
ペストによる「休校期間」をニュートンは『創造的休暇』と呼んだ。
これは強がりなのかもしれない。
今この状況に対して、落ち込んでばかりいるのはどうしてもいやなので、前向きな解釈をできないかと日々探している。
Historyには、Storyがある。
講義やワークショップでいつもこの話をしている。未来に迷った時は、歴史を辿る。そこにヒントが必ずある、と。
過去の伝染病を調べた。1600年代の伝染病「ペスト」についての記事で知ったのが、この呼び方だった。
ペストの流行があった1665年。ケンブリッジ大学が一時休校。結局、2年間に及ぶ休校になった。ニュートンはその間に、万有引力の法則を発見した。さらに僕が驚いたのは、ニュートンが「休校期間」のことを『創造的休暇』と呼んでいたことだ。今はこの先に向けて、何かを創造する時間でもある。#広告空論
— 阿部広太郎 (@KotaroA) April 22, 2020
『ニュートンは「ペストで2年間休校」の時に万有引力の法則をみつけた』詳細はこちらの記事に書かれている。ニュートンのことが気になった。もう少し調べてみた。こんな言葉を残していた。
『もし私が価値ある発見をしたのであれば、それは才能ではなく、忍耐強く注意を払っていたことに起因するものだ』
「我慢」と「忍耐」の意味合いはまた少し違う。ただ闇雲に我慢する訳ではなく、成功に向かって忍び、耐える。今は、忍耐と創造を、交互に行き来する時間なのだと思う。
シェイクスピアもひとり篭って執筆した。
ニュートンからさらに60年前。シェイクスピアもペストによる自粛期間を経験していた。
「数々の傑作を残したイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア。『リア王』と『マクベス』、『アントニーとクレオパトラ』については、パンデミックのあった1605年から1606年にかけて書き上げたと言われている」
「1590年代のはじめから他の劇作家とのコラボレーションが続いていたシェイクスピアは、この時やっとひとり篭って執筆に没頭できる自由を手に入れました」
こちらも間違いなく『創造的休暇』。こもることで、自由を獲得する。
詳細は『「ロミオとジュリエット」の恋愛は“パンデミック”のせいで成就しなかった』こちらの記事から。
僕たちは働かないといけない。
『創造的休暇』ではあるけれど、僕たちは働かないといけない。予定が白紙になっても、新しい予定を書き込んでいかないといけない。風が吹けば桶屋が儲かる。新しい風が吹いたら、新しい桶屋を探さないといけない。
そんな時に僕は、富士フイルムの話を思い出す。写真フィルム事業の市場が縮小していく中で、化粧品事業に進出して大復活した富士フイルムを。
同社が技術の棚卸により発掘した新事業の典型が化粧品事業といえる。それは写真フィルムと化粧品の製造技術の類似性だった。(中略)「技術の棚卸により化粧品事業への参入が決まった時、先発メーカーが大小含めてゴマンといる市場に最後発で割り込むためには、当然オンリーワンを投入しなければ成功しない。ベストワンでは失敗するとの確信があった。そこで着目したのが当社のコラーゲン技術だった」(中略)この応用で開発したのが、スキンケア化粧品のアスタリフトだ。
詳しくは『富士フイルム、なぜ写真事業消滅の危機から構造転換成功?ヘルスケア1兆円への挑戦』こちらの記事に。アビガン錠でも注目される富士フイルム。この姿勢を貫いてきたのだろうか。
技術を棚卸しする。横展開して勝負できる事業を探す。自分ならどうだろう? どう働いていけるだろう? 考えてみて損はないと思う。
「ものは言いよう」という魔法。
同じことでも、同じ状況でも、言い換えることで魔法を掛けるように印象が変わる。自分の気持ちすら変わっていく。「A→B」これを見つける。ダイヤモンド社から、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を刊行したのも、誰しもが気持ちの持ち方一つで、言葉の矢印の使い手になれると思うから。
強がりでも強くいられるなら、解釈をたぐり寄せていきたい。
集まること、近づくこと、密になることが制限されている今、時間はある。待ち時間は、持ち時間にできる。僕は、あなたは、どんな『創造的休暇』にしていくだろう。