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時間の量で見る2023Jリーグ

こんにちは。

Jリーグは移籍市場もほぼ終わりを迎え、新戦力となった選手たちが躍動する姿を思うと今から開幕が待ち遠しいですね。

このnoteでも各チームの移籍を絡めた戦力分析をしたいと思っているのですが、まだもう少しだけ2023年度のリーグ全体の総括をさせてください。

今回のテーマは“時間の量”です。
この新たな指標を使って各チームの抱える問題点やどのような狙いを持って試合に臨んでいたかを解き明かしていきたいと思います。


シチュエーション別に見る”時間の量”

上の表は「昨年のリーグ戦の中で、各チームが勝っている状況や負けている状況の時間をそれぞれ何分間過ごしたか」を時間量で表したものです。

「Lead」は勝っている状況の時間。
「Even」は同点の時間。
「Behind」は負けている状況の時間。
(※アディショナルタイムはすべて1分として計算)

たとえば神戸は昨年度のリーグ戦で、1275分間勝っている状況を過ごし、494分間負けている状況を過ごしていたことがこの表からわかります。

普通に考えると、この「Lead」の時間量が多い(あるいは「Behind」の時間量が少ない)ほうが強いチームであるはずです。神戸はまさしくそのケースに当てはまります。

ところが表を見てみると、必ずしも時間量がリーグの順位とリンクしていません。たとえば浦和広島は順位のわりに「Lead」の時間量が少なく、川崎は「Behind」の時間量が多いように見えます。

このズレから各チームの特徴が見えてきます。
さらに他の指標を組み合わせることで深掘りしてみましょう。

“オープンな状況”に弱い川崎フロンターレ

まず左側の表は、先ほどの表から「Behind」の列だけを抜き出して時間量の少ない順に並べたものです。
浦和が神戸を抜いて1位ですね。昨年の浦和はリードされた状況が一番短かったチームでした。

一方、川崎を見てみると、他の上位チームと比べて「Behind」の時間量が多いことがわかります。

続いて右側の表。
これはリーグ戦の中で各チームが先制した(あるいは先制された)回数を集計したものです(※黄色の0はスコアレスドローの回数)。

上位に来るチームはやはり先制率が高いことがわかります。
逆に川崎は先制される回数の方が多いです。これが川崎の「Behind」の時間量が多い理由です。
前回の分析でも指摘しましたが、ここでも川崎フロンターレが「お互いに点を取りに行くオープンな状況での守備に問題がある」ことが証明されました。

(前回の分析は↓からどうぞ)


浦和、広島、福岡は“重たい”チーム

今度は「Lead」の時間量を見てみます。

気になるのは浦和、広島、福岡の3チームの「Lead」時間の少なさです。

右の先制回数表を見てみると、
アビスパ福岡は川崎と同じように被先制率が悪いことがわかります。
浦和レッズはスコアレスドローが多いことが時間量に影響してそうです。
ところがサンフレッチェ広島は先制点の状況に問題は見られません。

これだけだと分析の材料が足りないのでさらに別の表を用意してみます。

3チームの共通点が見つかりました。

上の表は各チームの試合で先制点(あるいは被先制点)が入った時間(量ではなくタイミング)の平均を出したものです。
(一番右の「平均」は、先制•被先制に関わらず得点が入った時間の平均。※スコアレスドローの場合は90分として計算)

たとえば一番上のコンサドーレ札幌は先制した時間も先制された時間も早く、良くも悪くもすぐに試合が動くチームであることがわかります。

そして一番下にいるのが福岡広島浦和の3チームです。
特に広島と浦和は試合が動くタイミングが平均で45分以上あり、なかなか試合の前半には点が動かない“重たい試合をするチーム”であることがわかります。

この傾向は「攻撃よりも守備を重視するチーム」に見られがちです。
特に浦和レッズはDFラインをリーグ内でも一番低く設定したローリスクな戦術を取っていました。浦和が優勝を目指すにはこのリスク管理についても考える必要がありそうです(この辺りはまた個別のチーム分析で)。

それでは広島と福岡はどうでしょうか。
彼らも守備的なチームであることは間違いないのですが、どうもそれだけではなさそうです。

長谷部とスキッベは“最後に笑う“

左側の表は、各チームが試合の残り15分以下の時間帯でどれだけ勝ち点を稼いだかを集計したものです。
(「L←」は勝ち越し点「E←」は同点弾を決めて試合を終わらせた回数。「+勝点」はそれによって得た勝ち点の合計)

これを見れば一目瞭然で、広島と福岡が試合残り時間わずかのところで勝ち越し点や同点弾を多く決めていることがわかります。

その強さは右側の表からも明らかで、広島が試合の残り15分の局面で失った勝ち点はわずかに1(福岡は3)です。
この2チームは狙いを持って試合の前半を重たい展開にし、相手が疲弊したところで後半に勝負を仕掛けていたことは間違いありません。

去年の広島の試合のハイライト集を見てみると、劇的な展開が多く、人によっては「運が良かっただけ」と思いがちです。しかし広島のスキッベ監督は狙い通りにその奇跡を演出していたことが今回の分析で明らかになりました。
長谷部監督もおそらくそうでしょう。この辺りも各チームの分析で深掘りできればと思います)

終わりに

いかがだったでしょうか。

難しい戦術論を持ち出さなくても、試合の基本的なデータをいじるだけでそれなりの分析ができてしまうことがわかっていただけたかと思います。

この調子で2023年リーグ総括を進めていき、なんとか開幕までには各チームの分析を終わらせたいと思っています。
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