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1107 なぜ顧客獲得コストは低く見積もられるのか

以前、MarkeZineの連載記事『LTVの高さが、BtoBマーケティングの自由度を決める』でも書きましたが、BtoBマーケティングにおいて、CAC(Customer Acquisition Cost。1顧客獲得あたりのコスト)は一定以下には下がらず、直感的に思う以上にコストがかかります。

ですが、自分自身含めて、多くの経営者・マーケターはCACを低く見積もる傾向があります。世の中にBtoB商材のCPAやCACの情報が流通してない、という点もあるかと思いますが、いくつか考えられる理由をまとめてみました。

①「計画錯誤」バイアス

認知バイアスの一つに、時間や予算などの計画遂行に必要なリソースを過小評価し、遂行の容易さを過大評価する「計画錯誤」と呼ばれるものがあります。

私もよく楽観的な計画を立てて反省するタイプなのですが、人間はベスト・オブ・ベストな計画を立ててしまいがちです。BtoBマーケティングの計画では、非常に低いCPAやCACで、ものすごく数のCV数や受注数が達成できるという事業計画を立ててしまいがちです。

しかし、そうは問屋がおろしてくれず

・ネットワーク効果が働く
・ブランドが蓄積していく
・データが蓄積し、競合優位性とdefensibilityが増加(toC製品ですが、Amazon Echoのように先に音声データを蓄積した方がゆくゆく優位になるもの

などがプロダクトやマーケティング活動に内包させれいなければ、基本的にはスケールするに従って、CPAやCACなどは増加していきます。

認知バイアスから逃れるのは難しいですが、よく言われるようにノーマルケース、ワーストケースも立てることで、少しは「計画錯誤」のバイアスから逃れられるかもしれません。

②初期は知り合いや既存事業の顧客に売れる

2つ目の理由は、事業立ち上げの初期フェーズでは、経営者の知人や知人の紹介、もしくは既存事業の顧客に売れるため、CACがほとんどかからないことです。

特に既存事業が強い会社であればあるほど、既存事業の顧客に対して、クロスセルを行い、初期の顧客を獲得できます。この場合、既存事業の顧客にメールや電話をしたり、セミナーを告知することで、彼らにアプローチできるため、当然CPAやCACは低くなります。しかしながら、このチャネルは数に限りがあるため、半年、1年もすると頭打ちになり、新しいチャネルの開拓が必要になります。

関係値のある知人や既存事業の顧客に売るよりも、CPAやCACがかかるのは言うまでもありません。

③テレアポや飛び込みの見た目上のCPAが低い

もうひとつの理由は、テレアポや飛び込み営業などのアウトバウンド系施策のCPA(商談獲得)が見た目上、非常に低いことです。

テレアポの場合、営業パーソンの人件費が80万円/月だとすると、1日あたりの人件費は4万円。1日4アポ取れる営業パーソンだと、商談獲得コストは1万円です。

このCPAが基準になると、新しいチャネルを試す場合、心理的に許容できるCPAやCACが非常に低くなります。

もちろん、このご時世、ハードなテレアポは人の入れ替わりが激しくなってしまうので、採用コストや育成コストが余分にかかりますが、そこまで加味して、CPAやCACを算出することは稀です。また、受注率と受注までの営業コストを計算すると、ゴリゴリのアウトバウンドより、インバウンドな施策の方が、CACが低くなりやすいですが、アポ獲得単価までで判断するとテレアポは優秀なので、「Facebook広告で、ホワイトペーパーDLレベルのリードをCPA3,000円で100件獲得し、そのうちの5件が商談化。商談獲得単価は6万円」は心理的に許容しにくいでしょう。

目標が昨対の105%で良い場合は、テレアポをより効率的・効果的に行ったり、知人や既存事業への販売を強化するだけでも良いかもしれませんが、飛躍を望むのであれば、計画錯誤バイアスに気をつけながら、余裕を持った計画を立てた方が良さそう、という話でした。

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