれど、色々な立場・視点で観ることができる作品なので、一種の普遍性がある作品だなと思います。良い作品でした。
 そのほかの点で言うと、テクニカルの部分も良かったですね。舞台演出も、演劇だからこそできる表現で場面が変わったり、途中の仕掛けは おおっ と思いました。あと照明も良かった。タイミングなどはもちろんですが、照明の使い方が効果的だったなあ。あれは演出の(ジェシカ)さんの意図はあるだろうけど、照明の松本さんのクセというか好みもあったんじゃなかろうか。もう少しシンプルでもあの作品は成り立っていた気もするけど、僕は好きです。

 終演後劇場でざっと書いた文章なので推敲してないですが、感想としてはこんな感じで。今後創っていく作品が楽しみです。応援しています!

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