お金はないけど

拝啓、1年前のきみへ

お元気ですか?1月に退職を決意して、今は引き継ぎをある程度やってしまって3月末までのんびり働いている最中でしょうか。

楽しくて仕方がなかったはずの仕事は、いつの間にか重圧に苛まされる日々になっていました。メディア価値よりも売上に重きを置いて、まるっと変わってしまった会社で楽しさを見出すことができず、一生懸命がんばった昇進試験も通らなかった2017年の年末。これまでの張り詰めた糸がプツンと切れてしまう感覚を今でも覚えています。

退職が決まり、これから始まる未知の体験に少し心躍っていることでしょう。お金がなくなる多少の不安も抱えながら。

1年後、きみは完全な金欠になります。周りのものを売ったり、「会社に依存する人生はごめんだね!俺は俺で仕事をつくるんだ!」と意気込んでいたのに結局は他の会社で小遣い稼ぎのような仕事をしています。
そして、残念ながらまだお店はつくれていません。お金ないから当たり前ですね。

それでも、今のぼくはとても有意義に暮らしているように思います。
そりゃあもちろん、お金がなさすぎて夜も眠れないくらい不安になることはあるのだけれど。

なんでそれでも有意義と言えるのか。それはきみがやると決意したコーヒーの販売をする経験が何事にも代えがたい感動や喜びを与えてくれているから。買ってくれた人が「おいしかったよ」と言ってくれる瞬間、コーヒーをお客さんに淹れている間の穏やかな沈黙。そんな時に「やってよかった」と思える日々を過ごしています。

そして、やればやるほど他にやりたいことが浮かんでくるのです。他の人を喜ばせるようなことを。2017年きみが悩んでいた「やりたいことが全然ない」状態からすっと抜け出していくのです。

仕事を辞めて安定した収入はなくなりました。貯蓄もなくなりました。
だけど、失ったのはお金だけです。それ以外は特に失ったと思っていません。むしろ、得るものの方が多かったのではないでしょうか。

月に数回、通販経由でコーヒー豆が売れます。そのたびにぼくは跳ねるように喜びます。売れたこともそうだけど、届けたかった気持ちが伝わったような気がして。毎月、そんな事が起こるのです。最高だとは思いませんか?

そして、一緒に暮らしていた彼女は今もお付き合いをしています。お互い別々に暮らしているけれど変わらずぼくのことを応援してくれています。
生活の場所が別々になって最初はお互い戸惑いもありましたが、変わらずくだらない冗談(ほんとうにくだらない小学生のような)を言い合っては笑っています。
お店をやると言った時、一切止めずにたくさんサポートしてくれたことへの感謝の気持ちはずっと持ち続けることになるでしょう。たとえ今後何かが起きて別れることになっても。

2017年の冬、お店をやろうと決めてくれてありがとう。その宣言と行動がなければ今の日々はありません。動くことで得られるものは大きいと、今とても実感しています。

お金はないけど、きみは元気です。

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いやあ、ほんとうにお金なくって困ってます。ははは。 いただいたサポートは、いつかお会いした時にコーヒーで返しますね。ありがとうございます。