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2年ぶりのアルバム制作日記、始動。

皆さんこんにちは。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。前回の記事、沢山の方に読んでいただけてとても嬉しいです。まだの方も是非、この機会に僕たちの作品に触れてもらえたら嬉しいです。

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さて、おそらく多くの皆さんが当初想像していた以上の、ライフスタイルの強制的変化の時期を迎えている昨今。僕ら音楽家も、ご想像の通り大きな意識変革が必要とされています。

いろいろ、明るくないニュースが音楽業界の周りを飛び交う中、僕らは僕らなりに、前を向き、未来を信じて突き進むことにしました。

それは、2年ぶりのニューアルバムを作ることです。

作ると決めた4月の中旬以来、本気で音楽制作に取り組んでいて、アルバムに収録する10曲(過去作含む)を選定でき、この2~3週間で全曲、デモを完成させられました。

ある程度コンセプトが固まり、リリースまでのスケジュールプランが組めてきたので、残りの作業はnoteで制作背景を共有しながら進めることに。リリースは7月上旬を目指しており、これから2ヶ月間、ここで進捗をご紹介していきます。どうかリリースまで、そしてリリース後もお付き合いください。


2年ぶりのアルバムは、CM音楽の巨匠と共作。

今回のアルバムは、僕が2019年の4月に「Memento」という楽曲でコラボレーションして以来、たくさんの楽曲を共に世に送り出してきた巨匠作曲家でありギタリスト、Hajime Uchiyamaこと内山 肇さんとの共同アルバムです。

業界内で、「巨匠」と愛称付けられ、その人柄で多くの音楽家に愛される肇さん。その30年のキャリアのなかで、僕にとっては少年時代の思い出のCM楽曲を、本当にビックリするくらいの量、その数実に1万曲以上(!)を世に送り出してきています。

巨匠のお仕事で僕が好きなのをいくつか。一番はやっぱりこれ。

世界中で放映され、その年のCMアワードを総なめにしたアマゾンのCM。こちらの音楽を作曲しているのが、肇さんです。わずか30秒の中で、感情の起承転結がしっかりと描かれているその楽曲は流石の一言。感情と映像がリンクしているこのCM、音楽は大きな役割を担っていると感じます。

昔の作品でいえば、これ。ZZ TOPのメンバーとの夢の共演。

知らない方も多いかもしれませんが、70年代のアメリカンロックの金字塔!なバンドなんです。2004年にロックの殿堂入りを果たし、ギタリストのビリー・ギボンズは2011年にRolling Stone誌が選ぶ「歴史上最も偉大な100人のギタリスト」にも選出。ロックミュージシャンのカリスマ、と言って間違いない3人が、肇さんの楽曲を演奏しているんです。ちょっと異次元・・・

CMは残っていませんが、僕は2013年にドコモのCMで流れたこの音楽が超強烈でした。当時僕も大好きだった2CELLOS。音楽は、これまた肇さん。


こんな還暦、マジでいない。

僕が感じる肇さんの一番すごいところは、還暦を迎えたとは到底思えない、その生き方の「少年さ」です。実は僕の母親と同い年なんですが 、毎日話していて、とてもそんなふうに思えません。

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肇さんは、持ち前のキャラクターっぽい雰囲気で周りの空気を一気に明るくしてくれます。そして、僕らの音楽仲間や関係者の女子たちに、いつも「可愛いーーーーーー!!」とキャーキャー言われて、一緒にキャーキャー言っています(笑)

ちなみに、一緒に作品作っているチームメンバー(20代女子)から、「肇さん、私より若いです。」って密告がきたのがこちらのメール。

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いや、この月の絵文字、なんだよ(笑)

いかがでしょうか。巨匠のお人柄、感じていただけましたか。

作品発表のスタイルも同じ。これだけのキャリアを持ちながら、肇さんの目線の先には常に、「未来・希望・光」があります。とにかく、自身がいいと思ったものや人に対して、世間の評判や経験、年齢にかかわらず全て良いと言い切れる方。だから僕も、先輩だからと気を遣わず遠慮なく思ったことを言えるし、僕が見つけてきた逸材もガンガン紹介できます。


多分、最もサブスクを使いこなすアラ還。

そもそも、60歳でこんなに音楽ストリーミングサービスを駆使している人を他に僕は知りません。持ち前の音楽知識でシーンに合わせて2時間以上のプレイリストを夜な夜な選曲するばかりでなく、ご自身の作品もポートフォリオとしてSpotifyを使ってウェブサイトにまとめ、更には今年に入ってからはすでに、毎月1曲以上のペースで楽曲をリリース。当然、Spotify for Artistsで自身の曲の聴かれ具合も毎日チェック。こんな人、います?

