#25 あとがき
ゆっくりじっくり、他の何にもとらわれず文章を紡いでいく、その時間が僕は何よりも好きになっている
別に文章が綺麗じゃなくたって、難しい言葉を知らなくたって、誰かに届けたい熱い核みたいなものが存在すれば、それは立派な作品だと思う
記事をたまたま見つけた人が、少しでも、1mmでもどこか心の奥底の部分で揺れ動かされたなら、物書き冥利に尽きる想いだ
***
人間なんてみんなどこかおかしい
急にネジが外れたような行動をしたり変にムキになったり喜怒哀楽が大げさになったり
分かりもしない相手の心の中を想像して気に病んだり
特に恋愛なんてもんが絡めば人間の心なんて荒れ狂う稲妻の中くらい慌ただしい
でもどうかしているからこそ得られるものがあるし、人間臭くて楽しかったりもする
そんな面も、このお話から感じてもらえたら嬉しい
このお話は一貫して一方通行の想いを描いてきた
すっごく簡潔にひどくお話をまとめるなら
「振られた男性が相手の社交辞令LINEを上手く利用して自らの受験勉強の養分とし、無事合格した話」
”社交辞令”
その4文字はひどくずっしりと現実を突きつけるかのように頭の中に鎮座する
もちろん、こんなきつい表現を用いた思考は浪人時代はするはずもなく、僕の頭の中は常にお花畑だったと思う
いや、意図的にお花畑の脳内にしていたのか
たぶん、頭の中のニューロンをひたすら道に迷うまで進み、いよいよ行き止まりだというところにたどり着いて初めて、「相手のLINEは社交辞令」だとか、「自分は振られた立場」という深層心理を見つけ出すことができるのだろう
もしその闇の部分が表層に躍り出てきたとしても、思考として現れるころには「まあ、無理かもしれないけど、今はただひたすらに頑張るだけ」といったポジティブな言葉に変換されていたり、ポジティブな言葉を後にかぶせて打ち消していた
厳しい受験戦争の真っただ中で心を病むなんてことになれば大打撃だ
だからきっと頭の中のどこかでそういうネガティブな思考にならないように自分を守ってくれていたのだろう
本来ならあまり自信のない僕でも、この時期はゾーンに入っていたようだ
あの人の声を忘れて落ち込んだことはあったけどね
お話をすべて書ききった今、そして様々な経験をした今なら、これまでを俯瞰して見ることが少しできる
それでも僕の表層心理にあったのは、好き→感謝→尊敬だ
つながりはLINEだけというどうしようもない状況でも、挫折したあの3月からもがいてもがいて徐々に自分の心を楽観的に制御できるようになっていた
それは100%あの人の温かなLINEのおかげだ
そしていつしか制御ではなく、本当に見返りを一切求めない感謝の気持ちに好きが昇華していたように感じる
「誰かを想う気持ちが本当に力となった」
それはchapter0の最後で示したこの話のテーマ
ここだけ切り取ればなんだか綺麗ごとに聞こえてしまうが、ここまで読んでくださった皆さんならその難しさであったり煌めきであったりを感じてもらえるかもしれない
”誰かに寄り添うことのできる優しい人”に巡り合えたことはとても幸運なことだったんだと今では思う
相手がどんな気持ちでメッセージを送っていたかは一生分からなくても、確かにそれを受け取る自分は嬉しかったから
そしてここまで表層心理じゃ深層心理じゃ言ってきたが、あの人からのメッセージを読む時間は本当にびっくりするくらい幸せだった
なんならネガティブな感情を一掃してくれた
それこそ、恋愛して頭が悪くなった時のようにはしゃいで笑っていた
このお話は僕の特異な体験談である
ばかばかしく思うところもあるかもしれないが、確かにあの経験は大学生の僕の礎となっている
報われなんてしてなくても、どこかスッキリと前を向いて進めている
これを読んでくれている皆さんの
「ありがとう」
の価値観に少しでもスパイスを振れたなら幸いだ
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このお話には僕と”好きが感謝に昇華した人”以外にも自分を助けてくれてた存在が登場しており、彼らなしに今の自分はいない
彼らもまた個性的で、僕の応援団として1年間一緒に走り抜けてくれた感謝してもしきれないくらいの人たちだ
個人名を出せないからか、特に男の方の呼称は毎回変わる
「目つきが悪い」
「背高」
「猫背」
まるで馬鹿にした表現もあるが、彼だって散々僕を馬鹿にしてきたんだからトントンでしょ
なーんて対抗意識がお話に色どりを与える
今でも、彼はときどきキャンパスで会う
演劇部の彼女も、今でも交流のあるくらい大切な人で浪人期を経て、その絆は前より深まった気がする
たまにネジがぶっ飛ぶこともあるが、大事なときは必ず寄り添ってくれる人だ
演劇部に入部した頃からもう5年以上の付き合いで、幸せになって欲しいとつくづく思う
今通ってる大学で必死に努力している姿は本当にかっこいい
また、3人でご飯でも食べて他愛もない話しで盛り上がりたいな
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「好きが感謝に昇華した話」は昨年の11月からおよそ半年に渡って連載を続けてきた、かなり長めのお話です
それまでは単発で思ったことや旅レポなどを書いて投稿していたので、僕にとって大きな挑戦でもありました
長い時間をどこで区切ってどのような展開、構成にしていくのか
その構想を練るのには随分と苦労した気がします
序盤の展開はある程度考えていたのでかなりスピーディーに投稿できていましたが、中盤からはより慎重に、整合性やお話全体となる核の部分が失われていないか考えていたということもあって、1か月に1回のペースになりました
そしてもう一つ、投稿頻度を下げた理由があります
「1か月に1回」といえば何か
そう、それはあの人からのLINEが来るペースと一緒
作品を楽しみに待ってくれていた皆さんからしたらかなりもどかしい気持ちだったと思います
でも読者さんと一緒に、この時間の感覚を共有したかったから完成してもあえて推敲しながら寝かせていました
推敲といっても表現により現実味を帯びさせるところに重きを置いていたように感じます
基本的にこれは小説でもフィクションでもなく、現実にあった自分自身の体験談です
だから語り手の目線は常に僕自身にあり、それ以外の視点から描写をすることはできません
だからかなり表現の幅が狭まってしまうのです
事実だけをただ書き連ねていっても読み手は途中で飽きてしまう
それをなくすために所々で小説みたいな風景描写を差し込むようにしました
序盤の方はあまりないように思われますが、後半、特に最終話では目立つくらいには挿入しています
あくまで自分の気持ちではありますが、「~と思った」の表現だけでなく自分とは関係のない、私が旅先で見つけるような風景で暗に心情を伝えられればなって考えていました
まあ、決して上手くはありませんが
そしてこの話は地続きとなって今の自分に繋がっています
だからこそこれを読んでくださっている身内の方には現実感の増す内容もあるかと思います
個人名や場所などを伏せた関係で読みずらい箇所もあったと感じますが、薄々何かを察するくらいのラインを攻められたのかなとは思います
全てを読み終えた今、改めて初めから読み直してみると新たな発見があるかもしれません
下手くそな表現ながら、ちゃんと序盤で伏線とかは貼ってるので
ぜひ、chapter0の描写など、見返してみてください!
行き詰まることも多々ありましたが、読者さんからの暖かいメッセージのおかげでこのお話も一区切りさせることができました
改めて、この作品を最後まで、そしてこのあとがきまで読んでくださった皆様に深く感謝いたします
ありがとうございました!
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