「御社が第一志望です」と建前でも言っていい。

元人事のコピーライターということでスタートした、JFN PARKのラジオ番組『#好きに就活 好きに進もう羅針盤ラジオ』。頂いた相談に答えます。ラジオでも話すのですが、noteでも書いておきますね。「内定」に関する相談。御本人に読んでもらえますように。

阿部さん、こんにちは。
親や友達ではない誰かから客観的な意見を聞きたいと思い、メールしました。

選考が進んでいる会社の、最終面接が来週に控えています。
最終面接では、「うち以外の会社はすべて断って下さい」と言われると聞きました。
私にとって第一志望の企業は別にあるのですが、内定はほしいという気持ちがあります。
ですが、建前でも嘘をつかなければならないと考えると、少し胸が痛いです。

正直に「御社は第一志望ではないのですが、第一志望の企業がダメだった時に御社に入りたい」と言っても良いのでしょうか。

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メールを読みながら胸がきゅっとなりました。しめつけられるというか、苦しいというか。そわそわ緊張しちゃう感じ。めっちゃ悩ましいですよね…。このゴールデンウィーク、あなたもそわそわ過ごしたのではないでしょうか。

「本音」と「建前」って、「矛」と「盾」と似てると思うんです。

本音は「矛」で、建前は「盾」。本音だけで生きていけたらいいなって僕も思うんですが、それだけで生きるのは難しいよなとも思ってて。

たとえば頼まれて、やりたくないけど、やらなくちゃいけない仕事があったとして…「めんどくさいなあ」「やりたくないなあ」と本音で思ったとします。それをそのまますぐに相手に伝えたら、ぶんぶん矛を振り回しているようなもので、あぶなっかしい空気になります。

そこで、建前という名の盾の登場です。やりきった時に得られるものと、やらなかった時に失うものを交互に考えつつ。表面上、ここはやっておいた方が得だぞと思って、やるからには笑顔でやるかと切り替えられたりする。建前が、自分を守ってくれる。

本音にはパワーがあります。本当はこうしたい、ああしたいって、自分の気持ちに気づけた時に、その剣があれば、荒野だって切りひらいていける。建前オンリーで生きてしまえば、自分の気持ちを押しころしてしまうかもしれない。苦汁で胸がいっぱいになるのは避けたいですよね。

つまり、使い分けなのかなと思います。

本音と建前。矛と盾。交互に切り替えていく。でも、えてしてうまく切り替えられない時もあって、自分の中に矛盾を抱えてしまう。自分の中で矛と盾が戦っちゃうんですよね。がちんがちんと火花を散らしながら。

芸術家の岡本太郎さんも「矛盾」についてこう言ってます。

「純粋であればあるほど人生というものは悲劇だ。人間はすべて矛盾の中に生きている。だから矛盾に絶望してしまったら負け、落ち込むのだ」

絶望で終わらせずにそこに1%でも希望を見出さなくちゃ、ぐっすり眠れないし…さて、どうしたものかと。

相談に戻ります。

最終面接が来週あるその会社が、もしも、まったくもって志望してない会社なら、僕は「矛ファースト」で強気にいっていいと思うんです。

『ごめんなさい、本当は他に行きたいところがあるんです』って。だってそもそもそこは、志望してないんだから。というより、志望してないなら、面接に行かなくてもいいですね。

でもきっと、第二、第三選考と進んでいくうちに、心で惹かれるところもあるから、あなたは選考を受けてきた訳ですもんね。つまり「志望する会社」ではある。であれば、盾を前に出しつつ「御社が第一志望です」って言っていいんじゃないかな。

そしたらね、「ちょっと待て!」と、興奮気味の矛が顔を出すと思うんです。盾を持つ手をチクリと刺されるかもしれない。でも、志望しているんだからいいんですよ。この先どうなるかはわからない、もしかしたら本当にお世話になるかもしれない。「うち以外の会社はすべて断って下さい」って言われたら、頷いておきましょう。翌日から、気の済むまで就活をつづけましょう。

今、Googleで「内定辞退 いつまで できる」で検索しました。

そしたら「民法で『2週間前までなら、いつでも内定辞退できますよ』という法律を定めています」と真っ先に出てきました。でも、あなたが相談してくれたのは、そういう法律上どうのこうのではなくて、胸の痛みの話ですよね。

どこまで正直でいられるか。正直で、本音で、それでうまくいけば全然それでいいんです。でも、矛一本で進んで、気づいたらズタボロになっているよりも、矛と盾をうまく切り分けつつ、したたかに進んでほしい。

したたかって漢字にすると「強か」だと思ってたんですが、調べてみたら「健か」とも書くそうなんです。矛盾を抱えることは、ある意味ですけど、健康的なことなのかもしれない。「人間してるなあ」ってことなのかもしれない。

その後、最後の結果が出てから、おもいきり悩めばいいんじゃないですか。今は「今」の志望を目指しつつ。お断りしないといけない時がきたとしたら、誠実に謝ればいいんです。ああ…痛いなあ、と思うのはその時でいいです。

本音と建前の話は、企業の採用するほうも同じですから。採用人数分ぴったりに内定を出すなんてことはないです。お互いさま、なんだと思います。

僕も就職活動をしていた当時、内定を頂いて、その後に就活を続けて、今の会社に決めて、その後、謝りに行きました。胸の痛み、あったなぁ…。でも今、あなたの相談に乗れて良かった。あなたの本音と建前、両方大切です。そこを使い分けていきましょう。それでええねん。

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ラジオではこちらで話しました…!

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