インスタでは、肇さんの想いが詰まった膨大なギターの写真と共に、自身の趣味である料理やお花、ご自身のワークスペースであるご自宅のスタジオや箱根のサテライトスタジオの模様も覗けます。肇さんは、僕がフォローしている方で、間違いなく最も頻繁にインスタストーリーズを更新しています(笑)ぜひ、僕と共に巨匠のインスタもフォローしてみてください。

5月に入ったら、アルバムの制作風景をリモートインスタライブで展開していきます。僕もですが、巨匠の制作風景なんて同業者でも滅多に見れないし、見たい人たくさんいると思うのでお楽しみに!


本当は、2人でライブを企画していた。

肇さんとは、2019年10月の渋谷音楽祭に出演して以来、僕らの音楽はライブでこそ真価を発揮する!と言う直感を共有していました。今年はとにかく、これまで作ってきた曲をライブ仕様にしながら、僕らの楽曲もライブでいかに盛り上がれるか、気持ち良いものになるかを強く意識して作っています。

そうしてできた楽曲、第一弾が「Hello」です。

この飛び出し感、是非ライブで伝えたい。その思いは強いけれど、今は如何せん、ライブをやれる状況ではない。正直、出鼻を挫かれてしまった感覚が、当初ものすごくありました。

そのライブは、まだ答えが出せていませんが、おそらく延期にせざるを得ない状況だと思います。そのライブを行わない分、僕らが何ができるかは、4月の頭からずっと考えてきました。


朝7時。電話で、「肇さん、アルバムやりませんか?」

忘れもしない2020年4月10日。その日、朝めちゃくちゃ早く起きた僕は、早朝からトラックを作っていました。ある程度形になった頃に、肇さんが起きていることを知り、すぐにLINEで会話がスタート。

元々、ライブに向けて6曲程度のEP(ミニアルバム的なもの)を作ろうと計画していたのですが、4月の第1〜2週だけで、新曲が5曲以上形になりました。去年の僕ならどれも、その場でマスタリングに回すほどの仕上がり以上の曲ばかりです。ささっと作ったわけではなく、本当にその週、徹夜を続けて降りてくるアイデアを形にしていたんです。

巨匠。
相談なんですけど。

EPとか言ってないで、
このままアルバムにしませんか?

この世の中に、僕らなりの形で、
希望で溢れた世界を一緒に作りませんか?

どの立場でもの言ってんだよ、って感じですが、自然と心の底から、こんな言葉が出てきました。EPは、アルバムに比べると曲数も少なく、少し気軽な印象なんです。フルアルバムはアーティスト、少なくとも僕にとっては物凄く神聖な領域。やると決めたら、全クリエイティビティを注ぐ気持ちで作らないといけない。その覚悟が、この週に固まったんです。

その日から、今日5月1日に至るまで、いろんなことはありつつも、全身全霊でアルバムに収録する楽曲を作り続けました。歌もの半分、インストゥルメンタル半分の全10曲。本日の段階で、僕パートは全て完成させました。

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あえてもう、トラック名も公表しますが、正直、現時点で過去最高の出来であり、自信作。僕らは自分が聴きたいと思える音楽しか作りませんが、僕はこのアルバムを毎日聴きたい、と言うか聴いています。デモ段階ですら、僕はこのアルバムが大好き。この曲たちは、僕の音楽家としてのスキルをそれまでとは全く別の次元へと高めてくれたと胸を張って言えます。


アルバムのために用意した、高水準StayHome制作仕様。

今回の作品で僕らが成し遂げたいこと。それは、今というこの状況下、世界中の人たちが前を見て、希望に向かって進んでいけるキッカケになること。

そのためには、今という現実にしっかり向き合わなければいけない。つまり、できることは極力フルリモートで制作し、一切妥協したと思わない、今の時代にフルスペックで作れたと言い切れるアルバムを目指しています。

