これは映画素人の男が彼女に捧げた映画の物語

彼女と映画と僕のまとめ物語。

付き合うまで知らなかった。
友達が教えてくれるまで、
まったく知らなかった。
彼女が映画を好きだなんて。

いわゆるいい映画とか、
僕はぜんぜん知らなくて。
でも彼女に喜んでもらいたくて。
映画について少しずつ、
調べる毎日がはじまった。

僕がわくわくしながら、
映画を選んで、それを君と見る。
君の反応にどきどきしながら。

ふたりで見る映画がこんなに悲しいなんて。
ふたりで見る映画がこんなに切ないなんて。
ふたりで見る映画がこんなに楽しいなんて。

彼女と出会わなければ、
映画に出会わなければ、
いまの僕らはきっといない。

ふたりで見た幾つもの映画。
まとめ物語のはじまり、はじまり。

どうしよう。彼女が家にやってくる。

モテキ DVD豪華版（２枚組）

監督：大根仁
主人公は、恋愛下手な藤本幸世31歳。ある日突然、彼にモテキがやってくる。最強にかわいいヒロインたちに翻弄されながら、恋に仕事に人生に、苦悩し、妄想し、奔走する男の物語。ファーストカットからエンドロールまで、とにかく最後の１秒まで楽しませてくれる青春恋愛エンターテインメント。気になる異性とぜひいっしょに見たい映画です。

彼女「ねぇ、なんでモテキにしたの？」
僕「えーっ…」
彼女「なんで？」
僕「えーっと…」
彼女「なんでなんで？」
僕「えーっとえーっと…」

いちゃいちゃしたかったからだよ、
なんて言わないでおくことにした。

僕の好きが彼女の好きでありますように。

ショーシャンクの空に [DVD]

監督：フランク・ダラボン
主人公は、銀行の出世頭だった若き青年。無実の罪でショーシャンク刑務所に投獄されてしまう。しかし、青年は諦めない。希望を捨てず明日を信じつづける。その姿勢が次第に周囲を変えていく。見る人の涙腺を刺激する珠玉の感動作。多くの映画スレッドで、「ショーシャンクの空にが好きだとか言っているヤツは素人だ」と語られてしまうくらい名作。ベタという言葉に惑わされずぜひ見てほしい。

彼女「またベタベタな映画選んだねぇ～」
僕「ええ！いいじゃん、すげーいい映画だったじゃん！」
彼女「ま、わたしも大好きだけどね」
僕「ほら！」

好きなものが同じだとなんでこんなに嬉しいんだろう。

めずらしく彼女が仕事で落ち込んでいた。

アルマゲドン [DVD]

監督：マイケル・ベイ
主人公は、地球滅亡の危機に挑む熱き男たち。ニューヨークに無数の隕石群が降り注ぐ。地球に激突すれば人類は滅亡する。そこに隕石の軌道を変えるため、命知らずの14人の男が立ち上がる。「全米が泣いた」というコピーでも有名。アルマゲドンの名前を知らない人は、きっといないと思います。内容、展開、音楽すべてにおいてThe王道。見終わった後に不思議と元気が湧いてくる映画。

彼女「わたし…これ見るの５回目なんだけど…」
僕「え、まじか…」
彼女「でも…ありがと」

泣いたら、あとは、元気になるだけ。

はじめての大喧嘩、素直になれなくて、でも仲直りしたい。

今度は愛妻家【通常版】[DVD]

監督：行定勲
かつて売れっ子カメラマンで、今は働かずグータラな生活を送る夫。そんな夫に文句を言いながらもとことん世話焼きな妻。夫婦水入らずの沖縄旅行を境に、ふたりの関係が微妙に変わっていく。タイトルからはまったく想像できない展開、そして結末。どきどきするくらいに切ない。苦しい。そんな大人のラブストーリー。大切な人と見てほしい。そして映画をみた後に、感じたことを語り合ってほしい。そんな映画です。

僕「なんかいろいろごめん…」
彼女「うん…わたしも…」

この映画をみると、ふしぎと素直になれる。

彼女と順調だからこそ見ておきたかった。

ぐるりのこと。

監督：橋口亮輔
ひょうひょうと生きる法廷画家の夫と、几帳面であるがゆえに少しずつ心を病んでいく妻。当たり前の関係が当たり前じゃないんだと、時に寄り添い合い、時にぶつかり合う、夫婦の物語。見終わった後に、手の届く場所にいる大切な人を、とても愛おしく、とても大切にしたくなる映画です。当たり前の関係が当たり前じゃないんだと、やさしく気づかせてくれる映画です。やさしく気づかせてくれる映画です。

彼女「もし私がさ、情緒不安定になったら、どうする？」
僕「抱きしめる」

彼女は、バーカと言って、嬉しそうに笑った。

いま大切な気持ちを伝える勇気が欲しい。

ちゃんと伝える スペシャル・エディション [DVD]

監督：園子温
主人公は、タウン誌の編集者として働く青年。彼の下に、父が倒れたとの報せが届く。父の命が長くないことを知った彼は、苦手だった父と向き合うことを決意する。思いは言葉にしなきゃ、伝わらない。伝えることの恐さも、大変さも、喜びを、じんわりとしっかりと教えてくれる映画。思いを伝えようとするその背中を、後押ししてくれる映画です。

彼女「へー意外、園子温とか、知ってるんだ？」
僕「俺も、ちゃんと、伝えなくちゃ」
彼女「へ？」

伝えなくちゃかわらない。
伝えなくちゃはじまらない。

これが彼女と見た最後の映画になった。

明日は妻とどんな映画を見よう。

結婚記念日なのに。まいったな。

※NAVERまとめ編集コンペで奨励賞を受賞した
2012年11月13日の記事より