どうしても外部スタジオで作る必要のある、最小限のことは
細心の注意を払いスタジオでやります。
クオリティは、絶対に落とせない。

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作業も、どうしても立ち会いでなければ実現できないこと以外は全てそれぞれの自宅スタジオで行っています。それに必要だと感じたものは、自粛ムードで仕事が極限まで減っているこの最中、勇気を持って新たに購入。

おかげで、特にシンセとリズムの出音は桁違いによく鳴るようになり、ミックスの質も前回までのサウンドからは大きく向上したと僕は思えます。今回のアルバムは、自信をもって自宅セルフミックスで勝負します。

先のことなんて、全然わかりません。いつ、というか果たして今後、仕事がちょっと前で言う平常時のような回り方をするかと言えば、正直しない気がしてならない。だからこそ、「倒れるなら前に倒れろ」って気でいます。昔は良かったとか言いたくないし、僕らは今をベストな状態で生きたい。だから、今守りに入るのは、僕らとしては違うなと決意しました。


アルバム名は、"Voyager(ボイジャー)"

「航海者」あるいは「冒険者」と言う意味の言葉です。

今、これほどまでに日々 #StayHome と叫ばれている。外に出られない、家の中でどう過ごすかが、世界中の生活の中心になっています。

僕らは、目を閉じたら自分の心の世界へと、いつでも冒険に出られるアルバムを作りたいと思います。10曲入りで、全部で30分程度の尺の短いアルバムです。1曲1曲は、2分半弱〜長くて3分40秒。今、僕らが一番聴きたい聴感の尺と音像、そしてサウンドやメロディで世界に届けます。

おうちにいながらも、子どもから大人まで、仕事や家事、遅れまいと勉強に追われる方々は、沢山いるのではないかと察します。限られた自分の時間の中で、30分で現実から一気に空想世界に旅に出られる。そんなアルバムを用意しています。もしかしたら、リリースする夏頃には、少し状況は好転しているかもしれない。それならなお一層、このアルバムが本来持つ爽快感、屋外で聴きたくなるサウンドを是非楽しんでもらえたら嬉しいです。


先行シングル第一弾が、リリースされました。

アルバムから、先ほどの「Hello」に続き、4月29日(水祝)にニューシングルが先行リリースされました。ポルトガル語で「春」を意味する、「Primavera」と名付けた楽曲です。

Apple Musicはこちらから。

その他の配信サイトはこちらからどうぞ。

次回は、この曲に込めた想いについて、書き綴っていこうと思います。


アルバム発売の7月上旬まで、noteで制作秘話を展開。

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今回、僕らは「今、この瞬間に全身全霊で作品を作っていく」と言うこと自体を、自分たち自身もこの困難を乗り越えたあと、しっかり振り返る機会が欲しいと考えました。作っている僕たち自身にとって、今という時間は困難であることを、音楽を作ることで忘れ去れる時間になっています。

今、この瞬間を時代のニュースで切り取れば、ポジティブな話題は正直少ない。けれど、僕たちや、僕たちの音楽を作る風景を知ってもらえた方にとって、少しでもいいから、

・ステイホームで面白いことやってるヤツらがいたなぁ。
・底抜けに楽しそうだけど、そういうヤツちょっとくらいいてもいいか。
・音楽ってこうやって作品になるんだ。やってみようかな。

って、思ってくださる方がいれば本当に嬉しいです。

この1ヶ月。正直、僕自身の音楽仕事は激減しました。でも、作った曲に対する手応えと満足度、何より作っていることで過ぎ去っていった時間は、秒速に感じるほど一瞬でした。音楽には、作る行為そのものにも、勇気を与えてくれる力があるんです。久しぶりにできた時間の活かし方としては、2020年4月という時間は今までで一番満足度の高い1ヶ月だったと言えます。

発売まで、あと約2ヶ月。

これから、時代がどの方向に足を踏み出すのか、僕には全くわからない。けれど、僕らは僕らのやり方で、好きな生き方を追求します。計画していたことができなくなるのは気持ちが沈みます。でも、だからと言って下、ましてや後ろを向いたら終わりだと思うから。そんな姿勢に共感していただける方がもしいれば、応援していただければ幸いです。


次回、最新曲「Primavera」の
楽曲背景について語ろうと思います。お楽しみに!
皆さん、ステイホームで良い連休を過ごしましょう!


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